刑事弁護人にできること

あなたが被疑者とされてしまった場合

弁護人は、被疑者(※)とされてしまったあなたの味方として、次のような弁護活動ができます(ただし、事案ごとに適切な弁護活動の内容は変わりますので、実際の事件においてどうするのがよいのかは、あなたの弁護人とよく相談をしてください。)。


弁護人の立場としては、あなたや家族と弁護士が直接契約をする私選弁護人と、あなたが逮捕に引き続き勾留されてしまった場合などに裁判所によって選任される国選弁護人とがあります。


※刑事事件では、犯罪の嫌疑をかけられ起訴されるまでの段階の人を「被疑者」と呼びます。



あなたが逮捕、勾留されていない場合

弁護人は、あなたにとって不都合が少ない日時、場所での取調べとなるよう、あなたに代わり、警察官や検察官と話し合いができます。警察官等が求めてきた取調べの日時、場所では都合が悪いのであれば、弁護人と相談してみてください。


あなたが取調べを受けるに当たり、弁護人の同席(立会い)などができる場合があります。現時点で多くはありませんが、弁護人の立会いが実現した例や、取調中に弁護人が取調室のそばで待機したり、取調中に電話で弁護人と相談したりするなどの活動が報告されていますので、弁護人と相談してみてください。


あなたが取調べを受けるに際し、あなたに保障されている権利、例えばどのような質問にも答える必要はなく、答えなくても不利益な扱いをされないという黙秘権や、供述調書への署名指印を拒否できる権利を説明するなど、弁護人は、あなたが取調べを受けるに当たり、必要な助言ができます。


また、取調べの際、警察官や検察官が怒鳴る、机を叩く、暴言を吐く、あなたが退出を求めているのに強引に引き留めるなどの違法な取調べをした場合、弁護人は、警察や検察に抗議するなど、違法な取調べを止めさせるよう活動できます。


弁護人は、取調べにおいて黙秘するのか、黙秘せずに話すのか、話す場合にどこまで話すのか、署名指印を求められた場合に応じるかなど、あなたの味方として、事案に応じた助言ができます。

 


あなたが逮捕、勾留などの身体拘束を受けてしまった場合

弁護人は、あなたを釈放するよう検察官に働きかけたり、勾留を認めないよう(あるいは勾留を認めた判断を取り消すよう)裁判所へ意見や申立てをしたりして、あなたがなるべく早く身体拘束から解放されるように努力します。


弁護人は、誰の立会いもなくあなたと面会(接見)し、取調べでどう対応するか事案に応じた助言をしたり、不安に感じているあなたの家族に様子を伝えたり(事案によっては、家族への連絡が難しい場合もあります)するなど、あなたの味方として活動できます。


なお、逮捕されてしまったものの、面会(接見)に来てくれる弁護士の知り合いがいない場合など、各地の弁護士会の「当番弁護士制度」が利用できます。当番弁護士制度は、最初の1回、弁護士会が費用を負担して、弁護士が面会(接見)し、あなたの相談に応じてくれる制度です。また、引き続いて私選弁護人として活動する場合や、弁護士会が行う公的弁護制度を利用して活動できる場合もあります。さらに、逮捕に引き続き勾留されてしまった場合には、被疑者国選弁護制度を利用することができます(ただし、一定の条件等があります)ので、当番弁護士と相談してみてください。


あなたを起訴(正式裁判を求める起訴、略式裁判を求める起訴があります)するか否かを決めるのは検察官ですが、弁護人は、検察官と話し合い意見を述べるなど、起訴されるべきではない事案が起訴されてしまうことのないように、起訴が避けられない事案においては、起訴の内容が不当なものとならないように、あなたの味方として活動できます。


また、必要な場合には、被害者との示談の話し合いを行う場合もあります。

 


あなたが起訴(正式裁判)されてしまった場合

あなたが起訴(正式裁判)され、被告人となってしまった場合、弁護人は、法廷での手続が始まる前にあなたと打合せをしたり、検察官が提出する予定の証拠を検討したりして、裁判所にあなたの言い分を分かりやすく伝えるための準備をします。


そして、法廷で、あなたの言い分を踏まえ、検察官の提出する証拠が信用できないと主張したり、あなたの言い分に沿う証拠を提出したり、証人尋問や被告人質問を行ったり、弁護人としての意見(無罪や適切な量刑を求めるなど)を述べるなど、あなたの味方として、適正な判決がなされるための活動を行います。


また、起訴後も身体拘束が続いている場合、身体拘束から解放する手続である保釈を請求することが可能となります。保釈が認められるかどうかについては、条件がありますので、弁護人とよく相談してみてください。


このように、あなたが被疑者、被告人とされてしまった場合、弁護人は様々な活動をすることができます。