第28回定期総会・裁判官新任拒否に関する決議

(第二決議)

最高裁判所は本年4月4日、第29期司法修習終了の裁判官任官志望者のうち、1名の青年法律家協会会員を含む3名を不採用とした。


当連合会は、最高裁判所が第22期司法修習生以後毎年のごとく繰り返してきたいわゆる任官拒否につき、思想・信条・団体加入を実質的な理由とした疑いが極めて強く、憲法の理念に照らして容認すべからざるものであるとの見地から、かかる措置を行わないよう要望してきたが、今回もまた従来と同様の措置をとったことははなはだ遺憾である。


最高裁判所は今後、裁判官の新任に際しては、国民の納得する公正な採用の基準と手続きを確立し、いやしくも思想・信条・団体加入を理由とする不採用をしないよう強く要望する。


右決議する。


1977年(昭和52年)5月30日
第28回定期総会 於東京


理由

最高裁判所は、去る4月4日の裁判官会議において、第29期司法修習修了者の裁判官志望者76名のうち、一名の青年法律家協会会員を含む三名を、何らの理由を示すことなく不採用とした。


当連合会のこれまでの調査によれば、青年法律家協会会員で裁判官任官志望者9名のうち、5名は、採用決定前の脱会勧告によって脱会届を出して採用され、また、右脱会届を出さないで採用された3名についても、採用後直ちに脱会届を出していること、しかも、その殆どが内容証明又は書留郵便による方法によりなされていること、他方脱会する意思のないことを明らかにしていた青年法律家協会会員1名が不採用となっていること、不採用となった他の2名も同協会会員とともに活動するなど修習生の自主的活動に比較的自由な姿勢をとっていた事実が明らかになっている。


また、昨年同様、研修所の裁判教官によって裁判官任官志望の青年法律家協会会員に対する脱会勧告が行なわれ、採用後脱会した3名については、採用の条件として脱会することを約束させられた疑いもあり、これらの事実に照らせば、今回の右措置は、思想・信条・団体加入を実質的理由とする差別であるとの疑いが拭い難い。


当連合会は、第22期司法修習生以後毎年くり返された裁判官志望者に対する不採用措置に対して思想・信条・団体加入を実質的理由とする疑いがあり、遺憾である旨表明してきたが、今回の措置は、これらを無視したものであるから、同様に遺憾の意を表明し、かつ、最高裁判所に対し、今後裁判官の新任に際しては、憲法の理念に合致するような採用基準とその手続きを確定し、いやしくも思想・信条・団体加入を理由とする任官志望者の不採用をくり返さないよう強く要望する必要がある。