徳島刑務所の医療に関する人権救済申立事件(警告・勧告)

X医師宛及び徳島刑務所長宛警告、法務大臣宛勧告

2010年1月21日


徳島刑務所医務課長が受刑者への医療を実施するにあたり、主に以下のような言動が見受けられたとの申立てがあった。


(1) 必要性が確かではない「直腸指診」なる検査方法を頻繁かついたずらに苦痛を与えるような不適切な態様で実施
(2) ピンチテスト(痛覚検査)と称して太股等を多数回にわたってつねるなどの行為
(3) 生命、身体への重大な影響が疑われるケースでの医療放置
(4) 受刑者からの診療情報開示の求めに対する説明拒否


これらの事象について調査を行った結果、重大な人権侵害行為と判断し、当事者である医師及び指導監督責任のある徳島刑務所並びに矯正医療を管轄する法務省に対して、このような事態を二度と起こさないための適切な措置を講じるよう警告及び勧告を行い政府に対し外部医療機関への委託の推進、カルテ開示、刑事施設視察委員会の権限強化など制度改革を求める意見書を送付した事例。


※ なお、この事例に関連して、意見書(→こちら)もまとめています。


執行後照会に対する回答

徳島刑務所長

<徳島刑務所長名回答・2011年6月6日>



現在、当所医務課には、医務課長1名(内科)、保健係長1名、薬剤師1名、看護師1名、准看護師4名及び事務職員1名の計9名を配置し、被収容者に対する医療措置及び保健衛生管理に当たらせていることに加え、非常勤医師3名(内科1名、精神科1名、歯科医師1名)、嘱託医師2名(精神科1名、歯科医師1名)、医療共助医師2名(外科1名、精神科1名)の計7名の医師及び歯科医師が、被収容者の診療等に当たっています。



また、徳島市内及びその近郊にある外部医療機関と綿密な連携を保ち、専門的な診断及び専門的な設備を必要とする検査、手術等の医療措置を依頼できる体制をとっており、専門的な診療等を必要とする場合には、被収容者を遅滞なく外部医療機関に通院又は入院させています。


以上が当所医療体制の現状でありますが、今後も医師等の医療スタッフの確保に努めるほか、引き続き外部医療機関等との連携及び円滑な関係維持に努めて参りたいと考えています。
 

法務大臣

<法務省矯正局総務課長名回答・2011年5月24日>



本件については、日本弁護士連合会から勧告が出される前の平成19年12月6日、当局内に徳島刑務所調査検討チームを設置して調査・検討を行い、その結果を平成20年3月28日に取りまとめ、公表するとともに、当局から当時の徳島刑務所医務課長及び徳島刑務所に対して、以下のとおり指導を行っております。


【医務課長(当時)に対する指導】
1 直腸指診は、その適応や必要性の程度を慎重に検討した上で、患者に対し、実施目的、実施方法について事前に十分説明し、文書による承諾を得ること。また、神経学的な診察方法として用いる場合には、他の神経学的な診察方法と組み合わせることも考慮すること。


2 診療情報の提供は、医療行為の目的等が正しく伝わるよう、処置や治療の方針、薬剤の内容・効能、投薬を中止する理由等を、より分かりやすく説明するよう留意すること。


3 痛覚検査は、検査の目的等を正しく説明することに加え、近時の一般的検査方法等も踏まえた検査をするよう留意すること。


4 患者との信頼関係の構築についても、患者からの反発や誤解を招くような不用意な発言をすることのないよう留意すること。



【徳島刑務所に対する指導】
1 医療関係
医務課と処遇部門との連携や適切な役割分担について、同刑務所の施設全体で検討・実施し、幹部職員は、医務課の業務運営に積極的に関与すること。


2 刑事施設視察委員会への対応
徳島刑務所視察委員会から提出された意見には誠実に対応し、マスコミで報道された事案については、適時に視察委員会に対する情報提供を行うなど、同委員会との良好な信頼関係の維持に努めること。



<法務省矯正局総務課長名回答・2011年9月15日>[再照会]



本件について、当局の対応は、本年5月24日付けの「徳島刑務所の医療に関する人権救済申立事件について(回答)」で回答したとおりであり、貴連合会による勧告前に既に改善指導を行っていたため、勧告後には当局として特段の改善指導等の対応は行っていない。