監獄法の改正に関する件(第二決議)

現行監獄法、同施行規則は、明治41年に制定されたものであり、憲法の定める基本的人権の保障に欠けるところが多い。


殊に、未決勾留中の被告人等が、右のごとき監獄法の適用をうける結果、不当に人権を侵害されていることは、一日も看過することができない。


よって、政府はすみやかにこれが改正を図るべきである。


右決議する。


(昭和42年11月11日、於松山市、第10回人権擁護大会)


理由

  1. 現行監獄法は、1955年8月30日犯罪者処遇に関する第1回国連会議において決議せられた「被拘禁者処遇最低基準規則」を下廻り現代文化の求める最低の要請に適合しないということができよう。
    すなわち現行監獄法には、自由刑の執行において受刑者の労働に対する賃金を剥奪し、懲罰について重屏禁、軽屏禁、減食等極めてひ人道的な規定を残しており、更にこれを科する手続についても適切な救済手続きがないこと等明らかに憲法の定める基本的人権の保障に反すると考えられるものが多い。
    これらの点は、現行監獄法、同施行規則が、明治41年に制定されたまま現行憲法の下での必要な改正が行われず今日に到っていることに原因する。
  2. 而してこの監獄法は、有罪の確定していない刑事被告人または被疑者にも同じく「在監者」として適用されている結果不当にその人権を侵害されている例は極めて多い。例えば、刑事被告人に対する懲罰として一般面会の禁止(刑訴37条一項に規定する以外の者に対して)または発信の禁止等の処分が行われていること、新聞、時事の論説を記載した文書の差入れを禁止していること、その他代用監獄の弊害等数多くある。
    このことは、すべての刑事被告人が有罪の確定判決があるまで無罪の推定をうけるとする憲法並びに刑事訴訟法の精神に著しく反するものであり、これらの規定の早急な改正ないしは未決勾留に関する独自の立法措置は人権擁護の立場から一日もゆるがせにできない問題である。
  3. 右に述べた問題点を含む監獄法の改正について、われわれは第1回人権大会をはじめ数回に亘って改正決議の要望をなしてきた。しかるにその改正は今日なお実現をみていないが、その主な理由として刑法改正の時期に合わせて監獄法の全面改正を行うという点にあるようである。監獄法の改正と関連を持つと考えられるのは、自由刑単一化と保全処分の新設等極めて僅かの部分にとどまると考えられ、更に全面改正について考えられている善時制一時帰休制、中間刑務所制等は人権問題従って憲法問題というよりもむしろ、政策的技術面の問題である。
    従って、監獄法の改正の時点に合せようとすることは、右に述べた人権問題と考えられる点の改正とは何ら有機的、合理的関係がないものであり、これらの点の改正を延引せる理由となるものではない。関係当局は刑法の全面改正を待つまでもなく右指摘した人権の保障に抵触する部分を早急に改正されたい。

注(1) 提案会
近畿弁護士連合会


注(2) 要望先
法務大臣、内閣法制局長官、衆・参両院法務委員会委員長、各党政策審議会会長