第21回定期総会・司法制度の改正に関する決議

(第一決議)

簡易裁判所の民事事物管轄を拡張する裁判所法の一部を改正する法律案が、第63回国会で、われわれの正当な反対にもかかわらず、可決されたことはきわめて遺憾である。


政府および裁判所は、国会の附帯決議に指摘されているように簡易裁判所設立の趣旨を尊重し、その本来の機能が発揮されるようすみやかに具体的措置を講ずるはもとより、今後司法制度の改正にあたっては法曹第三者の意見を一致させたうえで実施すべきである。


右決議する。


1970年(昭和45年)5月30日
第21回定期総会


理由

簡易裁判所の民事事物管轄の上限を10万円から30万円にひきあげる、裁判所法の一部を改正する法律案が、この問題について、裁判所弁護士会連絡協議で、審議中であったのに、これを無視して、第63回国会に提案され、その審議過程でわれわれの反対理由がきわめて正当であることが明らかにされていたにもかかわらず、右法案は、それをおし切って可決された。


右法案に対する附帯決議は、国会が、われわれの正当な反対理由を、無視することができなかったためになさざるをえなかったものである。


しかも右附帯決議を厳密に検討するならば、その決議内容そのものが、この法改正の誤りであるゆえんを示しているといわねばならない。


この経過にかんがみるならば、政府および裁判所は、われわれの意見を尊重し、この附帯決議のなかで述べているように、「簡易裁判所の本来の機能を発揮しうるよう努める」べきであるという勧告を謙虚に受け入れ、いやしくもこの法改正によって、安易に簡易裁判所の小型地方裁判所化をおしすすめることが、ないよう自戒すべきである。


さらに、われわれは、政府および裁判所に対し、今後、この種の法改正につき、今回のごとく、われわれの意見を無視することのないよう、またわが国の司法制度の根幹にふれるような改訂には、あくまでも慎重であるよう要望せざるをえない。


昭和45年5月30日
日本弁護士連合会