日弁連新聞 第459号

法曹人口政策に関する新たな提言
合格者数は「まず1500人にまで減員」

日弁連は、3月15日の理事会で、「法曹人口に関する提言」を採択し、同日公表した。会長の諮問機関である法曹人口政策会議が2年近くにわたる議論の末とりまとめた提言案をもとに、各弁護士会などに意見照会し、その結果を踏まえたものとなっている。

 

提言の趣旨においては、「弁護士人口増員のペースが急激であり過ぎる」ため、法曹養成過程における「法曹の質」の維持への懸念、新人弁護士の「就職難」などによるOJT不足から実務経験・能力が不足した弁護士が社会に多数増えていくことへの懸念、法曹志望者の減少などの深刻な問題を引き起こしているとの現状分析を踏まえ、「いまや法曹人口の急増から『状況に応じた漸増』へと、速やかに移行すべきである」として、年間の司法試験合格者数を「まず1500人にまで減員し、さらなる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要、問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべき」と結論づけている。

 

日弁連は、2011年3月の「法曹人口政策に関する緊急提言」において、年間の司法試験合格者数を「現状よりさらに相当数減員すべきである」としていたが、今回の提言では初めて具体的数値を示した。その上で、司法試験合格者数の減員は法曹人口の減少を意味するものではなく、年間合格者数を1500人にまで減員しても、2027年ころには法曹人口は五万人規模に達することを示し、将来的な法曹人口については、現実の法的需要や司法基盤整備の状況、法曹の質などを定期的に検証しながら検討されるべきとしている(提言全文は日弁連ホームページに掲載)。

 

給費制存続へ向けた攻防続く
集会・シンポなど粘り強い取り組み

 

昨年10月末の給費制延長期限切れに伴い、新65期司法修習生から貸与制が施行されたが、衆議院法務委員会では貸与制の返還猶予を含む裁判所法改正案が審議未了のままであり、この法案の修正をめぐり、給費制維持の方策を探る動きが与野党間で続けられている。
こうした情勢の中、日弁連とビギナーズ・ネットは給費制存続に向けた粘り強い取り組みを続けている。

 

市民シンポと院内集会を開催

2月21日には「司法修習生に対する給費制の存続を求める市民シンポジウム」を日比谷図書文化館の大ホールで開催し、ビギナーズ・ネットが新64期修習終了者、新65期修習生に対して実施したアンケート結果の報告と、辻恵(民主)、稲田朋美(自民)、大口善徳(公明)の三国会議員を招いたパネル討論を行った。パネル討論では、給費制の意義とその存続に向けた活動について熱心な議論がなされた。 3月15日には参議院議員会館の講堂で院内集会を開催した。この院内集会では、貸与制の下で修習を開始した新65期修習生の経済的な不安と憤りを訴える悲痛な声が多数紹介された。集会には与野党からも15人の国会議員が参加し、激励の発言が相次いだ(他に代理参加議員39人)。

 

国会では攻防が続く

衆議院法務委員会では裁判所法改正案の審議が3月16日に再開され、政府案の修正をめぐる緊迫した攻防が続いている。
修正の焦点は、深刻な状況に直面している法曹養成制度の見直しのため法的根拠のある機関を設置すること、あわせて見直しの間給費制を暫定的に存続させることにあり、その実現に向け日弁連執行部は取り組みを強めている。引き続き注目とご協力をお願いしたい。

 

(事務次長 中西一裕)

 

被災地の拠点事務所相次ぎ開設

陸前高田市に被災地初のひまわり公設事務所

3月5日、日弁連・弁護士会・弁護士会連合会の協定に基づき、岩手県陸前高田市内に「いわて三陸ひまわり基金法律事務所」が開設された。同事務所は、東日本大震災後に被災地に開設された初めての公設事務所である。所長として赴任した在間文康会員は、自身も阪神・淡路大震災で被災者となった経験を持ち、司法修習地であった岩手県の復興に役立ちたいという強い思いから赴任を決意したという。

震災により甚大な被害を受けたにもかかわらず、これまで常駐の弁護士が一人もいなかった同市内において、被災者が抱える法的な問題を解決するために重要な役割を担うことが期待されている。

 

大槌町に岩手県内初の法テラス出張所

日本司法支援センター(法テラス)は、3月10日、岩手県上閉伊郡大槌町に「法テラス大槌」を開所した。
法テラスは、これまで宮城県内に3カ所、東日本大震災の被災者支援事業として、被害が特に大きかった上に法テラスの地方事務所から遠く離れている太平洋沿岸部に被災地出張所を設けている。

4カ所目となる法テラス大槌は、岩手県内で初めての被災地出張所として、大槌町はもとより、山田・釜石・宮古・遠野などの周辺市町の方々の法的問題を解決するための窓口として期待されている。

 

東日本大震災被災者支援
東日本大震災被災者援助のための特例法が成立

四月から法テラス東日本大震災法律援助事業が開始に

3月23日、「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」が参議院本会議で可決、成立した。

 

日本司法支援センター(法テラス)はこの法律に基づき、4月2日から、東日本大震災に際し災害救助法が適用された市町村(東京都を除く)の区域における被災者を対象にした「東日本大震災法律援助事業」を開始した。

 

日弁連ではこれまで、被災者があまねく法的支援を受けることができるようにするための民事法律扶助制度の拡充を求め、特例法の実現に向けた取り組みを行ってきた。また被災地の自治体や弁護士会からも被災者の法的支援に対応する法整備を求める要望が寄せられてきたところであり、特例法成立はこれらの取り組みの成果といえる。

業務開始に伴い、日弁連では、4月2日に震災法律援助業務に関する研修会を実施した。なお、この模様は後日、日弁連オンデマンドでも視聴できることになっている。

 

会員各位においては、この制度にご理解いただき、是非とも積極的な活用をお願いしたい。

 

ひまわり

春である。東日本大震災から一年がたって被災地にも遅い春が訪れ始めている。しかし、多くの被災者にとっては春はまだはるかに遠い▼震災一周年を機に様々なルポやドキュメンタリーが作られた。本を読んだりテレビ番組を見た方も多いと思う。先日、たまたま旅行中に東日本大震災に遭遇した若い女性のルポルタージュを読んだ(彩瀬まる「暗い夜、星を数えて~3・11被災鉄道からの脱出」新潮社)。地震と津波と原発事故の被害に次々と襲われる恐ろしさを実感するとともに、その中で助け合う人々の姿に胸があつくなった。決してセンセーショナルでなく、過剰なセンチメンタリズムや政治的な主張が込められているわけではない淡々とした筆致に、かえってこのような被害者、被災地の人々のために、どんなに微力でも自分のできる限りのことをしなければという気持ちがまたわいてきた▼阪神淡路大震災の被災者にとってつらかったのは、震災から一年の区切りが過ぎたとたんに報道も世間の関心も潮が引くように無くなってしまったことだという。震災からの復興は一年や二年で成し遂げられるものではない。法律家の出番はむしろこれからといってもいい▼私たちはあなた方のことを忘れていない。忘れない。桜の下で決意を新たにした春の宵。(M・O)

 

裁判員法3年後検証の意見書まとまる
対象事件の拡大、全証拠リストの開示などを提言

5月21日に裁判員法施行から3年を迎えるに先立ち、日弁連は3月15日の理事会で「裁判員法施行三年後の検証を踏まえた裁判員裁判に関する改革提案」(改革提案)を取りまとめ、法務大臣に提出した。

 

改革提案は6つの意見書から構成されており、そのうち「裁判員の参加する公判手続に関する意見書」の概要は以下のとおりである。

  1. 公訴事実等に争いがあると認められ、かつ被告人又は弁護人から請求があった事件も裁判員裁判対象事件とする。
  2. 公判前整理手続において検察官から被告人側への全証拠リストの交付を義務づける。
  3. 被告人側に公判前整理手続に付することの請求権を認める。
  4. 公訴事実等に争いのある事件における公判手続を二分する規定を新設する。
  5. 裁判員等に対する説明に関する規定を改正する。
  6. 裁判員裁判における評決要件を改正する。

 

なお、今回の意見書では、公判前整理手続での証拠開示規定の改正を提言しているが、今後日弁連としては、公判前整理手続に付された事件に限定されない全面的証拠開示制度法案も策定して提案する予定である。

 

また、改革提案を構成する他の意見書では、裁判員等の心理的負担を軽減させるための規定の新設、死刑の量刑判断への全員一致性の導入、少年逆送事件の裁判員裁判に当たっての少年法の理念に則った規定の新設等を提言するほか、改めて、守秘義務規定の改正、第三者検証機関の設置等についても提言している(各意見書の全文は日弁連ホームページに掲載)。

 

中小企業の海外展開支援への取り組み
日弁連パイロット事業開始へ

ワーキンググループ

アジアを中心に海外展開する中小企業をオールジャパンで支援する動きが活発である。今般、経済産業大臣を議長として総合的な政策立案・実施を統括する「中小企業海外展開支援会議」に日弁連もメンバーとして参加し、中小企業海外展開支援大綱には日弁連の行動計画も盛り込まれることなった。

 

中小企業者の弁護士アクセス問題

昨年来、日弁連では、東京商工会議所、日本貿易振興機構、中小企業基盤整備機構、日本政策金融公庫などの支援機関に対し、昨今の問題状況についてヒアリングを行ってきた。その結果、国際事業展開の際には、事前の法的分析や契約等による予防法務が極めて重要なところ、中小企業ではこれらの認識が不足または欠如しているため、海外進出後にトラブルを抱えてしまうことが多く、他方で、そのようなリスクを抱える規模の小さい事業者ほど、国際法律業務に精通している弁護士にアクセスする機会が少ないという実態が見えてきた。

 

日弁連はWGを設置

そこで、この問題に迅速に対応するため、日弁連は本年一月に「中小企業の海外展開業務の法的支援に関するワーキンググループ」を設置し、①人材の育成、②中小企業支援団体との連携による弁護士へのアクセスの確保、そして、③海外の弁護士・弁護士会との連携による体制整備を目指し、活動を開始することとなった。ワーキンググループでは近々、支援団体と連携の上、中小企業に対し、法律相談、契約書や簡易な書面作成等の法律事務などを提供する弁護士を紹介するパイロット事業を開始する予定である。

 

(事務次長 市毛由美子)

 

債権法改正
中間論点整理に対する意見書まとまる

中間試案とりまとめに向けた重大局面に対応

法制審民法(債権関係)部会で審議中の債権法改正に関する中間論点整理に対し、日弁連は3月15日の理事会において、「民法(債権関係)改正に関する意見書」を取りまとめた。

 

今般の債権法改正に関して日弁連は、一貫して経済的・社会的に弱い立場にある者の不利益を解消し、社会的公正の実現を重視する見地で臨んでおり、このスタンスは、2010年6月の理事会で策定した「基本姿勢」でも確認されている。

 

今回の意見書は、法制審の中間論点整理に関する弁護士会への意見照会結果および現在の審議状況を踏まえて、上記7項目について意見を述べている(保証制度については別途意見書策定済み)。

 

法制審では、別表のとおり2013年2月を目途に中間試案の取りまとめ作業が進んでおり、改正法の大枠はこの段階で決せられると考えてよい。日弁連は今後一年弱を重大局面と位置づけ、今回の意見書に含まれない論点も含め随時意見を述べていく(意見書全文は日弁連ホームページに掲載)。

 

(事務次長 鈴木啓文)

 

< 意見書の項目 >

 

  1. 公序良俗違反の具体化について
  2. 意思無能力者の保護について
  3. 意思表示に関する規定の拡充について
  4. 債務不履行による損害賠償一般の免責要件の規定の在り方について
  5. 損害賠償の範囲(民法第四一六条)について
  6. 解除の要件について
  7. 危険負担について

 

司法サービスの全国展開

向こう10年の新たな行動計画を採択

2001年5月に「司法サービスの全国展開に関する行動計画」が策定され、全国各地で法律相談センターの展開と公設事務所の設置が進み、現在、地方裁判所支部単位の弁護士ゼロワン地域はほぼ解消された(ワン地域一カ所のみ)。かかる状況を踏まえ、弁護士による司法サービスをさらに充実させるため、3月15日の理事会において、向こう10年の新たな行動計画として「司法サービスの全国展開と充実のための行動計画」を採択した。

 

新たな行動計画においては、ゼロワン地域解消を継続した上で、司法サービス提供の必要性が相当程度見込まれる人口3万人以上の「簡易裁判所管内」と「市町村」において弁護士ゼロ地域の解消を目指すほか、女性の法的ニーズに対応する観点から、地方裁判所支部管内において、「女性弁護士がゼロである地域を減らし、最終的には解消するための取組」を行うとしている。そのほか、「1週間以内に弁護士による法律相談および事件受任ができる態勢」の確立や、民事法律扶助、女性弁護士相談、ADRなど多様な法律相談サービスを市民が容易に利用できる態勢の整備、さらには刑事国選弁護事件および少年付添事件の対応態勢の整備などを掲げ、「全国各地においてあまねく、良質な司法サービスが提供できる体制の整備に、今後も全力を挙げて取り組む」ことを宣言している。

 

ネット上の情報管理問題
日弁連調査報告書を提出

弁護士・弁護士会に対する必要な情報提供と指導を要請

昨年末に発生した、インターネット上のメーリングリスト・掲示板サービスに関する情報管理問題について、3月14日、日弁連の調査チーム(座長:市毛由美子事務次長)が報告書を取りまとめ、日弁連会長に提出した。

 

報告書は、一連の事件により「裁判員候補者名簿、犯罪被害者の個人情報、その他の一般に公開されてはならない機微情報が、誰でも閲覧することのできる状態に置かれ、実際に第三者に閲覧されていたという深刻な事態」が引き起こされ、「弁護士と弁護士業務に対する市民及び司法関係者の信頼を著しく損ねる結果となった」と認定した上で、日弁連に対し、特に問題が深刻であった三弁護士会(東京、岐阜県、熊本県)に向け適切な指導・監督を行うよう要請した。併せて、日弁連において、弁護士業務における情報セキュリティ全般について、ガイドラインの策定、研修の実施など、弁護士と弁護士会に対する必要な情報提供と指導を行うよう求めている。

 

報告書を受け、日弁連は直ちに上記三弁護士会への指導文書を発した。さらに、記者会見を開いて報告書の内容を公表し、インターネット上の情報管理に関し日弁連の指導・監督が不十分であったことについて、宇都宮会長が反省の弁を述べるとともに、このような事態が繰り返されることのないよう徹底した措置を講ずる旨を表明した。

 

2012年度役員紹介

 3月9日に開催された代議員会(本人出席256人、代理出席229人)において、2012年度役員が選出された。就任にあたり、13人の副会長の抱負と理事および監事の氏名を紹介する。

 

斎藤 義房(さいとうよしふさ)(東京・二六期)

斎藤 義房(さいとうよしふさ)

[出身]千葉県
[抱負]東日本大震災・原発事故被災者の一日も早い権利回復、適正・迅速な司法への基盤整備を求める運動、そして若手会員支援に力を尽くします。あわせて、全面的国選付添人制度の早期実現のために頑張ります。

 

 

樋口 一夫(ひぐちかずお)(第一東京・三〇期)

樋口 一夫(ひぐちかずお)

[出身]東京都
[抱負]財務委員会、秘密保全法制、若手法曹サポートなどの担当となります。若者の希望の持てる社会のため、市民の基本的人権の擁護のため、秘密保全法制などの危険な法制度の阻止のため微力を尽くします。

 

 

橋本 副孝(はしもとふくたか)(第二東京・三一期)

橋本 副孝(はしもとふくたか)

[出身]長野県
[抱負]法科大学院センター、法曹養成、司法制度調査会、国際交流、外国弁護士及び国際法律業務委員会などを担当します。法曹養成、債権法改正、国際法律業務の在り方などを中心に、副会長として全力を尽くします。

 

 

武井 共夫(たけいともお)(横浜・三三期)

武井 共夫(たけいともお)

[出身]東京都
[抱負]広報と消費者問題対策委員会・貧困問題対策本部・人権擁護大会など人権関係全般を担当します。日弁連の役割や見解を市民に理解してもらい、人権状況をよくするために、知恵と力を発揮して頑張っていきたいと決意しています。

 

佐藤 豊(さとうゆたか)(長野県・二八期)

佐藤 豊(さとうゆたか)

[出身]長野県
[抱負]日本司法支援センター推進本部などを担当します。東日本大震災および原発事故の被災者に対する法的対応に関し、日弁連と法テラスが、それぞれの使命を充分果たせるよう、微力ながら全力を尽くします。

 

 

藪野 恒明(やぶのつねあき)(大阪・二九期)

藪野 恒明(やぶのつねあき)

[出身]大阪府
[抱負]民事司法改革推進本部を中心に、リーガル・アクセス・センターや集合訴訟WGなどを担当します。民事司法を市民にとって身近なもの、利用しやすく、わかりやすいもの、実効性のあるものに改革するべく全力を尽くします。

 

 

小川 恭子(おがわきょうこ)(滋賀・三四期)

小川 恭子(おがわきょうこ)

[出身]滋賀県
[抱負]日弁連の縦割の組織に男女共同参画の横串を指す役割を担うのが男女共同参画推進本部です。女性弁護士急増の中、業務・会務の両面で、女性弁護士対策とジェンダーの視点の注入に微力を尽します。

 

 

纐纈 和義(こうけつかずよし)(愛知県・三一期)

纐纈 和義(こうけつかずよし)

[出身]岐阜県
[抱負]法曹界は現在大変な危機に直面しています。法曹人口問題、法曹養成制度が根源的に問われています。これらの問題と共に経済的な事情から有為な人材が法曹への道を断念することがないよう給費制維持に取り組みます。

 

 

山下 哲夫(やましたてつお)(広島・三四期)

山下 哲夫(やましたてつお)

[出身]広島県
[抱負]業務改革、司法修習、研修センター、環境保全などを担当します。司法を担う弁護士として業務の拡大を図るとともにプロフェッションとしての質を高めることの重要性を感じています。また環境保全は現在の社会において避けて通れない課題です。関係委員会の皆様と協力して一年頑張ります。

 

 

市丸 信敏(いちまるのぶとし)(福岡県・三五期)

市丸 信敏(いちまるのぶとし)

[出身]福岡県
[抱負]法曹人口問題、中小企業法律支援センター、行政訴訟センター、弁護士倫理、IT化推進WGなどを担当します。会員の皆さまとともに司法改革の理念追求に努めつつ、法曹養成制度全体の立て直し、活動領域の拡充に心を砕きます。

 

 

森山 博(もりやまひろし)(仙台・三六期)

森山 博(もりやまひろし)

[出身]宮城県
[抱負]被災地の弁護士として、東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部の担当となりました。二重ローン問題の実効的解決、被災地域の再生を目指します。日本の人権状況の更なる改善、犯罪被害者等施策の充実に努めます。

 

 

髙崎 暢(たかさきとおる)(札幌・三四期)

髙崎 暢(たかさきとおる)

[出身]北海道
[抱負]取調べの可視化の実現、人質司法の打破、被疑者国選の拡大に全力投球します。法曹一元に結びつく弁護士任官、裁判を受ける権利の保障に直結する支部問題、改憲の動きのある憲法などを担当。全力を尽くします。

 

 

宇都宮眞由美(うつのみやまゆみ)(愛媛・三五期)

宇都宮眞由美(うつのみやまゆみ)

[出身]愛媛県
[抱負]四国ブロックから推薦されました。家事法制委員会、ハーグ条約に関するWGなど担当します。在野法曹としての弁護士の役割を忘れずに頑張りたいと思います。

 

 

新事務次長紹介

 3月31日をもって、岡田理樹事務次長(第二東京)が退任し、後任には、大貫裕仁会員(第二東京)が就任した。

 

大貫裕仁会員(第二東京)

大貫 裕仁(おおぬきゆうじ)(第二東京・四二期)

[出身]茨城県
[抱負]国際関係の諸委員会、倒産、民裁、研修、業務改革委員会などを中心に担当します。いずれの分野も重要な課題があり全力で取り組む所存です。また、その余の次長の役割も粉骨砕身果たしてまいります。よろしくお願い申し上げます。

 

理事

  • 大澤 成美(東京)
  • 松江 康司(東京)
  • 石原  修(東京)
  • 髙田 弘明(東京)
  • 堂野 達之(東京)
  • 五島 丈裕(東京)
  • 髙橋 一郎(第一東京)
  • 山本光太郎(第一東京)
  • 林  勘市(第一東京)
  • 髙  博一(第二東京)
  • 小林 克信(第二東京)
  • 小林 哲也(第二東京)
  • 新穂  均(第二東京)
  • 小島 周一(横浜)
  • 木村 保夫(横浜)
  • 田島 義久(埼玉)
  • 佐野 善房(千葉県)
  • 齋藤 和紀(千葉県)
  • 安江  祐(茨城県)
  • 蓬田 勝美(栃木県)
  • 石原 栄一(群馬)
  • 渥美 利之(静岡県)
  • 清水  毅(山梨県)
  • 林  一樹(長野県)
  • 伊藤 秀夫(新潟県)
  • 松葉 知幸(大阪)
  • 小原 正敏(大阪)
  • 尾川 雅清(大阪)
  • 小川 達雄(京都)
  • 吉川 哲朗(京都)
  • 林  晃史(兵庫県)
  • 中本  勝(奈良)
  • 山﨑 靖子(奈良)
  • 荒川 葉子(滋賀)
  • 阪本 康文(和歌山)
  • 中村 正典(愛知県)
  • 花井 増實(愛知県)
  • 村瀬 勝彦(三重)
  • 伊藤 公郎(岐阜県)
  • 和田 晋一(福井)
  • 奥村  回(金沢)
  • 青島 明生(富山県)
  • 小田 清和(広島)
  • 中光 弘治(山口県)
  • 火矢 悦治(岡山)
  • 松本美惠子(鳥取県)
  • 水野 彰子(島根県)
  • 古賀 和孝(福岡県)
  • 秋月 愼一(福岡県)
  • 安永  宏(佐賀県)
  • 戸田 久嗣(長崎県)
  • 鈴木 宗嚴(大分県)
  • 坂本 秀德(熊本県)
  • 新納 幸辰(鹿児島県)
  • 松田 幸子(宮崎県)
  • 加藤  裕(沖縄)
  • 髙橋 春男(仙台)
  • 本田 哲夫(福島県)
  • 村山  永(山形県)
  • 渡辺 正和(岩手)
  • 近江 直人(秋田)
  • 葛西  聡(青森県)
  • 山﨑  博(札幌)
  • 長田 正寛(札幌)
  • 室田 則之(函館)
  • 辻本 純成(旭川)
  • 中島 和典(釧路)
  • 白井 一郎(香川県)
  • 竹原 大輔(徳島)
  • 岩﨑 淳司(高知)
  • 田所 邦彦(愛媛)

監事

  • 野々山哲郎(東京)
  • 松田 隆次(第二東京)
  • 石曽根清晃(長野県)
  • 待場  豊(大阪)
  • 鷲見 和人(岐阜県)

大橋正春新最高裁判事に聞く

今年2月13日に任命された大橋正春最高裁判事に今後の抱負などをお聞きしました。大橋正春新最高裁判事 
―職務に就かれた感想はいかがでしょうか

最初の1カ月間は新件が配てんされないので、まだ実務には就いていませんが、裁判官との交流など業務の準備を始めているところです。弁護士の時と違って、秘書官など私を担当する方がたくさんいたり、同じ部屋の中には誰もいなかったりと、環境は一変しましたね。もっとも、就職した法律事務所など身の回りに最高裁判所判事になった先輩方がいて、少しはお話を聞いたこともあったので、雲の上の世界という感じではありませんでした。

 

―そもそも法曹を目指そうと考えたのはいつ頃からですか

司法試験の受験を考えたのは大学に入学してからです。当時は東大紛争真っ盛りという時代で権力と戦おうという空気の影響はある程度受けたことはあったのかもしれません。司法修習生当時の民事弁護教官が商売っ気のない方で「教官に弁護士が務まるなら、僕でも大丈夫だろう」と考えたということもありますね(笑)。

 

―実際に弁護士になった時に感じたやりがい、仕事の上での信条は

弁護士になってよかったと思うのはやはり、依頼人に喜んでいただいた時です。信条は、一つ一つの事件に誠実に向き合うこと。同じような事件でも弁護士によって考え方が違うこともあるだろうし、依頼人と弁護士との関係によって解決方法が違ってくることもあります。扱っている事件が多いとワンオブゼムに捉えてしまいそうになりますが、依頼人にとってはその一件が自分にとって一番大事な事件です。それを忘れてはいけないと考えていました。

 

―弁護士会会務で力を入れてきたことは

法科大学院制度の立ち上げに携わり、日弁連法科大学院センターの委員長を務めました。最高裁判所の司法修習委員会の委員を務めたこともあります。

 

―弁護士出身者としてどのように職務に取り組みたいとお考えですか

私自身は、弁護士出身であることを特別に意識することはありません。ただ、弁護士としての長年の経験や見方が身に染み付いているので、それはおのずと判断の時に現れてくると思います。今の自分で精一杯勝負しようと思っています。
誰かが「日本の裁判所の制度は一番上と一番下が陪審制だ」つまり、簡易裁判所と最高裁判所に法曹ではない人も加わって判断しているということを話されていました。その方自身は必ずしもポジティブな意味ではなかったかもしれませんが、私は色々な経験や背景を持った人が最高裁判所の裁判官になるのはとてもいいことだと思っています。
これまで基本的には依頼人のためにというベクトルで誠実に仕事を進めてきました。でも、最高裁判事になって、これからの自分のベクトルをどこに置くか、依頼人は誰か、国か、国民か、正義か。言葉で言えばそれは「法律と良心」なんですが、具体的な事件を目の前にした時にどういう軸で判断するかを考えているところです。

 

―余暇にしていることや趣味はありますか

自分では泥んこ遊びと呼んでいるのですが、陶芸はかれこれ10年ほど、月に1回は通って、自分の好きなものを作っています。土をこねている時間がいいですね。また、落語は志ん朝が好きでよく聴きますよ。

 

―最後に弁護士や弁護士会に向けて期待することをお聞かせください

まずは一人一人の弁護士が自分の仕事に真剣に向き合うことが何よりです。とはいえ、弁護士一人ではなかなか解決できない問題はあるので、そこを弁護士会には頑張ってもらえればと思います。例えば、私自身は裁判員裁判を経験していませんが、検察官側が組織によるバックアップがある一方で、弁護人の準備は個人の負担が非常に重いと聞きます。こういう点を弁護士会でサポートできるようにしていただきたいですね。

 

<大橋正春最高裁判事プロフィール>
  • 1968年/司法試験合格
  • 1969年/東京大学法学部第一類(私法コース)卒業
  • 1970年/東京大学法学部第二類(公法コース)卒業・司法修習生
  • 1972年/弁護士登録(第一東京弁護士会)
  • 1993年/司法研修所弁護教官(民事)
  • 2001年/日本弁護士連合会常務理事
  • 2006年/日本弁護士連合会法科大学院センター委員長
  • 2012年2月13日/最高裁判事就任

 

 

国際貿易に関するセミナー
ダンピングから企業を守れ
2月23日・弁護士会館

「海外の競合会社が日本国内でダンピングをしています、何とかなりませんか」と相談されたら、皆さんはどう回答するだろうか。アンチダンピングのための法的助言について企業のニーズが増加する中、WTO協定に基づく貿易救済措置に関する研修が開催された。

 

川合会員 
打たれる一方の日本

WTO協定には、自国の産業が他国企業の不公正な貿易実態により被害を受けている場合、自国産業を救済するためアンチダンピング課税などの手続が定められている。
経済産業省貿易経済協力局特殊関税等調査室の岩瀬恵一室長によれば、九五年から昨年上半期までに発動されたアンチダンピング関税は累計で2543件、日本が発動したのはわずか7件。一方、発動を受けたのは116件。数字を見ると日本は打たれる一方というに近い状況にある。

 

申請前にも弁護士の関与を

ダンピングが疑われる輸入貨物の調査を申請するにあたっては、当該貨物の国内総生産高の25%を超える国内生産者(またはその団体)である必要がある。
財務省関税局特殊関税調査室の秋田潤室長は「個別企業のための制度ではないので、同じ業界内での意思統一が必要」と説明した。一方実務に携わる川合弘造会員(第一東京)は「国内生産の会社もあれば、国外で生産し輸入する会社もある。現実には意思統一が難しい」と語る。また、申請準備のための業者間の情報収集は独禁法で禁止される価格カルテルと疑われる可能性があるが、代理人弁護士が調査にあたることによりこのようなリスクを回避することができるという。
この分野における弁護士の活躍の場は今後ますます拡がっていくと思われる。

 

チューター弁護士とチューター制度利用者との意見交換会
3月6日 弁護士会館

即時、早期独立弁護士に向けて、日弁連は独立開業支援メーリングリストの設置、チューター(相談・指導担当者)制度、各種事務所開設の手引本の発行等の取り組みをしている。今回、チューター制度利用者との意見交換を通じて、新人弁護士支援態勢につき検討した。

 

大規模弁護士会における工夫

第二東京弁護士会より、新人弁護士のオン・ザ・ジョブ・トレーニングの機会提供として、ベテラン弁護士と共同受任して事件処理を身近で学ぶ「指導担当弁護士制度」や、事務所の確保が困難な新人弁護士に対し、実費程度の負担だけで独立した事務所スペースを提供するという「はなさき記念館」の開設および運営状況が報告された。
第一東京弁護士会からは、新入会員を少人数に分けて定期的に意見交換を実施しており、班長の立場の副会長がチューターのような機能をしているとの報告があった。

 

弁護士会の実情に応じた支援を

後半は、各弁護士会やチューター制度利用者との率直な意見交換がなされた。
大規模弁護士会のチューター弁護士からは「新規登録会員が増加し、会員同士の顔がみえない。縦横のつながりがないところに会務への参加も期待できない」との意見が出された。
他方、中小規模弁護士会のチューター制度利用者からは、縦横のつながりは十分に図れているが、今後もさらなる新人への業務支援が必要という意見があった。
今後は、各弁護士会がその実情に応じた支援を日弁連に要求していくべきとの提案があった。また、各弁護士会の支援にも手を挙げない、埋もれてしまった新人弁護士をどうサポートするか、新人の組織内弁護士をどうサポートするかという問題が提起された。

 

知的財産訴訟講演会
知的財産訴訟の現状
2月28日 弁護士会館

元知財高裁の大鷹一郎判事(現東京地裁判事)を迎えて、知的財産訴訟の現状についての講演会を開催した。

 

阪神・淡路大震災の経験を踏まえた被災者支援

知的財産訴訟は、訴訟対象が技術的・法的専門性を有する上、その判断は企業の経済活動と直結する。海外で同事件が同時進行で行われることもある。かような特殊性に対応すべく、知財高裁が創設され、管轄の集中が図られている。
さらに技術的専門性に対応するため、知財高裁および地裁の知財部では、専門委員制度、調査官制度を採用している。技術内容につき助言する専門委員は技術者が多く、書面を検討し助言する調査官は、特許庁出身者や弁理士が多い。

 

侵害論と損害論の二段階審理

第1回口頭弁論では、当事者が基本的証書を提出し、次回以降の弁論準備手続において、対象の特定、被告からの無効の抗弁に対する審理を行い、必要に応じて、侵害論のまとめとして、当事者によるプレゼンテーション(技術的説明会)を実施する(最高裁ホームページ「特許権侵害訴訟の審理要領(侵害論)」参照)。
その後、和解を勧告する場合も多い。認容の心証の場合は和解し易いが、棄却の心証の場合は、判決に至ることが多く、その結果、棄却判決が多くなるという。実際、事件の三割程度が判決に至り、認容率はその三割となっている。
また、特許の有効性の判断に関し、特許庁の無効審判との判断の抵触を避けるべく、平成23年特許法の改正により、審決予告制度の導入、再審の訴えなどにおける主張の制限が設けられている。

 

シンポジウム 被災者支援の歩みとこれからを考える
東日本大震災から一年の総括と今後の課題
3月9日 弁護士会館

東日本大震災の被災者支援における弁護士および弁護士会の取り組みの総括と今後の課題について、二重ローン問題と原発賠償問題を中心に議論した。

被災者への情報提供と被災者ニーズの収集~

冒頭の基調講演では、日弁連災害復興支援委員会の永井幸寿委員長が一年間の取り組みを総括した。弁護士会が約3万7千件の無料法律相談を実施したことにより、弁護士を介した被災者への情報提供が実現するとともに、被災者のニーズという立法事実を収集したことにより、「個人版私的整理ガイドライン」などの政策提言につながったこと、今後の課題としては被災地弁護士会との調整および民事法律扶助事件の資力要件の撤廃などの立法化(一面関連記事)などが挙げられた。

 

個人・事業者それぞれの救済スキーム

二重ローン問題についてのパネルディスカッションでは、「個人版私的整理ガイドライン」の運用が次第に改善され、今後活用範囲の拡大が期待されるとの報告があった。
他方、被災自治体の復興には事業者の再生が不可欠であるところ、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法が制定され、3月5日から業務を開始している。これによって、金融機関等の被災事業者に対する債権を買い取り、旧債務を整理した上で、新たな資金の貸付によって新事業を支援するスキームができた。今後は、昨年11月から業務開始している産業復興機構の債権買取との役割分担が課題との意見があった。

 

原紛センターへの申立て急増中

原発被害に関するADRである原子力損害賠償紛争解決センター(原紛センター)には、3月8日現在、1240件を超える申立てがあり、2月末には双葉町住民の一斉申立てがあったと報告された。2月27日には、いわゆる第一号事件において仮払金を控除しないこと、清算条項を付さないことなどの内容を含む和解が成立し、後に続く紛争解決への指針として有意義であるとの意見があった。
今後は、迅速な損害賠償を実現すべく、和解仲介手続における先行内払いを認めたり、生活費の立証方法につき簡易な認定方法を認めることなどが課題であると指摘された。
 シンポジウムの中で、南相馬市長および双葉町長からの継続的支援を求めるビデオメッセージが流され、復興に向けた取り組みは第一歩が踏み出されたばかりであることを参加者全員で確認した。

 

可視化市民集会
えん罪は密室で作られる
えん罪被害者が語る不当な取調べ
3月15日 弁護士会館

小堀氏、周防氏 闘病中の被疑者に対する長時間の取調べと暴言

本年九月に開催される司法シンポジウムのプレシンポジウムとして、標記イベントが開催された。「震災は他人事ではない」との呼びかけに、約800人の市民および弁護士が集まった。

 

えん罪は思い込みやシステムが原因

「それでもボクはやってない」などの映画作品で知られる周防正行監督は、その取材過程で刑事司法の現実に驚いたという。「えん罪はそれまで、人が人を裁くことの難しさとか、哲学的な問題から出てくるのかと思っていたが違った。えん罪は思い込みやシステムの問題などのバカバカしいことでできていた」と語る周防氏は、だからこそ可視化を進め、取調べはインタビューとして事実を聞くことに徹しなくてはいけないと力説する。

 

えん罪は犯罪の極致

菊地幸夫会員(第二東京)の進行で行われたパネルディスカッションでは、小堀氏、周防氏に小坂井久会員(法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会幹事)が加わって討論した。小坂井会員は「小堀さんのケースは象徴的。検察がある種の強迫観念にとらわれるまま一所懸命やる中で落とし穴にはまるのがえん罪。可視化はそのシステムの問題の突破口になる」と語った。「えん罪は犯罪の極致です」…小堀氏が最後に語った言葉が極めて印象的だった。

 

第5回全国支部問題シンポジウム
支部問題は行動する段階へ

支部問題とは、裁判所等の支部、出張所数の不足等の物的基盤の問題、あるいは支部等に裁判官、検察官が常駐しない等の人的基盤の問題により、市民の司法アクセスが阻害されている状況をいう。期日自体が月に1回しか開催されない出張所も存在するという。本シンポジウムでは、全国から支部問題担当者が集い、今後の運動の方向性について協議した。

都市部での支部問題も深刻化

支部問題は地方だけではなく、都市部でも人口増加に対応できず、地方同様に深刻な問題が生じている。

市川簡易裁判所と千葉地家裁市川出張所の管轄区域の人口は124万人を超え、家事事件は本庁に次ぐ多数の事件を処理している。しかし、市川出張所はいまだ裁判官は非常駐である。市川調停協会の阿多真人会長によれば、建物も増加する事件数に対応していないため、控え室の外で申立人と相手方が待たざるを得ない状況や、部屋が狭いため調停委員のメモの中身まで見えてしまうような状況が続いているという。DV事件でのリスクを考えると、重大な結果を招きかねない問題といえる。

 

情報交換から具体的アクションへ

意見交換では、各地の会員からの報告をもとに、今後は情報交換のみならず市民運動や政治家への働きかけを行うべき、第一審強化方策地方協議会や地家裁委員会で議論の俎上にあげるべきなど、支部問題解消のため多様なアクションが提案された。

 

民法改正を求める院内集会
国の立法不作為を問う!
3月8日 参議院会館

本集会は、民法改正情報ネットワーク(mネット)主催、日弁連共催により開催された。
開会挨拶に立った藤田善六日弁連副会長は、国内外からの批判が集まっているのにもかかわらず、未だ家族法の差別的規定が改正されていない現状を誠に遺憾であるとし、改正への機運を高めていきたいと決意を述べた。
当日は国会議員も多数参加し、それぞれが困難な情勢でも民法を改正しようという意気込みを語った。
大谷美紀子会員(国際人権問題委員会副委員長)は、国連の各種委員会は日本政府に対し家族法改正に関する再三の勧告を行ってきたが、とりわけ、女性差別撤廃委員会による2009年の審査で、改めて勧告の実施について必要な措置を講じるよう国会に働きかけることを勧告したという経緯を説明し、日本が締結した条約の誠実遵守義務を定める憲法98条2項の観点からも、立法府に責任があると解説した。
民法750条が憲法・条約に違反するとする別姓訴訟弁護団の寺原真希子会員(両性の平等に関する委員会特別委嘱委員)は、婚姻前の氏を捨てるか、法律婚を断念するかの二者択一を迫る民法750条は違憲であり、これを改正しない国の立法不作為の違法性は明白であると指摘した。
その他、別姓訴訟の原告や、婚外子の当事者、女性団体などから、法改正を求める切実な発言が相次いだ。これら100人を超える参加者による熱気ある集会が、改正の契機となることが望まれる。

 

(両性の平等に関する委員会特別委嘱委員 打越さく良)

 

シンポジウム 子ども中心の婚姻費用・養育費への転換
あなたは簡易算定表を安易に使っていないか?
3月3日 弁護士会館

簡易算定表の仕組みとは

養育費は、義務者の基礎収入から子の生活費を算出し、それを義務者と権利者の基礎収入で按分して算出するものである。計算式は「基礎収入=総収入-(公租公課+職業費+特別経費)」となる。「職業費」は、職業を維持する上で必要とされる費用を指し、被服費、交通費などがこれにあたる。「特別経費」は、家計費の中で弾力性に乏しい費用を指し、住居費、ローン、医療費などがこれにあたる。 簡易算定表は、統計資料から、所得に応じて公租公課・職業費・特別経費を概算し、表にしたものである。

 

こんなにある簡易算定表の問題点

しかしながら、公租公課は、源泉徴収票等で認定できることから標準化の必要性はない。また、職業費は、世帯全員分の支出額の統計数値を基礎としており、総じて過大に算出されている。 特別経費、特に住居費を現状のまま控除すると、義務者に都心の一等地の戸建て住宅を認めつつ、権利者に六畳一間のアパートを強要することにもなりかねないという問題点が生ずる。

 

貧困の連鎖を断ち切るために

後半のパネルディスカッションで、松嶋道夫特任教授(久留米大学法科大学院法務研究科)は、簡易算定表の基礎控除額が大きすぎると指摘し、「子どもの発達保障に足りない養育費の算定の強制は、憲法25条、13条に反する疑いがある」と語った。野﨑薫子元裁判官(千葉県)は、基礎控除額の数値の見直しが必要であると指摘し、湯澤直美教授(立教大学コミュニティ福祉学部)は、義務者の学歴と養育費の金額・支払状況との関連性の統計資料を引きつつ、「子どもの貧困の連鎖を断ち切らなければならない」と簡易算定表見直しの必要性を強調した。 日弁連も、3月15日の理事会で「養育費・婚姻費用の簡易算定方式・簡易算定表」に対する意見書をとりまとめており、今後、簡易算定表の修正などを求める取り組みを行っていく。

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.65

更生保護施設「雲仙・虹」障がいのある累犯者らを司法から福祉へつなぐために

きっかけとなった貼り絵作品 

長崎県にある「雲仙・虹」は、社会福祉法人が全国で初めて開設した更生保護施設です。同施設を開設した社会福祉法人南高愛隣会は、郵便不正事件で無罪となった村木厚子氏から国家賠償金の寄付を受けて、累犯障がい者などの支援を行うための「基金」設立も行っています。今回は、「雲仙・虹」の前田康弘施設長に、取り組みについて伺いました。
(広報室嘱託 葭葉裕子)

 

刑務所が「最後のセーフティーネット」の現実

近年の調査から、矯正施設(刑務所・少年院など)の中に、障がい者が多く存在し、福祉の支援が受けられないため軽微な犯罪を繰り返す負のスパイラルに陥っている累犯者が存在することや、刑務所が「最後のセーフティーネット」となっている現状などが明らかになってきた。そこで、南高愛隣会は、社会福祉法人としてのノウハウを活かし、罪を犯した障がい者らを矯正施設から福祉サービスにつなぐ「架け橋」となるため、また、刑期終了までに福祉の手立てが整わなかった出所者の「シェルター」として、更生保護施設「雲仙・虹」を開設した。

 

 

(貼り絵 写真提供「雲仙・虹」)

 

福祉事業所の不安を取り除く役割も大きい

社会福祉法人が更生保護施設を運営するメリットの一つとして、前田施設長は、「同一法人が運営する更生保護施設に併設の福祉事業所で、自立訓練などの福祉サービスを利用できること」を挙げる。 累犯障がい者らの中には、これまで福祉サービスを受けたことがなく、刑務所と福祉事業所との違いを理解していない人も多いという。「雲仙・虹」に併設する福祉事業所での実習や体験などを通じて、初めていろいろな福祉サービスがあることを知り、自ら納得して、福祉サービスを受けながら社会復帰を目指せるようになる。前田施設長は、「知的障がい者で、初犯から一三年経ち、六回の服役後、やっと福祉につながり、社会復帰できた例があった」と語る。 一方、多くの福祉事業所は、罪を犯した障がい者らを受け入れることに、不安感があるという。「雲仙・虹」およびこれに併設する福祉事業所が、この不安感を取り除く役割を果たす。当初は、罪を犯した障がい者の入所を断った福祉事業所が、「雲仙・虹」で本人が作成した貼り絵(写真参照)を見て、「このようなすばらしい作品を作れる人であれば支援したい」と、最終的に受け入れに至ったケースもあったという。

 

 

公判中から関与して実刑から執行猶予の判決になった例も

南高愛隣会では、罪を犯した障がい者らに、公判段階などから関わり、矯正施設に入れることなく、社会内で障がいの特性や犯罪の内容などに応じた更生改善を図る「地域社会内訓練事業」にも取り組む。 その一つとして、聴覚障がいと知的障がいがあって、19回服役し、一審で実刑判決となった後、保釈中に「雲仙・虹」に入所した被告人について、「被告人は、障がいを踏まえた更生環境が整い、改善の効果が表れてきた」として、高裁が保護観察付き執行猶予判決にした例などがあるという。

 

長崎県地域生活定着支援センターと二人三脚

「雲仙・虹」や南高愛隣会の取り組みは、「長崎県地域生活定着支援センターと二人三脚での協働支援」と前田施設長は話す。 この「地域生活定着支援センター」は、高齢または障がいを有するため福祉的な支援を必要とする矯正施設出所者について、出所後、直ちに福祉サービスなどにつなげることができるよう支援を行う機関であり、厚生労働省は、各都道府県に整備することとしている。 「長崎県地域生活定着支援センター」との協働の内容は、「雲仙・虹」に入所する前の面接から入所中の進捗状況などの確認、「雲仙・虹」から移行する予定先への訪問、移行後の問題時の対応などである。これにより、問題の相談・解決や情報・知識を共有できるとともに、移行後の福祉へつなぐ支援とフォローアップが期待できるなどの利点があるという。

 

知的障がいを疑ったら地域生活定着支援センターに連絡を

前田施設長は、「犯罪の背景には、生活困窮や障がい者としての支援がなかったことなどにあり、福祉的観点から幸せづくりをすることで再犯を無くしたい」と話す。そして、弁護人に対するお願いとして、「被疑者・被告人に、質問と答えがかみ合わないなどの知的障がい者の特性があるのかなど、『気づき』をお願いしたい。知的障がいの疑いを持ったら、地域生活定着支援センターに連絡してほしい」と語ってくれた。

 

日弁連で働く弁護士 (9)

立法対策室

日弁連では数多くの意見書、立法提言などが提出されていますが、これらの意見が具現化されるよう技術的な面でサポートするのが立法対策室です。加戸茂樹室長(第二東京)と渡邊寛一嘱託(横浜)にお話をうかがいました。
(広報室嘱託 白木麗弥)

 

渡邊嘱託と加戸室長

法制局のような役割を期待

本部は、現在、災害復興支援委員会を中心に、関連委員会から選出された委員総勢90人からなる。多様な委員会が関与することで、災害時に発生する様々な問題について専門的な見地から対応できるという。

 

日弁連を出たときがスタート

日弁連がとりまとめた意見書などが、法律の制定、改正のかたちで具現化されるには、政治家や官庁などからの理解を得ることが不可欠だ。任期付公務員として会社法の改正に携わった経験をもつ渡邊嘱託は「理念を伝えたい、意見を伝えたいというときに、必ずしも条文の形でなくてもよいのでは」という。条文案よりも、ポンチ絵や簡単な概念図を見せた方が却ってダイレクトに理念が伝わるのだそうだ。加戸室長は「意見書や改正案などは日弁連を離れた段階で初めてスタートラインに立っている。そこを意識するとより伝わりやすい提言になるはずです」と語る。

 

早めにご相談を

立法対策室では、委員会などから提言・意見の内容、執行先などを聞き取り、より効果的な方法をアドバイスする。大切なのは早めに相談すること。両嘱託は「条文の文言の一部を修正しようとすると、他の部分にも影響を及ぼすことがあり、正副会長会や理事会の間際では修正自体が非常に難しくなってしまうこともあります」と口を揃える。まだ案文が固まりきらない段階で立法対策室に相談し、技術的な問題点をクリアしておくと、「提言の実現可能性」がより高まるだろう。

 

ブックセンターベストセラー(2011年12月・六法、手帳は除く)
協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書籍 著者・編者 出版社

新版 注釈民法 (10) 2  債権(1) 債権の目的・効力(2)  §§415~426

奥田 昌道 編 有斐閣
個人再生の手引

鹿子 木康・島岡 大雄 編/

東京地裁個人再生実務研究会 著

判例タイムズ社
株式会社法 第4版 江頭憲治郎 著 有斐閣
労働事件審理ノート[第3版] 山口 幸雄・三代川 三千代・難波 孝一 編 判例タイムズ社

最高裁判所判例解説 民事扁

平成二十年度

法曹会 編 法曹会
実践!刑事弁護異議マニュアル 大阪弁護士会 刑事弁護士委員会 公判弁護実務部会 編 現代人文社
破産管材の手引

東京裁破産実務研究所会 著

ぎんざい
別冊判例タイムズNo.33 過払金返環請求訴の実務 判例タイムズ社
法務Q&A 非上場会社の支配権獲得戦 高村隆司 著 中央経済社
10 遂条解説会社法 第5巻 機関・2 酒巻俊雄・龍田節 編集代表 中央経済社

編集後記

特集記事でご紹介しましたとおり、郵便不正事件で無罪となった村木厚子氏は、罪を犯した障がい者の支援に実績のある社会福祉法人南高愛隣会に対し、国家賠償金を寄付されました。報道によると、その理由として、「国民の税金である賠償金を、最も光りの当たりにくい累犯障がい者などのために使ってもらいたいと思った」と話していたそうです。

今回取材させていただいた南高愛隣会が運営する「雲仙・虹」をはじめとする更生保護施設や矯正施設などの取材を通じて、累犯障がい者などの司法と福祉をつなぐ取り組みや刑事政策を真剣に考える機会を得て、今後も考え続けていく必要を感じています。

日弁連新聞では、これからも司法と福祉をつなぐ取り組みなどの情報を提供していきたいと思いますので、今後とも、ご愛読いただければ幸いです。

(H・Y)