刑事訴訟法の運用の改善と再審法改正等の実現に関する宣言

わが刑事訴訟法は30年の歴史をもつに至った。この間、違法な捜査活動がしばしば問題になった。それが無批判に公判へ引き継がれていくたびも誤判を重ねる因をなし、いくつかの裁判はかろうじて最終的に是正された。


今日、無実を信ずるにたる死刑囚の再審申立が改めて注目をあつめている。無実を罰する誤判は、自白偏重、不正な捜査、誤鑑定などに基因しているが、さらに、これら誤判の根底には「疑わしきは被告人の利益に」との鉄則を軽んじ、国民の常識から遊離した裁判官の事実認定があることを指摘しなければならない。


日日の刑事手続きでは、保釈制度の運用の現実や強権的訴訟運営などにみられるように、法の理念をゆがめ防禦権を圧迫する例がすくなくない。それはおのずから裁判の適正をあやうくするものとなっている。


われわれは、この30年の経験の上に立って、司法の現状を直視し、刑事裁判の現状を再検討すると共に、弁護活動をいっそう充実させて、刑事訴訟法の運用の改善と再審に関する法改正等の実現に全力をつくすことを誓う。


右宣言する。


1979年(昭和54年)11月17日
第22回於福岡市