行政訴訟改革等検討委員会 行政訴訟改革要綱案

2002年11月29日
日本弁護士連合会


日弁連がいま重要と考え、国民各層の意見を聞くための
行政訴訟改革要綱案

I.行政事件訴訟法の抜本的改正

1 法の支配の理念のもと「国民の権利利益の救済」及び「国民による行政のチェック」を行うという行政訴訟制度の目的を明示し、一から新たな行政訴訟制度を作り直す。

現行の行政訴訟制度は、国民の権利利益の救済という点で不十分なだけでなく、国民による行政のチェックという視点が欠落している。しかし、行政訴訟は、違法な行政の行為から国民を守るという目的とともに、行政の違法な作用の是正という目的を持っており、法の支配の理念のもとこの2つの目的を実現するための、国民のための制度として、行政訴訟制度を設計し直さなければならない。


2 行政訴訟は民事訴訟を妨げない。

行政の行為に不満があり、司法救済を得たいと思う国民は、行政訴訟、民事訴訟のいずれか、または双方を提起することができるものとする。したがって、いわゆる取消訴訟の排他的管轄(公定力)の考え方を廃止する。


3 訴訟類型・判決類型を拡大・整備する。

裁判所は、国民の意図に合致し国民の最も利益となる訴訟形式により審理を進め、判決をする必要がある。したがって、行政訴訟としては、現行の類型に加えて、例えば次のような類型を整備するとともに、民事訴訟も含めた柔軟な訴えの変更を認める。


(1) 義務づけ訴訟

(2) 法律の保護を求める第三者訴訟

(3) 行政権限不行使の違法確認訴訟

(4) 計画訴訟

(5) 行政立法取消訴訟

(6) 予防訴訟

(7) 無効等確認訴訟


4 訴訟要件を大幅に緩和する。

また、行政訴訟の要件として次のような抜本的改正を施す必要がある。

(1) 訴訟対象の拡大(行政上の意思決定を訴訟対象とする)

(2) 原告適格の拡大(現実の利益を有する者に認める)

(3) 団体訴訟(公益代表訴訟)の導入

(4) 被告適格の改革(行政庁ではなく行政主体を被告とする)

(5) 管轄制度の改革(原告住所地地方裁判所での訴訟提起を認める)

(6) 出訴期間の改革(個別法に最短6か月の出訴期間を設けるものとする)


5 裁量の適法性に関し、行政側による主張・立証責任(説明義務)を課す。

行政訴訟の審理方式として、行政手続法、個別行政実体法の改正に加えて、裁量の適法性に関連する行政側による主張・立証責任(説明義務)を賦課する。


6 執行停止を原則化し、仮の権利保護制度を整備する。

行政訴訟の審理に当っては、次のような制度を設け、または法改正を行い、行政の優越的地位に制約を加え、行政訴訟を実効的なものとする。


(1) 執行停止の原則化

(2) 仮の権利保護制度の導入


II.国民の行政訴訟に関する経済的負担の軽減

今回の制度改正では、行政事件訴訟法の改正だけでなく、周辺の法改正も行い、国民が行政訴訟を提起する場合の経済的負担を軽減すべきである。


(1) 印紙代の一律低定額化 例えば一律1000円(民事訴訟費用等に関する法律の改正)

(2) 法律扶助の充実 行政相手の裁判には、希望者全員に法律扶助がえられる(民事法律扶助法の改正)

(3) 片面的敗訴者負担制度の導入(訴訟費用、弁護士費用とも行訴法で明確にする)


III.行政訴訟支援の拡大・充実と弁護士の専門性の向上

弁護士会は、行政訴訟を担当する弁護士の養成と専門性の向上を図り、行政訴訟の現実の担い手を国民に提供するために、次の処置をとる。


(1) 行政事件担当弁護士リストの作成

(2) 行政訴訟専門の公設弁護士法人の設置

(3) 行政法・行政訴訟に関する研修の強化・充実

(4) 行政事件に関する情報ネットワークの構築

(5) 行政法・行政訴訟に関するシンクタンクの設置

(6) 法科大学院における行政法教育の支援


IV.公金検査訴訟の創設

公金検査訴訟を創設する。


V.行政手続法の整備・改正

行政計画・行政立法・公共事業に関する行政手続を整備する。


VI.行政不服審査法の改正、行政型ADRの改革と充実

行政不服審査法を改正するとともに(個別法上の前置制度の廃止、個別行政実体法のこの点の先行的改正)、行政型ADRを改革する。


VII.個別行政実体法の改正指針・スケジュールの策定と実行

個別行政実体法の改正指針及びスケジュールを策定し、これを実行する。


VIII.判検交流、指定代理人制度の廃止

いわゆる判検交流及び指定代理人制度を廃止する。


IX.専門的裁判機関の整備・法曹の専門性の強化

行政訴訟を迅速且つ的確に処理するためには、行政専門部の拡充・充実すべきである。


法科大学院での行政法教育の充実がなされるべきである。


X.陪審制度または裁判員制度の導入

 行政訴訟の専門性を高めるとともに、国民の常識を行政訴訟に反映させるため、行政訴訟に陪審制度または裁判員制度を導入する。