第34回定期総会・拘禁二法に反対し、真にあるべき監獄法の改正の実現を期する決議

(決議)

留置施設法案、刑事施設法案が代用監獄を恒久化し、弁護人の接見交通権に大幅な制限を加え、施設管理を優先させて被収容者の人権保障に欠ける不当なものであることは、かねてより当連合会がきびしく批判してきたところである。


とくに、最近の再審事件、強要された自白による相つぐ無罪判決の例をみても、代用監獄ならびに弁護人の接見交通権をめぐる問題点がますますあきらかになっている。


当連合会は、昨年の国会上程以来、両法案に内在する問題点と危険性を指摘して、留置施設法案については直ちに廃案を、刑事施設法案については抜本的改正なき限り廃案を求めて運動をしてきた。


両法案は、現在国会において継続審査となっているが、当連合会は、今後もこれまでの立場を堅持して、引き続き会内意思の統一を強め、国民の理解と協力を求める運動を進めるとともに、その一環として法務省との意見交換を進め、法案の阻止をはかり、あらためて、真にあるべき監獄法の改正の実現を期するものである。


右宣言する。


(提案理由)

1.昭和57年4月28日に、留置施設法案と刑事施設法案が国会に上程され、当連合会は、第33回定期総会において、留置施設法案については直ちに廃案を、刑事施設法案については抜本的改正なき限り廃案を求める決議を行なった。


右決議に基づいて、当連合会内に拘禁二法案対策本部を、全国各弁護士会に拘禁二法案対策地方本部を設置し、強力な運動を展開してきた。われわれは、代用監獄を早期に廃止すること、未決と既決を明確に分離し、防御権など刑事訴訟法に定める未決被拘禁者の権利行使を制限する規定を撤廃すること、受刑者の社会復帰のために自主性と人間性を尊重すること、規律秩序と保安の偏重を改め、被拘禁者の権利の法律による明確な保障を図り、第三者委員会制度を設けること、国連最低基準規則を尊重し国際人権規約を遵守すること、などを運動の中で機会あるごとに国民各層へ訴えてきた。


日弁連及び各弁護士会あげての運動は、請願署名、国会議員への直接の要請行動、各地での創意をこらした市民集会の開催、パンフレットなどの作成、その他全会員の知恵と力を結集して進められてきた。


また、二法案の問題点をあきらかにし、あるべき監獄法の改正内容について具体的かつ実現可能な提言を行なうため、会内での討議を進めている。


2.われわれの全会員一体となった反対運動により、当初は「拘禁」という言葉すら理解されないという状況であったのが、マスコミにもこの問題がとり上げられるなど、着実に国民の中に理解と支持が広まっている。また、二度にわたる国会議員への要請行動、その他機会あるごとになされた各弁護士会の地元選出議員との懇談などにより、野党のみならず与党議員の中にも理解者をうみ出している。


3.われわれは、引き続き二法案の阻止のため、会内意思の統一を強め、国民の理解と協力を求める運動を進めるとともに、日弁連がかねてから提唱し、運動してきた「あるべき監獄法改正」を目標に、会内外にわたり今後の活動を続けていく必要がある。そのために、会内での議論を尽くし、現在行われている法務省との意見交換には、真摯にとりくみ、日弁連の主張を十分に開陳して行くこと、意見交換を監獄法改正のために真に実りあるものとして行くために、弁護士会が核となり広く国民に呼びかけて運動を進めて行くこと、さらに、日弁連の主張を体系化してあるべき監獄法改正の試案を作成し、これを公開し、これに対する国民各層の意見を聞き理解を求め、よりよい法案作成を実現するためにさらに尽力することを決意する。