弁護人の秘密交通権に関する件(決議)

最近、警察当局は、捜査の必要性に藉口し、弁護人の面会を指定書発行の方法により不当に制限をすることが多い。


かかる傾向は、弁護人と被疑者との交通権を保障している憲法、刑事訴訟法の精神をふみにじるものである。


よって、当局はかかる職権乱用を是正するよう徹底せしめられたい。


1959年(昭和34年)10月24日
於岡山市、第2回人権擁護大会


理由

  1. 現在全国的に否認事件に就いては、捜査の請求により接見禁止処分が激増している。此種事件に就いても刑事訴訟法第39条により弁護人に対する接見禁止を行い得ないことは憲法、刑事訴訟法上明白である。
  2. 然るに検察官は、此種事件に付刑事訴訟法第39条3項により、時間、場所を制限し得る権限を乱用し、接見禁止ありたる事件には、常に「捜査の必要あるもの」とし、弁護人に対し、面会、時間、場所の指 定書発行制度を公行していることは全国公知の事実である。
    このことは、一般人に対しては、裁判の結果でなければ、接見禁止はできないが、弁護人に対しては、主任検事の裁量で事実上制限し、時には禁止に近い制限を可能ならしめていることを意味する。
  3. かかる憲法蹂躙、法律無視が公行されある現状は、直ちに廃止されなければならない。
  4. 省みるに、終戦時日本の状況は、憲法、刑事訴訟法の人権尊重の規定は棚上げされ、人民保護の法律が保護検束の名の下に人民を逮捕、勾留、長期に亘る勾留を公行した。其極点に達した時敗戦を迎えた。一国の興隆と人権尊重の度が運命を一にするとも見える。

日本国憲法、現行刑事訴訟法は、世界文化国の水準に於て制定されたが、その10年の運用の跡をみると寒心に耐えない。


本提案は、その一の著例であって、これを契機として国民的反省の一助を期するにある。