官僚専制、暴力横行の兆あるに当り之を排撃するの件(決議)

国家独立の気運漸く熟するに当り、早くも官僚専制、暴力横行のよみがえらんとするは、吾等の最も遺憾とするところである。吾等は断乎之を排撃し、人権を擁護し、民主国家の育成に努力せんことを期する。


1952年(昭和27年)3月28日
於福岡市、人権委員会春季総会


理由

われわれ国民は、大東亜共栄圏確立の美名により戦争に突入させられ、官僚の権力主義専制ファッショ的暴力主義の下に人権は全く無視され、時には軍馬よりも粗雑な取扱を受けたのであるが、終戦となり漸く、桎梏より退却することを得て新憲法に基本的人権を宣言するに到った。


本委員会は、昭和24年12月発足以来基本的人権を擁護し社会正義を実現する弁護士の使命により、右憲法宣言の具現のために根強き官尊民卑の封建思想と苦闘して人権擁護に努力し今日に到った。


しかるに、戦後6年風雪に耐え、近く講和の春を迎え国家独立の気運漸く熟するの今日、法令の行き過ぎな運用、職権乱用等再び官僚の権力的専制の復活の傾向をみ、又他面暴力行為の横行等ファッショ的暴力主義の勃興のきざしがあることは誠に深慮に堪えない。


故に、本委員会は、国家独立の期を逆用し、よって平和国家の建設を阻害し、基本的人権を侵犯する虞あるこれら官僚の権力主義専制の復活を断乎排撃し、ファッショ的暴力行為の横行を絶滅し以って基本的人権を擁護し民主国家の育成に努力せんことを期する。