日弁連新聞 第488号

若手弁護士カンファレンス
日弁連執行部と若手会員が率直な意見交換
8月23日弁護士会館

 

今年度日弁連執行部は、若手会員の意見を会務に反映することを会務執行方針に掲げているが、その一環として、直接若手会員から意見を聞くため、若手弁護士カンファレンスを開催した。62期以降の若手会員約80人が全国から集まり、出席した村越会長および副会長と意見交換を行った。

 

若手支援制度の紹介

参加者の意見に耳を傾ける村越会長

若手会員への研修支援として、eラーニングの利用料無償・割引制度やeラーニングがiPhoneやiPadにも対応していることが紹介された。

また、キャリアアップ・転職支援として、ひまわり求人求職ナビの活用方法が紹介された。

さらに産休・育休制度などの会費免除制度(ただし育休制度については現在未施行)や、豊富な留学支援制度が紹介された。

 

グループ別会長・副会長との意見交換会

若手会員が9つのグループに分かれ、①指導援助・OJT、研修、②経済的負担、会費、③業務拡大、他士業との関係、各種交流、④会務の4つのテーマについて、会長・副会長と意見交換を行った。

「日常業務をしていると日弁連がどういう問題意識を持っているのか分からない」という若手会員の声から意見交換が始まり、「さまざまなメーリングリストが業務に役立っているのでもっと充実させてほしい」「法テラスには実務で分からないことを電話で相談できる制度があり有益だと思う」「eラーニングは充実していると思うが、座学の要素が強く実務に活かしにくい。より実践的なものがほしい」といった研修や業務支援に関するさまざまな声や、「FAXニュースもすべてメールにすべき」「修習時の貸与金の返還が5年目から始まり、会費減免も5年までというところが多く、一気に負担が増えるので支援してほしい」といった、会費の在り方や使途に関する意見が寄せられた。

業務拡大については「他の士業に押されているように感じている」「弁護士報酬は高くない、もっと利用しやすいものだとアピールしてほしい」「入管業務のように、弁護士があまり進出できていない分野について知りたい」といった意見が、会務については「ボスとの関係で会務に参加できない」「会務活動は経済的基盤がしっかりしていないとできないと思う」という声が寄せられた。

意見交換終了後の懇談会では、本カンファレンスについて、各グループの参加代表者から「これまで意見を述べる機会がなかったので、今後も続けてほしい」「地域により日弁連に求めていることが違うことが分かった」などと継続開催を求める声が多数聞かれた。


 

子どもの手続代理人
~現在の運用状況~
リーフレット「子どもの手続代理人って?」のご活用を

 

2013年1月1日の家事事件手続法施行を受けて開始された、子どもの手続代理人の活動の現状を報告する。

 

子どもの権利委員会子どもの代理人制度に関する検討チームが、子どもの手続代理人として実際に活動した会員に対し行ったアンケートによれば、現在までに子どもの手続代理人が選任された子どもの年齢としては、9歳から17歳までが報告されている。

また、子どもの手続代理人が活用された事件類型としては、子ども自身が申立人となった事案では、親権停止審判申立およびその保全処分、子どもが参加した事案では、親権者変更審判・調停、子の引き渡し審判・調停、面会交流調停などが挙げられている。

同制度は施行後間もないこともあり、一般のみならず会員にも十分認知されているとは言い難い。そこで、制度のより一層の周知を図るべく、子どもの手続代理人の役割や手続の流れを、子どもも理解できるよう易しく解説したリーフレット「子どもの手続代理人って?」を制作した。各弁護士会に既に配布されているほか、日弁連ホームページ(HOME≫日弁連/弁護士について≫出版物のご案内≫パンフレット等)からダウンロードできる。

さらに、子どもの手続代理人の具体的活動や費用負担の詳細について知りたい場合には、会員専用ページ掲載の「子どもの手続代理人マニュアル」(会員専用ページ≫HOME≫書式・マニュアル)を併せてご参照いただきたい。

離婚調停や親権変更調停審判手続などでは、紛争当事者たる父母の代理人となっている会員が、当該案件における子ども独自の利益代弁の必要性を、最も的確に把握し得る立場にあると思われる。また、子ども独自の利益に紛争当事者の関心を集中させることにより、紛争解決促進の効果も期待できる。

各会員において、子どもの利益のために子どもの手続代理人選任の必要性を感じた場合には、関係者に対し、前記リーフレットを活用するなどして、手続代理人制度について説明の上、ぜひ積極的な制度の活用を促していただきたい。

(子どもの権利委員会幹事 佐野みゆき)


 

池上彰さんと一緒に考えよう
そうだったのか!憲法そして平和
夏休み親子憲法セミナー
8月27日 弁護士会館

2014年6月、いわゆる国民投票法の改正案が成立し、2018年6月21日以降にその期日がある国民投票の投票権年齢が満18歳以上に引き下げられた。したがって、4年後に国民投票が行われた場合、現在の中学生も投票権を有することになる。そんな中学生を主な対象とし、憲法について楽しく学んでもらうため、ジャーナリストの池上彰氏をお招きし、親子憲法セミナーを開催した。

 

憲法コント

コント集団ザ・ニュースペーパーが、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義など憲法の基礎的な知識について、コント形式で分かりやすく紹介した。

 

池上氏の解説で会場は盛り上がった

LET'S挑戦!憲法クイズ

憲法改正の手続や憲法尊重擁護義務などに関する問題が出題された。全問正解者も相当数出るなど、参加した子どもたちの意識の高さがうかがえた。全問正解者には、村越会長より、表彰状と賞品が授与された。

 

池上さんちの家族会議

池上氏が父親役、憲法問題対策本部幹事の武井由起子会員(横浜)が母親役となり、3人の中学生も加わり、子どもたちや母親の質問に対して、父親が回答する形式で、憲法問題等について中学生に語りかけた。個別的自衛権と集団的自衛権の違いや集団的自衛権の問題点のほか、マスコミが行った世論調査のからくりなどについて、池上氏らしい分かりやすい解説で会場は盛り上がった。最後に、池上氏から、「意識してはいないけど、実は私たちは憲法に守られている、そのことを知ってほしい。今後も勉強を続けてください」と子どもたちに向けてメッセージを送った。

 

セミナー修了後

参加した子ども全員に、修了証が授与された。セミナーに参加した中学2年の生徒は、「個別的自衛権と集団的自衛権の違いがよく分かり良かった。また参加したい」と述べるなど、充実したセミナーとなった。

 

ひまわり求人求職ナビ
68期の求人情報のご登録を!

「ひまわり求人求職ナビ」では、68期司法修習予定者(来年12月修習終了)に対する求人情報の登録を受け付けています。

新人弁護士の採用を予定されている場合には、ぜひとも、日弁連ホームページの「ひまわり求人求職ナビ」をご活用ください。

【お問い合わせ先】 業務部業務第三課
  TEL:03―3580―9337

 

ひまわり

日弁連では本年2月に法律サービス展開本部を設置し、その下に自治体等連携センター・ひまわりキャリアサポートセンター・国際業務推進センターを置いた。社会状況の変化による法的ニーズ拡大の兆しを正面から受け止めた取り組みである▼他方、そのようなニーズは存在しない、弁護士の増加は濫訴社会を招くという意見がある。国柄を理由とした否定的な意見もある▼歴史的にみると江戸享保のころの訴訟件数は3万6000件もあり、幕府は金公事については話し合いで解決せよという「相対済令」を将軍吉宗のときに発している。明治8年の民事訴訟新受件数が32万件、明治16年は24万件、勧解(調停の前身)が109万件あったという。当時の人口は3700万人である▼このような需要があったにもかかわらず、富国強兵、産業振興、戦争遂行、戦後復興、高度経済成長という国策のなかで国(行政)がリードするので、その邪魔になる司法は人的物的に小さな方が良いとされてきた▼わが国は、これまでに経験したことがない社会に直面している。超高齢社会、経済のグローバル化、SNSに見られる新しいコミュニティの出現等は、われわれ弁護士にも新たな活動領域でのリーガルサービスを求めているのではないだろうか。(K・H)

 

第8回高校生模擬裁判選手権
8月2日 東京・大阪・金沢・徳島

今年で第8回を迎えた高校生模擬裁判選手権を全国四都市(参加校合計22校)で開催した。抽選による対戦校の決定、選手宣誓に引き続き、課題事案をめぐって、午前・午後で検察側・弁護側と立場を替え、1校が2試合ずつ行った。熱戦の末、関東大会(東京)では湘南白百合学園高校、関西大会(大阪)では同志社香里高校、中部・北陸大会(金沢)では福井県立大野高校、四国大会(徳島)では愛光高校がそれぞれ優勝した。本稿では、関東大会の模様を紹介する。

 

検察官・弁護人を熱演

今年の課題事案はいわゆる「オレオレ詐欺」で、故意が認められるかが争点であった。

生徒たちは模造紙等を用いて独自の資料を準備し、分かりやすく、かつ説得的な主張を行い、検察官・弁護人を熱演した。各校とも、被告人が被害者から現金を受け取った際の言動や、被告人と共犯者とのやりとりといった重要な部分に着目し、非常によく練られた主張・立証を展開していた。

関東大会の講評では、石川貴司判事(東京地裁)が、「証拠に基づいて裁判をやるんだという意識で試合に臨んでくれた。審査員に伝えようという視点を持って取り組んでいた」と感想を述べ、永野麻衣氏(NHK社会部記者)からは、「あらかじめ準備していた質問をそのまま読み上げるのではなく、その場の状況によって臨機応変に組み替えていく柔軟な対応に驚いた」と感嘆の声が上がった。

 

事実を多面的に見ることの重要性を実感

模擬裁判を終えた生徒からは、「準備は大変だったけど、やりきって大きな達成感を味わうことができた。また来年も参加したい」、「立場が変わると、同じ事件でもストーリーが全く異なってくる。1つの事実をいろいろな見方で解釈する難しさ、楽しさを実感できた」、「すごく面白かった。将来司法に関わる仕事をしたいと思った」といった感想が寄せられた。

(市民のための法教育委員会委員 加藤 潤)


 

熱戦を繰り広げた高校生たち

 

裁判員裁判法廷技術研修
8月13日~15日弁護士会館

日弁連は、裁判員制度施行前から、1~2日間の法廷技術研修を全国で数多く実施してきた。 その経験の蓄積を踏まえ、昨年度から、従来のカリキュラムを全面的に見直し、徹底した実技演習の反復により、法廷技術を効果的に修得する3日間の本格研修を開始した。今年度は、全課程を受講した55人が修了証を手にした。

 

書画カメラを利用した尋問を行った

正当防衛の成否が争点となる事件を題材として利用した。受講生は、あらかじめ記録を検討し、冒頭陳述、主尋問、反対尋問、最終弁論を用意して、研修に臨む。

研修では、法廷技術についての講義を受けた後、1人ずつ実演する。法廷技術小委員会の高野隆委員長ほか21人の講師が7つの教室を満遍なく指導した。講師は、すべての受講生の実演について、その内容に応じた講評を行い、その中で必ず自ら実演してみせる。さらに、受講生の実演は、すべてビデオ録画し、自分の声や、立ち居振る舞いを見ることができる。これは、アメリカの法廷技術研究所(NITA)に学んだ方式を取り入れた研修であり、コンセプトは、ラーニングバイドゥーイング、つまり、「身体で覚える」である。

この研修で力を入れたことの1つは、反復繰り返しである。主尋問・反対尋問について、総復習の時間を設け、さらに、3日目には交互尋問を実施した。交互尋問では、証人3人と被告人への主尋問・反対尋問を行う。それまでに見た講師の実演例や、他の受講生の実演を参考に、研修開始直後は不安げだった受講生も、迫力ある尋問を披露した。

また、パナソニックシステムネットワークス㈱の協力により、ペンタブレットと書画カメラを用意し、法廷に近い環境を提供した。

なお、この研修で行った講義、講師の実演例は、eラーニングコンテンツとして提供予定である。また、次回の研修は、12月4日から6日まで、大阪で行う予定である。ご利用いただければ幸いである。

(日弁連刑事弁護センター事務局次長 松山 馨)


 

第2回被災自治体
任期付職員との意見交換会
6月21日岩手弁護士会館

日弁連では、東日本大震災で被害を受けた自治体の復興支援として、東北の被災自治体が弁護士を任期付職員として採用する機会の拡大に取り組み、赴任した任期付職員に対するさまざまな支援を継続している。一方、被災地で任期付職員として活動する会員らは、これまであまりなじみのない新たな問題に多々直面し、日々孤軍奮闘している状況にある。 そこで、被災自治体に赴任した任期付職員に対する支援の一環として、意見交換会を開催した。

 

各地の取り組み・状況についての報告

各参加者から、自己紹介と、各赴任地での業務の内容や活動状況、課題などが報告された。

業務内容について、自治体内での相談や契約書のチェックのほか、内部での勉強会を主催している事例が多く報告されたのが印象的であった。

 

意見交換

次いで、任期付職員間の意見交換会を実施し、任期終了後の継続的な弁護士採用の可能性、住民からの法律相談に対する対応の仕方、任期付職員等同士のネットワークの作り方などに関して熱心な議論が交わされた。

 

活動の承継が課題

参加者から、残りの任期期間からすると、真剣に後任者探しを考えなければならないとの発言が相次いだ。継続して被災地の復興を支援していくためには、現在の任期付職員の活動を承継していくことが重要である。

一度、被災自治体の任期付職員への応募を検討してみてはいかがだろうか。

 

*被災自治体へ赴任中の会員ら
菊池優太元会員(岩手県)、永田毅浩会員(岩手県山田町)、大岩昇会員(宮城県)、野村裕会員(宮城県石巻市)、佐藤隆信会員(宮城県東松島市)、山本桂史会員(宮城県気仙沼市)、品川直人会員(宮城県富谷町)、頼金大輔会員(福島県)、井上航会員(福島県浪江町)、鈴木康太元会員(福島県郡山市)、高橋厚至郎会員(福島県相馬市)

 

日弁連短信
高校生模擬裁判選手権の審査員を務めて

谷次長

8月2日に開かれた高校生模擬裁判選手権で、裁判官、検察官、マスコミ関係者とともに審査員を務めた。参加校のレベルはいずれも高く、準備も綿密で、大変感心しながら審査に当たった。

今回の題材は、故意(知情性)に争いのある刑事事件で、次のような事案であった。被告人は、知人(逃亡中)と共謀して、被害者の長男をかたり、会社でミスをしたので、とりあえずお金を立て替える必要があると告げ、現金を交付させたとして、詐欺罪で起訴されたというものである。

被告人が被害者のもとに赴いて現金を受け取ったことに争いはないが、被害者と直接連絡を取ったのは知人であり、その知人から、請負代金の集金だと言われて受け取りに行ったもので、詐欺の事情は知らなかったと弁解している。

模擬裁判では、参加校は、検察官と弁護人の役を担って競う。各校、午前と午後の2回戦を戦い、検察官役と弁護人役とが攻守を替える。

これが本当の裁判であれば、尋問の結果が判決の内容を大きく左右するものとなるだろう。模擬裁判でも、主に採点の対象となったのは、尋問と論告・弁論の内容、方法、そして態度であった。高得点を得るには、記録を読み込み、尋問の獲得目標と視点を定め、尋問事項を考えるといった事前の準備がものを言う。

その点では、支援弁護士や指導教員の指導もあって、すべての学校が綿密に準備を行っており、尋問も本物の検事や弁護士と見まごうものであった。なかには、反対尋問でややあいまいになった点を、再主尋問で固めるという場面もあり、アドリブでのこのような対応には感心した。

参加した高校生は、この模擬裁判を通じて、証拠や事実関係を基に尋問や主張を組み立てていくことの奥深さや楽しさを感じとったものと思う。参加者のなかには、将来弁護士を志す人も出てくるだろうし、ぜひ多くの人が弁護士の道を目指してほしいと思う。

しかし、そのような若い人たちを見ていて思うのは、昨今の法曹養成の実情を知ったとき、弁護士になることが魅力ある選択と映るであろうかということである。志ある多くの若い人が弁護士という職業を目指そうとするとき、安心して進路の選択ができるよう、法曹養成制度の改革が急務であることをあらためて考えざるを得なかった。

(事務次長 谷 英樹)


 

共謀罪創設反対を求める市民学習会
7月31日弁護士会館

政府が、共謀罪創設を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案の提出を検討し始めたことが報じられている。日弁連は同法案反対の意見を表明し、共謀罪法案対策本部を設置するなど反対運動に力を注いでいる。今回の学習会は共謀罪創設が必要な理由とされている、国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(以下、「TOC条約」という)との関係や、共謀罪の刑事法上の問題点をテーマとしたもので、多くの市民が参加した。

 

刑事法上の問題点

多くの参加者で会場は熱気につつまれた

冒頭、村越会長の挨拶に引き続き行われた講演の中で、松宮孝明教授(立命館大学大学院法務研究科長)は、「わが国の刑事法で、共謀だけを犯罪とするのは、極めて限られた重大な犯罪において例外的にしか認められていない。これを600以上の犯罪で立法するのは、わが国の刑事法の基本原則と矛盾する」と共謀罪法案の問題点を端的に指摘した。

さらに、政府が諸外国と協調してテロ対策に当たる必要性が立法理由の一つとされていることについて、TOC条約はテロ対策防止を目的とした条約ではなく、対マフィアを念頭においた薬物や銃器、国際的な経済犯罪に対応するための条約であり、理由とはなり得ないと具体的に批判した。

 

条約批准のための共謀罪創設は不要

共謀罪創設に賛同する立場は、TOC条約批准のために共謀罪創設が必要だとしている。この点について、元法務大臣の平岡秀夫会員(共謀罪法案対策本部委員)は、他国のように、留保条項に基づく留保(条約全体に同意するが特定の規定を排除等する宣告)という方法や、条約の締結に当たり、特定の条文についての解釈を対外的に明らかにする解釈宣言という方法を選択すれば、現行法のままでもTOC条約を批准することは可能だと言及した。

さらに、仮にそれにより国際的な批判を受けるのであれば、個別立法で検討すれば足りるのであって600以上の犯罪で立法する必要はないと厳しく指摘した。

会場からも、立法事実がないこと、絶対に立法させてはならないことを指摘する声が上がり盛況なうちに閉幕した。

 

第2回死刑事件弁護セミナー
~日米の弁護実践例から学ぶ~
8月18日大阪弁護士会館
8月20日・21日弁護士会館(東京)

死刑求刑事件において効果的な弁護を行い、死刑を回避するためには、通常の活動とは質的に異なる特別な弁護活動が求められる。
本セミナーは昨年8月に続き、「死刑事件弁護」が刑事弁護の重要な一分野として確立しているアメリカ合衆国から、死刑事件弁護の専門家を招いて、アメリカにおける具体的な弁護実践例に学ぶと同時に、東京で行われたセミナーでは、日本の死刑事件弁護実践例から、アメリカの専門家とともに最善の弁護活動を追究した。

 

本セミナーは、ロンドンに本部を置く非営利組織インターナショナル・ジャスティス・プロジェクト(IJP)の共催を得て開催された。

講師はIJPから派遣された3人のアメリカ人が務めた。アメリカ法曹協会死刑事件弁護プロジェクトのディレクターであるロビン・マー氏、ミズーリ大学カンザスシティ校のショーン・オブライエン教授、連邦プログラムに基づくビクテム・リエゾン(死刑弁護団と被害者遺族との連絡役)を務めるミケル・ブラナム氏である。ブラナム氏は修復司法の第一人者でもあり、著名なケースワーカーとして知られる。

本セミナーでは、まずマー氏からアメリカ法曹協会が定める死刑事件弁護のガイドラインの説明が行われた。なかでも弁護チームに「減軽証拠」(道徳性・有責性の程度に関するあらゆる証拠)を探求する「減軽スペシャリスト」を加えることの重要性が説かれた。続けて講壇に立ったオブライエン教授もこの点を強調し、同氏からは第一審において減軽スペシャリストが付いていなかったために不適切・不十分な弁護が行われた事例が報告された。最後に、ブラナム氏から、DIVO(死刑弁護団と被害者とのアウトリーチ)の紹介が行われた。

減軽スペシャリストという概念はとても興味深い。被告人の成育歴・生活歴を洗い出し、精神状態まで言及するその姿は、強いていえば死刑事件における家裁調査官といったところであろうか。日本においても今後、減軽スペシャリストの在り方・活用方法が研究、検討されるべきであろう。

(日弁連刑事弁護センター事務局次長 丸山和大)


 

全国消費者問題委員会委員長会議
7月31日弁護士会館

消費者問題に取り組んでいる各弁護士会と日弁連消費者問題対策委員会との情報・意見交換や交流を促進するため、毎年開催している本会議を今年も開催し、全国の弁護士会の消費者問題委員会等から委員長らが参加した。

 

今回は、①消費者教育推進法に基づく各自治体における消費者教育推進協議会の設置・実施状況、②高齢者の消費者被害防止のための見守りネットワークの実施状況、③地方消費者行政に関する取り組み状況、④各地における公益通報窓口の設置・運用状況、⑤スマートフォン等、電気通信サービスをめぐる消費者問題の検討状況、⑥消費者契約法実体法改正の検討状況と改正に向けた立法事実収集、⑦適格消費者団体の設置に向けた各地の検討状況、⑧民法改正に関する法制審議会の審議状況と今後の予定の各テーマについて、各弁護士会へのアンケート等の調査結果に基づき、日弁連消費者問題対策委員会の担当部会から報告がなされ、各弁護士会の委員長から質疑がなされた。

このうち前記①、②、④、⑦では、講師派遣要請があれば日弁連から各弁護士会に講師の派遣が可能であるとの説明がなされ、早速これに興味を示す委員長の姿が散見された。

また、当日の議題にはなかったものの、新たに出てきた⑨カジノ解禁の問題、⑩商品先物の不招請勧誘問題といった立法に関するテーマについても、日弁連から現状報告を行うとともに各弁護士会への協力の依頼を行った。

立法のスピードが速くなっている消費者問題への対応のため、日弁連と各弁護士会が協力して取り組むことの重要性を再認識した機会であった。

(消費者問題対策委員会副委員長 岡田 崇)


 

国際機関人事情報セミナー
法曹も国際機関で働こう!
6月30日弁護士会館

日弁連は、国際分野に関心を持つ法曹界の人材を増やし、その人材を国際機関で活かすことの重要性を踏まえ、国際機関における弁護士の任用促進、養成支援活動に力を注いでいる。その一環として、国際機関で働く意欲のある会員を支援するため、人事情報セミナーを開催した。

 

国際機関の勤務実態

外務省総合外交政策局国際機関人事センターの佐藤雅俊室長から、国際機関で働く日本人職員の実態が報告された。日本人職員の数はここ10年程で1.5倍に増加しているものの、さらなる増加が期待されている。職員の最終学歴は59.7%が修士課程修了、業務上使用する言語は64.6%が英語のみとなっている。また、仕事を満足だと感じている者は89.2%に上る。ワークライフバランスを重視した働き方を選択できるのも国際機関の特長の1つであり、フレックスや在宅勤務など、さまざまな仕組みがあることも紹介された。

 

実際に働くには

公募に応募する方法以外に、外務省のJPO派遣制度(若手職員を国際機関に送り込むために実施する制度)が幅広く利用されており、最近の応募倍率は10倍程度となっている。求められるスキルとしては、語学力の他に、好奇心や異質な文化への柔軟性、バランス感覚や人間としての魅力などが挙げられた。

 

JPO派遣のメリット

ILOでの執務経験がある大村恵実国際室室長から、自身の経験談と、JPO派遣のメリットが披露された。

JPO派遣制度に対する国際機関の信頼度は非常に厚く、さまざまな研修の機会が与えられるとともに、各国のJPO同士のネットワークに参加できる。さらに日本政府からさまざまな支援を受けることが可能で、実際、国際機関で働く契機としてこの制度を利用した日本人職員も多いとのことである。質疑応答では、法科大学院修了時に与えられる学位の扱いが質問され、JPO派遣制度については修士課程修了者として扱っていると回答された。

 

IBA東京大会・連続セミナー第2回
国際法律実務の新たな展開
7月25日弁護士会館

10月に迫ったIBA東京大会に向け、同大会のセッションテーマとして取り上げられる予定の国際競争法、ハーグ条約および知的財産を題材に第2回セミナーを開催した。

 

国境の向こうを見据える

企業活動のボーダーレス化に伴い、日本の会社も国際的な法規制を意識せざるを得なくなった。ブリヂストンは米司法省から米独占禁止法違反で4億2500万ドルもの罰金を科された。矢吹公敏会員(元IBA独禁法委員会オフィサー)は、「ビジネスの国際化が競争法の国際化につながった」として、競争法の世界標準化の背景を説明した。会社の合併においても、国をまたいで行われれば、それぞれの国の手続を踏まないと、合併プロセス全体がストップしかねない。IBAではそんな場合の規制クリアについてもセッションが開かれるそうだ。また、知的財産も早くから国際化の影響を受けている分野だが、小野寺良文会員(IBA東京大会知的財産セッション共同議長)によれば、日本を含め世界各国から知的財産分野の第一人者がIBAでのセッションにスピーカーとして登壇する予定とのことだ。

 

家族法にも国際化の波

国際家族法学会にも籍を置く大谷美紀子会員(IBA Woman Lawyers Interest Group共同議長)は、家事事件を「弁護士なら誰でもできる」と考える風潮に疑問を投げかけた。日本で生活する外国人や外国で生活する日本人が増えれば、国際結婚、国際離婚、渉外相続の案件は自然と増えていく。「これからの弁護士には国際家族法の素養や外国法を意識しながら日本法を正しく伝える知識やコミュニケーションスキルが問われる」と大谷会員は述べた。

自分の専門分野の国際化の流れを押さえ、他国の専門家と知り合うのにIBAは格好の場所だ。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

*IBA東京大会の詳細等はIBAのホームページをご覧ください(http://www.ibanet.org/Conferences/Tokyo2014.aspx)。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.92

知って得する会員サービス

日弁連では、会員の皆さんの業務活動に資するよう、さまざまな会員サービスに取り組んでいます。
今回は、こうした会員サービスをご紹介します。ぜひご活用ください!
(広報室嘱託 白木麗弥)


 

 

会員専用ページ
会員専用ページをご活用ください!

日弁連ホームページの会員専用ページでは、「会務情報」で会務報告や理事会報告、日弁連の重要課題について最新の動きを掲載しています。

また、「届出・手続」では住所や氏名変更等、弁護士登録に係る各種変更手続や証明書発行申請手続等を確認したり、これらの手続に必要な書式を取得したりすることができ、便利です。

このほかにも、「書式・マニュアル」や「出版物・報告書」等、業務に役立つ情報が満載です。

*会員専用ページをご利用いただくには、ID・パスワードの登録が必要です(ID・パスワードはご自分で設定することができ、利便性が向上しました)。

 

新企画「若手会員の皆さんへ」

この度、日弁連では前記会員専用ページ内に「若手会員の皆さんへ」というコーナーを新たに作成しました。

この中の「研修・チューター制度」では、研修パスポートの無償・割引制度や法科大学院の弁護士対象講座の案内、即時・早期独立会員向けのチューター弁護士制度の案内を掲載しており、「国際関係」では、ロースクール推薦留学制度の案内を、「就業・開業支援」では開業支援情報受付窓口の案内、独立開業マニュアル等をご覧いただけます。

さらに「業務に役立つ情報」では、「弁護士照会・職務上請求」「民事関係」「刑事関係」「法律援助事業関係」等といった分野ごとに書式・マニュアルをまとめており、若手会員のみならず、すべての会員にとって便利なページです。

 

総合研修サイト

会員専用ページ内の総合研修サイトも昨年大幅にリニューアルしました。本紙の本年1月号でも既にご紹介しましたが、パソコン利用の場合には、動画の再生速度が最大2倍まで変速できるようになり、より効率的に受講できるようになったほか、iPhoneやiPadでも動画視聴が可能になりました。

掲載コンテンツは、過去に実施されたライブ実務研修やeラーニングだけでなく、最先端の実務を学べる新作講座を毎年制作しており、現在約250講座を提供しています。

また、渉外業務に役立つ実践英会話講座「English For Lawyers」や、「破産」「労働」「交通事故」等のテーマでより体系的な学習を目的とした連続講座も続々公開中です。

なお、研修パスポートを購入すると、1年間定額で利用できます(登録2年目までの会員は無料、登録3年目から5年目までの会員は5000円、登録6年目以降の会員は1万円です。申し込み方法等、詳細は総合研修サイトをご確認ください)。

 

育児期間中の会費免除について
15階会員ラウンジ(上)と会員執務室

これまでも出産に伴う会費免除制度がありましたが、2013年12月の臨時総会で育児期間中の会費免除に関する会則等の改正および規程の新規制定が承認され、育児期間中も子が2歳に達する月までの間における任意の連続する6か月以内の期間について会費の免除を受けることができるようになります(本制度の施行は、規程成立の日から起算して2年を超えない範囲内において理事会で定める日とされており、現在は未施行ですが、理事会で施行日が決まりましたらお知らせします)。

業務時間の確保が難しい育児期間中の経済的な負担を少しでも軽減しようという制度です。

 

弁護士会館の会員向け設備等

弁護士会館2階講堂クレオ、4階から10階、14階から17階のほとんどのエリアで無線LANが利用できます。初めて利用する際は、設定が必要ですので、14階の情報システム・施設管理課にパソコンを持参の上、お申し込みください。

15階には、会員ラウンジと会員執務室があり、1枚10円で利用できるコピー機もあります(FAXは20円)。いずれも、利用時間は原則平日の午前9時30分から午後5時までです。執務室を利用する際は、15階受付でお申し込みください。ラウンジには、飲み物や軽食の自販機があります。裁判期日の合間に利用してみてはいかがでしょうか。 

17階には、無料で利用できるコイン式ロッカーがあります(使用後コインが戻ります。ご利用は当日限り)。また、多目的トイレが新設されましたので、どうぞご利用ください。

 

日弁連委員会めぐり 67

国選弁護本部

今回の委員会めぐりは国選弁護本部です。

刑事事件の多くは国選弁護事件であり、その運用や報酬の適正化は、会員にとっての関心事です。先の法制審議会・新時代の刑事司法制度特別部会の取りまとめを踏まえた動きも含めて、前田裕司副本部長(東京)と安武雄一郎事務局長(福岡県)にお話を伺いました。

(広報室嘱託 小口幸人)

国選弁護本部の成り立ちを教えてください

前田副本部長(左)と安武事務局長

(安武) 国選弁護本部のもともとの母体は、日弁連刑事弁護センターの当番・国選小委員会です。被疑者国選弁護制度の拡充、制度運用の検証・提言、すべての身体拘束事件を対象とする国費による公的弁護制度の実現を目的として、理事会内本部として発足しました。

 

特に力を注いでいる活動について教えてください

(前田) 最重要課題は、被疑者国選弁護制度の拡大に向けた働きかけと体制づくりです。

先の法制審特別部会の取りまとめにより、近い将来、被疑者国選事件の対象が全勾留事件(いわゆる第三段階)にまで拡大される見通しとなりました。

この間の各弁護士会の努力のおかげで、第三段階実現のための体制づくりは一定のめどが立っておりますが、いわゆる第四段階(逮捕段階における国費による公的弁護制度)の実現に向けた体制づくりに力を注いでおり、昨年は全国キャラバンも実施しました。

今回の法制審特別部会では、弁護人選任権を告知する際の教示事項の拡充にも言及されましたので、これによる当番弁護件数の増加を足がかりとして、第四段階実施の必要性を訴えていきたいと考えています。

(安武) また、国選弁護報酬の適正化にも力を入れて取り組んでいます。国選報酬基準の不備や運用に関して本部に寄せられた問題点を検討し、法テラスと定期的な意見交換を重ね、報酬基準の改訂につなげるという活動は極めて重要です。今後もより適正な報酬基準を実現できるよう力を注いでいきます。

 

会員へのメッセージをどうぞ

(前田) 第四段階実現のためには、1回限りの接見ではなく、逮捕段階からの継続した接見を実現するための体制づくりが必要不可欠です。全国さまざまな現状がある中で難しい部分もあると思いますが、身体拘束を伴う全事件で適切な弁護活動を実現するため、今後ともさらなるご協力をお願いします。

 

ブックセンターベストセラー
(2014年5月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書名 著者名・編者名 出版社名
1 クレジット・サラ金処理の手引[5訂版補訂] 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編著 LABO
2 企業労働法実務入門 ―はじめての人事労務担当者からエキスパートへ 企業人事労務研究会 著 日本リーダーズ協会
3 実践 訴訟戦術 ―弁護士はみんな悩んでいる― 東京弁護士会春秋会 編 民事法研究会
4 無罪請負人 ―刑事弁護とは何か?[角川oneテーマ21 D―18] 弘中 惇一郎 著 角川書店
企業のための契約条項有利変更の手引 植松 勉 編著 新日本法規出版
6 新基本法コンメンタール 借地借家法 借地非訟事件手続に関する法改正に対応[別冊法学セミナーNo.230] 田山輝明・澤野順彦・野澤正充 編 日本評論社
実践 契約書チェックマニュアル[改訂2版]現代産業選書 飛翔法律事務所 (編) 経済産業調査会
8 絶望の裁判所[講談社現代新書] 瀬木 比呂志 著 講談社
9 判例からみた 遺留分減殺請求の法務・税務・登記 永石一郎 著 中央経済社
ライブ争点整理 林 道晴・太田秀哉 編 有斐閣

編集後記

1年に数件程度しか刑事事件を受任しないでいると、時折実務が変わっていて、書式を見るために日弁連ホームページの会員専用ページを開く機会がある。
刑事事件に限らず、法改正や新たな分野の広がりによって、弁護士の業務内容も日々変化し、新しい視点が要求されることもある。
たとえば、弁護士なら誰でも家事事件ができる、という一昔前なら聞いたような話も国際化、家族の在り方の多様化を考えれば、もはや通用しない。本号3面に掲載したIBAセミナーの取材で、国際競争法・家族法・知的財産法のグローバル化の話を聞きながら、そういう思いにとらわれた。
忙しさに負け、その時必要なことだけを吐き出す繰り返しなら、当然仕事の質は落ちる。中堅もベテランも同じだ。
そういった意味では、業務に役立つ最新情報を取りまとめた会員専用ページの「若手会員の皆さんへ」は会員全員にとって必要な情報だとあらためて思い、ペンを置いた。(R・S)