日弁連新聞 第435号

4月1日 ひまわり中小企業センター
「ひまわり ほっとダイヤル」本格運用開始!

いよいよ、ひまわり中小企業センター「ひまわり ほっとダイヤル」の全国一斉の本格運用が始まった。


この「ひまわり ほっとダイヤル」は全国共通のダイヤル番号(0570―001―240)を用いて、法的な問題を抱えた相談者(中小企業)が、架電地域の弁護士会所属の弁護士と直接面談して相談をすることができるサービスである。


この本格運用にさきがけて、2月1日から12日までの土日祝日を除く9日間、横浜弁護士会と愛知県弁護士会でトライアルを実施した。


横浜弁護士会の専用窓口での受付件数は24件で、内訳は、面談を実施したのが17件、電話対応のみで終了したのが6件(1件は配点前キャンセル)であった。また、相談内容は債権回収が3件、雇用問題が3件、事業承継が3件であった(その他の案件は分類困難)。なお、架電の経緯として主なものは、官公庁からの紹介が10件、新聞が5件であった。


一方、愛知県弁護士会の専用窓口での受付件数は26件で、内訳は、面談実施が20件、電話対応のみで終了したのが5件であった(1件は予約後キャンセル)。また、相談内容として主な案件は債権回収が3件、契約関係が8件。架電の経緯として主なものは法テラスからの紹介が6件、新聞が7件、官公庁からの紹介が6件であった。受付件数の合計は50件と、まずまずの成果と言えよう。


ぜひ、会員の皆さまには、この機会に地元の商工会議所や商工会などの中小企業支援団体や、自治体などの官公庁を訪問していただき「ひまわりほっとダイヤル」の周知をお願いしたい。


(日弁連中小企業法律支援センター事務局次長 幸村俊哉)


就任のご挨拶
日本弁護士連合会会長 宇都宮 健児

宇都宮 健児

日弁連始まって以来の異例の再投票により2010年・2011年度の日弁連会長に就任することになりました宇都宮健児です。


このたび異例の再投票に至ったことは、日弁連を取り巻く情勢の厳しさ、会運営の難しさを反映したものと認識しています。選出されたことの責任の重さに、身の引き締まる思いです。


これまでの司法改革について市民の司法へのアクセスの拡充という司法の役割が十分に果たされているか検証をすべき時期を迎えています。検証の視点は、市民のための司法が実現されるか、とりわけ社会的・経済的弱者に光を当てる改革が行われているか、という視点で第二次司法改革が必要です。


そのような司法の担い手にふさわしい弁護士を養成するためには、基本的実務教育やOJTの機会が十分確保されるように、司法試験合格者数の増加のペースダウンを図る必要があります。また、経済的に余裕のない人も含めて多様な人材を迎え入れるためにも、修習資金の貸与制は阻止しなければなりません。


社会的・経済的弱者に光を当てる第二次司法改革を積極的に推進するためには、弁護士が貧困問題に正面から取り組む必要があります。これを弁護士業務の一角として確立し、市民からのアクセス障害を取り除くために、民事法律扶助の抜本的拡大が必要です。


また、「裁判官・検察官ゼロマップ」を作り、市民とともに裁判官・検察官の大幅増員や地家裁支部の機能充実、司法予算の拡大を求める運動に取り組みたいと思います。


裁判員制度については、裁判員裁判への取組みを通じて、被告人の防御権、弁護権が守られているかという観点から検証し、3年目の見直しに合わせ必要な改革を図るべきである、と考えます。取調べの全過程の可視化、検察官手持ち証拠の全面開示、起訴前保釈の実現など、えん罪の防止、人質司法の打破を図るための具体的課題にも、全力を挙げて取り組みます。


また、「人権のための行動宣言2009」で取りまとめられた32項目に上る人権諸課題の実現のために全力を尽くす決意です。


最後に、社会に向けて発信力のある、市民とともに歩む日弁連であるためには、会員にとっても、自由で開放的な「風通しの良い」日弁連である必要があります。


会員の皆さまのご支援・ご協力を、あらためてお願い申し上げます。


布川事件 最高裁決定報告集会
2月13日 弁護士会館

  • 布川事件 最高裁決定報告集会

昨年12月14日、布川事件第二次再審請求について、最高裁第二小法廷は検察官の特別抗告を棄却し、遂に再審開始が確定した。事件発生から43年、長い闘いを経ての「勝利決定」である。この決定を受け、本集会を開催した。


元請求人の杉山卓男氏と櫻井昌司氏は「今年の正月は、逮捕された後、初めて心安らかに迎えた」と心情を述べた。


弁護団の青木和子会員(第二東京)は、本決定について、白鳥、財田川決定に忠実に、新旧証拠の総合評価、旧証拠の全面再評価を行い、再審開始を認めた地裁および高裁決定を正当として是認したものであると概括し、弁護活動について、本件における基本論点すべてにおいて新証拠を提出して旧証拠に対置させ、裁判所を新旧証拠の総合評価に入らざるを得ない状況にさせたと報告した。


同弁護団の谷村正太郎会員(第二東京)は、本決定は、他の多くの再審事件同様、有罪の根拠が自白に依拠して脆弱であるが故に、有罪の認定を崩すような新証拠を見出せない本件において再審開始を実現した点、大きな意義があるとした。


その後、中川孝博教授(國學院大學)が、本決定は新旧証拠を総合評価し、合理的疑いの有無によって決するという従来の最高裁のアプローチを維持したと明快に解説するとともに、今後の再審公判について「早期決着」の利益が最大限優先すると強調し、会場から大きな拍手を受けた。


足利、袴田、名張、日野町の各再審弁護団からも、会場からも、熱のこもった意見や力強い報告があり、最後に、笹森学人権擁護委員会第一部会長から、再審公判に向かう布川弁護団にエールが送られ、再び大きな拍手のうちに集会は終了した。


(東京弁護士会 三浦直子)


ひまわり

「いささか衝撃を受けた」「法律扶助の姿というものが、ものすごく実感として伝わった」そんな会話が弾んだ、有識者らによる日弁連市民会議。3月のテーマは法律扶助改革。この場に参加したスタッフ弁護士3名の語る各地の活動が感動を呼んだ▼ホームレスの方々の相談、知的障がいを抱えた高齢者の消費者被害、生活保護に辿り着けなかった窃盗事件の被告人。法的問題を抱える人々の背景に、家族・仕事・医療・福祉などの生活問題がある。しかし、セーフティネットの窓口はそれぞれの役所に分かれ、いわば島状に浮かび、そこへの架け橋がない。弁護士は、関係機関との連携の核となり、依頼者に寄り添い、生活再建のための法的支援を進めている▼「組織にとらわれず、自分で判断し自分の責任で行動するという、職業人としての活きのよさがある」。そうした若い弁護士の姿は、これからの公務員組織に求められる人材そのものでもあるという▼昨年の1・5倍、約50億円増となった民事扶助予算。厚生労働省とも進む扶助の拡充を巡る意見交換。こうした動きも、若い弁護士たちの活動への共感が牽引力となっている。各地の弁護士の現場実践が国の制度改革・予算拡大を促す。弁護士会らしい、そんな活動を一層進めていきたい。(S・M)


2010年度役員紹介

3月12日に開催された代議員会(本人出席321名、代理出席367名)において、2010年度役員が選出された。就任にあたり、13名の副会長と、理事および監事の氏名を紹介する。


  • 若旅 一夫(わかたび かずお)(東京・26期)
  • 江藤 洋一(えとう よういち)(第一東京・30期)
  • 栃木 敏明(とちぎ としあき)(第二東京・31期)
  • 高橋 理一郎(たかはし りいちろう)(横浜・29期)
  • 高木 光春(たかぎ みつはる)(栃木県・38期)
  • 金子 武嗣(かねこ たけし)(大阪・25期)
  • 道上 明(みちがみ あきら)(兵庫県・34期)
  • 齋藤 勉(さいとう つとむ)(愛知県・29期)
  • 錦織 正二(にしこり しょうじ)(島根県・24期)
  • 田邉 宜克(たなべ たかよし)(福岡県・31期)
  • 我妻 崇(わがつま たかし)(仙台・34期)
  • 向井 諭(むかい さとし)(札幌・30期)
  • 朝田 啓祐(あさだ けいすけ)(徳島・34期)

理事

  • 久保内 統(東京)
  • 遠藤 達雄(新潟県)
  • 前田 憲徳(福岡県)
  • 小林 七郎(東京)
  • 石田 法子(大阪)
  • 池田晃太郎(佐賀県)
  • 瀬川  徹(東京)
  • 山口 孝司(大阪)
  • 原  章夫(長崎県)
  • 角田 伸一(東京)
  • 中本 和洋(大阪)
  • 平山 秀生(大分県)
  • 長谷川武弘(東京)
  • 三木 秀夫(大阪)
  • 高木 絹子(熊本県)
  • 安田 隆彦(東京)
  • 安保 嘉博(京都)
  • 鳥丸 真人(鹿児島県)
  • 若松  巌(東京)
  • 乗鞍 良彦(兵庫県)
  • 松岡 茂行(宮崎県)
  • 田中  茂(第一東京)
  • 朝守 令彦(奈良)
  • 宮國 英男(沖縄)
  • 山本 卓也(第一東京)
  • 田口 勝之(滋賀)
  • 新里 宏二(仙台)
  • 外井 浩志(第一東京)
  • 山崎 和友(和歌山)
  • 高橋 金一(福島県)
  • 寺本 吉男(第一東京)
  • 冨山 信彦(和歌山)
  • 高橋  健(山形県)
  • 土井  隆(第二東京)
  • 細井 土夫(愛知県)
  • 石橋 乙秀(岩手)
  • 鈴木 雅芳(第二東京)
  • 安井 信久(愛知県)
  • 狩野 節子(秋田)
  • 山田 秀雄(第二東京)
  • 出口  崇(三重)
  • 沼田  徹(青森県)
  • 岡部 光平(横浜)
  • 山田 秀樹(岐阜県)
  • 高崎  暢(札幌)
  • 水地 啓子(横浜)
  • 井上  毅(福井)
  • 房川 樹芳(札幌)
  • 加村 啓二(埼玉)
  • 山崎 正美(金沢)
  • 植松  直(函館)
  • 市川 清文(千葉県)
  • 山本 賢治(富山県)
  • 富川 泰志(旭川)
  • 秋山 安夫(茨城県)
  • 大迫 唯志(広島)
  • 永井 哲男(釧路)
  • 伊澤 正之(栃木県)
  • 中山 修身(山口県)
  • 大平  昇(香川県)
  • 采女 英幸(群馬)
  • 河村 英紀(岡山)
  • 松尾 泰三(徳島)
  • 伊東 哲夫(静岡県)
  • 松本 啓介(鳥取県)
  • 長山 育男(高知)
  • 信田 恵三(山梨県)
  • 中村 寿夫(島根県)
  • 菊池 潤(愛媛)
  • 小林  正(長野県)
  • 市丸 信敏(福岡県)

監事

  • 白井 裕子(東京)
  • 山崎 雅彦(第二東京)
  • 小沼洸一郎(栃木県)
  • 春名 一典(兵庫県)
  • 渡辺  一(岐阜県)

新総次長紹介

3月31日をもって、丸島俊介事務総長(東京)と伊東卓事務次長(第二東京)、3月21日をもって、大橋勝晴事務次長が退任した。後任には、4月1日付で事務総長に海渡雄一会員(第二東京)、事務次長に岡田理樹会員(第二東京)、3月22日付で野口啓一事務総長付が就任した。


 海渡 雄一

海渡 雄一(かいど ゆういち)(第二東京・33期)
会長を支え、人権保障システムの刷新、市民の司法に対する信頼の確立、意欲ある青年が法曹を目指せる制度を目指して全力を尽くします。


岡田 理樹

岡田 理樹(おかだ まさき)(第二東京・40期)
市民の期待に応えられる、よりよい司法が実現されるよう力を尽くす所存ですので、よろしくお願い申し上げます。


 野口 啓一

野口 啓一(のぐち けいいち)(1977年入局)
市民目線の司法改革への取組みは日弁連のプレゼンスと役割を一層高めましたが、事務局もそれにふさわしい組織たりうるよう研鑽と改革に努めます。


セミナー 裁判員裁判における量刑を考える
~刑務所の実態・死刑制度の実態を学ぶ~

  • セミナー「裁判員裁判における量刑を考える~刑務所の実態・死刑制度の実態を学ぶ~」の開催
東京会場の模様

2月10日、弁護士会館で、本セミナーを開催した。裁判員裁判の開始により、一般市民も事実認定のみならず量刑判断に直面する状況のなかで、その前提となる刑の執行状況の実態や近年における刑罰適用の傾向について、正確な基本的理解をもってほしいという意図から企画したものである。


刑罰の執行段階の問題については、市民のみならず法曹であっても一般に理解が十分とはいえないのが実情であることから、会員および市民をともに対象とする形式をとった。反響は予想以上で、東京会場以外に全国47地点と中継し、全会場の参加者は約400人に上った。


セミナーは二部構成で、前半では刑務所生活の実態を、後半では近年加速化した厳罰化の実態と、その中で増加した死刑および無期刑の実態を紹介した。


講演の後、一般市民からの「刑罰の目的がどこにあるのかが分からないと、どのように量刑判断をすればよいか分からない」という質問のほか、会員からは「厳罰化している実態は分かったが、それがなぜいけないのかを、どう市民に説明すればよいのか」といった質問が出され、まさに裁判員裁判において、われわれが直面する根本的な問題がえぐり出された感があった。


パンフレット「知って欲しい刑罰のこと」、「えん罪をなくすために」のさらなる活用と併せて、今後もこうした取組みを積極的に展開していく必要性をあらためて確認したセミナーであった。


(刑事拘禁制度改革実現本部事務局次長 田鎖麻衣子)


法科大学院実務家教員研究交流集会(第3回)
2月6日 弁護士会館

  • 法科大学院実務家教員研究交流集会(第3回)
全体会では法科大学院教育の到達目標が議論された

全国の法科大学院で教鞭をとる実務家教員が一同に会した研究交流集会が開催された。今回は、先に、文部科学省・推進プログラムの研究班(神戸大学ほかのグループ)から「法科大学院共通的到達目標(コア・カリキュラム)モデル案」(第一次案)が公表されたのを受けて、法科大学院教育におけるカリキュラムのあり方が中心テーマとなった。研究者教員の参加も得て、活発な議論が展開された。


分科会 刑事実務教育のあり方とローヤリング教育の実践報告

集会前半では、刑事実務教育とローヤリングの2つの分科会が設けられた。


まず、刑事実務教育の分科会では、日弁連法科大学院センター・検討チームによる「刑事訴訟実務の基礎」に関する到達目標案の概要が紹介され、これを研究班モデル案と対比しながら、意見交換を行った。その中で、日弁連案は、裁判官、検察官、弁護人それぞれの立場から、実務的な対応を選択するという視点が、参加者の多くの賛同を得た。


ローヤリングに関する分科会では、上智大学法科大学院での交渉教育に関する報告を踏まえ議論を行った。米国の先行事例の紹介も交え、ロールプレイなどを行って成果を上げた報告が参加者の高い関心を呼んだ。


全体会 共通的到達目標のあり方をめぐって

まず、研究班モデル案の概要の説明があり、これと対比する形で日弁連での検討状況が報告された。次いで、民事実務、刑事実務、法曹倫理の実務系科目について討議が行われ、これと連携する法律基本科目のあり方にも議論が及んだ。


モデル案については、特に法律基本科目について、項目が多すぎてミニマム・スタンダードとして機能しないこと、法律基本科目と実務基礎科目の連携が不十分であること、文書作成教育が不足していること、教員の授業の指針なのか、学生の自習の目安なのか性格があいまいであるなどの指摘や意見が寄せられた。


全体を通じ、法科大学院教育の豊かな可能性とともに、その抱える困難な課題についても、あらためて認識を深める機会となった。


(法科大学院センター事務局長 山口卓男)


第25回 市民会議 弁護士へのアクセスについて
3月2日 弁護士会館

法律扶助制度の現状と課題について

冒頭、高知、岐阜、埼玉で活動するスタッフ弁護士3名が参加し、「福祉機関と連携して、ソーシャルワーカーとして生活全体をサポートしている」、「法律を武器として使うコーディネーターとして役割を果たす場面は多い」など各地での取組みについて説明した。


「リーガルサービスの充実が、社会的コストを下げる可能性のあることが分かった」(吉永)、「スタッフ弁護士は、将来、自治体の組織内法曹として活躍してもらいたい」(片山)、「訴訟支援の法律家ではなく、日常の活動を支援する法律家の活動を示唆された」(清原)など評価する意見が多く述べられた。他方、「現在の待遇ではいつか行き詰まるのでは」(古賀)、「自治体では、司法関係は国という発想となるが、生活支援関係など自治体が支援すべき事業はある」(片山)といった意見も出された。


弁護士過疎・偏在対策について

日弁連側から、十和田ひまわり基金法律事務所の元所長弁護士が参加し、当時の体験等について報告した。


「ひまわり基金法律事務所をはじめて知った。頭が下がる」(古賀)、「わずか16年で弁護士ゼロ地区をほとんど解消したことは驚異的」(松永)といった意見がある一方、「弁護士の会費から成り立っていることが一般市民にどの程度知られているのか」(中川)、「自治体は、医師過疎解消のため自治医科大学を作ったが、弁護士過疎については何もしていない。医師会がひまわり基金のようなことをすることはまずない。医師会と弁護士会の違いを鮮明に出せばいいのでは」(片山)といったアピール不足を指摘する声があった。


「弁護士の過疎が解消すると裁判所、検察官の過疎が明らかになる。税務署は過疎がなく、税理士は必ずどこにでもいる。なぜ国の関心がこうも違うのか」(片山)といった意見もあった。


市民会議委員 (2010年3月2日現在)
片山 善博議長(慶応義塾大学教授)
清原 慶子(三鷹市長)
ダニエル・フット(東京大学法学政治学研究科教授)
中川 英彦(前京都大学大学院教授、駿河台大学法科大学院講師)
吉永みち子(ノンフィクション・ライター)
松永 真理(株式会社バンダイ社外取締役)
豊 秀一副議長(日本新聞労働組合連合中央執行委員長)
長見 萬里野(財団法人全国消費者協会連合会事務局長)
古賀 伸明(日本労働組合総連合会会長)

審査補助員・指定弁護士のための全国経験交流集会
起訴段階からの市民参加の実効化を求めて
2月25日 弁護士会館

改正検察審査会法が2009年5月21日から施行され、検察審査会に、弁護士が審査補助員として出席して助言をする職務を担うようになるとともに、検察審査会が2度の起訴相当議決をした場合に、裁判所が検察官役を務める指定弁護士を指定し、その指定弁護士が公訴の提起およびその維持をする職務を担うようになる新しい制度が開始されている。


特に、後者の強制起訴制度と指定弁護士制度については、起訴権限が検察官に独占されていたことに対して市民の直截な意見を反映させて法的拘束力を認められた点で、裁判員裁判に並ぶ司法への市民参加の制度として大きな注目を集めている。


本集会は、主に審査補助員の経験を共有することを目的として開催された。当日は、2名の審査補助員経験者が登壇し、まず個別に、審査補助員としての具体的な職務の内容および職務を遂行するにあたり注意すべき事柄等について、それぞれの体験を踏まえて説明した。その後、パネルディスカッション形式でさらに経験に関して話を伺った。


審査補助員の仕事は、かなりの分量の記録の読み込みから始まる。審査補助員は、検察審査会の審査員からの質問に答えるべく、記録の手控えを作成し、証拠を精査して問題点を整理する作業が必要となる。審査補助員はどんなに大きな事件であっても、1名が委嘱されるにすぎず、このような事前準備に多くの時間と労力がとられているとのことであった。


また、注意すべき点として、審査補助員は審査員の自主的な判断を妨げないようにすべきであり、審査補助員の一言が審査員に大きな影響を及ぼす恐れがあることから、慎重に発言をし、公平な立場で検察審査会に臨むことが指摘された。


これ以外にも、法務省から提供された資料をもとにして、指定弁護士として職務する際に、検察庁からどのような協力が得られるかについての説明がなされた。


最後に、今後は弁護士会、検察庁および裁判所の連携を図りつつ、この制度をよりよい制度にしていくため、経験や情報の交流を重ねるとともに、日弁連としても報酬の増額等の制度の改善に力を入れていくことを確認して、本集会を終えた。


JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.42

緊急一時シェルターを設立して~貧困による再犯を防ぐために~

昨年8月、埼玉弁護士会とNPO法人が協力し、貧困から罪を犯したホームレス状態の方のための緊急一時シェルターを開設しました。今回は、開設にかかわった吉廣慶子会員(埼玉)とNPO法人ほっとポット副代表の宮澤進氏にお話を伺いました。


(広報室嘱託 葭葉裕子)


吉廣慶子会員(埼玉・56期)

「路上生活に戻らないで暮らす姿を見るとうれしい」と吉廣会員
家を確保することの重要性を痛感

吉廣会員は、埼玉弁護士会の刑事弁護センター運営委員会に所属し、刑事弁護を多数担当してきた。生活苦から万引きや無銭飲食などをしたホームレス状態の方が被疑者・被告人となった事件も多数あり、再犯を防ぐには、路上生活に戻らないようにすることが不可欠であると実感したという。そのためには、刑事弁護の一環として、生活保護の受給や家の確保につなげる必要があることを痛感した。


実際、担当した事件でも、万引きなどで逮捕されたホームレス状態の方について、住む家を確保したことにより、釈放された例も多いという。


刑事弁護センター運営委員会が中心となって開設へ

とはいえ、身体拘束中に家を確保するのは大変である。物件が見つかっても、本人でないと仮契約すらできないなど困難を伴うことも多い。また、ホームレス状態の方の中には、知的障がいのある方もいて、真の支援を実現するには、福祉の専門家の協力が必要である。


このような問題を解決するため、刑事弁護センター運営委員会が中心となり、「社会復帰支援委託援助制度」をつくった。


この制度は、身体拘束中のホームレス状態の方に釈放後の一時的な居所を確保するとともに、同所から長期的に居住できる住居への転居支援などを社会福祉士などの専門家に委託するものである。この制度に基づいて、釈放後の一時的な居所を確保するため、埼玉弁護士会とNPO法人ほっとポットが協力して「緊急一時シェルター」を開設した。


弁護士だからできること

この緊急一時シェルター開設の意義は、これまで弁護人が個々的に行っていた支援を制度として確立したことにあるという。


吉廣会員は「家が確保できることで、その人の人生も変わる。刑務所に行ったり来たりする人が一人でも少なくなるよう、多くの弁護人にホームレス状態の方の支援活動に携わっていただきたい」と語ってくれた。


NPO法人ほっとポット 副代表 宮澤 進氏(社会福祉士)

「貧困問題を抱える方がいる限り支援していきたい」と宮澤氏
「ほっとポット」の名前に託す思い

ほっとポットは、「社会福祉士」という国家資格者が、生活困窮者などの支援活動をするNPO法人である。当初、ホームレス状態の方に温かい飲み物を入れたポットを持って巡回相談を行うボランティア団体として始まり、2006年に法人化した。


「ほっとポット」という名前には、ポットを持って巡回相談をした由来とともに、「温かいお茶を飲むとき誰もがほっとするもの。お茶を飲むときのように、相談に来た方がほっとできる環境で生活できるようになってほしい」という思いが込められている。


ほっとポットは、社会福祉サービスの手続支援など多岐にわたる生活上の支援を行う。ほっとポットが借りた一戸建住宅や民間アパートの一室を低家賃で貸すなど、自立につなげる支援も行っている。そして今回、さらなる支援活動として、埼玉弁護士会と協力し、「緊急一時シェルター」を開設した。


緊急一時シェルターでのサポートとは

まず、弁護人が、「社会復帰支援委託援助制度」に基づき、刑事弁護の一環として、ほっとポットに生活支援を申し込む。


次に、ほっとポットが緊急一時シェルターとして借りた一戸建住宅に、釈放後に帰る家のない方を受け入れ、路上生活に戻ることを防ぐ。このシェルターには最大30日間入所でき、その間に社会福祉士が弁護人と連携しながら、アパートや仕事探し、生活保護申請のサポートなど、今後に向けた生活支援を行う。なお、シェルターは全室個室の定員4人であり、開設後、利用者が絶えない状態にある。


司法の専門家から福祉の専門家へバトンをつなぐ

埼玉弁護士会の「社会復帰支援委託援助制度」の意義は、貧困から罪を犯したホームレス状態の方に対し、制度として、司法の専門家から福祉の専門家へ支援のバトンを引き継げるようになったことにあるという。


宮澤氏は、「貧困を背景に罪を犯した方は、本来、罪を犯す前に支援を必要としていた人たちである。今後も社会福祉士として支援を行っていきたい」と語った。


日弁連 委員会めぐり 34

自殺対策に関するワーキンググループ

「弁護士のみで自殺対策を行うのは難しい。さまざまな関係機関や団体とのネットワークづくりが必要」と語る竹下福座長

わが国の自殺者数は年間3万人を超えています。事態を重視した国が自殺対策への取組みを始める中、日弁連も昨年10月、自殺対策に関するワーキンググループを立ち上げました。今回は、自殺対策に関するワーキンググループの竹下義樹副座長(京都)に、お話を伺いました。


(広報室嘱託 西浄聖子)


弁護士自身の問題として

これまで、実際に鬱病治療等にかかわる医師とは異なり、弁護士の業務は自殺と直接関係ないと考えられてきた。しかし、多重債務や貧困、家庭の問題、職場・労働問題、いじめ等、自殺の原因となる問題に弁護士が関与することは多い。「自殺率が高いということは、一人一人の命が社会において大切にされていないということであり、究極の人権問題」と竹下副座長は語る。弁護士も自殺を自身の問題としてとらえ、日々の業務や人権擁護活動の中で、どう働きかけをしていくかを考えることが必要だという。


まずは、学習から

同ワーキンググループの構成員は約20名。これまで弁護士会で自殺の実態や原因について調査したことはなかったため、まず、これらにつき学習しつつ、自殺に関連する行政や医師会、NPO等の民間団体の取組みを学び、連携を模索する活動を行ってきた。


その第1弾として昨年10月、自殺対策に取り組むNPO法人ライフリンクと学習懇談会を行った。また、11月30日には、全国のハローワークで自殺対策の一環としてのワンストップサービスを行うべく総合相談会を実施した。


さらに今年2月1日には、第2弾の緊急研修会として、精神科医を招き、実際に相談者が弁護士に「自殺したい」と言った場合のロールプレイをするとともに、同ワーキンググループが作成した自殺予防相談マニュアルを会員に紹介した。


予備知識と心構えがあれば

同ワーキンググループは、今後も自殺予防相談マニュアルのバージョンアップや、全国での研修会開催等の呼びかけを行っていく。


「少しでも予備知識があり、心構えがあれば弁護士は安心して依頼者に接することができるし、依頼者を安心させることもできるはずです」と竹下副座長は言う。また、弁護士や弁護士会が自殺の問題に取り組んでいるということを依頼者側に知ってもらうだけでも、自殺対策としては意味があるのではないかと語る。


弁護士会の新しい活動が大いに期待される。


ブックセンターベストセラー(2010年2月・六法、手帳は除く) 
協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書籍 著者・編者 出版社
破産申立マニュアル 東京弁護士会倒産法部会 編 商事法務
法律事務所のためのパソコンマニュアル ―弥生会計編 Ver.2― 第一東京弁護士会業務改革委員会コンピュータ部会 編 第一東京弁護士会
交通事故事件処理マニュアル 永塚良知 編 新日本法規出版
Q&A 取引先の倒産対応マニュアル 阿部信一郎 編著 日本経済新聞出版社
特定商取引に関する法律の解説 平成21年版 消費者庁取引・物価対策課/経済産業省商務情報政策局消費経済政策課 編 商事法務
株式会社法 第3版 江頭憲治郎 著 有斐閣
会社法・金商法 実務質疑応答 武井一浩・郡谷大輔 編著 商事法務
こんな日弁連に誰がした?平凡社新書 小林正啓 著 平凡社
離婚給付算定事例集 ~教育費・財産分与・慰謝料~ 宇田川濱江・白井典子・鬼丸かおる・中村順子 編 新日本法規出版
10 労働相談実践マニュアル Ver.5補訂版 ~労働契約法対応 日本労働弁護団 著 日本労働弁護団

編集後記

法律援助事業、ひまわり基金法律事務所。市民会議委員からの評価はいずれも極めて高かった。うれしいことである。しかし、これらの活動を日弁連が行っていること、まして会員の会費によって支えられていることは、見識ある委員の中にもご存じない方がいらっしゃった。悲しいことである。
「日弁連は伝え方を工夫すべき」、「PR不足である」といった声が多く上がった。 一般に、良いことをしても、自ら宣伝すると周りは白けるものである。しかし、良いことをしていることは知ってもらいたい。このジレンマをどのように解決するのか。人知れず良いことをするという日本古来の美徳を貫くのか。日弁連のプレゼンスを高めるためにも、費用をかけてでも活動を宣伝すべきなのか。
4月からは新体制となった。日弁連広報もチェンジする時期なのか。(A・Y)