刑事施設における性同一性障がい者の取扱いに関する人権救済申立事件(勧告)

黒羽刑務所長、法務大臣宛勧告

2009年9月17日


黒羽刑務所の受刑者であった申立人(収容以前に性同一性障がいとの診断を受け、氏名も女性名に変更していたが、性別適合手術前の者)は、入浴、身体検査、運動時の際に男性刑務官のみに処遇され、また、着衣・頭髪に関する処遇は、当初、女性下着等の貸与、男性としての調髪の強制まではしないという内容であったが、収容中に申立人が起こした刑務官への傷害を契機として、衣類も男性用に変更され、調髪も男性の基準にそって強制されるようになった。
このような状態は、申立人の性自認である女性という性別に照らし、耐え難い苦痛を伴う処遇であることから、当連合会は、その処遇が個人の尊厳に反する人権侵害にあたるとし、黒羽刑務所長に対し、女性としての下着、官服の貸与、入浴等の際に女性刑務官が直接の処遇にあたるなど、性自認に沿った処遇を行うことを勧告し、法務省に対しても、性同一性障がいに関する教育を各施設に行うこと、性同一性障がいの受刑者に対する処遇の指針を検討するよう勧告した事例。


執行後照会に対する回答

黒羽刑務所長

<黒羽刑務所長名回答・2011年5月27日>



当所における性同一性障がい者の処遇については、当該被収容者の身体の外形的な状態、入所前の生活実態、診断・治療の状況及びしゅう恥心等の個別的な事情を考慮した上で行うこととしております。

法務大臣

<法務省矯正局成人矯正課長名回答・2011年7月28日>



当局においては、かねてから性同一性障害等を有する被収容者の処遇について、指針を設けることについて検討していたところ、平成23年6月1日付けをもって、別添のとおり矯正管区長及び刑事施設の長宛て通知を発出しましたのでお知らせいたします。
 
 
icon_pdf.gif 別添:法務省矯正局成人矯正課長及び矯正医療管理官連名通知「性同一性障害等を有する被収容者の処遇指針について(通知)」 (PDFファイル;356KB)


※別添通知は平成27年10月1日に一部改正されました。
 

icon_pdf.gif 法務省矯正局成人矯正課長及び矯正医療管理官連名通知「「性同一性障害等を有する被収容者の処遇指針について」の一部改正について(通知)」(平成27年10月1日付け) (PDFファイル;414KB)