第30回定期総会・弁護士自治の発展に関する決議

(第一決議)

弁護士自治の制度は、日本国憲法のもとで確立され30周年を迎える。


弁護士自治は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の諸活動を真に自由かつ適正に推進するために欠くことのできないものであり、このことは、戦前における先人の苦難の歴史によって、明白に証明されている。とりわけ、刑事事件における公平な裁判と適正な手続きの確保のため、あらゆる障害に屈することなく、最善をつくすことが弁護人の最も重大な使命である。弁護士自治は、このような弁護権の実質的保障を確保するためにも必要な制度的基盤である。


このたびの「刑事法廷における弁護活動に関する倫理規程」もこのような弁護人の使命と弁護士自治の本旨に基づいて制定・運用するものである。


我々は、主権者である国民から負託された弁護士自治の意義を深く自覚し、これをいっそう豊かなものに発展させていくよう全力をつくす決意である。


右決議する。


1979年(昭和54年)5月26日
第30回定期総会 於東京


提案理由

今日、弁護士自治制度の確立30周年を期して、これをさらに充実発展させるために、日本弁護士連合会会員は、その総意を結集して、ここに今後の正しい姿勢と方針を明確にしておくことがきわめて重要になっている。


折しも、「弁護人抜き裁判」特例法案との関連において、弁護士自治に対する許し難い非難と中傷が公然と語られている状況をみるにつけ、我々は、いっそう弁護士自治を守りぬくものであるとの力強い決意を表明しなければならない。


このことは、弁護権の実質的保障を確保し、弁護士と弁護士会の社会的な使命と責務をはたしていくうえで不可欠な態度であるといわなければならない。


ところで、このような状況のもとで、我々は、昨年、弁護士自治に関する基本的見解をまとめ、法曹三者協議を経て、今回、「刑事法廷における弁護活動に関する倫理規程」を制定したが、これも、この基本的見解に基づくものである。


我々は、弁護士と弁護士会の諸活動の源泉が、主権者である国民の支持に基づくことを深く銘記し、それらの活動が必ず国民の信頼と負託にこたえるものにするために、弁護士自治をますます発展させていかなければならない。


弁護士と弁護士会は、今後ともあらゆる場面で毅然として自らの職責を十分に果していくべきものである。


日本弁護士連合会は、この基本的な姿勢を高らかに示すためにこの決議を提案する。