検察官又は警察官の職権乱用を是正又は廃止の件(決議)

  1. 被疑者の取調べに当りては、特殊の事情存せざる限り手錠を除くこととし、又警察官を立会わさないこととする。
  2. 聾唖者の取調べには必ず通訳人を附すること。
  3. 被疑者に対する逮捕状、勾留状の再発、差替をしないこと。
  4. 公判中又は閉廷直後偽証現行犯として証人を逮捕したり、証言中の証人を威迫しないこと。
  5. 起訴前の刑事事件につき容疑事実の発表を制限すること。

1952年(昭和27年)10月25日
於名古屋市、人権委員会秋季総会


理由

は、手錠をかけた儘又は警察官を立会わせて取調べることが多いが、これは、強圧を感じ、自由な真相を供述することができない。裁判を受けるまでは罪人ではないから検察、警察官等と対当の資格においてなさるべきである。


は、従来聾唖者の犯罪調べの場合、警察官が筆談と手真似で調書をとるが、聾唖者は具体的事実が判らず、抽象的概念は理解し得ないのみならず、智能低く、威圧に恐怖し易く、権力に迎合の習癖があるので、甚しく事実に相異する結果を生ずるから堪能な通訳をつけて真相把握をなすべきである。


は、近時警察官、検察官が余罪追及のため性質上連続関係にある被疑者又は牽連関係にある被疑者に対し、逮捕状の再発を要求し、勾留状の差替を求め逮捕状、勾留状の再発をなしている。これは旧時代の検束制度と異るところはない。


は、検察庁の供述と公判廷の証言と相違すると称して公判中又は閉廷直後検察当局が偽証の現行犯として逮捕又は証言を威迫するが如き自由なる証言を拘束するものである。


は、起訴前の刑事事件につき、警察官が取調べ容疑事実を発表して、新聞その他に報道をなすは、被疑者の名誉信用を失墜する虞が多大なるに鑑み、警察官は之等の報道制限の上に適切なる対策を樹立すべきである。