第18回定期総会・司法制度の確立に関する宣言

(宣言)

われわれは、臨時司法制度調査会の意見書に対し研究討議を重ね、ここに批判書を発表する。


われわれは、この批判書の基調をなす司法民主化の理念に背く諸施策に反対するとともに、進んで法曹一元制度の実現に努力し、もって民主国家にふさわしい司法制度の確立を期する。


右宣言する。


1967年(昭和42年)5月27日
第18回定期総会


提案理由(議事録より)

昭和37年9月1日内閣に設けられました臨時司法制度調査会は、2年間の審議期間の終りに近い昭和39年5月8日に、法曹一元に関する方向決定をいたしたのであります。この方向決定は、わが連合会が発表した「法曹一元要綱」の方向から著しくかけ離れ、われわれの著しく失望を禁じえないものでありました。


その後この調査会は、最後の二ヶ月間に、法律によって右調査会の設置目的とされておりまするところからは到底想像もできないような多くの問題を、現行制度の改革案として一気に可決採用して昭和39年5月8日その意見書を発表するに至ったのであります。


そしてこの改革案なるものが、その儘実施に移されるならば、法曹一元制度の実現を阻み、司法の民主化のために由々しい結果を招来するものである。このことは誰の目にも明らかとなったと存ずるのであります。そこで、われわれは、昭和39年12月19日臨時総会において、簡易裁判所判事及び副検事に対する法曹資格及び弁護士資格を付与すること、簡易裁判所の事物管轄の拡張をすることに反対を決議いたしまして、さらにその後においても、高等裁判所支部の廃止や司法試験法の改正等に反対の決議を行うのみならず、これらの施策の実施を阻止するために一大運動を展開してきたことは皆様ご承知の通りであります。


昭和40年5月29日の第16回定期総会においては、


司法の民主化は、在野法曹年来の主張である。そのために、われわれは強く法曹一元制度の実現を提唱してきた。


しかるに、臨時司法制度調査会の意見書は、法曹一元が望ましい制度であることを認めながら、その具体的施策は、かえって法曹一元制度への道を阻む方向にある。われわれは、これを甚だ遺憾とする。よって、われわれは、司法の民主化を目指し、決意を新たにして、法曹一元制度の実現に邁進する。


という大会宣言を採択いたしまして、従来の態度を再確認いたしたのであります。


このようにして、一方において緊急の問題に対処するかたわら、他方において全国の弁護士会から精鋭をよりすぐりまして、「臨時司法制度調査会意見書対委員会」を設けて、前記意見書の全般にわたって慎重な研究討議を重ねまして、本日ここにこの意見書に対する批判書が公表するはこびとなったのであります。


この批判書を貫く根本思想は、申すまでもなく「司法の民主化」という理念であります。法曹一元要綱において「民主国家における司法は、国民のものであり、国民の叡智と良識を代表するものでなければならない。」とうたわれたあの精神であります。


われわれは、今後も、この批判書をよりどころとしまして、司法民主化の理念に反する施策が行われようとする場合は、その実現を阻止し続けるものであることを、この機会に内外に闡明したのであります。


同時に、われわれの前途には、臨司意見書において空白のままとされた法曹一元制度実現のための条件等を考究するという重要な課題がとり残されています。われわれがこの批判書において、現行のキャリア制度に対する厳しい批判と共に、法曹一元制度の担い手である弁護士自身の資質を一層向上させ、かつ弁護士会の組織を近代化し、これを強化する意思を有し、かつこの目的に向って真剣な努力を重ねていることを明らかにしたのであります。