基本的人権擁護の宣揚の件(宣言)

基本的人権の尊重は、民主主義国家存立の基盤である。


しかるに、近時の諸立法中、之を軽んずるものあるのみならず、経済不況災害等に対する施設の面においても、国民生存権の保障に遺憾の点尠からず惹いては、基本的人権を危殆に瀕せしむる虞なしとしない。


われら法曹は、此の点重大関心を有し、常に慎重に調査研究をなし基本的人権擁護に欠くることなきを期する。


1954年(昭和29年)8月4日
於札幌市、人権委員会秋季総会


理由

わが国は、自由主義国家として新発足し、いやしくも新憲法に基本的人権を具体的に明かにして個人の尊重と主権在民を明定している。


しかも、近時の諸立法には、破防法、警察法、教育二法、秘密保護法等一歩誤れば憲兵政治に陥らんとする憂がある。われら法曹は、之等の様相を慎重に把握して人権の尊重、弁護士の使命を達成せねばならない。


本宣言は、第一段において、基本的人権尊重の確立を、第二段において、近時の諸立法には、民主主義の基本的理念を反省、再検討するの必要についての懸念を、第三段に、過誤を未然に防止するための努力を提唱したものである。