第58回定期総会・日本弁護士連合会における男女共同参画の実現をめざす決議

 

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男女が性別に関わりなくその個性と能力を十分に発揮できる男女共同参画社会の実現は、「21世紀の我が国社会を決定する最重要課題」(男女共同参画社会基本法前文)と位置付けられており、「社会のあらゆる分野において、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図っていくこと」(同上)が求められている。


当連合会は、2002年(平成14年)5月24日に開催された第53回定期総会において、「ジェンダーの視点を盛り込んだ司法改革の実現をめざす決議」を採択している。同時にその提案理由では、「本来、弁護士会は、弁護士の強制加入団体として法曹界の重要な一翼を担うものであり、弁護士会における男女共同参画の実現なくして男女共同参画社会の実現はありえない。また、人権擁護と社会正義の実現を標榜する弁護士の集団である弁護士会こそ、両性の平等という憲法の理念を実現すべく、男女共同参画を積極的に推進し、社会のモデルとなるべきである。」と宣明している。


一方、わが国の現状は、「男女共同参画社会の実現にはなお一層の努力が必要である」(平成17年12月27日付け内閣府・第2次男女共同参画基本計画)という状況であり、当連合会においても状況に変わりはない。男女共同参画社会を実現するには、まず、人権擁護と社会正義を標榜する法律家団体たる当連合会における男女共同参画を実現することこそが、求められているというべきである。また、女性会員の参画の拡大は、同時に国民の半数を占める女性の法的サービスへのアクセスを容易にし、弁護士会や司法に対する国民の信頼を高めることにもつながるものである。今年度、当連合会としては、男女共同参画への取組みを、最重要課題のひとつとして取り上げているところである。


当連合会は、2007年(平成19年)4月20日開催の理事会において、「日本弁護士連合会男女共同参画施策基本大綱」を制定し、当連合会の男女共同参画につき、総合的かつ統一的な取組みを行う第一歩を踏み出すこととした。今後は、この大綱を具体化し、総合的かつ統一的な取組みをもって、会内における男女の実質的な平等を図るとともに、ジェンダーに基づく性別役割分業意識・固定観念・偏見を排除し、女性会員の積極的な政策・方針決定過程への参画の拡大をはじめとする男女共同参画の実現をめざすものである。


以上のとおり、決議する。


2007年(平成19年)5月25日
日本弁護士連合会


(提案理由)

1.日弁連における男女共同参画実現の必要性

男女共同参画社会基本法(以下「基本法」という。)は、前文において、「男女が、互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現は、緊要な課題となっている。」と述べた上で、「男女共同参画社会の実現を21世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置付け、社会のあらゆる分野において、男女共同参画社会の形成の促進に関する施策の推進を図っていくことが重要である。」と述べている。そして、同法は第3条ないし第7条で男女共同参画社会の形成についての基本理念を定めたうえ、第10条において、国民の責務として、「国民は、職域、学校、地域、家庭その他の社会のあらゆる分野において、基本理念にのっとり、男女共同参画社会の形成に寄与するように努めなければならない。」と規定している。


日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。)は、2002年(平成14年)5月24日に開催された第53回定期総会において、「ジェンダーの視点を盛り込んだ司法改革の実現をめざす決議」を採択したが、当該決議の提案理由では、「本来、弁護士会は、弁護士の強制加入団体として法曹界の重要な一翼を担うものであり、弁護士会における男女共同参画の実現なくして男女共同参画社会の実現はありえない。また、人権擁護と社会正義の実現を標榜する弁護士の集団である弁護士会こそ、両性の平等という憲法の理念を実現すべく、男女共同参画を積極的に推進し、社会のモデルとなるべきである。」と宣明している。


基本法は1999年(平成11年)に制定され、すでに8年近くが経過しているところ、「男女共同参画社会の実現にはなお一層の努力が必要である」(内閣府・男女共同参画基本計画(第2次)・平成17年12月決定)とされる現状にあり、日弁連においても状況に変わりはない。このような状況においては、まず、人権擁護と社会正義を標榜する法律家団体たる日弁連において「弁護士会における男女共同参画の実現」を図り、社会のモデルとなることが求められるものである。今後、日弁連においては女性会員弁護士の増加が予想されるが、弁護士会内部においても重要な役割を果たす女性を一層増加させていくべきである。女性会員の参画の拡大は、国民の半数を占める女性の法的サービスへのアクセスを容易にし、弁護士会や司法に対する国民の信頼を高めることにもつながるものである。


このような理解から、日弁連は、2007年(平成19年)4月20日の理事会において、「男女共同参画施策基本大綱」を制定した。今後は、理事会の議を経た上で日弁連に男女共同参画推進本部を設置するとともに、男女共同参画実現の基本となる男女共同参画推進基本計画を制定し、総合的かつ統一的に日弁連全体として男女共同参画に取り組んでいくことが重要であると考えられる。


2.男女共同参画の基本理念及び日弁連・弁護士の責務

日弁連における男女共同参画においても、基本法第3条ないし第7条に定められた男女の人権の尊重、社会における制度または慣行についての配慮、政策等の立案及び決定への共同参画、家庭生活における活動と他の活動の両立、及び国際的協調という基本理念を踏まえるべきことには変わりはなく、こうした基本理念に則って、日弁連における男女共同参画に関する施策を総合的かつ計画的に推進することが必要である。


そして、日弁連における男女共同参画を実現する上では、制度や予算という日弁連の組織的な対応問題のみならず、各会員それぞれが、男女共同参画の推進を意識してこれに寄与していくことが必要である。


また、男女共同参画が全国あまねく推進されていくためには、日弁連として、各弁護士会が男女共同参画を推進するために行う施策及び活動を支援していくことも必要である。


3.女性会員の政策・方針決定過程への参画の拡大

男女共同参画社会の形成にあたっては、政策・方針決定過程への女性の参画が促進されることが重要である。基本法第5条は、「男女共同参画社会の形成は、男女が、社会の対等な構成員として、・・・民間の団体における方針の立案及び決定に共同して参画する機会が確保されることを旨として、行われなければならない。」と規定している。


また、前述の2002年(平成14年)の「ジェンダーの視点を盛り込んだ司法改革の実現をめざす決議」では、「当連合会は、・・・司法における意思決定の場に女性が参加し、男女共同参画を実現するためのポジティブ・アクションにとりくむことを決意する」と宣明して、日弁連においても積極的改善措置(ポジティブ・アクション)を実施することを明らかにしているところである。


政府は、上記基本法の趣旨に基づき、「社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合が、少なくとも30%程度になるように期待する」との政府目標を設定している。日弁連としても前記基本法第5条にもとづき、この目標をふまえ、政策・方針等の立案及び決定過程に女性会員の参画の拡大を実現するため、日弁連における政策・方針決定過程に関する組織等に占める女性会員の割合につき、実情に即して5年ごとに目標を定め、その実現へ向けた施策を講じることが求められる。なお、この施策を講じるにあたっては、日弁連における政策・方針決定過程に関する組織等に占める女性会員の割合としては、これをおおむね各種委員会の副委員長以上の役職に占める割合ととらえることとし、選挙を経て選任される役職等もあることから、具体的な目標ないし施策の制定においては、各地位の選任過程の特性、地域の実情等を配慮したものとするべきである。


4.男女共同参画に関する調査研究

前述の2002年(平成14年)の「ジェンダーの視点を盛り込んだ司法改革の実現をめざす決議」で、「当連合会は、ジェンダーの視点を盛り込んだ司法改革を実現するため、『司法における性差別』に関するデータ収集・分析と改善勧告などの啓発活動を積極的に推進すること、司法を性差別の禁止を実現する場として機能させるため、ジェンダー問題についての啓発・教育プログラムを開発し、その受講・研修の必修化をめざすこと、・・・を決意する」と述べたことに鑑みると、男女共同参画の実現にあたっては、さまざまな観点からの基礎資料の収集及び調査研究も不可欠である。


5.国際機関との連携

男女共同参画社会は、国際人権規約や女性差別撤廃条約等国際的に確立された理念に基づいて実現されるものである。日弁連は、日本における有力なNGO団体であるから、日弁連の取組みが国際的に与える影響も少なくない。そのため、国連の人権会議・委員会(女性差別撤廃委員会、国連女性の地位委員会など)等の各国の女性政策全般にわたって影響を及ぼす重要な会議への参加、NGOを含む各種国際組織・機関などの関係者(外国人を含む)を招いての講演・シンポジウムの開催などを通じて、国際機関との情報の交換その他必要な措置を講じることもまた必要となる。


6.男女共同参画推進基本計画の制定、及び男女共同参画推進本部の設置

日弁連における、男女共同参画の推進に関する施策を、総合的かつ計画的に制定し実施するためには、あらゆる領域における取組みが求められるとともに、広い視野に立った多角的な面からの判断が要請される。そこで、理事会の議を経て、日弁連会長を本部長とする男女共同参画推進本部を設置するとともに、日弁連における男女共同参画を実現するために、男女共同参画施策基本大綱に基づく、男女共同参画の推進に関する基本的な計画(男女共同参画推進基本計画)を制定し、その計画に従った政策を実現していくことが求められる。


7.男女共同参画の推進状況の検証

日弁連における男女共同参画の実現は、各会員にとっても重要な課題であることから、毎年、定期総会、あるいはこれと同等の集会において、施策についての報告を行うのが相当である。そして、報告をまとめる過程で、適正な実施がなされているかを検証し、その検証を受けてさらなる施策の改善を図っていくべきである。


8.まとめ

日弁連理事会は、男女共同参画社会の実現のために、男女共同参画施策基本大綱を制定し、日弁連の男女共同参画に対する総合的かつ統一的な取組みに向けた第一歩を踏み出した。更に、弁護士・弁護士会を挙げて日弁連における男女共同参画の実現をめざす決意があってこそ、日弁連における男女共同参画が最終的に実現されることとなる。


そこで、この男女共同参画施策基本大綱を具体化し、日弁連における男女共同参画の実現をめざすために、本決議を本総会に提案するものである。