警察当局の弁護権侵害行為に対する抗議の件(第二決議)

弁護人を依頼し、その弁護を受ける権利は、憲法、刑事訴訟法で保障された国民の基本的な権利である。


然るに最近、接見におもむいた弁護士に対し、警察当局が不当に接見を拒否したり、あるいはいやがらせをなしまたは実力で排除する等の事件が相次いでいる。これは、弁護権に対する重大な侵害であって断じて許容し難いものである。


よってこのような警察当局の違法不当な措置に対し、厳重に抗議するとともに、今後、再び、かかる弁護権侵害が行われないよう強く要求するもである。


右決議する。


昭和44年10月18日
於広島市、第12回人権擁護大会


理由

  1. 最近、警察官による弁護士に対する重大な弁護権の侵害行為が相次いで発生している。例えば昭和44年8月17日に警視庁K警察署において東京弁護士会所属の婦人弁護士3名が婦人団体の開催日変更のビラを電柱に貼った理由により、軽犯罪法違反容疑で逮捕された被疑者に接見するため同署に赴いた際、同署ではなんら理由を示さず、接見を拒否した上、責任者と名乗る警察官は「弁護士を排除する。やれ!」と号令して約20名の警察官をして右弁護士らを署外に押出さしめ、その際同弁護士らに対して腕をつかみ、押す、突きとばす、蹴るなどの暴行をふるわしめ、1名の弁護士に対し両腕に全治5日間の挫傷を負わせた事例があり、またその外にも接見交通のため赴いた弁護士に対し右の如き実力行使をした例もみうけられる。
  2. 従来の弁護権侵害は主として被疑者・被告人との接見禁止、制限、差入れの制限などの形態において違法不当な措置がとられることにより行われてきた。しかるに最近警察官による弁護権侵害はこのようなものに止まらず、弁護士に対して直接その身体に暴力を加え、傷害を負わせて妨害するといった自体めでおよび、従来以上に事態は重要かつ深刻である。この際警察当局は、かかる実力行使による弁護権侵害を二度と行わないよう強く要望する次第である。

注(1) 提案会
東京弁護士会


注(2) 要望先
警視庁長官、警視総監