第50回定期総会・多重債務者の救済と多重債務問題解決のための総合的施策を求める決議

バブル経済崩壊後の経済不況が長期化、深刻化する中で、個人の自己破産や多重債務者が急増し、大きな社会問題となってきている。昨年の個人の自己破産申立件数は、ついに10万件を突破した。サラ金・クレジット・銀行などから多額の債務を抱えて支払困難に陥っている多重債務者は、少なく見積もっても150万人は存在するといわれており、多重債務や債権者の苛酷な取立を苦にした自殺や夜逃げも後を絶たない状況が続いている。


ところが、このような多重債務者を食い物にしている整理屋・紹介屋・非弁提携弁護士が横行しており、それによる被害も増大している。とりわけ、非弁提携弁護士の存在は、多重債務者に二次被害をもたらすばかりか、弁護士・弁護士会に対する市民の信頼を揺るがし、弁護士会が市民のための司法改革を推進するうえでも大きな障害となる恐れがある。


多重債務者が急増しているのは、主として、クレジットカードの大量発行、サラ金の無人契約機の急増などに象徴されるわが国の消費者信用産業の急速な拡大や消費者信用業界の高金利営業、過剰与信などの経済構造的要因に基づくものである。したがって、単に借りる側の道徳・モラルだけを問題にしても、多重債務者の大量発生は食い止められないし、多重債務問題の抜本的な対策とはなりえない。多重債務問題の解決のためには、多重債務者大量発生の経済構造的要因を十分に考慮した総合的な対策が必要である。


そこでわれわれは、非弁提携弁護士の根絶と多重債務者の救済を目指す法律相談活動の充実強化に全力を尽くすとともに、国や自治体に対し多重債務者の救済と多重債務問題の解決のために、すみやかに以下の施策を講ずるよう求めるものである。


  1. 消費者信用業界の高金利を是正するために、出資法(「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律」)の上限金利(年利40.004%)の大幅引き下げ、出資法における日賦貸金業者の貸付金利についての特例措置(年利109.5%)と電話担保金融の貸付金利についての特例措置(年利54.75%)の撤廃、貸金業規制法43条の「みなし弁済規定」の削除など、必要な関係諸法令の改正を早急に行うこと。
  2. 多重債務者の発生を防止し、消費者信用取引における消費者の権利を守るために、開業規制、金利・手数料規制、過剰与信規制、取立行為規制、クレジットカード取引規制、販売信用取引規制、書面交付義務、保証人の権利保護、個人信用情報の保護などを主な内容とする「統一消費者信用法」を早期に制定すること。
  3. 多重債務者にとって利用しやすく、多重債務者の生活再建に役立つ「現行破産法の改正」と「個人債務調整手続の創設」を早期に行うこと。
  4. 学校や地域社会において多重債務問題に関する消費者教育を強化徹底すること。

以上のとおり決議する。


1999年(平成11年)5月21日
日本弁護士連合会