第34回定期総会・サラ金被害の救済のため、必要な法改正はもとより、業者に対する適切な指導と厳正な監督に当たることを求める決議

(決議)

「貸金業の規制等に関する法律」及び「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の一部を改正する法律」が第98回通常国会で成立した。


右二法は、業者の利益保護に偏して、高金利を容認し、過剰融資と過酷な取立てに対する規制が不十分なものである。特に、利息制限法に関する最高裁判所判例を否定する規定を設けたことは、高金利を公認するとともに、破滅に瀕した債務者の最終的救済手段を奪い、高金利禍を一層拡大する危険性が大きく極めて重大である。


当連合会は、これらの点に着目し、長年の経験と研究の成果を踏まえ、法案の抜本的修正を立法関係者に強く訴えてきたが、これが全く容れられることなく、原案どおり成立したことは、はなはだ遺憾とするところである。


われわれは、いわゆるサラ金被害が一段と深刻化している現状を直視し、今後も法律の解釈運用に工夫をこらし、被害の救済と社会正義の実現のため、一層の努力を傾注する決意を表明するとともに、関係各界に対し、必要な法改正はもとより、金利引下げの確実な実行、業者に対する適切かつ効果的な指導・監督、悪質・違法な行為に対する厳然たる措置を強く要請するものである。


右宣言する。


(提案理由)

1.去る4月28日、「貸金業の規制等に関する法律」(以下貸金業法と略称)と「出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下出資法と略称)の一部改正法」が成立し、両法は本年中に施行されることが確実視されている。


2.右二法は、もともといわゆるサラ金による被害、悲劇を防止することを目的として立案したものとされているが、その内容は、サラ金被害の根絶という債務者(消費者)の切実な要求に程遠く、業者の利益保護に偏し、却って被害の拡大を助長するとさえ思える極めて危険なものといわざるを得ない。


すなわち、出資法の改正により、現行法の非処罰対象の上限金利を年率109.5%から73 %に引下げることにしてはいるが、現今の金融事情に照らしなお高率に過ぎる。この利率は漸次低減することとし、最終的には40.004%まで引下げることを予定しているが、そのプランの実行については「この法律の施行の日から起算して5年を経過した日以降において、資金需給の状況その他の経済・金融情勢、貸金業者の業務の実態等を勘案して検討を加え、速やかに定めるものとする。」として実施の時期が明確になっていない。


また、取立の規制についても、「貸金業者は、・・・・債権の取立てをするに当って人を威迫し又はその私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない。」と規定している(貸金業法第21条)のみで、その表現が極めて抽象的であり、実効性に疑問がある。


これに加えて、貸金業法第43条は、利息制限法の制限利率を超えた無効な金利について、債務者が利息として任意に支払った場合にはこれを有効な弁済とみなすこととしている。この規定は、高金利と過酷な取立てによって破滅に瀕した債務者を救済する有力な手段であった最高裁判所判例を否定しようとするものであり、利息制限法を実質的に骨抜きにし、高金利を公認するものといわざるを得ない。そして、これが業者の貸し得、取り得の風潮を助長し、高金利化を促進することは、前記判例が高金利化への抑止的機能を果してきた実情に照らし、極めて明白である。


しかも二法の対象となる貸金は、比較的小額のいわゆるサラ金に限らず、巨額な事業資金の貸付から担保提供の有無に関係なく、すべての貸付けに及ぶものである。従って高金利禍は小口消費者層からさらに中小の事業主にも拡大することが予測されるのである。


3.当連合会は、夙にサラ金被害が、深刻な人権問題、社会問題であることに着目し、被害者の救済に努力するとともに、業者の規制に関する提言を行ってきた。


そして、両法案が国会に上程されるに及びその欠陥と危険性を指摘し、過剰融資及び強行取立に対する実効性ある規制、上限金利の大幅引下げ、貸金業法第43条の削除等抜本的修正を強力に訴えてきた。然るに、これらの要請が全く容れられないまま遂に原案どおり可決されるに至ったことはまことに遺憾というほかはない。


4.われわれは、サラ金被害が一段と深刻の度を加えていく事態に備え、新法はもとより諸法令の解釈、運用に一層の工夫をこらし、従前にも増して、被害の救済と社会正義の実現のため努力を傾注するとともに、関係各界に対し、次の事項を強く要望するものである。


  1. 国会は、40%への金利引下げを確実に実行し、今後発生する諸状況に対応して法律の不備を適切に是正すること
  2. 監督官庁は、被害の実態把握に努め、法令を十分に活用して、業者に対する適切な指導と厳正な監督に当ること
  3. 関係当局は、犯罪となるべき業者の不当取立等の行為を積極的に摘発すること