日弁連新聞 第490号

第57回人権擁護大会開催
10月2日・3日 函館市

  • 第57回人権擁護大会開催

10月3日、函館市において、第57回人権擁護大会を開催した。約1100人の会員が参加し、「原発訴訟における司法判断の在り方、使用済燃料の処理原則及び原子力施設立地自治体の経済再建策に関する宣言」と「障害者権利条約の完全実施を求める宣言」を採択した。また、大会前日には、宣言案に関連して「北の大地から考える、放射能汚染のない未来へ」「障害者権利条約の完全実施を求めて」をテーマに2つのシンポジウムを開催し、2000人近い会員・市民が参加した。次回大会は千葉市で開催される(2面に各シンポジウムの記事)。

 

原発訴訟における司法判断の在り方等に関する宣言

特別報告で集団的自衛権と憲法をめぐる問題点について講演する柳澤協二氏

原発事故による人権侵害を回避するという観点から、①裁判所による原発の安全性に関する司法審査の役割が極めて重要であることから、原発の設置・運転の適否が争われる訴訟に関する司法判断において、万が一にも原子炉等による災害が発生しないような判断枠組みが確立されること、②国は、原発の安全性を検討するために必要な情報開示の仕組みを整備すること、③国および電気事業者は使用済み燃料を含む高レベル放射性廃棄物について、再処理施設等の核燃料サイクルを速やかに廃止するなどの方策を採ること、④原子力施設立地自治体の経済再建を図るための措置を採ること、をそれぞれ提言した。

 

障害者権利条約 完全実施を求める宣言

2014年1月20日、日本が「障害者の権利に関する条約」を批准したことを受け、同条約の完全実施に向けて以下の施策を行うよう提言するとともに、障がいの有無にかかわらず、自分らしく、ともに生きる社会の実現に向け全力を尽くすことを宣言した。

①国内法においても、条約と同様具体的な差別の定義規定を設けるなどの差別の禁止および解消のための基本的施策、②労働・雇用分野、教育分野等の個別分野における差別の禁止および解消をともなう施策、③総合支援法を障がいのある人が個別事情に即した支援を受けられるものに改正するなど障がいのある人の尊厳が尊重される生活を確保するための施策、④本条約の選択議定書を批准し、個人が国連の障害者権利委員会に救済を求めることができる個人通報制度を実現するなど条約実施のための制度的担保。

 

6本の特別報告を実施

今大会では、「『人権のための行動宣言2014』の策定について」「袴田事件に関する件」など、6本の特別報告を行った。

「憲法問題に関する件」においては、現在の情勢と弁護士会の対応・今後の取り組みにつき報告するとともに、柳澤協二氏(元内閣官房副長官補)が「集団的自衛権と憲法をめぐる問題点について」と題する講演を行った。


 

10・8日比谷野音大集会&パレード
3000人を超える弁護士・市民が参加!!

本年7月1日、政府が集団的自衛権の行使を容認する閣議決定を行ったのに対し、日弁連は、立憲主義の基本理念並びに恒久平和主義および国民主権の基本原理に反し違憲であるとして強く反対し、撤回を求める旨の意見書を9月18日付けで公表した。この意見をアピールし、広く理解を求めるため、本集会を開催し、引き続きパレードを行った(主催:日弁連、共催:東京・第一東京・第二東京・横浜・埼玉・千葉県の各弁護士会・関弁連、協力団体:戦争をさせない1000人委員会・解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会・立憲デモクラシーの会)。

 

3000人の参加者が日比谷野音を埋め尽くした

集会の冒頭、村越会長は集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定は恒久平和主義・立憲主義に反するものであり容認できないとし、閣議決定に基づく関連法の改正を許さないための共同行動を呼びかけ、山岸良太憲法問題対策本部本部長代行が、日弁連のこれまでの活動状況を報告した。続いて本集会に出席した16人の国会議員(民主党、社会民主党、日本共産党、生活の党)の紹介があり、リレートークが始まった。

宮崎礼壹氏(元内閣法制局長官)は、今回の閣議決定は歯止めがないものであり、反対の声を広げていかなければならないと呼び掛け、上野千鶴子氏(社会学者、戦争をさせない1000人委員会呼びかけ人)は、戦後を戦前にしてはならないと訴えた。その後、青井未帆教授(学習院大学)、中野晃一教授(上智大学、立憲デモクラシーの会呼びかけ人)、三木由希子氏(NPO法人情報公開クリアリングハウス理事長)、高田健氏(解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会)がそれぞれの立場から先の閣議決定に反対する旨の発言をした。

集会の後、参加者は「閣議決定撤回」「戦争させない」と書かれたプラカードを掲げながら、銀座をパレードした。

参加した市民からは、弁護士の姿に励まされ感動したという声が多く寄せられた。

(川上詩朗 憲法問題対策本部事務局次長)


 

12月5日
臨時総会開催

12月5日午後1時から、弁護士会館クレオにおいて、主に以下の議案審議のため、臨時総会が開催される。多数の会員の参加による充実した審議をお願いしたい。

 

会則中一部改正(外国法事務弁護士法人制度創設、会則会規等の制定改廃の公示方法及び見出し)の件ほか5件

本年4月に公布された改正「外国弁護士による法律事務の取扱いに関する特別措置法」により外国法事務弁護士のみを社員とする外国法事務弁護士法人の制度が創設されることを受けて会則、会規等の必要な改正を行うもの。併せて、会則の各条に見出しを付することや、会則会規等の制定改廃の公示方法を官報公告から日弁連ウェブサイトへの掲載に代えることを提案するもの。

 

小規模弁護士会助成に関する規程(会規第40号)中一部改正の件

小規模弁護士会における会財政や会務負担の状況等を総合的に勘案し、会則第95条の4第1項の規定に基づき日弁連の会費の免除を受けている会員を除いた弁護士である会員(基準会員)が1月1日現在で100名以下の会に対する助成の枠組みは維持しつつ、①基準会員が100名を超え200名以下の小規模弁護士会協議会構成弁護士会(日弁連所属弁護士数の0.5%以下の会)にも年間100万円を上限に助成する、②助成金の支給要件を満たさなくなった場合の経過措置の期間を2年間から3年間に変更する(ただし、基準会員が200名を超えた会は経過措置の対象としない)との変更を行うもの。

 

第5回
人権関連委員会委員長会議
10月1日 函館市

本会議は、日弁連の人権関連の委員会・WGの代表者が「人権のための行動宣言2009」における課題への取り組み状況を確認し、縦割りになりがちな委員会・WGの活動について情報を共有して意見交換を行い、日弁連の人権擁護活動を推進することを目的としている。2010年から人権擁護大会の日程に合わせて開催しており、今年は会長以下執行部も含め68人が出席した。

当日は、行動宣言に掲げた人権諸課題の取り組み状況の報告のほか、①委員会・WG間の協働、②立法活動・立法課題、③人権条約機関による政府報告書審査の勧告のフォローアップという3つのテーマについて、参加者からの報告と意見交換がなされた。概要は次のとおり。

①協働の取り組みの事例として、行政不服審査法改正に伴う入管法改正の問題や、「罪に問われた障がい者の刑事弁護PT」等について報告が行われたほか、災害や貧困、難民をはじめ、協働が必要な分野が多くあり、協働の取り組みを積極的に進めることを確認した。②立法に関する取り組みや今後の立法課題について報告が行われ、委員が任期付公務員となって立法活動に携わった事例などが紹介されたほか、条文の形での立法提言の必要性が指摘された。③国連自由権規約委員会および同人種差別撤廃委員会の政府報告書審査に関する報告のほか、人権条約機関による日本政府への複数の勧告により、行動宣言に掲げた人権課題について海外からも指摘を受けていることを確認し、各委員会・WGが勧告を意識しながら活動し、横断的に取り組んでいくことが提案された。

(人権行動宣言推進会議事務局長 秋山 淳)


 

人権擁護大会シンポジウム
10月2日 函館市

第1分科会

北の大地から考える、放射能汚染のない未来へ

昨年広島で開催された人権擁護大会に続き、「原発事故と司法の責任」「脱原発後の課題(放射性廃棄物・原発立地地域の経済)」「再生可能エネルギー等を通じた地域の再生」という、脱原発に向けて議論すべき重要な3つの問題を取り上げ、シンポジウムを開催した。函館市が大間原発建設差止訴訟の原告となっていることもあり、大会には約1100人もの会員・市民が参加した。

 

司法の責任を考える

第一部「司法の責任を考える」パネルディスカッションの様子

第1部では、原発訴訟の新たな司法判断の枠組みについて、基調報告とパネルディスカッションを行った。

岩淵正明分科会実行委員会副委員長による基調報告では、福島第一原子力発電所事故で明らかになった原発事故の被害実態と先の大飯原発判決により、原発差止訴訟の判断枠組みが変わりつつあるとして、「伊方最高裁判決」「立証命題の再構築」「証明度軽減の法理」による3つのアプローチが示された。また、最高裁判所においても、司法研修所で2012年1月と2013年2月に特別研究会が開催されたこと、過去に住民らの請求を棄却してきた元裁判官はメディアの取材に次々と反省の弁を述べていることが報告された。

パネルディスカッションでは、ドイツ調査の内容が報告され、ドイツの裁判所における厳格な判断枠組みが紹介された。また、山口栄二氏(朝日新聞記者)は、「最後は結局、市民やメディアが裁判所をどれだけ支持してくれるかが重要なのだと、ある裁判官が言っていた。最高裁もそこを気にしていると思う」と世論や市民の関心も重要であることを指摘した。

 

核燃料サイクル、高レベル放射性廃棄物を考える

第2部の冒頭、小出裕章助教(京都大学原子炉実験所)は、「核燃サイクルからの撤退」と題して、核燃料サイクルの問題点を次々と明らかにした。ウランの埋蔵量は石油より少なく、これを補うには高速増殖炉の実用化が必要であるとして、原子力開発利用長期計画が立てられてきたが、更新の都度実現の見通しが先送りされ、計画自体が破綻している。それでもプルトニウム保有の正当化のためには原発が必要であり、そこには、核兵器製造ポテンシャルの保持という目的があると指摘した。

続いて、小野有五教授(北星学園大学経済学部)は、日本は地震大国である上、20億年前に地盤ができたスカンジナビア半島でさえ2万年前に氷床が解け、地面が250メートル以上隆起していることを考慮すると、日本で地層処分を行うのはまず無理であり、当面はキャスクに入れ空冷乾式貯蔵するしかないと述べた。

 

脱原発後の地域再生を考える

第3部では、3・11の影響を受けて脱原発を果たし、困難を乗り越えて地域再生を試みるビブリス(ドイツ)の現状が報告された。原子力施設立地自治体の首長でありながら脱原発を提唱した村上達也氏(茨城県東海村元村長)は「原発による発展は一炊の夢に過ぎない」「原発には地域経済、地域再生というほどの広がりはない」「地方は地方としての自覚、自立が必要」と語った。

また、工藤壽樹函館市長は、大間原発建設差止訴訟提起を全会一致で議決できた背景に、市議会代表メンバーによる福島県南相馬市および同浪江町の視察があったことを披露し、「首長が脱原発を訴えるだけではうまくいかなかっただろう」と述べた。

続いて脱原発後の地域再生に関し、原発建設後、稼働前に国民投票で脱原発を決定したオーストリアの木質バイオマスエネルギーによる発展について報告された。これに続く形で、大友詔雄氏(株式会社NERC代表取締役センター長)から、同エネルギーは、北海道で広がりを見せており、既に数多くの自治体で導入されていることや、導入した地域では、熱と電力に加えて産業と雇用が生まれ、その好循環が地域全体に広がっているといった実情が語られた。


 

第2分科会

障害者権利条約の完全実施を求めて
~自分らしく、ともに生きる~

日弁連は、2001年の人権擁護大会において、障がいのある人に対する差別禁止法の制定を訴える宣言を採択し、2006年の国連における「障害者の権利に関する条約」採択以降は、同条約の早期批准とともに国内法の整備を求めてきた。その成果として2014年1月20日、日本は同条約を批准するに至った。条約締結国となった今、その完全実施に向けた課題等について議論した。

 

「合理的配慮」は自然な譲り合い

棟居快行氏による講演の様子

冒頭、棟居快行氏(大阪大学名誉教授)が「障害者権利条約がひらく未来」と題する基調講演を行い、内閣府の障がい者制度改革において差別禁止部会の部会長を務めた際に取りまとめた意見書が、障害者差別解消法の制定へとつながった経験を紹介した。棟居氏は、条約が定める「合理的配慮」は、特殊な世界の特別な話ではなく、人々が社会の中でごく自然に行っている「融通、譲り合い」であり、福祉や特別な優しさを求めるものではないと強調し、「障がい者」を対象とすることから無意識に抱きがちな心の壁を取り払うことの大切さを強調した。

 

多方面からの問題意識

身体または精神に障がいを持ちながら社会の中で自立した生活を続ける方からの報告に続き、「こんなとき、どうする?」と題した寸劇の方式で、労働・雇用分野、教育分野、司法手続きにおける配慮についての問題提起がなされた。

パネルディスカッションでは、パネリストらが、それぞれの視点から障がい者をとりまく問題点について語った。2歳でポリオに感染、現在も右手足にまひが残る米津知子氏(DPI女性障害者ネットワーク)は、収入の格差など「障がい女性は障がい者差別と性差別が複合する困難の中にいる」と指摘し、知的障がいを有する土本秋夫氏(ピープルファースト北海道会長)は、政府の障害者政策委員会に知的障がいを有する当事者の委員がいないことは問題であると指摘した。

 

今後在るべき施策

山崎公士教授(神奈川大学法学部)は、権利条約が締結国に障がいに基づくあらゆる差別を禁止することを義務付けた点をあらためて強調し、条約を実質的に国内に浸透させるため障害者差別解消支援地域協議会(障害者差別解消法第17条)の活用が有用であると指摘し、浜田正利北海道新得町長は、「ろう者と共に生きる」町作りを進めるため「手話は言語である」との認識の下、手話条例を制定し人材育成等に取り組む町の様子を紹介した。竹下義樹会員(京都)は、障害者基本計画の策定にいかに参加していくか、差別事象を放置せずにその解消を求める取り組みを行うか等が日弁連としての今後の課題であると述べた。

最後に、コーディネーターを務めた長瀬修氏(立命館大学客員教授)が、さまざまな視点、切り口で権利条約の完全実施を目指すことの重要性を指摘し、野村茂樹分科会実行委員会委員長が「2001年の大会で夢を掲げるシンポを行ったが、今回は現実を語るシンポ。障がいの有無にとらわれず共に生きる社会の実現を目指し踏み出そう」と会場に力強く呼びかけた。

 

弁護士任官者の紹介

10月1日付けで次の会員が裁判官に任官しました。

 

岸本 寛成氏

42期・元大阪弁護士会所属

司法修習終了後、太田・柴田法律事務所を経て、真成法律事務所勤務。2010年10月~2014年9月まで、大阪簡易裁判所民事調停官。

〈初任地福岡高裁〉

 

南部 潤一郎氏

南部 潤一郎氏

55期・元旭川弁護士会所属

司法修習終了後、四ツ橋法律事務所に勤務(大阪弁護士会)。2006年から法テラスの常勤弁護士として、法テラス江差法律事務所にて勤務(函館弁護士会)。2009年から法テラス旭川法律事務所に異動。

〈初任地東京高裁〉


 

育児期間中の日弁連会費等
免除制度が開始!

2015年4月1日から、育児期間中の日弁連会費等免除制度が始まります。

これは、育児中の男女会員に対し、育児をする子が2歳になるまでの任意の連続する6か月以内の期間における日弁連会費および特別会費を免除する制度です。免除期間中は毎月、育児の実績を記載した書類を提出してください。

申請時には、会費等免除申請書(住民票等を添付)と誓約書兼予定書を所属弁護士会にご提出ください。詳細は随時、会員専用ページ(HOME≫届出・手続≫育児期間中の会費等免除)に掲載します。

【お問い合わせ先】人権部人権第二課
TEL:03-3580-9508

 

院内意見交換会
司法修習生への給費と充実した司法修習の実現を
10月14日 衆議院第二議員会館

司法修習生への経済的支援について、国民や国会議員の関心が高まっている。
今後、政府・与党での議論が活発になることを見越して、院内意見交換会を開催し、与野党の国会議員18人を含む約200人の参加を得て、充実した議論が交わされた。

 

「給費復活は喫緊の課題」と語る村越会長

冒頭、村越会長から「給費制復活は喫緊の課題であり、日弁連は、今後もこの問題に全力で取り組んでいく」との意気込みが語られた。

 

お金のある人だけが法曹へ

続くリレートークでは、法曹を目指し、法科大学院修了後司法試験に合格した男性から、家庭の経済的事情で修習をあきらめ、最終的に公務員の仕事を選んだとの報告があった。奨学金の返済のことを考え弁護士の道をあきらめる決断をした男性に、母親は「お金のある人しか法曹になれないんだね」とつぶやいたそうだ。

こうした声は決して少数ではない。67期司法修習生を対象としたアンケートの結果が報告されたが、その中では、書籍の購入などを控え、実務修習期間中の勉強会への参加など、定時時間以外の活動時間も65期、66期と比べて減少したことが如実に現れていることが紹介された。

また、貸与金返済の負担から5人に1人が司法修習の辞退を考えたことがあるとの結果も報告された。

 

国会議員からの励ましの言葉

与野党の衆参両議員からは、「経済的な事情で法曹を目指すことを断念するようなことがあってはならない」「力強い司法をつくるためには給費制が必要。必ず給費を勝ち取る」「法務委員会の委員として今後も弁護士会とともに先頭に立って闘っていく」などの熱い励ましの言葉があった。議員の言葉から給費の実現に向けた機運の高まりが感じられた。

 

市民団体からの応援メッセージ

最後に、菅井義夫氏(司法修習生に対する給与の支給継続を求める市民連絡会事務局長)が「『貸与制』というのは法曹の養成に国が費用を出さないということ。法曹になるために消費者金融の保証を使えというのに等しい。能力ある志高い法曹をそのような無策で育てていいはずがない」と市民の立場から給費の必要性を訴え、参加者全員があらためて給費の実現に向けた努力を続けることを確認した。

 

取調べの可視化を求める市民集会
奪われた48年
袴田事件を繰り返さないために
9月22日 弁護士会館

袴田巖氏に再審開始および死刑・拘置の執行停止決定がなされてから約半年、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」の答申案が同審議会の総会を経て法務大臣に提出された今般、同氏の実姉である袴田秀子氏、7月30日に三鷹バス痴漢えん罪事件の無罪判決が確定した津山正義氏、同審議会特別部会委員らを迎え、取調べの可視化を求める市民集会を開催した。

 

刑事司法の改革を

パネルディスカッションでは法制審特別部会の議論状況等が報告された

冒頭、村越会長から「えん罪は国家による最大の人権侵害であり、刑事司法の抜本的な改革が必要不可欠である。一挙にすべてが成し遂げられるものではないが、改革を一歩一歩進めたい」と今後の取り組みへの決意が語られた。

 

えん罪被害の深刻さ

秀子氏から事件当時・裁判中の心境や巖氏の様子が語られた。「トイレにも行かせてもらえず、夜昼なく調べられた」「死刑が確定し、死刑囚だけの場所に移って大変元気がなくなった。ガクッと変わって静かになってしまった。言動もおかしくなり、猿だとか天狗だとかいう話も出るようになった」とあらためてえん罪被害の深刻さが浮き彫りになった。

つい先日無罪判決が確定した三鷹バス痴漢えん罪事件の津山氏は、「留置場に入れられていた28日間、こんなにも涙が出るのかと思うほど涙が出た」「警察官は取調べのときに、車載カメラに痴漢をしている姿が映っている、目撃者が何人もいる、だから認めて自分の口で言いなさいと言ったが、映像には無実の姿が映っていた」と違法捜査の実態を訴えるとともに、「この3年間に、『周りは信じてくれたが裁判では勝てなかった』『誰にも信じてもらえないが裁判で闘っている』『自分の心や信念を曲げ認めてしまった想いがどうしても拭えない』という多くの人たちと会ってきた」と、えん罪事件と闘っている多くの人がいる事実を指摘した。

 

特別部会での議論状況

後半は、法制審特別部会元委員の神津里季生氏(日本労働組合総連合会事務局長)、後藤昭教授(青山学院大学法務研究科)、元幹事の小坂井久会員(大阪)、そして袴田事件弁護人の小川秀世会員(静岡県)らによるパネルディスカッションを行い、同部会での議論状況の報告に加え、答申案中における録音録画の見直しに関する附帯事項の趣旨や、最高検が出した試行に関する依命通知の内容とその活用方法、録音録画の対象事件拡大が今後の弁護実践にかかっていることなどが確認された。

 

院内集会
カジノ解禁推進法案について考える
10月8日 参議院議員会館

カジノを一定の条件の下に解禁・推進する法案が今臨時国会に提出されている。日弁連は本年5月、同法案に反対の意見書を公表し、院内集会等を開催してこの意見への理解を求めてきた。日本人の入場を制限した上での解禁などさまざまな意見も出ている中、さらにこの問題への理解を深めるため、院内集会を開催した。

 

深刻な依存症とカジノ業界の現状

石川浩一郎会員(千葉県)から、パチンコ依存症に陥り、パチンコ代のために強盗殺人未遂等の事件を犯した被告人が、逮捕直後に「捕まってよかった。もう罪を犯さなくて済む」と語った実例が紹介された。

桜田照雄教授(阪南大学流通学部)は「カジノをめぐるバランスシート」と題して、世界のカジノ産業の現状を報告した。特に、今年相次いでカジノが閉鎖されたアトランティックシティについて、その原因はカジノの魅力で遠方から人を集めること自体が困難になってきている中、カジノ同士の競争が激化したことにある点や、カジノの建設と閉鎖により地域経済が混乱を来したことが指摘された。

また、昨今注目され、安倍首相も視察に赴いたシンガポールのカジノについて、カジノへの立入制限者が21万人を超えるなどギャンブル依存症が広がっていることや、実は全体の売上は停滞気味であることなどが報告された。

 

問題だらけの法案

関連団体から、法案に反対する声が次々と寄せられた後、本集会に出席した9人の議員から、「公営ではなく民間企業が営利目的で運営するのに、なぜ賭博の違法性が阻却されるのか」「カジノがなくても依存症が多い現状がまず問題」などと異口同音に問題点が指摘された。

最後に、新里宏二多重債務問題検討ワーキンググループ座長が、カジノが社会にもたらすマイナスは税収の増加というメリットを大きく上回り、このような負の試算を全くせずに審議を進めることが最大の問題だと指摘した。

 

女性インハウスのためのキャリアアップセミナー
キャリア・育児などについて意見交換も
10月18日 弁護士会館

現在、企業内で活躍している弁護士約1200人のうち、約40%を女性が占めている。こうした中、女性企業内弁護士に向けて、今後のキャリアアップ、仕事や家庭のマネジメントに活かしてもらおうと、本セミナーを開催した。

 

企業内弁護士に期待される働き方

第1部のセミナーで、講師の稲垣泰弘氏(株式会社小松製作所執行役員法務管掌)は、「『弁護士として』よりも、『社員として』の成長を望む」と述べ、企業内弁護士には、法律上の問題だけでなく、ビジネスや倫理などの広い視野から最も妥当な解決案を提示することが期待されているとした。

また、女性のキャリアについて、今は企業が子育てを支援する時代であるとし、そのための組織作りに努めていると語った。

同じく講師の真壁宏氏(同法務部長)からは、法務部は他部署に比べ女性社員や女性管理職が多く、時短勤務や在宅勤務制度の利用も奨励していることが紹介された。

続いて行われた同社法務部所属の企業内弁護士によるプレゼンテーションでは、裁判官から転身した中村亜希子会員(第二東京)が、「法律論だけでは見つからない落としどころを常に探す必要がある。法律の専門家でない者との間でも理解を共有することが重要」と述べた。

岡部真弓会員(第二東京)は、「私は子どもがいてもフルタイム勤務を選んだ。キャリアは育休後の方が長く、考え方は人それぞれ。ペースを落とさずに働きたい人もいる」と語り、栗林拓郎会員(東京)は、「育児のため社内の在宅勤務制度を活用している」と述べた。

 

講師・参加者同士の交流会

第2部の交流会では、企業内弁護士のほか、企業内弁護士への転身を検討する女性会員の姿も見られた。

ある女性会員は、「企業内でも残業はあるが、法律事務所勤務に比べれば労働時間が短い。育児との両立に悩んで企業内弁護士を選んだが、今ではビジネスのダイナミズムを肌身で感じられるのが醍醐味」と語った。

 

弁護士・司法修習生・司法試験
合格者向け企業就職活動セミナー
10月11日 弁護士会館

近年、「企業内弁護士」というキャリアを選択する会員が増えているが、企業の実情はなかなか知る機会がない。そこで、本セミナーでは、就職エージェントを講師に招き、企業で働くことの意義および企業への就職活動の基本的なノウハウ・知識に関する講義を行い、今後のキャリア形成を考える機会とした。

 

就職活動のノウハウ

冒頭、株式会社C&Rリーガル・エージェンシー社の山口宣仁氏より、主に履歴書の書き方についての解説がなされた。山口氏は、効果的な履歴書を作るには、「自己分析と企業研究が必要」とし、「企業のIR資料、有価証券報告書を数年分は目を通すべき」と助言した。

次に、株式会社インテリジェンスの加賀美文久氏から、面接技法についての解説がなされた。加賀美氏は、面接における注意点として、「(企業内弁護士としての)就職希望者は、法的に正しい判断ができる点をアピールしがちだが、企業は、事業を進める上で法的リスクをどのように回避・軽減できるかを共に考えていける人材を希望しており、ギャップが生じている」ことを挙げた。

 

就職活動の実情

山口氏、加賀美氏に、株式会社T2 Tokyo(Talent2)の水谷央氏が加わり、3人の講師により企業就職活動の実情についての解説がなされた。

まず、企業内弁護士採用の動向について、加賀美氏からは新卒採用、山口氏からは法律事務所からの転職、水谷氏からは外資系企業への転職に関して、いずれも活況であるとの報告があった。

企業内弁護士のキャリアパスについては、山口氏から「かつて企業内弁護士になることは片道切符という印象があったかもしれないが、今では、企業内弁護士から法律事務所への転職も見られる」との報告があった。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.94

法の日週間記念行事
福島の再生に向けて
未来のためにそれぞれの支援を

今年の法の日週間記念行事は、震災により故郷を失い、バラバラになってしまった家族が再び絆を深めていく姿を描いた映画「家路」を上映し、ジャズシンガーの綾戸智恵さん、久保田直監督と被災地の復興支援に携わる弁護士とのトークイベントを行いました。当日は、多くの方にご参加いただき、被災地の復興について思いを寄せる機会となりました。
(広報室嘱託 白木麗弥)


 

 

■未曾有の事態を経験した人々の感情を描いた「家路」■

綾戸さん(左)と久保田監督

主人公の青年が一心不乱に畑を耕し、米を釜で炊き、ぬか漬けでかき込むように食す。どこまでも美しい自然。炊きたてのご飯の湯気が見る人の目を惹き付ける。ただ、問題なのは、主人公が暮らすこの場所が福島第一原子力発電所の事故で避難指示が出ており、今や誰も住めないということだ。

一方、主人公の兄は、やり場のない思いを抱えながら、仮設住宅の狭い居間でテレビを見ている。その姿に漂う虚脱感が、リアルな光景として映し出される。

主人公は故郷である福島を離れ、放浪する生活を続けてきた。逃げるように故郷を後にした主人公が、「やっと誰にも気兼ねしねえで生きてけるって思ったんだ」と誰もいないその地で過ごす表情はどこか明るく、避難した母親や兄一家が闇を抱える様子とは対照的だ。

フィクションでありながら、震災後の福島を舞台に撮影されたこの映画は、淡々と、しかし悲しいほどに真実味を帯びている。これを「被災地の物語」にとどめることなく、「家族とは」「生きるとは」「人間の誇りとは」「命とは」と観るものに問いかける感動深い作品であった。

 

■トークイベント■
「原発事故から1300日~福島の再生に向けて」

後半は、「家路」の監督である久保田直さん、この映画を応援するジャズシンガーの綾戸智恵さんを迎え、事故当時、法テラス福島に所属していた加畑貴義会員、頼金大輔会員とともにトークイベントを行った。

 

震災を風化させないために

久保田監督は、この映画を制作した動機について「原発事故によって、人間が立ち入ることができないエリアができてしまった。このことをいかに当事者意識をもって捉えられるかと考えたのがきっかけ」と紹介するとともに、「誰も立ち入れないからこそ、逆にそこに戻ることができる者もいるのではないか、そうした人物を中心とした家族の物語を作ることで、震災を風化させず、観る人の心にずっと残る作品にしたいと思った」とも語った。

 

リアルに描かれた被災者の苦悩

被災地への思いを語る登壇者ら

この映画を応援しようと思った理由について、綾戸智恵さんは、映画を観る者は、自らの人生をストーリーに重ねて投影する。自分も神戸で震災を経験しており、この映画を観ながらそのときのことをまざまざと思い出し、物語が胸に迫った。この映画は『家族』という普遍的なテーマを取り上げたことで、震災の惨事を記録するにとどまらず、時代を越えて引き継がれるにふさわしい物語となっていると語った。

感想を尋ねられた加畑会員は、映し出されている家族の葛藤、迷い、悩みは福島に住む人の苦悩そのものであるとして、「映画を観るまでは、(福島に実際に住んでいないのに)仮設住宅に住む人の生活や苦悩を描けるわけがないと高をくくっていた。しかし、実際にこの映画を観て、描かれている仮設住宅の様子があまりにもリアルだったことに本当に驚いた」と語った。さらに、別の場所へ移住すると娘がいじめられないかと心配する主人公の兄に妻が投げかけた「私たち何も悪いことをしていないのに」という言葉が持つ切実さに胸を打たれたとの感想を述べた。

 

被災者それぞれの選択を後押ししたい

作品の中で、主人公は母親を警戒区域にある家に連れて行くと言う。このシーンについて、久保田監督は「世の中は多様化し、自分がどこで誰とどんなふうに生きていくか、自分で決める時代となった」と語った。これに加畑会員と頼金会員はうなずき、頼金会員は「震災直後、2人で最初に決めたことは、被災者がどのような選択をしたとしても、それを尊重しようということ。今後も被災者それぞれの選択を後押ししたいと考えている」と述べた。

 

未来の子どもたちに

現在、福島の状況は震災直後から少しずつ変容してはいるが、避難生活の収束のめどが立たないなど、課題は山積している。そして、人生における重大な選択を今後迫られるであろう人々は少なくない。

「これまでに経験したことのないようなこの事態に直面して、私たちは何ができるのか?難しい問題だと思うが、それぞれができることを一生懸命やって、子どもたちが大人になったときに、きちんとした判断の足がかりになるよう、しっかりした『過去』を作るのが私たち大人の仕事。監督は監督の方法で、私は私の方法で。あんたらもそうやろう?」と綾戸智恵さんが加畑会員と頼金会員に迫ると、両会員だけでなく、参加者も大きくうなずいていた。

 

日弁連委員会めぐり 69

日弁連知的財産センター

2009年6月、知的財産制度委員会と知的財産政策推進本部とが発展統合し、日弁連知的財産センター(知財センター)が誕生しました。誕生から5年を経た今回、知財センター委員長の伊原友己会員(京都)と同事務局次長の城山康文会員(第一東京)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 倉本義之)


 

知財センター自体は誕生して5年ですが、歴史ある委員会とお聞きしました

伊原委員長(左)と城山事務局次長

(伊原) 1963年に設置された「工業所有権制度改正委員会」にまでその歴史はさかのぼります。「工業所有権制度改正委員会」はその後何度か名称を変えて、知財センターの前身の知的財産制度委員会となりました。もう一つの「知的財産政策推進本部」は、2002年に小泉内閣が「知的財産戦略会議」の設置を決定したことを受け、同年6月に設置されました。

 

活動内容を教えてください

(伊原) 意見書の提出、知財高裁・東京地裁知的財産部との意見交換会の開催、国際会議の開催サポート、中小企業の海外展開支援、知財関連団体との協議、知的財産法研修の実施など多岐にわたり活動しています。東京地裁知的財産部との意見交換会は、1999年から毎年1回開催しており、昨年度は、2011年改正特許法の下での実務の運用や国際訴訟等をテーマとして意見交換を行いました。

 

いろいろな活動をされているのですね

(伊原) そのほか、日弁連の組織ではありませんが、「弁護士知財ネット」という知財センターの別働隊のような組織もあります。これは、知的財産関連業務における地域密着型の司法サービスの充実と拡大を目指し、専門人材の育成や司法サービスの基盤確立を目的として誕生した全国規模のネットワークです。

 

新しい動きがあるそうですね

(城山) 本年11月に、知財センター委員と弁護士知財ネット所属弁護士をインドネシアに派遣し、現地の最高裁判所および知的財産関係機関の視察・調査を行う予定です。知財センターと弁護士知財ネットが一丸となって行っている国際的取り組みの一つです。

 

会員に向けてのメッセージをお願いします

(伊原) 知的財産法制という先端的でグローバルな法分野で活躍する新しい人材をより多く育成したいという思いで活動しています。ぜひご参加ください。

 

ブックセンターベストセラー
(2014年7月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名 出版社名
1 別冊判例タイムズ No.38 民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版 東京地裁民事交通訴訟研究会 編 判例タイムズ社
2 携帯実務六法 2014年度版 「携帯実務六法」編集プロジェクトチーム 編 東京都弁護士協同組合
3 弁護士の失敗学 冷や汗が成功への鍵 髙中正彦・市川 充・川畑大輔・岸本史子・的場美友紀・菅沼篤志・奥山隆之 著 ぎょうせい
4 弁護士職務便覧 ―平成26年度版― 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
5 契約書作成の実務と書式―企業実務家視点の雛形とその解説 阿部・井窪・片山法律事務所/編 有斐閣
6 会社法コンメンタール13 ―清算(2)§510~§574 松下淳一・山本和彦 編 商事法務
7 詳説 後遺障害 ―等級認定と逸失利益算定の実務― 北河隆之・八島宏平・川谷良太郎 著 創耕舎
8 実践 訴訟戦術 ―弁護士はみんな悩んでいる― 東京弁護士会春秋会 編 民事法研究会
9 Q&A 平成26年改正会社法 二重橋法律事務所 編 きんざい
10 事例で考える 民事事実認定 司法研修所 編 法曹会

編集後記

本号では、人権擁護大会と法の日週間記念行事の記事に多くの紙面を割きましたが、いかがでしたでしょうか。
「法の日」である10月1日の週は、各イベントの取材のほか、記念行事の運営も広報室・課で行っているので、毎年てんてこ舞いです。記念行事の運営に携わった私としては、トークイベントでの綾戸さんのアドリブに感心したりはらはらしたりしつつも、最終的にうまくまとまったことに胸をなで下ろしています。
「法の日」の起源は、1928年10月1日に陪審法が施行され、翌年から10月1日を「司法記念日」と定められたことにさかのぼります。その後、1960年の閣議了解で、正式に「法の日」が定められました。
歴史ある法の日の週に行われ、市民に法を身近に感じてもらう法の日週間記念行事。来年はよりパワーアップさせたいと思います。(Y・K)