拘置所内接見室改善につき要望の件(臨時決議)

当連合会人権擁護委員会が今般調査したところによれば、全国各拘置所内接見室の設備は概して良好でなく、接見室の設備すら欠くものがあり、又面接者との間に金網或は硝子を張るものが、各地に相当見られるが、金網等を以て仕切ることは弁護人と被疑者との間の書類の授受を直接為し得ない不便があり、これは弁護人の交通権を不当に制限するもので、又被勾留者の人権尊重の見地から従来もしばしばこれが撤去方を要望して来たところであるが、未だに旧態依然たるものがある。


当局は速かに全国的に拘置所内接見室の設備を統一完備し、金網等の非民主的施設は全面的にこれを撤去せられるよう要望いたします。

1954年(昭和29年)5月15日
理事会


報告書

本委員会においては過般来拘置所内の接見室に金網を張り容疑者と弁護人の接見に不便を与えている等接見室改善を議題としておりましたので、去る1月19日を以て全国弁護士会に「拘置所内接見室設備につき実態調査」を依頼したところ、本日までに左記20会より回答があった。


長野県、高松、大津、長崎県、秋田、青森、大阪、山形県、広島、東京、新潟県、函館、名古屋市、静岡県、岡山、群馬県、京都、奈良、福井、福岡県、(回答順)


而して大部分は接見室の設備完全というもの少なく、殊に接見室に金網を張るもの多く(大阪にてはガラスを張る)右回答にみるに金網なきものは、長崎刑務所接見室(市警接見室には金網あり)秋田拘置所又はその支所接見室には金網なし、広島の尾道、三次、呉には金網なし(広島には金網あり)名古屋には金網なし(豊橋、岡崎、半田には金網あり)、奈良には2カ所だけ金網なし(他は大部分金網あり)


又設備については接見室の設備なき個所さえ見られ、秋田の如きは接見室は非常に狭く且つ粗末で、卓子椅子等も間に合せのものを使用し設備全体が不愉快であって、改善につき司法官、検察官、刑務所長等の懇談会に提案したところ、予算なしという状況であるので、これは行刑当局に警告を要望すると申出があり、岡山にては接見室は各々1坪程度で中央を金網で仕切りその両側にて面接することは起訴状弁護人選任書等の授受を直接為し得ざる不便あり、出来れば統一的結論を以て金網を取除くよう措置せられたいと申出がありました。


本委員会としては各会報告を検討審議して、接見室の設備改善特に金網撤去はいずれも要望していることであり之等は弁護人の不信用、交通権の不当制限であり被拘留人に対する人権尊重等の理由より全国的に統制完備せしめる要があるとの結論に達したので、連合会より関係当局に対し本委員会の意向達成するよう進達方要望いたします。