日弁連新聞 第454号

第54回人権擁護大会開催 10月6日~7日 高松市

死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言などを採択

宣言は全会一致で可決された

54回目を数える人権擁護大会には、約1100人の会員が参加し、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言のほか、3本の決議を採択した。大会前日には3つの分科会が開催され、約2100人の会員・市民が参加した。なお、次回大会は佐賀県で開催されることが決定している。

 

罪を犯した人の社会復帰のための施策の確立を求め、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言

不必要な拘禁の回避、仮釈放の積極的実施、矯正・保護部門と福祉部門との連携の拡大強化など受刑者の社会復帰のための施策の確立を求めるとともに、死刑廃止について全社会的議論を開始し、その議論の間、死刑の執行を停止することなどを求めるもの。
討論では、死刑廃止に関する会内的合意形成が不十分であるとの意見も出たが、国際的な死刑廃止への流れなどを踏まえた賛成意見が相次ぎ、圧倒的多数で可決された。

 

 

希望社会の実現のため、社会保障のグランドデザイン策定を求める決議

誰もが豊かさを実感し、希望を持てる社会を実現するために、必要な就労支援、所得保障、子育て、教育、医療、介護、住宅保障などを骨子とする社会保障のグランドデザイン策定を求めるとともに、社会保障制度の利用が恩恵ではなく具体的な権利であることなどを定める社会保障基本法の制定を求めるもの。

 

 

患者の権利に関する法律の制定を求める決議

何人も人間の尊厳を踏まえた安全で質の高い医療を平等に受ける権利を有すること、患者の自己決定権が実質的に保障されること、国や自治体がこれらの権利を保障する責務を負うことなどを内容とする患者の権利に関する法律の制定を求めるもの。

 

 

障害者自立支援法を確実に廃止し、障がいのある当事者の意見を最大限尊重し、その権利を保障する総合的な福祉法の制定を求める決議

応益負担制度を骨格とする障害者自立支援法について、各地で違憲訴訟が提起された結果、国は同法を二〇一三年八月までに廃止することを確約した。本決議は、同法の確実な廃止を求めるとともに、障がいのある人の権利を保障する新たな総合福祉法の制定・施行を求めている。

 

全面的国選付添人制度の実現を求める院内集会

10月18日 衆議院第二議員会館

現行の国選付添人制度は、対象事件が重大事件に限定され、選任も裁判所の裁量に委ねられている。そこで、少年鑑別所に収容されたすべての少年事件を対象とする「全面的国選付添人制度」の実現を求めて本集会を開催した。衆参合わせて国会議員本人出席13人、代理出席52人があり、実現に向けたメッセージが寄せられた。

 

冒頭、金子祐子会員(全面的国選付添人制度実現本部事務局次長)は、被疑者段階で少年の国選弁護人に選任されても、家庭裁判所送致後は、国選付添人に選任されず、少年が「置き去り」となる問題を指摘した。これを防ぐため、日弁連は、会員から徴収する特別会費で少年保護事件付添援助制度を設けているが、そのような努力にもかかわらず、2010年の司法統計によると、少年鑑別所に収容された少年の38%および少年院に送致された少年の31%に弁護士付添人が選任されていないという。さらに、金子会員は、少年は成人より防御能力が弱いこと、少年鑑別所に収容される少年は、家庭環境の調整が必要な場合が多いこと、少年院送致等の重大な処分を受ける割合も多いことなどから、全面的国選付添人制度の実現が必要であると訴えた。
続いて、片山徒有氏(被害者と司法を考える会代表)が「少年の気持ちを代弁する国選付添人の支援が必要」と指摘し、新倉修教授(青山学院大学法務研究科)も「すべての少年に基本的権利が保障されるべきであり、そのためにも全面的国選付添人制度の導入が不可欠」と語った。

 

被災高齢者・障がい者のための「サポート拠点との連携モデル事業」実施へ

いわゆる「災害弱者」とされる高齢者・障がい者支援のため、厚生労働省は、7月19日付けで「サポート拠点等の被災者支援における弁護士会等との連携について」との事務連絡を発し、これに基づいて、現在、被災各県の弁護士会の高齢者・障がい者支援センター等と各地の仮設住宅等に近接するサポート拠点との連携が急ピッチで進められている。

 

宮城県では、開設予定の40カ所のサポート拠点の運営を支援する「宮城県サポートセンター支援事務所」に弁護士会が関与して連携を進め、近日中にもサポート拠点に常駐するライフサポートアドバイザーの養成研修やスーパーバイズが始まる。福島県では9月から市町村において、県内設置予定のサポート拠点16カ所のほとんどと弁護士会との連携協議が詰められている。岩手県では、県内設置予定のサポート拠点12カ所のうち大槌、山田、釜石における6カ所が完成し、9月から稼働している。岩手の会員が、ひまわり公設事務所等とも連携して、サポート拠点に配置されているライフサポートアドバイザーに密着するなどして、仮設住宅における法律相談ニーズ等の調査を開始した。日弁連では、各弁護士会とサポート拠点との連携支援を目的に、この秋から3カ月を目処に「サポート拠点との連携モデル事業」の実施を決め、高齢社会対策本部、高齢者・障害者の権利に関する委員会委員の現地派遣や、各地の実情に応じた様々な連携方法を試行、模索している。このモデル事業を通して、一つでも多くの市町村がサポート拠点と弁護士会との連携を進め、長期化が予想される仮設住宅の高齢者、障がい者、その家族の法的支援の柱を形成することが期待される。

 

ひまわり

10月7日の人権擁護大会で、死刑廃止についての全社会的議論を呼びかける宣言が採択された。折しも10月10日はフランスの死刑廃止30周年に当たり、フランス大使館と青山学院大学の共催による円卓会議が開催された▼この会議には死刑廃止当時の司法大臣であったバダンテール氏もインターネット中継で参加し、死刑廃止を目指す政治家にとって重要なことは「確信」と「勇気」と「誠実さ」だと強調した。「確信」とは反対派を説得する強固な信念・哲学のこと、そして、「勇気」とはこの信念を臆することなく貫く勇気のこと、「誠実さ」とは選挙で死刑廃止を公約に掲げて訴えることをいう▼当時、大統領候補であったミッテラン氏は、世論調査で62%が死刑存続であったにもかかわらず死刑廃止を公約に掲げて当選し、ただちに廃止を実行した。フランスではその後も死刑復活を望む声が少なくなかったが、2007年に議会の圧倒多数で憲法に死刑廃止を明記した▼死刑制度については日弁連内にもさまざまな議論があるが、何より85%以上が死刑容認という世論調査結果(内閣府)が大きな壁となっている。しかし、フランスの例は、政治家や法律家のリーダーシップこそ重要であることを教えている。(N・K)

 

 

人権擁護大会シンポジウム 10月6日

第1分科会

私たちは「犯罪」とどう向きあうべきか?

裁判員裁判を経験して死刑のない社会を構想する

クリスティ教授

市民が参加する裁判員裁判の下で、犯罪とどう向きあい、刑罰の本質をどう考えるべきか、死刑のない社会をどう構想すべきかを議論した。

 

冒頭、ノルウェーの犯罪学者ニルス・クリスティ教授(オスロ大学)が「私たちは『犯罪』とどう向きあうべきか?」をテーマに基調講演を行った。ノルウェーでは、罪を犯した人も人間として尊重するとの理念の下、社会からの隔離ではなく社会内処遇を優先する行刑を採用し、死刑も廃止している。クリスティ教授は、第二次大戦中のドイツ占領下のノルウェーに存在した強制収容所で働いていたノルウェー人からの聴き取り調査の結果、被収容者殺害に関与した人と関与しなかった人の違いは、被収容者を「自分と同じ人間である」と認識していたか否かにあったと指摘した。そして、刑罰を考えるとき、「罪を犯した人も人間である」と認識することの重要性を訴え、今年7月にノルウェーで起きたテロ事件に対しても、「応報よりも赦しが必要」と語った。
続いて、浜井浩一教授(龍谷大学法科大学院)が、日本の犯罪は、少子化とともに減少していることや、一方で、生活困窮などを原因とする高齢の受刑者が多いことなどを指摘し、「反省は一人でできるが、更生は一人ではできない」と訴えた。
後半のパネルディスカッションでは、近時の刑事裁判における厳罰化の問題や死刑制度の存廃などを議論した。会場からも、死刑事件弁護の経験から、「誤判の可能性がある以上、死刑は廃止すべき」との発言があるなど活発な意見交換が行われた。

 

第2分科会

今こそ「希望社会」へ

豊かさへの社会保障をデザインする

長妻元厚生労働省大臣

すべての人たちが貧困から脱し、豊かさを享受できる「希望社会」を実現するため、貧困の実態を把握し、諸外国の取り組みの成果を踏まえつつ、憲法を基軸とした社会保障のグランドデザインについて議論した。

 

冒頭、「今こそ『希望社会』へ」をテーマに暉峻淑子名誉教授(埼玉大学)が基調講演した。生活不安と貧困の中、個人が孤立した社会において、社会の連帯を取り戻すためには、社会保障によって最低限の安定性が保証され、未来の計画と希望を実現していける社会を作る必要があると訴えた。

続いて、村上晃会員(長野県)が、税と社会保障の所得再分配効果が小さい日本の現状を報告し、社会保障基本法制定の必要性を訴えた。塩見卓也会員(京都)は、社会保障に関する法典と司法による実効性ある救済制度が整備されたドイツの状況を報告した。

特別報告では、「入りやすい・出やすい生活保護」をテーマに生活保護受給者の自立に向けた施策を実行し成果をあげている釧路市の取り組みが紹介された。

以上の報告を受けたパネルディスカッションでは、長妻昭衆議院議員(元厚生労働大臣)、後藤道夫教授(都留文科大学)、釧覇法子教授(日本福祉大学)、竹信三恵子教授(和光大学・元朝日新聞編集委員兼論説委員)を迎えて討論した。スウェーデンの社会保障制度などを参考に、日本にも社会保障のグランドデザインが必要であること、東日本大震災の被災地で実施されている労働・福祉の施策を最先端のモデルとして全国に広げる必要があることなどが指摘された。

 

第3分科会

患者の権利法の制定を求めて

いのちと人間の尊厳を守る医療のために

患者の権利を守る前提となる医療制度が疲弊している中、あるべき医療制度と、患者の権利法の制定の必要性について議論した。

 

冒頭、被災地で十分な医療が受けられない現状について、被災地からのビデオレターや現場で働く医師の生の声が伝えられた。

また、国家による未曾有の人権侵害であるハンセン病問題について、神美知宏氏(全国ハンセン病療養所入所者協議会会長)が、医療の名の下に患者の人権が侵害された状況を生々しく語った。德田靖之会員(らい予防法違憲国賠訴訟西日本弁護団共同代表)は、「救う、救ってやるという意識は、救う対象者の権利を奪う危険をはらむ」と指摘した。

伊藤たてお氏(日本難病・疾病団体協議会代表理事)は、難病に対する国の政策は、患者の生活を支えるには程遠いレベルにとどまっていると訴えた。

インフォームド・コンセントという言葉は今や一般に知られているが、田中恭子医師(順天堂大学医学部小児科准教授)や福山美音子氏(NPO法人患者の権利オンブズマン)は、同意の前提となるべき患者への説明はいまだに不十分であると問題提起した。

引き続き行われたパネルディスカッションでは、患者および医療現場の現状を踏まえた患者の権利に関する基本法の在り方、議論の進め方などについて意見交換が行われた。

 

日弁連短信

南三陸町(宮城県)法テラス出張所開設

開所式の模様

10月2日、宮城県南三陸町に日本司法支援センター(法テラス)の南三陸出張所が開設された(3日に業務開始)。仙台弁護士会をはじめとする関係機関、自治体が協力をして、3年間の期限で設置される。弁護士による無料法律相談が毎日行われるほか(資力要件、個人・事業者を問わず相談可能)。司法書士をはじめとする各種専門家の相談窓口も設けられ、仙台弁護士会が行っている震災ADRの利用も可能である。

南三陸町は、宮城県北部の石巻市と気仙沼市の間に挟まれた沿岸部に位置し、法律事務所は存在しない。

出張所の設置場所は、総合体育館脇で、近くに医療施設もあり、町民にはわかりやすい。相談ブースも備えた車両が2台あり(うち1台は、大阪の保険会社からの無償で貸与された)、今後仮設住宅などへの巡回相談に利用することが予定されている。

運営責任者には地元の元消防署長が就任するなど、地元の大きな期待も感じられる。

今後、宮城県内では、12月に県南部の沿岸部の山元町、年度内に東松島市に同様の出張所が開設される。岩手県においても沿岸部の大槌町での設置が検討されている。

 

被災地での法的支援の工夫

本年7月の日弁連理事会において、岩手県沿岸部の法的サービスについて震災前から調査している東京大学社会科学研究所の佐藤岩夫教授を迎え、被災地の法的支援の課題について意見を伺った。

佐藤教授は、今回の被災地は、弁護士をはじめとする専門家が少ない地域が含まれており、専門家資源の投入が復興支援の重要な課題であると指摘した。被災者に近接した地域への法的サービス供給資源の配置のため、さまざまな方法を組み合わせる工夫が必要であり、後世、被災各地において、「あのときはどこにでも弁護士がいて助かった」と評価されるような歴史的役割を期待すると語った。

日弁連は、法テラスと被災者支援についての基本合意を締結しており、各地の弁護士会、弁護士会連合会とともに、こうした期待に応えていく必要がある。

(事務次長 鈴木啓文)

 

第2回人権関連委員会委員長会議開催 10月5日 高松市

「人権のための行動宣言」の定着・推進に向けて

→第17回弁護士業務改革シンポジウム

 

日弁連の人権関連委員会の交流と「人権のための行動宣言2009」の定着・推進を目的とした人権関連委員長会議が開催された。第2回の今回は、35の委員会や本部等の委員長等が参加した。

 

前半は、行動宣言の進捗状況と活動の工夫例について意見交換した。
国内人権機関実現委員会からは、情勢は前進しているものの反対運動も強くなってきているとして、弁護士会におけるより一層の取り組みの必要性が強調された。民事介入暴力対策委員会からは、全都道府県において暴力団排除条例を制定するにあたり、各弁護士会と警察との連携の状況が報告された。市民のための法教育委員会からは、高校の新学習指導要領において「幸福、正義、公正」という法の根本価値に関わる概念を採用させるに至った経緯について報告があった。

後半は、東日本大震災と人権について、東日本大震災・原子力発電所事故等対策本部の活動状況の報告がなされた後、各委員会の取組状況が報告された。
高齢社会対策本部から、サポート拠点を置いて弁護士派遣をするなどの厚生労働省との連携モデルを進めていることについて紹介された。子どもの権利に関する委員会からは、震災孤児のために弁護士による未成年後見人のニーズが高いことから、マニュアルを作成するなど支援体制を整えていることの報告があった。

行動宣言が採択されて二年が経過したが、実現された政策がある一方、未着手の課題も多く残されており、各委員会が情報交換や協力をしながら政策を推進していくことの重要性を再認識した会議であった。
(人権行動宣言推進会議事務局長 千木良正)

 

全国スタッフ弁護士経験交流会 9月23日 全国町村会館

日本司法支援センター(法テラス)が2006年10月に業務を開始してから五年。全国で活躍する5期生までのスタッフ弁護士が一堂に会し、活動報告を通じて情報を共有するとともに、今後の課題を検討した。

 

被災地弁護士の6カ月

福島から、ガソリンが供給されてからは仕事が激増し、避難所を訪問しては、被災者のニーズの掘り起こしを行い、その中で、避難所における人工透析患者の食事の問題、義援金受け取りによる生活保護打ち切りの問題に取り組んだとの報告があった。
また、「予想を超える災害に際し、一人では対応できなかった。二人いたからこそ試行錯誤しながら対応できた。一人体制を早急に改めてほしい」との切実な訴えがあった。

 

市民と司法の架け橋を目指して

ブラジル人の登録者数全国一位の愛知県(三河)から、外国人無料法律相談を試行的に実施していること、今後通訳人の待遇、広報の充実が課題であることが報告された。
また、鹿児島(鹿屋)、熊本、長崎(五島)からは、異業種交流会、PTA向けの法教育、役場を利用した出張相談を通じた少数者、弱者の権利保護を図る試みなどが紹介された。

 

関連機関との連携

平戸、福岡、下田、広島、高知からは、市町村役場、社会福祉協議会、NPO法人被害者支援センターとの緊密な連携による問題の掘り起こしの状況が報告され、「顔の見える関係づくり」の重要性が具体的に披露された。

 

引き継ぎ等に対する要望

福知山から、①スタッフ弁護士が交代する場合は三カ月の重複期間を設定すべき、②事務員が交代する場合は一カ月の重複期間を設定すべき、③弁護士会委員会活動を業務と認めるべき、④統一的な引き継ぎ手順、マニュアルを整備すべき等の提言があった。

 

新65期対象
日本司法支援センターひまわり基金法律事務所ガイダンス
9月30日弁護士会館

新谷泰真会員

新65期司法修習生を対象とした日本司法支援センター・ひまわり基金法律事務所ガイダンスが開催された。当日は約130人の司法試験合格者が詰めかけ、法テラススタッフ、ひまわり公設所長経験者の話に聞き入った。

 

冒頭、太田晃弘会員(元法テラス可児法律事務所)が、法テラススタッフ弁護士の役割について、「関係機関との協働の中で、地域の埋もれたニーズを掘り起こし、問題解決を図っていくことが求められている」と説明した。

続いて、日弁連公設事務所・法律相談センターから、田岡直博会員(初代宮古ひまわり基金法律事務所長)が、「これまでの所長経験者やベテラン弁護士とのネットワークがあるので遠隔地でも一人で悩む心配はない。自分から行動する弁護士に是非仲間に加わって欲しい」と呼びかけた。中山雅博会員(元むつひまわり基金法律事務所)も、「事件が解決した時の感謝のされ方は都会とは比べものにならない。大変やりがいを感じられる仕事だ」と弁護士過疎地域で活動することの魅力を語った。

今回のガイダンスで初めてこのようなキャリアパスを知ったという合格者もおり、スタッフ弁護士やひまわり基金法律事務所の所長の活躍ぶりが収録されたDVDを熱心に見つめる姿が印象的だった。

 

第1回日韓バーリーダーズ会議開催 9月23日~25日 韓国済州島 

 宇都宮会長

 

日韓両弁護士会は1987年から毎年、定期交流会を開催してきたが、25年目にあたる本年より「日韓バーリーダーズ会議」と銘打ち、両会の各理事者のみならず、地方弁護士会の代表も交えて開催されることとなった。日韓両国の弁護士の交流の裾野をさらに広げたい、世界における北東アジアの弁護士のプレゼンスを高めたい、との願いによるものである。第1回目の今回、日本からは35人が済州島入りした。

 

会議冒頭、東日本大震災に際し義捐金をいただいたことに対し、宇都宮健児会長から大韓弁協に対し、改めて謝意が述べられた。
「法曹人口の増加と弁護士の資質維持及び業務領域拡大」のセッションでは、大韓弁協側から、国民密着型サービスの実現と弁護士の業務拡大のため、弁護士が企業のコンプライアンスを行う遵法支援人制度や、弁護士が裁判所・検察庁・国会等にロークラークとして勤務するシステム、全国の自治体や警察署に弁護士が護民官として常駐する制度等の導入に取り組んでいることが紹介された。
「弁護士の公益活動」のセッションでは、日弁連側から、東京3会や大阪弁護士会における公益活動義務化の実情のほか、東日本大震災被災者のための各種法律相談に取り組み、相談件数が3万件を超えていること、震災復興のみならず原発対応についても各種政策提言を行い、その一部が既に実現されていること等を詳細に報告した。

 

総人口が我が国の4割弱に過ぎない韓国において、2012年は実に2500人が法曹資格を得る見込みである。かかる法曹人口の急増下、大韓弁協が行う弁護士の職域拡大のための取り組みは極めて切実かつ具体的であり、参加者は大いに刺激を受けた。
来年度の第2回会議は日本で開催される。
(国際室嘱託 大川秀史)

 

第24回ローエイシア年次大会 10月9日~13日 韓国ソウル

鈴木五十三会員(第二東京)を次期会長に選出

 鈴木五十三会員

大会に先立って開催された理事者会において、鈴木五十三会員(第二東京・写真)が全員一致で、次期会長に選出された。

 

日弁連の取り組みの報告

大会には日本から会員を中心に55人が参加した。開会式において宇都宮健児会長は、東日本大震災に対して各国から寄せられた激励メッセージに謝意を述べるとともに、震災復興に対する日弁連の取り組みについて、英語でスピーチを行った。 海渡雄一事務総長の「3月11日の原発事故後の我が国のエネルギー政策とエネルギー法」のスピーチに対しては数多くの質問が寄せられたほか、日弁連からの推薦で、手塚裕之会員(第一東京)、原田いづみ会員(栃木県)、東澤靖会員(第二東京)、藤田耕司会員(第二東京)、村田真一会員(第二東京)、矢部耕三会員(第一東京)が、各セッションでスピーカーとして登壇した。

 

若手会員を国際会議へ派遣

本大会で目を惹いたのが、若手弁護士が参加者の多くを占めたことである。国際室ではかねてより、韓国と香港の両弁護士会の制度を参考に、若手会員を国際会議に派遣する制度を検討していたところ、本大会において試行的に、日弁連の各委員会に所属する登録10年以内の若手弁護士9人を対象として、費用の一部を支援することとした。派遣された弁護士には、全体会や分科会等の報告書を提出していただいた。これとは別に独自に出席した若手会員も数多く、各セッションのほか、社交イベント「ヤングローヤーズナイト」も設けられた。
また同時に開催された第6回国際模擬裁判でも、我が国から神戸大学の学生グループが見事、入賞を果たしている。
若手会員らの海外飛躍を予感させる大会ともなった。
(国際室嘱託 大川秀史)

 

JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.61

対 談

宮部みゆき氏 × 宇都宮健児会長

重債務問題から被災者支援まで

10月1日が「法の日」であることをご存じでしょうか。1928年10月1日に陪審法が施行された歴史を記念して1960年に制定されたものです。以来、毎年、法に親しんでもらうために、最高裁、法務省、最高検察庁および日弁連の共催でイベントを行っています。
今年は、多重債務をテーマとした小説「火車」の作者である宮部みゆき氏をお招きし、宇都宮会長との公開対談が実現しました。作中に登場する弁護士のモデルは宇都宮会長なのだそうです。多重債務問題から東日本大震災の被災者支援まで広くご意見をいただきました。
(広報室嘱託 柴田亮子)

 

宇都宮会長「火車」取材の思い出

「火車」(1993年)は、ささやかな幸せを掴もうとするのに、過去の借金に追われる者の悲劇を描いた作品です。多重債務問題を題材にされたきっかけ、宇都宮さんを取材した経緯について教えて下さい。宮部 小説家になる前に法律事務所で働いていた時期があるんです。多重債務者の問題に触れて、いつか小説にしてみたいと思っていました。たまたま見かけた新聞記事に宇都宮さんがとてもわかりやすいコメントをされていたので、取材をお願いしました。宇都宮 当時は、「借りた人が悪い」という風潮があって、真面目な人ほど、返済のために借金を繰り返し、多重債務に陥るという実態が認識されていませんでした。多くの人にこのような実態を伝えたいと思っていたところに、取材の申し込みがあったんです。まさに渡りに船でしたね。

 

弁護士は敷居が高い?

どんな多額の借金でも、弁護士に相談していただければ何らかの解決方法はあるはずなのですが、いざ相談に行くとなると、やはり敷居の高さを感じることはあるのでしょうか。宮部 弁護士への相談のハードルは低くなってきたように感じます。私も著作権の関係で弁護士さんに相談したことがあるのですが、相談する前には「なんでこんな対応をしたの!」と叱られるんじゃないかとびくびくしてました。実際には「あなたは悪くない」と言っていただいて、とても安心したことを覚えています。そんな相談者の気持ちを理解して話を聞いていただければと思います。宇都宮 依頼者は、弁護士のことを信頼できるまでは、なかなかすべてを打ち明けてくれません。私の経験でも、最初は10数件からの借り入れだと話していた人が、会うたびに「実はもう少しあるんです」と告白して、最終的には100件を超えてしまったことがありました(笑)。これでは最終的な解決につながりません。何でも話せるよう安心してもらうことは、常に心がけていますね。

 

弱者救済・貧困問題解消の取り組み

宮部さんの作品は、「火車」に登場する多重債務者であったり、子どもや女性が主人公であったりするなど、弱い立場の人たちの目線から描かれた作品が多いように思います。何か意識されているのでしょうか。宮部 特に意識している訳ではないですが、私自身が女性ですし、独身で自営業者ですから、立場的には弱いんですね。銀行でローンを組むのも大変です。3月11日の地震の時にも、心細い思いをしました。そういう感覚が作品に表れているのかもしれません。宇都宮 いわゆる弱者と呼ばれる人たちは、自力でそのような状況から脱出するのは困難です。私が会長に就任してから、日弁連に貧困問題対策本部を設置しました。貧困にあえぐ人たちの救済はもちろん、貧困問題の解消なくして、社会の発展はないと思います。

 

被災者に対する息の長い支援を

3月に発生した東日本大震災は、新たな貧困を生み出しました。どのような支援が必要でしょうか。宇都宮 日弁連では、震災発生直後から、被災者向けの法律相談を始めました。特に、いわゆる二重ローンの相談が多く、このままでは、被災者の方の生活再建のみならず、地域、コミュニティーの復興は望めません。そういう想いから、4月6日の岩手視察の際の記者会見で、「平成の徳政令」のような制度が必要だと訴えたのです。今後も、被災者一人一人の復興を目標として、被災者に寄り添った活動をしていきたいと考えています。宮部 被災地の復興は、建物やインフラが再建されて終わりではなく、人間の復興、人権の問題なのですね。今後も、息の長い支援をしていただきたいと思います。作家の立場としては、被災者の方が一時でも苦しいことを忘れられるような、楽しめる作品を書いていこうと思っています。

 

弁護士のフォローに期待

最後に、弁護士への期待をお聞かせ下さい。宮部 自分の生活をコントロールする術は、一番大切なことなのに、学校では教えてくれません。経験から学ぶしかないのです。とはいえ、失敗してもやり直しの効く社会であってほしいと思いますし、弁護士さんには、失敗しても致命的にはならないようフォローしていただきたいですね。

 

日弁連で働く弁護士 ④

研修・業務支援室
弁護士人口が急速に増加する中、研修制度の充実と弁護士の業務拡大が重要になっています。今回は、これらを支える研修・業務支援室の嘱託5人の活動を取材しました。(広報室嘱託 白木麗弥)

 

研修・業務支援室嘱託5人

研修業務支援室の役割

日弁連研修センター、若手法曹サポートセンター、日弁連中小企業法律支援センターおよび高齢社会対策本部等、研修と弁護士業務に関する委員会と連携して業務を行っている。

 

より活用される研修へ

現在、会員の約3割に当たる9126人が研修総合サイトに登録を行い、2930人が研修パスポート(申込から1年間全ての特別研修とeラーニングを定額1万円で受講できる)を利用している。
研修総合サイトでは、過去に行われた特別研修も視聴でき、震災関係など無料コンテンツも充実している。受講履歴を確認できる点もありがたい。
支援室では、特別研修の企画立案のための分析資料を作成するだけでなく、eラーニングの撮影にも立ち会う。また、倫理研修に関する各種申請の事前確認を行うなど、担当する業務は、日弁連の研修すべてにわたる。髙畠希之嘱託は「会員の意見を聞きながら、より活用される充実した会員研修の提供に取り組んでいきたい」と語ってくれた。

 

多様な業務支援

日弁連中小企業法律支援センターでは、各弁護士会協力の下、中小企業向け「ひまわりほっとダイヤル」を運営しており、八掛順子嘱託を中心に利用実績の分析等を行っている。
また、若手法曹サポートセンターの活動に関しては、司法修習生から日々寄せられる「修習地以外での就職活動はどのように行ったらよいか」、「独立開業を考えているが何をすればよいか」といった就職や開業に関する相談への回答や、就業状況を把握するためのアンケートの起案や結果分析など、委員とともに弁護士の卵たちを支えている。
藤原靖夫室長は「研修・業務支援室では、皆さんが新しいことにチャレンジできる機会を提供するよう取り組んでいる。これまでの枠にとらわれずに業務の可能性を探る会員を、これからもサポートしていきたい」と抱負を語った。

 

ブックセンターベストセラー(2011年8月・六法、手帳は除く)
協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書籍 著者・編者 出版社
破産管財の手引 鹿子木 康・島岡大雄 編/
東京地裁破産実務研究会 著
きんざい
クレジット・サラ金処理の手引 5訂版 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編著 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会
判例 弁護過誤 高中正彦 著 弘文堂
少年事件ビギナーズ(季刊刑事弁護増刊) ぎょうせい 現代人文社
金融取引関係訴訟 リーガル・プログレッシブ・シリーズ11 滝澤孝臣 編著 青林書院
新・リース契約法 梶村太市・石田賢一・西村博一 編 青林書院
平成23年度版 弁護士職務便覧 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
国会便覧 平成23年8月新版 129版 日本政経新聞社 日本政経新聞社
家庭裁判所における 成年後見・財産管理の実務 片岡 武・金井繁昌・草部康司・川畑晃一 著 日本加除出版
10 特別受益・寄与分の理論と運用 ~裁判例の分析を中心として~ 坂梨 喬 著 新日本法規出版

編集後記

紙面の都合上、取材はしたものの記事に出来ず、残念に思うことがよくある。
9月28日に参議院議員会館で行われた「司法修習生に対する給費制の存続を求める院内集会」もその一つだ。
当日は、司法試験の受験を諦めた、法科大学院修了までに借金が600万円近くある被災地出身者が、壇上で、給費制の維持を訴えたのが非常に印象的だった。法曹に限らず、経済的事情から若者の志を捨てさせるようなことはあってはならないと強く思った次第である。
取材をした以上記事にしたい、記事にする以上多くのことを伝えたいと思う。しかし、多くの記事を取り上げれば内容は薄くなる、内容を厚く書こうと思うと記事が減る。新聞に取り上げる記事に偏りがあるのもいけない。
なかなか難しい。
(R・S)