思想的立場を異にする者の殺傷事件絶滅の件(宣言)

近時、思想的立場を異にする者に対する殺傷行為が続出し、その他権力の乱用または多衆の暴力によって、人権を侵犯する傾向甚だしきは、まことに憂慮にたえないところである。


われわれは、その使命にしたがい、かかる法秩序破壊の行動を強力に排除し、もって人権を擁護し、暴力の絶滅を期する。


昭和35年11月12日
於高知市、第3回人権擁護大会


理由

第35回国会開会中国会議事堂周辺は集団的暴威にさらされ、官憲は限界を超えて実力を行使し、人権の侵犯は随所にみられたが、なかんずく、社会党河上丈太郎君が凶漢に傷けられ、続いて岸内閣総理大臣が暴漢に襲われ相ついで入院する事態が生じ、更に10月12日社会党浅沼委員長が白昼政見発表中衆人監視の中において刺殺されたのである。洵に慄然たらざるを得ない。


思うに、日本国憲法が言論と集会と表現の自由を保障する所以のものは、吾々国民をして自由に思索させ、自由に創造させもって真理を探求して如何にすれば国民に幸福がもたらされ、世界に貢献するかを研究させるにほかならない。しかるに、思想的立場を異にするの故をもって、相手を殺戮し、おのれの説を維持せんとするが如きは、断じて許し得ない。


官たると、民たるとを問わず、左たると右たるを問わず、集団個人の一切の暴力を否定し、よってもって人権擁護に挺身することを誓うものである。