日弁連新聞 第469号

「弁護士の一連の不祥事に関する理事会決議」を採択
「預り金の取扱いに関する規程案」を意見照会

1月18日の理事会において、標記決議を全会一致で採択した。昨年秋以降、複数の弁護士会で、預り金の横領などの不祥事が相次いで発覚するなか、日弁連は、これらの不祥事は弁護士、弁護士会に対する市民の信頼を根底から揺るがすものとして、プロジェクトチームを編成して対応を検討してきた。

 

本決議は、一連の事件に対する厳正な処置と原因究明を徹底するとともに、その結果を踏まえ、再発防止に全力を尽くす旨を宣明するもの。併せて、再発防止策の一環として、全国で統一的な預り金に関する規律を定める会規を制定することが必要として、「預り金の取扱いに関する規程案」を全国の弁護士会、関連委員会等に意見照会した。 規程案は、預り金口座の出入金の状況を記録することを会員に義務づけた上、特定の会員に対する弁護士会への苦情が重なるなど「相当の理由」があるときに弁護士会が当該会員に対する調査権を有すること、会員の回答義務を課すことなどを内容としている。日弁連としては、意見照会の結果を踏まえ、規程案についてさらに議論し、成案を本年五月の定期総会に付議する方向で検討している。

 

弁護士の一連の不祥事に関する理事会決議
2013年1月18日
日本弁護士連合会





弁護士は基本的人権の擁護と社会正義の実現をその使命とし(弁護士法1条)、高度な専門知識と職業倫理に対する市民の信頼を基礎としてその職務を遂行しています。
しかるに、昨年秋以降、福岡県弁護士会所属元弁護士が依頼者からの預り金等の名目で多額の金員を詐取等して詐欺罪と業務上横領罪にて懲役14年の実刑判決を受けた事件のほか、複数の弁護士会で弁護士が後見人や後見監督人の立場を利用して金員を詐取または横領するなどの不祥事が相次いで発覚しています。かかる事態は、単に当該弁護士個人の問題であるだけでなく、弁護士、弁護士会に対する市民の信頼を根底から揺るがすものです。
福岡県弁護士会元弁護士への調査は、同会に設置された調査チームにより進められており、まもなくその調査結果が出されます。その他の各地で発覚したものについても、既に各弁護士会において懲戒処分等の手続が進められており、その過程で原因が追究されています。
当連合会は、一連の事件に対する厳正な処置と原因究明を徹底します。また、原因究明の結果を踏まえ、今後弁護士がこのような不祥事を起こさないための再発防止に全力を尽くします。この点では、全国の弁護士に対してより一層の綱紀粛正と倫理の確立を求めるほか、預り金管理の方法、市民窓口との連携、さらに弁護士会の所属弁護士に対する指導監督のあり方などを含む改善・改革の方策について、当連合会内にプロジェクトチームを編成して検討しており、同チームの答申を得て直ちに不祥事発生防止策を実行に移します。
当連合会は、不祥事の根絶のために最善を尽くす決意であることをあらためて宣明します。

 

第12回国選弁護シンポジウム
~全ての被疑者に弁護人を~
12月14日・岡山市

500人近い参加者が集い、早期の対象拡大に向け議論した被疑者国選弁護制度の実施(第一段階)から6年、いわゆる必要的弁護事件全件への拡大(第二段階)から3年半が経過した。本シンポジウムでは、これまでの実績および国選弁護人の対応態勢を検証の上、全勾留事件への対象拡大(第三段階)、さらに逮捕段階からの国選弁護導入(第四段階)、また身体拘束からの早期解放のための新制度を検討した。
(委員会ニュース8面「国選本部ニュース」に詳細記事)

 

第三段階への対応態勢は整っている

第一部では、第三段階への対応態勢についての報告があった。全勾留事件への対象拡大により弁護士一人あたりの想定担当件数が年間15件を超える地域にあっても、法テラススタッフ弁護士の配置や本庁からの応援などにより対応可能であること、いわゆる必要的弁護事件でなくても早期の弁護人選任が必要な事案が多いことなどが確認された。

 

「勾留再審査制度」の導入を提案

第二部では、身体拘束からの早期解放に関連して、韓国調査の結果が報告された。韓国では「拘束適否審査制度」という不服申立制度があり、審査請求による釈放率は約35%と高く、実質的に起訴前保釈の機能を果たしているという。韓国調査を踏まえ、日本でも勾留の適否を当事者立会いのもと公開法廷で審理する「勾留再審査制度」を導入することが提案された。

 

第四段階の日弁連試案を早急に

第三部では、逮捕段階での公的弁護を法律扶助でまかなうイギリスの制度、被疑者の請求によらない国選弁護制度を構築したドイツの制度を参考に、第四段階の制度構築について議論した。当番弁護士の発展形である「国費による当番弁護士制度」(イギリスに近い)と、弁護活動に制限のない「被疑者国選前倒し型」(ドイツに近い)が示され、折衷的な制度も含め早期に日弁連の統一的試案をまとめる必要があるとされた。

 

給費制市民集会 ~周防監督が問う「法律家の育て方」
12月21日 弁護士会館

「法曹養成の理念」を伝えるべきと語る周防監督本市民集会では、給費制復活を含めた司法修習生の経済的支援を考えるにあたり、映画監督の周防正行氏を招き「法律家の育て方」をテーマにトークセッションを行った。周防監督からは、新しい視点が次々と提示され、充実した議論が行われた。

 

理解される下地を作ろう

「市民のために自分を犠牲にできる人こそが真のエリート。法曹には真のエリートであってほしい」。周防監督はこのような法曹像を語った。
「貸与制についてメッセージを送っても関心を持ってもらえないこともある」という小竹克明会員(新65期・東京)に対し、監督は頷きつつも、「国民にメッセージを理解してもらう下地がないのでは」と、司法修習の意義や実情を広く知らせることの必要性を指摘した。
さらに、修習先は自分で選べず、遠隔地手当はなし、収入がないから自分でアパートを借りられない人もいるという現状を聞き、周防監督は「職業欄に何を書けばいいのか。せめて身分保障ぐらいしてほしいよね」と、驚きを露わにした。

 

あるべき理念に戻ろう

児島貴子会員(司法修習費用給費制存続緊急対策本部事務局委員、64期)の報告によれば、65期の終了者のうち、2012年12月の一括登録時点で、任官者を除く弁護士未登録者は540人余り。1月に登録予定の会員の数を差し引いてもおよそ360人が登録を控えることになる。
市丸信敏日弁連副会長は「市民の権利を守るには、弁護士が検察官や裁判官と同等の能力を持ち対等に戦う必要があるという理念から、法曹三者が同じ教育を受ける養成方法が確立され、給費制ができた」と給費制導入の経緯を説明した。
最後に、周防監督は、「なぜ税金を法曹養成に使うべきなのか、養成の理念を伝えることが理解の近道ではないか」と語った。

 

ひまわり

年末年始に録り溜めていたビデオで、アメリカの法律事務所や韓国の犯罪捜査を描いたドラマを見た。アメリカの弁護士の厳しい競争事情やダイナミックな活動スタイルにはいろいろな意味で驚くばかりだが、韓国の方はずっと日本の刑事ドラマに近く親しみが持てる。ただ、両者共にごく日常的な取調べ風景として録画機器が置かれているのは、日本とは全く異なる▼現在、法制審の特別部会で取調べの在り方をめぐる議論が山場を迎えており、録音・録画の導入とその範囲が大きな争点となっている。しかし、公表された試案は、範囲を裁判員裁判対象事件(例外あり)に限定するとか、「取調官の裁量に委ねる」という不十分なものだ。大阪地検特捜部の証拠改ざん事件やPC遠隔操作事件で捜査の在り方が問われているのに、なぜまだこんな議論をしているのか、全く不思議である▼もっとも、可視化が実現されればすべてバラ色というわけではない。ドラマの中では、長時間のビデオを多数の弁護士が苦労して分析していた。また、迫真の自白映像は検察側の有利な証拠となりうる▼つまり、今までよりも高い刑事弁護の質が求められるということだ。しかし、そのことも含め、可視化は被疑者被告人の権利を飛躍させる大きな一歩となる。(K・N)

 

第7回 法曹養成制度検討会議
予備試験等について意見交換

1月23日に開催された第7回法曹養成制度検討会議では、司法試験予備試験と司法修習の在り方について意見交換を行った。

 

予備試験の制度趣旨と現状の乖離

予備試験制度が設けられた趣旨は、経済的事情や実社会での十分な経験を理由に法科大学院を経由しない者にも司法試験受験資格を与えるというものである(司法制度改革審議会意見書)。しかし、2回実施された予備試験の合格者は大学生または法科大学院在学生が多数を占めており、法科大学院と両にらみの「特急コース」になっている点が問題となった。こうした制度趣旨と乖離した現状に対し、一部の委員からは法科大学院教育に悪影響を与えているとして年齢制限等の受験資格制限が提案され、さらには将来的には予備試験を廃止すべきとの意見も述べられた。 しかし、多くの委員は制度が始まって間もない現状での改革には消極的であり、また、司法試験受験の機会を拡大する観点から予備試験を評価する意見もあった。制度趣旨を踏まえた運用について継続検討していく方向で議論を終えた。

 

司法修習の在り方

次に、司法修習の在り方については、最高裁から新司法修習の概要と現状につき説明がなされ、これを受けて一部委員から「司法修習はおおむね問題なく推移している」との意見が出た。 これに対し他の委員からは、「選択型修習で地方自治体のプログラムを強化すべきである」、「傍聴ではなく実務に直接携わらせるべきである」等の要望が出されたほか、「修習期間が短縮されて手薄になっている」、「前期修習を復活すべきである」等の意見も出されたが、いずれも制度改善に結びつく具体的議論にはならず、法科大学院教育との連携を継続的に努力することを確認して議論を終えた。
(事務次長 中西一裕)

 

 

第36回市民会議
1月21日 弁護士会館

さらなる男女共同参画の取り組みを

日弁連は、2008年3月に策定した男女共同参画推進基本計画等に基づき、政策・方針決定過程への女性会員の参画拡大等に取り組んでいる。この間、女性委員ゼロの委員会は減少し、育児期間中の会費免除規定を制定する弁護士会が増加するなど制度の枠組みはできつつあるが、理事等役員に占める女性の割合はいまだ低いなど、十分な改善が見られない部分もあるとの報告があった。
これに対し、各委員から、「男女共同参画の問題は日本政府においても深刻な問題であり、日弁連も司法におけるジェンダーバイアスについてもっと声を上げるべき」、「やはり数値目標を立てないと進まないのではないか」、「そもそも初等教育における法教育などを通じ法曹を志望する女性の比率を上げる努力を」、「男性弁護士を頼りがちな利用者の意識に働きかける必要もある」などの意見が出された。

 

司法試験と予備試験の出題は適切か

冒頭、シンポジウム作業チームが2012年の司法試験の問題分析と予備試験の問題との比較について基調報告を行った。
司法試験論文式試験の分析のなかで、憲法は法科大学院教育に整合した適正な出題であると評価する一方、行政法は、受験者に問題点を発見させるのでなく設問中に誘導が見られるなど、法的思考力を問う出題として適切か疑問が呈された。
次に、予備試験の出題については、旧司法試験のように問題文が短く法律知識のみを問う傾向が見られ、法科大学院修了と同等程度のレベルとしては相応しくないとの指摘がなされた。

 

米国LSのカリキュラム改革について意見交換

続いて、ダニエル・フット委員から、米国ロースクールの現状について、カリキュラム改革や実際の成績評価試験などを踏まえた報告があった。近時は、実体法科目が減少傾向にある一方、実務的な設例に基づき解決方策を探るワークショップや、立法政策に関する科目が増加し、教員の実務経験も重視されている。このことは、企業や官庁等に進むことの多い学生の傾向に併せた改革であるという。
他の委員からは、「日本の法科大学院においても、より実務を意識したカリキュラムへの転換が検討されてよいのではないか」などの意見が出された。

 

司法試験と予備試験の在り方を議論

パネルディスカッションでは、司法試験や予備試験の出題について、松本恒雄教授(一橋大学)や中川丈久教授(神戸大学)が「旧試験への先祖返り現象が見られる」、「予備試験の水準は既修者認定試験に等しく、法科大学院修了よりも相当低い」との疑問を呈した。他方、森田憲右教授(筑波大学)からは「予備試験は基本的知識の理解を重視し、科目や論点を絞るべき」との異論が示された。
また、予備試験合格者の多くは学部生、法科大学院在学生であり、制度趣旨に反するばかりか、試験勉強のために法科大学院の授業を欠席するなどの弊害も生じていることが報告された。今後の方向として、予備試験の科目に展開先端科目を追加したり、受験資格や合格者数に何らかの制限を設けることなどの問題提起がなされた。

 

日弁連における男女共同参画の取り組み登録者数未登録者数
2007年4月20日
理事会
「日本弁護士連合会男女共同参画施策基本大綱」制定
2007年5月25日
第58回定期総会
「日本弁護士連合会における男女共同参画の実現をめざす決議」採択
2007年6月14日 「男女共同参画推進本部」設置
2008年3月13日理事会 「日本弁護士連合会男女共同参画推進基本計画」策定
2009年3月19日理事会 「公式企画の実施にあたり男女共同参画の観点等から留意すべき事項に関するガイドライン」承認
市民会議委員(2013年1月21日現在)
長見萬里野(全国消費者協会連合会会長)
北川正恭(議長・早稲田大学公共経営大学院教授)
清原慶子(三鷹市長)
古賀伸明(日本労働組合総連合会会長)
ダニエル・フット(東京大学大学院法学政治学研究科教授)
中川英彦(前京都大学大学院教授、駿河台大学法科大学院講師)
松永真理(株式会社バンダイ社外取締役)
湯浅 誠(反貧困ネットワーク事務局長)
豊 秀一(副議長・朝日新聞大阪本社社会部次長)
(以上、五十音順)

日弁連新聞モニターの声

日弁連新聞では、毎年4月に全国から71人の会員モニター(任期1年)をご推薦いただき、ご意見を紙面作りに活かしています。
本年度は、刑事司法改革、法曹養成制度改革などの議論が進んでおり、関連記事についての関心も高いので、議論状況も含め極力掲載することにしています。被災ローン減免制度、原発被害者支援、など震災関連の記事も関心が集まります。
4面の特集記事は広報室嘱託が総力を挙げて作成しています。4月号「更生保護施設『雲仙・虹』」、7月号「性犯罪被害者支援の現場から」、9月号「兵庫県明石市の意欲的な取り組み」、11月号「周防監督×山岸会長対談」などは特に人気がありました。
3面は主にシンポジウム等のイベント記事を掲載しています。毎号5~6のイベントを厳選して取り上げていますが、紙面の制約もあって「内容が薄い」「説明が足りない」などのご意見もいただきます。リード文でイベントの意義を簡潔に説明し、なるべく具体的な議論を紹介するなど工夫したいと思います。
取り上げるテーマが、ややもすると日弁連の政策関連情報に偏りがちなため、むしろ業務関連の記事にスペースを割くべきとのご意見をいただきます。広報室としても、会員のニーズに応えうる業務情報をいかに提供していくかが課題だと考えています。
レイアウトについては、縦組みと横組みを交えたり、囲み記事や写真を効果的に配置するよう毎号配慮しています。メール配信を求めるご意見もあり、個人的には、電子書籍のかたちで配信することも考えて良いと思っています。
(広報室長 生田康介)

 

日弁連短信

 

家事事件手続法施行に関する最高裁家庭局との協議について

本年1月1日から家事事件手続法が施行された。法律の内容については、「自由と正義」2013年1月号に法制審委員であった会員らによる充実した解説記事を掲載しているので、ぜひご一読いただきたい。

 

本稿では、昨年12月に行われた最高裁家庭局と日弁連(家事法制委員会委員等)の協議で論点となったいくつかの実務上の問題についてご紹介する。

 

同法のポイントの第一は、家事事件手続の透明化、当事者の手続保障の拡充である。その一つとして、調停および一部の審判について申立書の写しが相手方に送付されることとなった。昨年秋からの試行では、申立代理人が裁判所から「このまま送付してよいか」と問い合わせを受け、慌てて申立書の感情的な部分を削除するというやりとりがしばしばあったと聞く。施行後は原則送付されているので、十分な注意が必要である。

 

また、同法施行に伴い、庁によっては、各期日において当事者同席のもと手続説明を行うという調停運営がなされることとなった。しかし、DV事案はもちろん、当事者間の葛藤の強いケースでは、当事者に多大な負担をかけるのではないか等の懸念が指摘されている。最高裁からは、従前の調停が当事者の感情面に配慮するあまり、ともすれば対立点を明確にするのを避け、当事者から「何をやっているのか分からない」、「ブラックボックスになっている」と指摘される状況になっていたのを改善し、より納得性の高い調停運営をしていくための工夫であるとの説明があった。

 

具体的には、対立点や双方の言い分、次回までの検討事項や準備すべき資料等をきちんと整理して、当事者同席の場で説明が行われるが、最高裁によると、決して一律、硬直的な実施はせず、具体的な支障があったり、第一回から行うのが相当でない場合には柔軟に対応していくという。この点については、各地の実施状況等を見ながらさらに協議を重ねていくことを確認した。

 

その他にも、家庭裁判所作成の申立書式や電話会議・テレビ会議の運用、子どもの手続代理人等について協議を行った。最高裁家庭局との協議は今後も行っていく予定であり、適宜その内容をご紹介させていただく。

 

なお、同法に関する実務上の手引きとして、「家事事件手続法のポイント」「子どもの手続代理人マニュアル」を会員用ホームページに掲載しているので、そちらもご活用いただきたい。

(事務次長 菅沼友子)

 

韓国の死刑制度講演会  ~死刑を止めた国から~
12月11日 弁護士会館

韓国では政治のリーダーシップにより死刑が事実上廃止されたと語る朴教授韓国では死刑が執行されなくなってから15年が経過し、事実上の廃止国となっている。本講演会では、韓国の東国大学法学部から朴秉植(パク・ビョンシク)教授を招き、韓国の現状とその経緯についての有意義な話を聞くことができた。

 

事実上の死刑廃止国へ

1997年12月に23人に執行されて以来、韓国では死刑が執行されていない。独裁の歴史を持つ韓国では、それ以前は反政府活動を理由とする死刑執行が多かったと朴教授は語る。
その後、韓国は死刑制度が法律上は残されているものの、執行を行っていない。その背景の一つに、朴教授は憲法裁判所の存在を指摘する。ドイツの制度を取り入れた憲法裁判所では、1996年に死刑制度について違憲との意見を述べる裁判官が出始め、2010年には合憲五、違憲四と拮抗し、大法院長を含む法曹界も堂々と廃止を望む意見を明らかにした。
大統領直轄の機関である国家人権委員会も、死刑廃止を勧告し、政治的なリーダーシップが発揮された。

 

被害者からの死刑廃止の動き

「死刑廃止について一番考慮しなければならないのはやはり被害者感情だ」と朴教授は指摘する。韓国では死刑廃止論者が被害者保護に取り組み、宗教界を巻き込んだ活発な活動が行われているという。
被害者の会「ヘミル」の高貞元氏も母親と妻と一人息子を殺人事件で失った被害者だが、死刑囚との面会、教化活動に取り組んでいる。高氏は「死刑が執行されれば過去について謝る機会を失くすことになる。被害者が助けあい、手続に関わることで自分も憎しみから離れることができる」と語った。

 

 

 

シンポジウム
障害者虐待防止法をどう活用するか~
12月17日 弁護士会館

障がい者施設における職員研修の重要性を説く松上氏2012年10月1日に障害者虐待防止法が施行されたことを踏まえ、シンポジウムを開催した。現在、各地で対応態勢の整備が徐々に図られているが、虐待事案の早期発見・早期対応のため、これまでの虐待事案の教訓から学び、各地域や施設・事業者、職場での展開が期待されている。

 

町なかで見過ごされる虐待

1994年に発覚したサン・グループ事件では、新幹線がすぐ見える滋賀の町なかで10年以上にわたり死者が出るほどの悪質な虐待が雇用者によって行われていた。障がい者が労働基準監督署等に助けを求めても、何らの対応もなされなかったことが発覚遅延の原因となった。
日弁連高齢者・障害者の権利に関する委員会事務局長の青木佳史会員(大阪)は、この事件を振り返る中で、虐待の早期発見には相談支援が何よりも求められるとその重要性を強調した。

 

動き始めた行政と福祉

障害者虐待防止法では、市町村が虐待の通報や届出の受付を行う。すべての人に虐待発見時の通報義務を課す一方、虐待が起こりやすい場面ごとに防止措置をとるよう定めている。
曽根直樹氏(厚生労働省社会・援護局、虐待防止専門官)は「既に各都道府県、市町村には障害者権利擁護センターが設置されており、必要に応じて研修を行っている」と現状を語った。愛知県蒲郡市の障がい者支援センター長である鈴木康仁氏は、センターへの通報をきっかけとした対応について、法施行以前から積極に取り組み、広報に努めているという。
障がい者を預かる施設にとっても本法は重要な意味を持つ。松上利男氏(社会福祉法人北摂杉の子会常務理事)は「虐待、人権侵害を防ぐには問題行動に対する研究や訓練が不可欠」と職員研修の重要性を説いた。

 

研究会
~米国に学ぶ検察官倫理
12月12日 弁護士会館

ABAの法曹倫理モデルについて解説するピーター・ジョイ教授米国では過去のえん罪事件の検証結果を踏まえ、全米法曹協会(ABA)の法曹倫理モデル・ルールに、検察官倫理に関する条項が追加された。本研究会では、条項追加に影響を与えたピーター・ジョイ教授(ワシントン大学セントルイス・ロースクール)を招き、講演が行われた。

 

有罪判決獲得に不利な証拠であっても開示するのが原則

「厳正公平、不偏不党の理念」が検察官に求められている以上、「たとえ検察官の起訴、有罪判決獲得にとって不利なものであっても関連のある証拠を出すべき」とジョイ教授は語る。米国では、1935年に、検察官に「えん罪を生み出すと予測される不適当な方法を自制する義務」が課され、日本が加盟している国際検察官協会においても「被告人に有利な証拠が開示されることを検察官が保証しなければならない」との定めがある。しかし、日本国内ではこのような義務は一般化されないままとなっている。

 

えん罪事件の検証が不可欠

ABAでは、5年前、えん罪事件の検証を踏まえ、法曹三者の倫理行為を規律する法曹倫理モデル・ルールに「有罪判決後の証拠開示義務拡大に関する規定」を追加した。現時点でこれを採択した州は8つに上る。受刑者から膨大な申立てがあるのではとの懸念を示す州もあるが、実際にはそのような状況にはなっていないという。米国での調査では、1998年から2012年2月までのえん罪は全米で873件、うち42%に捜査機関の非行があり、最も多いのが無罪を示す証拠の隠蔽だった。ジョイ教授は「日本で検察官倫理を追求するためにも、えん罪事件の検証が不可欠」と強調した。

 

第65期司法修習生対象
就職先未定者・即時独立開業予定者のための相談会
12月21日 東京都港区

2012年12月20日、65期司法修習終了者の一括登録が行われ、同時点での未登録者は546人、全体の約26%を占めた。厳しい経済情勢のもと、弁護士事務所側の募集が増えず就職状況が厳しい中、日弁連は、未登録者に対する採用情報や即独に関する情報提供等フォローアップの一環として、相談会を開催した。

 

本相談会は、未登録者に対し個別の事務所への就職を斡旋するのではなく、来場者が希望する進路に進むため何をすればよいのか、どのような方法があるのかのアドバイス、情報提供を行うものである。
相談担当者の吉岡祥子会員(研修・業務支援室嘱託)は、来場者に対し、「ひまわり求人求職ナビで公募をしている事務所にのみ応募し就職先が決まっていないという場合が少なくないので、修習指導担当弁護士や法科大学院の先輩弁護士等知り合いの弁護士に相談したり、各弁護士会での相談会や求職票の備置き等について就職希望地の弁護士会の相談窓口に問い合わせてみることなどをアドバイスしている」という。
また、武田龍生会員(秋田)は「就職希望地域を限定せず、支部所在地や弁護士過疎地域も検討対象にするよう助言している」と語った。
来場者全体では、既存事務所への入所を希望する人が多いが、厳しい就職状況から即時独立を決意する人も少なからずいるとのことである。
来場者の中には「本相談会を通じ、今後の目標が就職なのか即時独立なのか、自分の将来のビジョンが明確になった」と語る人もおり、本相談会の開催意義が感じられた。

 

ハーグ条約シンポジウム
~国際家事調停の在り方を巡って
1月16日 東京都港区

日本政府は、ハーグ条約の締結に向けての取り組みを継続しているが、ハーグ条約では友好的な解決が奨励されており、日本の条約実施法案においても調停の利用が予定されている。本シンポジウムは、外務省が主催、日本仲裁人協会が協力、日弁連が後援し、海外におけるハーグ条約事案の調停による解決に関する実務を知る機会となった。

 

冒頭、鈴木俊一外務副大臣が、開会の挨拶として、日本のハーグ条約加盟に向けた決意を述べた。基調講演では、英国で国際的な離婚や子の連れ去りの問題を専門的に扱う弁護士で、国際的な子の連れ去り問題の解決のための調停の場を提供する民間団体「リユナイト」理事長を務めるアン・マリー・ハチンソン弁護士が、英国におけるハーグ条約の運用状況を語った。ハチンソン弁護士は、国際的な子どもの連れ去りは、家庭内の紛争をきっかけとして起こるが、子どもの権利を保障するという条約上の国家の義務とも深くかかわると指摘した上で、調停による友好的な解決が子どもの利益を守るために役立つことを強調した。
鈴木五十三会員(第二東京)は、リユナイトと共同で実施した私的調停のパイロット事案の成果を報告し、国際的な家事調停を適切に実施できる知識や技術を持つ調停人の確保やコスト負担など本格的な実施に向けた課題を指摘した。
その後のパネルディスカッションには、鈴木会員、ハーグ条約調停を実施するドイツと英国の専門家、早稲田大学の棚村政行教授、宮島昭夫外務省総合外交政策局長補佐官、日弁連ハーグ条約に関するワーキンググループ委員の相原佳子会員(第一東京)がパネリストとして参加し、諸外国での経験を学びつつ、日本におけるハーグ条約調停の在り方や今後の課題等について議論した。
(ハーグ条約に関するワーキンググループ幹事 橘高真佐美)

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.75

日弁連人権救済警告・勧告・要望のその後

人権擁護委員会は、1950年以降、弁護士法一条に基づき、人権侵害の被害者や関係者からの人権救済申立を受け付け、調査を行い、人権侵害の除去、改善を目指し、人権侵犯者又はその監督機関等に対する警告、勧告、要望等を行ってきました。2012年の警告等は9件、1950年からの総数は300件以上にのぼります。
2009年4月以降警告等の措置をした事例については、各執行先に対しどのような対応を取っているか調査を開始しました。措置によりどのような改善がなされたか、改善されない場合、措置内容の実現に向けてどう取り組むべきかご報告します。
(人権救済調査室長 千木良 正)

 

webページ裁判所も公知の事実として評価

過去には、人権救済申立事件において警告等を出したことにより、法令の改正や制度・運用の改善に結びついた事例もあるが(カネミ油症事件関係仮払金返還債権の免除についての特例に関する法律制定、自己情報開示等請求の年齢制限に関する運用変更など)、勧告後も何らの改善がなされなかったために、再度警告等を出すことを余儀なくされた事例もある(死刑再審無罪者への年金不支給に関する人権救済申立事件、海外在住日本国民の最高裁判所裁判官国民審査に関する人権救済申立事件など)。
日弁連の人権救済活動は、強制力はないものの、救済措置に至るまでの公正かつ厳重な手続、市民の信頼や従前の実績に裏付けられることにより、社会的に一定の評価を受けるに至っており、各方面に強い影響力を及ぼしてきた。このことは、裁判所も公知の事実として評価しているところである(東京地裁平成元年5月31日判決、広島高裁平成17年10月26日判決)。

 

1・2限目は東京での講義を全国の会場にライブ配信

事前課題の提出を前提に、1日目は民事弁護、2日目は刑事弁護の講義が実施された。1・2限目(計200分)は、弁護実務修習のガイダンスと事前課題の解説であり、東京の会場で実施される講義の映像を、インターネット回線を用いて全国の会場にライブ配信した(ただし、一部の弁護士会では通信がうまくいかず、事前に収録したDVDによる講義となった)。講師は、民事は司法研修所の弁護教官経験者、刑事は現役の弁護教官が担当し、いずれもパワーポイントを多用した中身の濃い講義となった。

 

執行後の改善例も多数

日弁連は、責任ある立場として警告等の意見を述べている以上、警告等に対して何らの対応も取られていないことを放置してはならない。それは人権救済申立制度の存在意義を失わせることになるからである。
そこで、人権擁護委員会では、2009年4月以降警告等の措置をした事例について、一定期間経過後(現在は6カ月経過後)に、各執行先に対してどのような対応を取っているか調査を開始した。既に多くの回答が戻ってきており、例えば、昼夜居室処遇受刑者の処遇方法の改善を勧告したことに対し「昼夜居室処遇者に他の受刑者とともに運動する機会を与える内規を整備」した事例(横浜刑務所内出役待機に関する人権救済申立事件)、国際受刑者移送法の対象者に対して移送が可能であることを告知するよう勧告したことに対し「当所の措置が人権侵害に当たるとの勧告を真摯に受け止め、以後の再発防止を期するため・・・所長指示を発出」した事例(受刑者移送条約に関する人権救済申立事件)、視覚障がい者の移動支援給付について適用対象外事由の改正を勧告したことに対し「実施要領を改正」し、「『ギャンブル、宗教活動、政治的活動等』という文言を削除」した事例(視覚障害者の付添不許可に関する人権救済申立事件)など、警告等を踏まえて積極的に対応をしたという回答も見られた。また、「国会における議論や関係者の様々なご意見を踏まえて引き続き検討してまいりたい」(在日外国人無年金障がい者及び在日外国人無年金高齢者からの人権救済申立事件)などの前向きな回答も見られている。

 

改善されない事案でも継続的な働きかけを

一方で、「当所において改善・対処した事項はありません」(徳島刑務所からの移送に伴う不当隔離に関する人権救済申立事件)、「現時点において特段の措置は講じておりません」(就学援護費不支給に関する人権救済申立事件)など、警告等に対して何らの対応を取っていない回答も見られる。
もちろん、執行後照会により適切な対応が取られていない事例については、そのまま放置するのではなく、執行先との意見交換、国会議員等への働きかけ、シンポジウム・院内集会の開催、会長声明、意見書の発表、新たな警告等の措置を行うなどして、法令の改正、制度・運用の改善を求めていく必要がある。

 

市民の目を意識した対応が求められる

今回、執行後照会の回答を日弁連のホームページ上で公開することとした。これにより、執行先は、市民の目を意識した対応が求められることになるだろう。日弁連としても、救済措置の効果が目に見えるため、実効性を高めるための努力が強く求められることになる。 この制度が画餅に帰すことがないよう、ぜひ、多くの会員、市民の皆様に関心を持っていただきたいと願っている。

 

 

人権救済申立事件の新受及び措置件数

 

年度   新件受付※1  当該年度措置件数
(過年度申立て含む)※2
2004 306 5
2005 407 7
2006  345 5
2007 394 5
2008 406 5
2009 420 4
2010 409(1) 12
2011 391  7

「弁護士白書2012年版」より

 

 

日弁連委員会めぐり 51

人権擁護委員会

市川副委員長(左)と小林委員長人権擁護委員会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士に課された使命を果たすために、人権侵害事件の救済活動を始めとしてさまざまな人権擁護活動に取り組んでいます。本年4月からは、「法学セミナー」に「人権はいま-弁護士会の人権擁護活動の最前線から(仮題)」の連載開始も予定さ今回は、小林七郎委員長(東京)と市川正司副委員長(第一東京)にお話を伺いました。
(広報室嘱託 柴田亮子)


 

正委員120人の大所帯

人権擁護委員会は、再審、捜査機関、刑事被拘禁者、医療、精神的自由、国際人権、社会保障等の7部会と特別部会、PTで組織され、正委員は120人、それ以外に多くの特別委嘱委員がいる。人権救済申立事件への対応が主たる業務であるが、人権に関する意見書の作成、会長声明の起案等も行う。

 

人権問題なら何でもござれ!

人権救済申立事件は、毎年400件前後あり、半数以上が刑事被拘禁者の処遇に関する申立である。その他、性同一性障がい、生殖医療等の時代の先端の問題も取り上げる。市川副委員長は、既に時効にかかっているレッド・パージ事件を挙げて、「日弁連が自分たちに代わって言ってくれたと感謝された。埋もれている人権侵害を掘り起こして、光をあてることも人権擁護委員会の使命」とそのやりがいを述べた。

 

再審支援事件が増加傾向

また、近年再審支援の申立が増加している。2008年までは毎年20件程度であったのが、その後増加し、2011年には48件の申立があった。 小林委員長は、「足利事件以降の再審無罪判決の報道により、再審という方法が周知された結果かもしれない」と語った。

 

実効性ある執行を目指す

人権救済申立を受けて、警告・勧告・要望等を行っても、何ら対応がとられなければ、人権救済には至らない。そこで、特集記事のとおり2011年4月から、執行後6カ月後に執行先に対し、どのような措置をとったかを照会し、ホームページに公表するようにした。
また、昨年12月25日の成年被後見人の選挙権の制限についての勧告について、小林委員長から「これは勧告が判決の参考とされることも期待し、早急に対応した結果。執行の時期も考えて対応している」との話があった。まさに実践的な人権擁護活動を担う委員会といえる。

 

ブックセンターベストセラー
(2012年10月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書籍 著者・編者 出版社
1 東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情 第3版 東京家庭裁判所家事第6部 編著 判例タイムズ社
2 民事保全の実務[裁判実務シリーズ3] 菅野博之・田代雅彦 編 商事法務
3 概説 家事事件手続法  秋武憲一 編著 青林書院
4 インターネット新時代の法律実務Q&A 田島正広 監修 日本加除出版
5 破産管財の手引[増補版] 東京地裁破産実務研究会 著 きんざい
6 平成24年改正 知的財産権法文集 平成24年10月1日施行版 秋武憲一 編著 発明推進協会
7 別冊ジュリスト№211 行政判例百選1[第6版] 宇賀克也・交告尚史・山本隆司 編  有斐閣
8 割増賃金請求訴訟の知識と実務[弁護士研修集中講座] 東京弁護士会弁護士研修センター運営委員会 編 ぎょうせい
9 詳解 銀行法[全訂版] 小山嘉昭 著 ぎんせい
10 民事訴訟マニュアル(上)~書式のポイントと実務~ 岡口基一 著 ぎょうせい

編集後記

弁護士は言うまでもなく、準備書面や契約書、内容証明郵便など無数の書面や文章に触れ合う。そんな仕事柄か、総じて法律家の文章は長文かつ説明的になる傾向があり、SNSで文章を投稿しても「長いよね」なんて言われることも少なくない。これに対し、新聞は限られた文字数の中で、取材した内容を余すところのないように伝えなければならないという相違がある。
とはいえ、この相違は実は共通するのかもしれない。つまり、一読してわかるように内容を伝えることが、業務でも求められているのではないか。そんな思いから、嘱託を始めてから仕事上の書面もシンプルを心がけ、心なしか書面はすっきりしてきたように思う。しかし、記事も仕事上の書面もシンプルさに腐心して肝心の内容を飛ばしては元も子もなく、今日も記事の原稿と取材メモのにらめっこは続くのである。
(K・O)