日弁連新聞 第464号

政府の法曹養成制度
検討会議発足

今後の法曹養成の在り方を検討する政府の有識者会議「法曹養成制度検討会議」の第1回が8月28日に開催され、今後の会議の進め方、法曹の活動領域の在り方等について議論された

 

閣議決定で新しい合議制の検討組織を設置

2012年7月27日の裁判所法一部改正案の成立を受け、8月21日の閣議で、「法曹養成制度関係閣僚会議」の設置が決定され、この会議の下に有識者による「法曹養成制度検討会議」が設置された。
この有識者会議は「法曹の養成に関するフォーラム」の論点整理(2012年5月10日)を踏まえつつ検討を行うとされており、座長にはフォーラムに引き続き佐々木毅学習院大学教授が就任した。有識者委員はフォーラムの委員13人(留任)に加え、新たに清原慶子三鷹市長、国分正一医師・東北大学名誉教授、田島良昭社会福祉法人南高愛隣会理事長、和田吉弘弁護士の4人が就任した。
閣議決定では、この有識者会議の意見等を踏まえつつ、閣僚会議が来年8月2日までに検討を加えて一定の結論を得るとされている。

 

法曹の活動領域拡大で意見交換

第1回会議では、これまでの検討経過の説明等の後、法曹有資格者の活動領域の在り方について意見交換が行われた。
意見交換では、主に地方自治体や中央官庁、企業内弁護士、中小企業等の海外展開業務の三分野について、法曹の活躍が期待できる分野とその課題について議論がなされた。

 

主な発言は以下のとおり。

  • 地方分権の推進から自治体での法曹の活躍が求められているが、人件費削減の影響や活動実態の情報不足に問題がある。
  • 企業内の活動領域は拡大しているが、そのペースと規模は従来の想定とは一致しない。
  • 積極的に組織内を希望する弁護士は多くない。
  • 医師のように教育による専門分化が進むと、多様な分野にプライドを持って進めるようになる。
  • 障がい者や高齢者の福祉の分野は法的サービスが必要だが、弁護士は事業に十分関与しておらず、関心も少ない。意識改革が必要。

なお、活動領域については、今後検討会議事務局を軸に、関係省庁、日弁連、関係団体等で検討し、第九回会議で再度議論される。
また、次回(9月20日)は法曹人口について意見交換が行われる予定である。
(事務次長 中西一裕)

 

原発事故で隠される事実
秘密保全法制シンポジウム
8月2日弁護士会館

木野氏と光前会員秘密保全法制定の動きは、水面下で公務員の調査が行われるなどいまだ予断を許さない状況にある。本シンポジウムは、「もし昨年の原子力発電所事故が秘密保全法の下で起きたら」という切り口で同法制の問題点を議論した。

 

放射線量の高い地域へ避難する羽目に

2011年3月11日、炉心注水不能となった頃、福島第一原発に隣接する浪江町の渡邉文星副町長は、町民とともに津波被害者の救命にあたっていた。渡邉副町長が避難指示を初めて知ったのは翌12日テレビを見てのことだ。 15日、町長の判断で全町避難することとなったが、放射線量の情報が国から提供されなかった。その結果、不本意にも浪江町は放射線量の高い津島地区へ避難し、町民は「無用の被曝をしてしまった」と渡邉副町長も無念さをにじませる。今でも浪江町の人々は健康への不安に苛まれる日々を送る。

 

公益通報や報道にも規制

元原子力安全基盤機構職員の藤原節男氏は北海道泊発電所の検査結果の改ざんを上司から求められたことについて公益通報を行い、現在も係争中だ。藤原氏の代理人である光前幸一会員(東京)は秘密保全法制定後は「秘密を定める裁量権の濫用くらいでしか争えなくなる」と懸念する。

朝日新聞連載の「プロメテウスの罠」で関係者の実名報道を続ける木村英昭氏は、秘密保全法ができたら「取材申込み段階で断る口実にされる可能性が高い」と指摘し、株主総会の実況配信を理由に東京電力敷地内への立入を禁止された木野龍逸氏(フリージャーナリスト)も「国家秘密にかかわるという理由で、このような対応が横行するのではないか」と語り、秘密保全法による隠蔽行為拡大の可能性を懸念した。

 

会社法改正要綱案が確定
企業不祥事防止の契機に

2010年、千葉法務大臣(当時)の「会社を取り巻く幅広い利害関係者からの一層の信頼を確保する観点から、企業統治の在り方や親子会社に関する規律等を見直す必要がある…」との法制審議会への諮問から始まった会社法改正の要綱案が確定した。この間、オリンパス事件や大王製紙事件等、重大な不祥事件が発生し、この審議には、世界中から注目が集まった。

昨年12月に公表された中間試案では、(ア)会社法による社外取締役の選任の義務付け、(イ)社外取締役として、親会社・兄弟会社や重要な取引先関係者、近親者を認めず、(ウ)監査・監督委員会を新設し、(エ)多重代表訴訟を導入し、(オ)親会社等と子会社の利益相反取引に関する親会社の責任を明確化する、等が盛り込まれ、日弁連では、パブリックコメントにおいて概ね賛成していた。

 

社外取締役導入を促す仕組み盛り込む

要綱案では、(ア)は見送られたが、社外取締役導入を促すため、上場会社に独立取締役を義務付ける旨の附帯決議がなされ、また、社外取締役を置かない場合には、「社外取締役を置くことが相当でない理由」を開示することとされた。(イ)では、重要な取引先以外は法制化された。(ウ)は、制度を新設した。(エ)多重代表訴訟は、1%以上の少数株主権とされ、対象となる子会社も親会社の資産の20%以上の会社とされた。(オ)の親会社の責任の明確化は見送られた。
以上、当初の中間試案から後退した感は否めないが、わが国の企業統治や親子会社の在り方について、不祥事の発生防止等に向けた法の支配が進展する契機となり得るものであり、日弁連は、より良い実務の成熟や独立取締役の給源として、真摯に協力するとともに、今後の動向を注視していくこととしたい。

(司法制度調査会法制審議会会社法制部会バックアップチーム座長 山岸良太)

 

「被災ローン減免制度」チラシの活用を

「被災ローン減免制度」チラシ

日弁連では、より多くの被災者に「被災ローン減免制度」を知っていただくよう、4コマ漫画などを取り入れて、制度の特徴を分かりやすく説明したチラシを作成した。高台移転版では、防災集団移転促進事業に応募するために、この制度を用いてローンと抵当権を整理することが効果的であると解説している。日弁連は院内集会等を通じて制度周知の努力を重ねており(2面に関連記事)、会員各位もこのチラシをぜひ活用いただきたい。

 

日弁連Webサイト
HOME > 日弁連の活動 > 人権擁護活動 > 震災復興支援 | 原発事故 > 二重ローン問題(http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/shinsai/loan.html#loan)からダウンロードが可能。 

 

ひまわり

この1年5カ月、ある時は「今はこんなに悲しくて涙が…」と口ずさみ、またある時は「Every day I listen to my heart ひとりじゃない…」と心の中で繰り返し囁くように歌い、疲れた心を癒し、元気づけてきた。被災者となり、あらためて歌の持つ力を実感した▼言葉の力も感じた。東北楽天ゴールデンイーグルスの嶋基宏選手が球場でこんな話をした。「見せましょう!プロ野球の底力、見せましょう!プロ野球選手の底力、見せましょう!プロ野球ファンの底力」私にとっては心に残る言葉であり、何度も何度も繰り返し噛み締めた▼翻ってリーダーといわれる人々の言葉の中で、私の心に残ったものはあっただろうか。被災地の人々は非日常の世界に生き、体も心も傷ついている。被災地はもちろん日本全体が経済的に大きな打撃を受け、先の見えない不安感の中にいる。そんな中でリーダーと呼ばれる人々が発する言葉こそ世界から注目されたのだが…▼今度こそ温かい眼差しを持ち筋の通った考え方を実践する人々の言葉を期待したい▼私たちのこれからの合言葉は「見せましょう!法の支配の底力、見せましょう!法曹三者の底力、見せましょう!日本国民の底力」だろうか。法曹もさらに大きな役割を果たすべき時がきたと自覚し活動したい。(T・A)

 

 

子どもの手続代理人研修
子どもの心理への理解を深めるために
7月27日弁護士会館

家事審判法の改正および家事事件手続法の制定により設置された子どもの手続代理人制度。これまでにはなかった新たな制度に対する社会的関心も高い。本研修では、制度をより実効性あるものにすべく、また、子どもの心理への理解を深めるべく、さまざまな立場の講師が解説した。

 

片岡玲子氏(立正大学大学院講師)は、自身が接した実例をもとに、子どもが父母の葛藤場面に接した時、いかに自己の存在感の危機を感じるのか解説した。
山本佳子氏(東京家庭裁判所次席調査官)は、真意の把握のために、子の発言を額面どおり受け止めるのではなく背景事情を踏まえて評価することの意義を強調し、調査の際の留意点や特徴を紹介した。小学校高学年は、低学年に比べ自分なりの価値観で現実的に親の紛争を把握しようと努めるものの、完全に自分で解決するには至らないことから、結局は監護親に依存せざるを得ず、子の意思を判断する際の監護親の影響の度合いの見極めの難しさがあるという。

 

ひとり親家庭、再婚家庭に育つ子どもを支援するNPOアンファンパレット代表の新川明日菜氏は、親が三度の再婚を経たという自身の経験をもとに、子どもの真意を汲み取り、子どもの利益を十全に実現する子どもの手続代理人が、子どもの声なき声を拾い上げることにつながると期待感を表明した。
池田清貴会員(子どもの権利委員会幹事)は、家裁の調査は子どもが客体に過ぎないのに対し、子どもの手続代理人は主体である子どもを援助する点で根本的に異なると前置きし、代理人業務の概要を解説した。

 

第6回高校生模擬裁判選手権
8月4日 東京、大阪、松山

模造紙に描いた論点整理に即したプレゼン今年の事案は、被告人の女子大生が、恋愛の悩みを相談していた同郷の異性の友人を、ストーカーと言って突き飛ばし、傷害を負わせたというもので、正当防衛の成否が争点となった。
抽選による対戦相手の発表のあと、「法律に則り、正々堂々と戦うことを誓います」と声高らかに選手宣誓が行われた。熱戦の末、関東大会(東京)では湘南白百合学園が、関西大会(大阪)では立命館宇治高等学校が、四国大会(松山)では高松第一高等学校が優勝した。

 

模造紙、写真、地図を用いた主張・立証の工夫

午前、午後にわたり検察側、弁護側に立場を変えて2試合行うというハードスケジュールの中、模造紙を用いた論点整理、写真、地図等を駆使した尋問など見る側にわかりやすい主張・立証活動を展開した。

昨年までとは異なり、今年から証人、当事者を弁護士が演じることになり、事前に主尋問の練習ができず、返答に応じてその都度尋問事項を調整しなければならないという難しさが加わった。しかし、各校とも、メモをとり次の尋問に活かす等、上手く対応していた。

尋問では、活発に異議も出され、それに対し的確に対応するという高度なやりとりに、審査員からも驚きの声が上がった。
また、尋問をする人、詳細にメモをとる人、模造紙等を掲げ指示する人等の役割が分担され、チームワークのよさも光った。

 

さまざまな角度から考える重要性

講評では、朝日新聞記者の根岸拓朗氏が「プロより分かりやすかった。限られた時間で、ポイントを押さえて、相手にどう伝えるかということは、今後大いに役に立つと思う。これからは、情報を丸飲みするのではなく、さまざまな角度から考えるようにしてほしい」と高校生を激励した。
また、東京地裁の島戸純判事からは、「皆が見て聞いて分かる裁判というための多くのヒントを高校生からもらった」という感想があった。

 

立場が変わると見方が変わる面白さ

試合を終えた生徒からは、「3年間出場し、ノウハウがわかってきた。今年が集大成だった」、「同じ供述調書を読んでも、検察側の立場と弁護側の立場とで見方が変わるのが面白かった」という感想が述べられた。また、「来年は、もっと前から準備をして臨みたい」という意気込みも語られた。

 

院内集会 被災ローン減免制度の積極活用を
周知が進まないのはなぜなのか
8月21日 参議院議員会館

2011年8月22日から私的整理ガイドラインに基づく「被災ローン減免制度」の運用が開始されたが、この制度を利用して成立した債務整理件数は2012年8月24日現在で60件にとどまっている。その原因として、金融機関による被災者への周知が不十分であることが問題視されており、本集会では、制度の積極活用を進めるにはどのような方策が必要か議論した。

 

東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部の新里宏二副本部長(仙台)は、2万件近い被災ローンのほとんどが、減免制度を利用しないまま、金融機関の条件変更(リスケジュール)により処理されていること、その結果、被災者の手にわたった義援金や公的資金が、金融機関への返済に回されていることなどを指摘した。
被災弁護士会の会員からは、被災地で法律相談を重ねても、制度を知っている人は5%にとどまること、金融機関も制度利用に消極的であること、自治体の高台移転担当者も制度の存在を知らず、減免制度を使わないまま抵当権付土地であるという理由で買取の対象から除外されていることなどが報告され、制度周知の必要性が強調された。
国会議員も与野党を問わず参加し、広報の不十分さや金融機関への指導不徹底について反省の弁が述べられる一方、これらの点について改善策を講じていくとの決意が語られた。
参加した市民からは「被災地の高齢者が十分に理解できるとは思えない。東京でも勉強会を開いてもらえれば、そこで情報を得た子どもたちが被災地の親族に伝えることができる」との提案があった。

 

日弁連短信
世界は女性バーリーダーの時代

市毛由実子 事務次長全米法曹協会、ローエイシア、欧州弁護士会評議会、オーストラリア弁護士会、パリ弁護士会。いずれも現在女性が会長を務めている法曹団体であり、国際会議での女性バーリーダーの活躍は目覚ましい。日弁連では、今年は2人の女性副会長が就任し、正副会長に占める割合は14.2%、弁護士会でも奈良、滋賀、鳥取県、島根県、宮崎県の会長が女性であり、理事者(会長・副会長・理事)に占める割合は8%となった。
2008年に策定された日弁連の男女共同参画推進基本計画は、12の項目について基本目標と当面の5か年に取り組む具体的施策を定め、2012年度にそれまでの取組状況を検証し、計画の見直しを行うべきことが記されている。本年度はこれを受け、男女共同参画推進本部で、これまでの実施状況を検証するとともに、第二次基本計画の策定に取り組んでいる。
2人の女性副会長が参加する正副会長会では、見過ごされがちであった女性の視点からの諸々の指摘がなされ、ジェンダーに敏感であろうとする空気が醸成されてきている。会務執行方針の冒頭にも、会務全般を横断する基本方針として男女共同参画が掲げられた。

 

他方、四つの法定委員会ではいまだ女性委員がゼロ、法定委員会・常置委員会の正副委員長については一つを除き女性はゼロである。未達成の部分にも光をあて、原因を分析し、積極的是正措置等の検討が必要である。会員、各地の弁護士会、弁護士会連合会のさらなるご理解をお願いしたい。
行政や企業における男女共同参画と異なるのは、会務への参画は、収入や地位の向上に直結するわけではなく、むしろ負担を伴うものと認識されがちなことにある。負担の集中を回避する等の工夫をするとともに、引き受け手である女性弁護士に対し、会務への参画の意義をアピールしていくことも重要である。
同本部では、このほかにも、収入と所得、業務等における男女間格差の調査検討、就職・処遇における男女平等確保、女性弁護士不足の解消、仕事と家庭の両立支援、就職・業務上の差別等の解消等、これまでの検証と今後の取り組みについて検討を進めている。(事務次長 市毛由美子)

 

新事務次長紹介

菅沼 友子(第二東京・42期)菅沼 友子(第二東京・42期)

8月31日をもって、市毛由美子事務次長(第二東京)が退任し、後任には、菅沼友子事務次長(第二東京)が就任した。

 

日弁連が直面している重要課題はたくさんありますが、特に、若手会員に対するサポートは、これからの司法のあり方や弁護士の信頼に関わる重要な課題だと考えています。
弁護士会が一体となって取り組めるよう、誠心誠意力を尽くしたいと思います。

 

 

死刑制度に関する韓国調査

挨拶をする加毛委員長韓国は現在14年以上にわたり死刑の執行を停止しており、事実上の死刑廃止国に数えられている。他方日本は死刑存置国であり、2012年3月29日に3人、8月3日に2人に対し死刑の執行が行われている。そのような中、日弁連は、6月3日から同月6日まで、韓国の死刑制度について調査するため、死刑廃止検討委員会の加毛修委員長、杉浦正健元法務大臣(同委員会顧問)、平岡秀夫衆議院議員・元法務大臣ら14人からなる調査団を派遣した。
韓国法務部(法務省)によれば、韓国は1997年12月、23人の死刑執行がなされた後、大統領に就任した金大中大統領(当時)が死刑の執行をしなかったことから、現在まで死刑の執行をしておらず、未執行者数は58人となっている。また国会議員らによれば、今後、死刑の代替刑として仮釈放のない終身刑を創設する死刑廃止法案を提出する予定だという。調査団は、韓国死刑廃止運動協議会、ソウル拘置所、国家人権委員会、憲法裁判所、大韓弁護士協会、カトリック矯正司牧委員会なども訪問し、短期間ながら極めて有益な調査を行うことができた。

 

死刑執行停止の実現方策を議論

この調査結果を受け、日弁連・第二東京弁護士会の共催で、7月24日、シンポジウム「韓国の死刑廃止と日本の死刑存置について考える」を開催した。韓国と日本の現状について会員と市民との間でともに考え、今後日本において死刑執行停止をどう実現していくのかについて活発な議論を行った。
(死刑廃止検討委員会事務局長 小川原優之)

 

共謀罪創設反対を求める院内学習会
7月17日 衆議院第ニ議員会館

政府が導入を主張している「共謀罪」の規定は、わが国の刑事法体系の基本原則に矛盾し、基本的人権の保障と深刻な対立を引き起こす恐れが高く、その導入の根拠とされている国連越境組織犯罪防止条約の批准にも、この導入は不可欠ではない。日弁連はかねてよりこの立場をとっており、2012年4月13日にも「共謀罪の創設に反対する意見書」を取りまとめている。その後の情勢の変化と現在の状況を踏まえ、主として国会議員やマスコミ関係者を対象に、「共謀罪」の創設を含む組織犯罪処罰法改正案を提出すべきではないことについての認識を共有することを目的として、本学習会を開催した。

 

筆者からは、「共謀罪の創設に反対する意見書及び共謀罪の構成要件をめぐる推移について」と題し、これまでの共謀罪をめぐる国会審議の状況等を報告した。特に2006年5月から6月にかけて行われた当時の与党(自民党、公明党)と野党であった民主党との実務者協議会の内容と、それを受けて自民党が提出した共謀罪に関する修正案を説明し、今後、この修正案を参考にした共謀罪が提案される可能性があると指摘した。
続いて、平岡秀夫衆議院議員(民主党・元法務大臣)から、法務大臣就任後に、共謀罪を導入せずに条約を批准するために必要な立法措置について法務省内での検討を指示していたことや、最近の法務委員会での共謀罪をめぐる審議状況、条約を批准しない場合に予想されるFATF(資金洗浄に関する金融活動作業部会)の日本に対する措置などについて説明があり、会場からの質問にも答えていただいた。
当日は、平岡議員のほかに、辻惠衆議院議員(民主党)、服部良一衆議院議員(社民党)、井上哲士参議院議員(共産党)、山崎摩耶衆議院議員(民主党・秘書出席)が参加し、市民やマスコミ関係者を含め、合計45人の参加者があり、大変に意義のある学習会となった。
(共謀罪等立法対策ワーキンググループ副座長 山下幸夫)

 

市民集会
法曹養成過程での経済的支援策、司法修習生に対する給費制を考える
7月25日 星陵会館

山岸会長は、開会のあいさつで、法曹養成過程における経済的支援は給費制の問題のみならず、法曹養成制度全体の問題として考えなければならないと指摘し、適性試験受験者数が、法科大学院発足当初の数万人から2012年度は実人数として約6000人にまで激減している現状などを説明した。
国会議員の来訪も相次ぎ、当初は貸与制への移行に賛成だったものの、法曹が時に無償奉仕をも含め社会貢献を行っているという事実を知り、「たとえ最後の一人になっても給費制復活に向けて努力する」とのあいさつもあった。
ビギナーズ・ネット(司法修習生の給費制維持のための若手ネットワーク)からは、法曹志望者たちが置かれた現状の報告があった。メンバーの一人である現役大学生は、もともと法曹志望であったが、貸与制への移行を受けて経済的負担に耐えられないと考え、志望を諦めたと述べた。そして、「ビギナーズ・ネットの活動の中で接する司法修習生の顔が非常に暗く見える」こと、大学時代から既に奨学金で数百万円の借金を抱えている者にとって法科大学院と司法修習期間中でさらに数百万円ずつの借金を重ねることは耐えられないことなどを指摘し、真に法曹を志望する者のために、ハイコスト・ハイリスク・ローリターンとなっている現行制度の改善を切に訴えた。
後半のパネルディスカッションでも、法科大学院修了生から法曹養成制度の改善への一層の努力が求められるなど、法曹志望者たちの置かれた現状の厳しさを指摘する発言が相次いだ。

 

市民集会
なぜ餓死・孤立死があとを絶たないのか
真に求められる社会保障・生活保護を考える
8月1日 星陵会館

有名タレントに関する生活保護不正受給疑惑をきっかけに、政治家が実名を挙げて調査に乗り出すなど注目を集めた生活保護問題。認定要件の厳格化や支給額の減額、現物支給化など生活保護に対する視線が日に日に厳しくなる一方で、各地で貧困が原因と思われる餓死や孤立死が相次いでいる。今、本当に求められる社会保障・生活保護とは何なのかについて、考察を加えた。

 

緩やかな回復を可能にする制度設計を

基調講演を行った岩田正美教授(日本女子大学)は、統計的データを用いながら、現在の孤立死・孤独死の増加傾向と、生活保護制度の関係を説明した。現在の制度では、就労により保護が終了すると、原則として完全な自立を余儀なくされることから、働くよりも福祉に依存する傾向があると指摘し、貧困からの脱却と自立に向けた緩やかな回復を可能にする制度設計の必要性を訴えた。

 

行政の踏み込んだ対応こそが必要

パネルディスカッションでは、岩田教授に加え、反貧困に取り組む作家の雨宮処凛氏、生活困窮者に対して自立を支援するNPO法人「もやい」の稲葉剛理事長を迎えて討論した。
雨宮氏は、札幌市白石区で四〇代姉妹が孤立死した事件を例に挙げ、法律上の明確な根拠もないまま、各地方自治体独自の基準をもとに生活保護申請の受理が拒絶されていると指摘した。さらに、行政側が餓死・孤立死防止に地域社会の役割を期待しようとする姿勢は、「現状に合わない」と切り捨てた。
稲葉理事長は、生活保護申請が支援者の介入があって初めて受理されるという現状を、「原則と例外が逆転している」と批判した。
コーディネーターの尾藤廣喜会員(貧困問題対策本部副本部長)は、切迫した生活困窮者に対してこそ行政が積極的に生活保護を提案するなどの踏み込んだ対応をとるべきと厳しく指摘した。
会場には多数の参加者が詰めかけ、終了予定時刻を大幅に超過するなど、この問題に対する関心の高さをうかがわせた。

 

CCBE/ACLAとの三極会議
欧州経済危機に伴う弁護士自治への干渉に懸念
7月14日・15日 神戸

CCBEのプルンバウワー会長(左から5人目)、ACLAの王会長(右から5人目)を囲んで。中央が山岸会長。三極会議は、日弁連、欧州弁護士会評議会(CCBE)および中華全国律師協会(ACLA)による経験交流の場として2005年から毎年行われている。今年は日弁連がホストとなり、刑事司法改革、司法アクセス、男女共同参画、インハウスローヤーの位置付け、専門職登録・認定制度の5つのテーマについて広く意見交換を行い、また欧州危機の弁護士会への影響等についてCCBEから報告があった。 なお、地元の兵庫県弁護士会からは林晃史会長および羽田由可副会長の参加に加え、通訳等で多数の会員の協力をいただいた。

 

基調講演を行った川村雅則准教授(北海学園大学)は、職業運転手の賃金や労働時間に関するデータをもとに、過酷な労働環境を浮き彫りにした。職業運転手に関する規制が緩和されるのと反比例するように、その労働環境は不規則・長時間・深夜に及ぶなど悪化している。川村准教授は、「無節操な規制緩和が需要と供給のバランスを崩し、過剰な価格競争を生み出した」として、現在の労働法制の不備を厳しく指摘した。また、被用者ではない軽貨物業者やダンプ運転手など、自営業者としての職業運転手たちが、現在の労働法制ですら救済されず、元請との間で公正な関係を保つことができない現状にも言及した。

 

続いて、谷川仁彦氏(国土交通省自動車局安全政策課事故防止対策推進官)が、高速バス事故を受けての国交省の対応について説明した。事故の再発防止策としては、過労運転防止のための基準を遵守させることを目的とした抜き打ち検査や通報窓口の設置、業者間の書面取引の義務化等の検討状況を報告した。
さらに、職業運転手の側から、数字には表れない現状が報告された。菊池和彦氏(全国自動車交通労働組合総連合会書記次長)は「労働環境に関するデータは使用者側の報告に基づくものであり実態を反映していない」とし、職業運転手たちの過酷な労働環境や、居眠り運転経験者が4割以上に及ぶ現状などを報告した。
質疑応答において、現役のバス運転手から、収入の増減等についてより詳細な現状が報告されるなど活発な意見交換も行われた。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.70

弁護士職員を一気に五人採用 ~兵庫県明石市の意欲的な取り組み~

2002年7月に「地方公共団体の一般職の任期付職員の採用に関する法律」が施行されましたが、47都道府県、1742市区町村のうち、弁護士を採用している自治体はいまだ一桁にとどまっています。そのような中、兵庫県明石市は今年4月から弁護士資格をもつ職員を一挙に5人採用しました。ご自身も弁護士(49期)である泉房穂市長を訪ね、弁護士採用のねらいや弁護士職員の活躍ぶりを取材してきました。(広報室長 生田康介)

 

左から明石会員、能登会員、益田会員、荻野会員■ 専門家の活用は「当たり前」のこと■

「自治体財政が厳しい中、職員の定数も削減方向にある。そうであれば専門的知識・技量をもつ方を採用して、2人分、3人分の働きを期待するのは当たり前のこと」、「地域主権の流れの中で、自治体独自の政策立案・遂行が求められている。だからこそさまざまな分野の専門家の能力が絶対に必要」と泉市長は語る。
泉市長が当選したのは2011年4月。その後職員による手当の不正受給問題が発覚し、職員の法令遵守徹底やチェック体制強化などの対応が急務となる一方、泉市長がかねてより構想していた法律相談サービスの拡充のため、弁護士職員の公募に踏み切った。2人の採用予定に20人以上の応募があり、最終的に5人を採用。「私は選考過程には一切関与しなかったが、採用担当者から『いい人が多いから5人取りたい』という要望があった」(泉市長)のだという。
ちなみに、弁護士職員の任期は5年(再任可)。待遇は経験年数に応じ課長や主任など。給与等は一般職員のそれと変わらない。

 

■ 「枕元」まで訪問して法律相談■

弁護士職員が担当するのは、コンプライアンス、政策立案・遂行、市民法律相談、庁内の法務全般と幅広い。特に市民相談の関係では、それまで弁護士会に委託し市役所本庁舎1カ所だけで行っていたものが、弁護士職員採用により相談場所や相談枠を9カ所へと大幅に増やしている。さらに、高齢者や障がい者に対しては、「訪問法律相談」と銘打って、自宅・病院・施設を問わず、本人の枕元にまで弁護士が訪問するサービスを開始した。今後は、被害者支援や虐待防止などの分野にも積極的に活用をしていく予定だという。

 

市長室内の大机で迅速な決定を行う(右から2人目が泉市長)■ 弁護士がいるとこんなに便利■

庁内の管理職の皆さんにも話を聞いたところ、「法律相談のニーズは高く、相談もすぐに予約で埋まってしまう。運営方法まで意見交換できるので、今後多様な企画を展開したい」、「緊急案件は飛び込みで相談できる。弁護士がいるとこんなに便利なのかと実感している」、「行政の現場についての理解も深まっているので、的確なアドバイスがもらえる」など、評価は上々のようである。

 

■ キャリアアップにつながると実感■

実際に働いてみての感想はどうか。主にコンプライアンス、政策立案を担当する益田明子会員(54期)と荻野泰三会員(61期)は、市長室内にデスクを置き、常に市長と意思疎通を図りながら業務を行う。庁内の法律問題についても日々相談に応ずる。「適切な相談対応をすることにより、職員の皆さんを守るという役割もある。業務の幅が広く色んな経験ができる」(益田)、「政策立案にも弁護士としての力を発揮できる」(荻野)など、手応えを語ってくれた。 主に市民法律相談を担当する能登啓元会員(61期)と明石礼子会員(63期)は、「行政の窓口で弁護士が対応すれば、地元の弁護士を含め適切な機関へ迅速かつ的確に引き継ぐことができる」(能登)、「元々インハウスのニーズは高いと感じていたが、それが実現できていると思う」(明石)など自治体内に弁護士がいることの意義について言及してくれた。
なお、法務課所属の飯田真也会員(64期)は、就任後4カ月間で条例審査等の業務を通じて自治体法務の能力を身につけつつあるという。 任期終了後について水を向けると、それぞれ、元の職場への復帰、組織内弁護士、独立、任期更新など多様な選択肢を検討しているとのことで、「地方行政の現場を経験すると、より幅広い視野を持てるようになると思う」、「新しい分野の開拓にもつなげていければ」とキャリアアップにつながる実感を得ているようだった。

 

■ 社会福祉士・臨床心理士も■

明石市では、来年度は福祉と心のケアの分野を強化するため、社会福祉士3人と臨床心理士2人を採用する予定であり、今後も専門職の割合を増やしていくという。 弁護士に限らず、専門職を活かすことで自治体の政策立案・遂行能力を高めようとする泉市長の試みに注目するとともに、この動きが他の自治体にも波及していくことを期待したい。

 

 

日弁連で働く弁護士⑬

人権救済調査室

人権救済調査室のメンバー(左から、秋山嘱託、千木良室長、山崎嘱託)人権救済調査室というと、人権救済申立ての調査を行う部署であると思い浮かびます。今回、千木良正室長(横浜)、山崎健嘱託(東京)、秋山淳嘱託(第二東京)にお話を伺い、人権救済調査室が上記業務にとどまらず、立法活動から執行後のフォローアップまで、幅広い活動を行っていることがわかりました。(広報室嘱託 柴田亮子)

 

 

年間400件前後の人権救済申立事案

人権救済調査室は、3人の嘱託で、日弁連への年間400件もの人権救済申立事案を処理する。人権侵害の有無を判断するのは、人権擁護委員会であるが、申立事案の事前調査、係属事案の把握・管理・調査等を行うのが人権救済調査室である。 弁護士による申立てが少ない上、形式不備の申立ても多い。千木良室長は、「人権救済が目的だから、形式が整っていないというだけでばっさりと切るわけにはいかない」と語る。何十枚と書かれた手紙にも目を通し、申立事件として処理しない場合でも、丁寧に回答するそうだ。

 

執行後、適切な措置がとられたかまでフォロー

人権救済申立事件として、人権擁護委員会が人権侵害またはその恐れがあると判断すると、司法的措置(告発、準起訴)、警告(通告し、反省を求める)、勧告(適切な措置を求める)、要望(趣旨の実現を期待)等の措置をとる。 ところが、措置を執行しても何ら改善策が講じられなければ、人権救済には至らない。そこで、昨年の4月から執行後照会が行われるようになった。執行後どのような改善がなされたかを照会することで、措置の効力を担保する。年内にはホームページで執行後の改善状況の公表も予定しているそうだ。 3人は、「人権救済のゆりかごから墓場までを担っているようで、やりがいがある」と語る。

 

レッド・パージ事件と免田年金無受給事件

 思い出深い事件としては、レッド・パージによる解雇についての人権救済申立事件で、申立人から「60年経って、日弁連の勧告で救われた」と感謝されたというエピソードが挙げられた。 また、千木良室長は「再審無罪が確定した免田栄さんの国民年金無受給事件で、立法化に向けロビー活動を行っているが、いまだ立法化が実現されておらず、一日も早く実現化させたい」と語った。

 

今後は学者・研究者との連携も

今後の抱負として、山崎嘱託は、「今後は積極的に学者・研究者と連携することで、日弁連の措置にさらなる権威付けを図りたい」と、人権救済手続の実効性強化に意欲を燃やしていた。

 

ブックセンターベストセラー
(2012年3月・六法、手帳は除く)協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書籍 著者・編者 出版社
1 民事保全の実務[第3版](上) 東京地裁保全研究会 編 きんざい
2 民事保全の実務[第3版](下) 東京地裁保全研究会 編 きんざい
3 民事執行の実務[第3版]不動産執行編(上) 東京地方裁判所民事執行センター実務研究会 編著 きんざい
民事執行の実務[第3版]不動産執行編(下) 東京地方裁判所民事執行センター実務研究会 編著 きんざい
5 民事執行の実務[第3版]債権執行編(下) 東京地方裁判所民事執行センター実務研究会 編著 きんざい
6 民事執行の実務[第3版]債権執行編(上) 東京地方裁判所民事執行センター実務研究会 編著 きんざい
7 過労死・過労自殺労災認定マニュアル ―Q&Aでわかる補償と予防 川人 博・平本紋子 著 旬報社
8 新・労働事件法律相談ガイドブック 2012年 第二東京弁護士会労働問題検討委員会 編 第二東京弁護士会
9 証拠・資料収集マニュアル ―立証計画と法律事務の手引― 第一東京弁護士会新進会 編 新日本法規出版
10 企業間提携契約の理論と実務 現代企業法研究会 編著 判例タイムズ社

編集後記

嘱託となって初めて、高校生模擬裁判選手権の取材に行った。地裁法廷を用い、審査員は裁判官、検察官、大学教授、マスコミ関係者等という舞台の素晴らしさもさることながら、高校生の本番さながらの冒頭陳述、証人尋問、被告人質問、論告、弁論に目を見張った。若い、柔軟な考えに基づく論理展開、工夫を凝らしたプレゼンテーションに、いつしか身を乗り出していた。自分の弁論等が紋切り型になっていないか、まさに高校生から反省を促された。優勝校、審査員特別賞等の発表では、歓声がどよめき、涙、ハイタッチで喜ぶ高校生がいた。オリンピック、甲子園に沸くこの夏に、もう一つ爽やかな風が吹いた。
帰宅してから娘に話すと、「面白そう。知っていたら友達と出ていたのに」と一言。もっと広報に工夫が必要だと反省した次第である。(R・S)