日弁連新聞 第418号

第51回人権擁護大会
10月3日 富山県民会館 大ホール

参加者数は1401名(弁護士1346名、一般55名)

前日のシンポジウム(こちらおよびこちらに報告記事)の成果を踏まえ、後記2つの宣言と1つの決議が審議された。最初の宣言については、改憲阻止を明記すべきとの修正動議が提出されたが、最終的に原案のとおり可決された。次の宣言は圧倒的多数で可決された。決議は字句訂正を行った上で満場一致で可決された。


宣言・決議に先立ち、「消費者庁」創設について、国会、省庁、裁判所が消費者目線になっており、千載一遇の好機との報告があった。また、「取調べの可視化」について、署名が82万件を超え、裁判所が供述調書の任意性を厳しく判断するなど追い風が吹いているとの報告があった。


閉会後、富山県弁護士会のサプライズ企画として、伝統芸能「越中おわら節」の披露があり、会場に残った多くの会員が堪能した。


平和的生存権および日本国憲法九条の今日的意義を確認する宣言

2010年から憲法改正の発議が可能となるが、平和的生存権や九条二項を削除する改正案が一部で検討されているため、(1)平和的生存権は全世界の人々の平和に生きる権利を実現するための具体的規範とされるべき重要性を有する、(2)九条は軍縮・軍備撤廃を推進することを憲法上の責務としている、(3)九条は現実政治との間で深刻な緊張関係を強いられながらも、憲法規範として有効に機能しているといった意義を確認するもの。


安全で質の高い医療を受ける権利の実現に関する宣言

医療事故の続発によって安全で質の高い医療を受ける権利が脅かされているため、(1)患者の権利に関する法律の制定、(2)医療事故調査制度の整備、(3)無過失補償制度の整備、(4)安全で質の高い医療提供体制の整備を求めるもの。


貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議

働いても人間らしい生活を営むに足る収入を得られないワーキングプアが急増していることから、(1)労働法制と労働政策の抜本的見直し、(2)均等待遇の立法化、(3)最低賃金の大幅引き上げ、(4)違法行為根絶のための施策の実施、(5)社会保障制度の抜本的改善と職業教育・職業訓練制度の確立、(6)使用者の法令遵守と雇用見直しを求めるもの。


ご存知ですか?
弁護士・修習生求人求職システム ひまわり求人求職

システムの運用開始にあわせ、日弁連では、主な官公庁と企業に対して、システムへの登録を求める要請を行ってきた。


その結果、10月28日現在、企業21社と3省庁から求人情報が掲載され、登録数は徐々に増えている。


また、修習生からの求職情報も220件と増えており、特に、合格者2065名の新62期修習生については、今後大幅に登録数が増えることが予想される。


一方、法律事務所の求人(78件)と経験弁護士の求職(5件)の登録は少なく、伸び悩んでいる。


本システムに登録された求人情報は、全国の弁護士、修習生が閲覧可能で、全国規模での採用活動を行うことができるほか、応募方法を「メールのみ」など指定することもできる。採用を考えている事務所は、ぜひ本システムに登録していただきたい。 また、移籍や組織内弁護士への転職を考えている会員にとっては、匿名性を保ったまま求人側と連絡をとることもできるというメリットがある。移籍・転職を考えている会員もぜひ活用されたい。


(法的サービス企画推進センター求人・求職情報提供PT座長 辻川正人)


第49回「法の日」週間記念行事 法の日フェスタ
もうすぐスタート! 裁判員制度

「模擬裁判劇」には350名を超える観客・テレビカメラも
会見にのぞむ法曹三者のトップたち
出演者たちの熱演によって盛り上がりを見せる模擬裁判劇

10月1日の「法の日」にちなみ、10月5日、法曹三者による、「法の日」イベントが盛大に行われた。


メインイベントは、弁護士会館クレオで法曹三者が共同で行った「模擬裁判劇」。

来年5月21日の裁判員制度実施を目前に控え、同制度をわかりやすく身近に感じてもらえるよう模擬裁判劇を行うこととなった。事案は、殺人未遂被告事件で殺意の有無が争点の事件。


宮﨑会長が裁判長役をつとめ、現役の検事が弁護士役や裁判官役を、現役裁判官が弁護士や検事役を演じるなど、普段と異なる役割を熱演した。


また、裁判員役は全て、当日訪れた観客の中からくじで選んだ。評議は行わなかったものの、裁判員役はそれぞれ、模擬裁判劇を見ての意見を熱心に語った。また、観客の多数意見は、傷害罪で執行猶予を付けるというものであった。


プロ並みの演奏に感嘆の声

このほか、法曹三者それぞれの単独イベントとして、日弁連は弁護士会館クレオで、弁護士中心の楽団「アンサンブル・フォウ・ユウ」によるクラシック演奏会を行い、ヨハン・セバスチャン・バッハ「ブランデンブルグ協奏曲第4番」など3曲を演奏した。20人を超える楽団員による本格的な演奏に、観客からは「アマチュアとは思えない」との声も聞かれた。


また、最高裁は、大法廷見学会と裁判員制度広報用映画「審理」の上映会を行い、法務省は恒例の「赤れんがまつり」を行った。「赤れんがまつり」には、「サイバンインコ」と各地の検察庁のマスコットが集結し、日弁連の「サイサイ」も登場した。なかでも「サイサイ」は子供たちの人気を集めていた。


法の日共同記者会見で裁判員制度をアピール

「法の日」に先立ち、島田仁郎最高裁長官、大谷剛彦最高裁事務総長、樋渡利秋検事総長、宮﨑誠日弁連会長という法曹三者のトップたちが、9月30日、千代田区の日本記者クラブで共同記者会見を行い、裁判員制度について市民に協力を呼び掛けた。島田長官は、「犯罪という現実や犯罪者の処罰に直接向き合うことは、自分たちの社会を真剣に考える得がたい機会になる」と述べた。宮﨑会長は、えん罪が繰り返されても捜査や刑事裁判は改善されず、裁判員制度の導入でようやく改善されつつあるとし、「刑事裁判は、みなさんが参加しなければ変わらない」と訴えた。


ひまわり

来月には新61期が弁護士登録の時期を迎える。未修コース修了者の初の登録、法科大学院出身者の本格的な法曹界への参入である▼近時、若手法曹の質の低下が法曹界の内外で指摘されている。そしてその議論は法科大学院教育の不十分さとして取り上げられることも少なくない。しかし、2回試験の不合格者数が「質の低下」の主たる根拠だとすれば、法曹資格を得た彼らには少々気の毒なようにも思う▼法曹の質とは何か。現在活発に議論されている問題であるが、法律知識の量や法律解釈能力が、質をはかる尺度の一つに過ぎないことに、大きな異論はないだろう。司法改革後の司法を担い得る法曹を養成するために創設された法科大学院は、従来とは異なる質を持った法曹の養成を目的としている▼新61期となる未修1期生には、これまでになく多数の他学部出身者、社会人経験者が含まれている。また、彼らが法科大学院で受けてきた3年間の法曹養成教育は、旧試験の受験勉強とは本質的に異なる▼私たち既存法曹の不安は言い出せば尽きない。しかし、発展の契機は、常に異質なものとの交わりの中にある。法曹界も例外ではないだろう。そんな可能性を秘めた彼らの登録を、温かく歓迎したいものである。(H・K)


第2回 法廷弁護指導者養成プログラム 
10月11~13日・弁護士会館

NITAの講師による研修風景

昨年度に引き続き、NITA(全米法廷技術研究所)から4名の講師を招いて、裁判員裁判で求められる弁護技術を習得するための研修を行った。受講者は、各弁護士会で指導者となることが期待される会員たちである。本研修の成果を弁護士会に持ち帰って広めることが期待されている。


主尋問は映画監督、反対尋問は主役

初日は、尋問技術について全体講義を行った後、各「教室」に分かれて実演での研修を行った。ストーリーを事実認定者に納得してもらうことを目的とする主尋問では、証人が主役で尋問者は監督であり、(1)事実認定者に証人を信頼させ、(2)時系列や項目別などの場面設定を行い、(3)誘導をせずに証人に事実を語らせる。逆に、主に弾劾を目的とする反対尋問では、主役は尋問者であり、(1)誘導を行って「はい」か「いいえ」で答えさせる、(2)答えが予測できない質問はしない、(3)形容詞や副詞など証人の評価が入り込む言葉は使わない、などといった指導がなされた。


冒頭陳述はストーリーを語り、最終弁論は評価を語る

2日目は、主として冒頭陳述と最終弁論について、全体講義と実演での研修を行った。証拠調べの前に行う冒頭陳述では、何も知らない事実認定者にストーリーを理解し共感してもらうために、議論をせず、結論やポイントを強調するほかはストーリーを淡々と語る。逆に、証拠調べの後に行う最終弁論では、立証責任の所在を強調し、議論をして評価を語る、などといった指導がなされた。


様変わりする刑事法廷

最終日は、2日間の研修の成果を発揮すべく模擬裁判を行った。受講者たちは、立ち位置やジェスチャー、声の大きさや話すスピードなどに気を配りつつ、板書や拡大した現場見取り図などを利用して視覚的な分かりやすさも追求した尋問や冒頭陳述、最終弁論を行った。メモを持たず専門用語を使わない、様変わりした刑事法廷を体現してみせた。


10・2人権擁護大会シンポジウム 第1分科会
憲法改正問題と人権・平和のゆくえ
平和的生存権と憲法九条の今日的な意義の検証

第1部は、2005年の鳥取大会で「憲法九条の恒久平和主義が平和への指針として世界に誇りうる先駆的意義を有すること」を確認した以後、日弁連および弁護士会の憲法委員会などが憲法改正問題について行ってきた調査・研究の報告がなされた。


アフガニスタンでの支援活動について報告する谷山氏

第2部は、谷山博史氏(日本国際ボランティアセンター代表理事)が、アフガニスタンでNGOの支援活動がしにくくなっている現状を報告し、今こそわが国は国連などに対し、軍事や政治と人道支援とを切り離すよう明確なメッセージを発信し、和平に向けた協議を主導すべきと訴えた。


第3部は、前半で、「イラクの人々の現状」、「自衛隊の現場からみた国際貢献の課題」、「沖縄の米兵による性暴力・人権侵害の現状」、「9・11後のアメリカ政府による人権侵害の実態と対テロ戦争政策」、「アメリカの子どもたちが貧困から脱出するために軍に入隊する『経済的徴兵制』の現状」の報告がビデオレターや登壇によってなされた。会場からは、長沼ナイキ事件第一審判決の裁判長であった福島重雄会員(富山県)が、「航空自衛隊のイラクでの活動の違憲性について判断した名古屋高裁平成20年4月17日判決の意義は大きい」と発言した。


後半は、「アフガニスタン・イラク・アメリカの現状を踏まえて憲法九条改正の是非を問う」というテーマで、パネルディスカッションを行った。


最後に、弁護士には、法律家として国民が憲法九条改正案を検討し、判断するうえで、重大な責任を果たす必要があることが述べられた。


第2分科会
安全で質の高い医療を実現するために
医療事故の防止と被害の救済のあり方を考える

冒頭、村山晃副会長が「安全で質の高い医療は全ての人の願いであり権利。国の効率・採算重視の政策のため憂慮すべき事故も起こっており、これは直接的人権侵害である。今何が必要か考えることが重要」と挨拶した。


医療の安全と質の向上について意見交換するパネリストたち

続く基調報告では、まず、福武公子会員(千葉県)が、(1)患者の権利に関する法律の制定、(2)医療事故調査制度の整備、(3)迅速適切な被害救済制度の創設、(4)安全で質の高い医療体制の整備という4つの提言を行った。


その後、医療過誤で息子を亡くした母親の苦しみの声や、ある日突然刑事事件の被疑者となり、不起訴となった後も民事訴訟の被告となった医師の苦悩の声など、医療従事者、患者および遺族という医療過誤の当事者たちの生の声が報告された。


さらに、現在国のモデル事業として2005年9月から行われている医療安全調査委員会(仮称)制度の報告や、イギリス、フランスの医療事故被害救済システム、特にフランスでは医療事故について無過失補償が実現していることなどが報告された。


後半のパネルディスカッションでは、山口徹氏(虎の門病院院長)、上田裕一教授(名古屋大学大学院)、佐原康之氏(厚生労働省医療安全推進室長)、都立広尾病院事件被害者遺族および加藤良夫会員(愛知県)の五名のパネリストによる意見交換が行われた。会場の医師からも意見が出るなど、活発な議論がなされた。医師側からは医療にも限界があるという意見が出る一方、上田教授は、自ら委員長をつとめる名古屋大学医療事故調査委員会について、「隠さない、逃げない、ごまかさない」という方針で立ち上げ、外部委員を複数入れて運営していると報告した。遺族側からは、「医療事故の再発を防止するためには、院内事故調査に加えて第三者の視点が必須であり、第三者調査機関の早期実現を国に希望する」と述べられた。


医療側、被害者側ともに医療予算の増額と第三者調査機関の設立を強く希望していた。いずれも早期実現が望まれる。


第3分科会
労働と貧困 拡大するワーキングプア
人間らしく働き生活する権利の確立を目指して

熱弁をふるう神野教授

第1部の基調講演で、神野直彦教授(東京大学)は、「小さな政府」が格差を生み、貧しい人に現金を給付するという「垂直的再分配」がかえって格差や貧困を助長すると説明した。その上で、医療や教育などの「ニーズ」を貧富にかかわらず公共サービスでまかなうこと(水平的再分配)によって格差や貧困は解消されるとし、「ほどよい政府」を目指すべきと訴えた。


第2部の基調報告では、わが国で年収200万円以下の労働者が1000万人を超えたこと、「非正規労働・生活保護ホットライン」に約1万2000件の電話が寄せられたこと、ヨーロッパ諸国では就労支援や子どもの教育の拡充といった対策に取り組んでいることなどが報告された。また、非正規労働の当事者が登壇し、正規労働者と賃金などの待遇面で著しい差別を受けながら過酷な労働を強いられる現実を生々しく語った。大卒の男性は、全寮制の工場で週6日、昼夜2交代制の12時間勤務を8八年間続けたが、その間給料は上がらずボーナスもなかった。腱鞘炎になって退職に追い込まれ、仕事も住居も失ってホームレスになった。別の男性は、「結婚して子どもを持ち、親の面倒をみたい。普通の生活をしたい」と訴えた。特別報告では、中井雅之氏(厚生労働省労働政策担当参事官室企画官)が若者への就労支援を進めていることなどを報告した。


第3部のパネルディスカッションでは、「ワーキングプアは人権の今日的課題」(浜村彰教授:法政大学)との指摘があり、その対策として、「均等待遇の実現」(脇田滋教授:龍谷大学)、「登録型派遣の禁止」(阿部正浩教授:獨協大学)、「生活保障を伴う職業訓練の拡充」(河添誠氏:首都圏青年ユニオン書記長)、「仕事を離れた人が戻れる環境の整備」(板垣淑子氏:NHKスペシャル「ワーキングプア」取材班)、「児童手当や就学援助の拡充」(赤石千衣子氏:NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事)などが挙がった。


カウントダウン! 裁判員裁判〈11〉 あと6か月

裁判員制度実施と 守秘義務との関係

裁判員制度の実施(来年5月21日施行)を延期すべき意見の理由として、裁判員の守秘義務の負担が重いということが指摘されている。


確かに、守秘義務の範囲は広く、かつ必ずしも明確ではない。また、罰則も重いと考えられる。日弁連は、従前から守秘義務の範囲を狭くすること、罰則が重いことを指摘し、運動してきた。その一定の成果があって、国会において原案が修正され、現行法となっている。


しかし、仮に守秘義務が重いものであるとしても、司法に市民が参加することによって、官僚司法の打破、民主主義の深化といった意義が決定的に損なわれるわけではない。また、司法に市民が参加することが、刑事手続改革の契機となるといった意義も損なわれない。


そもそも、守秘義務の必要性、範囲、罰則については、さまざまな議論があって現行法となっている。例えば、評議の秘密を守るべきか否かについては、基本的な考え方の対立がある。一つの考え方は、いったん合議体として判決を言い渡した以上、その評議の経過をあからさまにした場合にはその判決の正当性が害されるというものである。この考え方に依拠すれば、守秘義務は当然であり、現行法程度の範囲や罰則も必要不可欠ということになる。もう一つの考え方は、逆に、評議の経過を全てオープンにする余地を残してこそ、その判決の正当性が維持できるし、また、その是非の検討が容易となるというもので、日弁連の考え方に近い。この考え方に依拠すれば、例えば、評議の経過は守秘義務の対象外にすべきだ、自分が評議でどのように述べたかは明らかにすることができるとすべきだ、守秘義務を負うべき期間は限定されるべきだという意見になってくる。


これらはある意味では理念的対立ともいえる。また、諸外国の法制もさまざまである。そのため、制度が実施されていない現段階においては、立法的解決は困難な課題ともいえる。むしろ、裁判員制度を実施し、その負うべき守秘義務が重いという裁判員経験者の声が広がることを通じて、その適正な運用を実現させ、ひいては法改正につながる契機とすべきである。


(裁判員制度実施本部事務局長 西村 健)


シンポジウム 消費者庁の早期実現を! 地方消費者行政の充実を!
10月9日・弁護士会館

報告に熱心に聞き入る参加者たち

第1部は、まず吉岡和弘消費者問題対策委員会委員長が、消費者行政の一元化について情勢を報告し、「よりよい消費者庁関連法案をより早く実現させたい」と語った。続いて、木村茂樹氏(内閣官房消費者行政一元化準備室参事官)が、「消費者庁」関連三法案の関係などを説明した。


第2部は、4つのテーマについて、検討をした。


第1に「消費者の安全・安心~消費者安全法案~」というテーマで、消費者安全法案の問題点の指摘、こんにゃくゼリー窒息死事件の報告と消費者のための新行政組織が必要であるとの提言、汚染米問題からみた食品安全委員会の問題点の指摘などがあった。


第2のテーマは「新消費者行政に消費者の声は届くのか~消費者庁設置法案~」であり、消費者目線で行政全般を監視する仕組みの検討、スウェーデンにおける消費者保護の現状についての報告、消費者政策委員会を機能させるための提言などがあった。


第3のテーマは「地方消費者行政の行方は?」であり、地方消費者行政の課題と拡充強化の方策などを検討した。


第4のテーマは「違法収益の吐き出しと集団消費者被害の救済」であり、大和都市管財国家賠償請求訴訟控訴審判決確定の報告、アメリカの父権訴訟についての報告、適格消費者団体による金銭請求制度を創設すべきとの提言などがあった。


第3部では、消費者庁の実現などに向けて、今後も強力に運動を進めることなどを確認し、閉幕した。


政治情勢が混沌としており、「消費者庁」創設の先行きはいまだ予断を許さない。「消費者庁」の早期実現に向け、より一層の取組が求められる。


JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.25

新しい歩みを応援するために
~保護司と更生保護施設「更新会」を訪ねて

昨年、犯罪者予防更生法と執行猶予者保護観察法が一本化され、新しく更生保護法が制定されました。犯罪や非行を行った人の立ち直りを助けるために尽力されているお2人にお話を伺いました。 (広報室嘱託 西浄聖子)


保護司 春名三郎氏
東京都保護司会連合会副会長

「立ち直り」を支えて
「対象者の多重債務の問題等、法律の専門家に相談したいことも多い。弁護士さんとのネットワークや相談窓口があると助かります」と春名氏

春名氏は1961年に板橋区で書店を開業後、地区の青少年健全育成組織の一員として活動し、1972年に保護司となった。


保護司は法務大臣から委嘱を受けた非常勤の国家公務員だが、給料は支給されないボランティアである。民間の柔軟性と地域事情に詳しいという特性を生かし、犯罪や非行を行った人に遵守事項の指導、生活上の助言、就職の援助などを行う。また、学校や地域と連携して集会などを開催し、犯罪予防や社会環境の改善、地域社会の連帯感強化のための活動も行っている。


春名氏は、「仕事は大変だが、立派に立ち直った対象者に再会すると、とてもやりがいを感じる」と保護司の魅力を話してくれた。立ち直った対象者の結婚式に招待されたこともあるという。


あやまちを犯した人も受容する社会に

現在の保護司の数は、全国で約4万9000人、東京都に約3730人で、いずれも定員割れの状態だ。保護司の世界でも、高齢化、人材不足は悩みの種。さらに、住環境の変化によって自宅に面接場所が確保できない、家族の理解が得られないといった問題もある。最近は、自治体などの協力を得て、更生保護のサポートセンターを立ち上げるというパイロット事業も行われている。


更生のために肝心なのが対象者の就労先の確保だ。生活費がない状態では、更生も画餅に帰すため、就労支援は重要課題である。しかし、対象者の受け皿となる協力雇用主の確保は困難である。そこで、2007年、対象者のための就業支援センターが北海道沼田町でスタートした。同施設で実習などを行うことにより、対象者は自立や就業の道を切り開く。「世論は厳罰化傾向にあるが、対象者を温かく迎え、一般の方々と同じように働かせ受け入れることが対象者自身の立ち直りにも社会全体のためにも重要だ」と春名氏は語る。


就労先の確保については今年中にも、経済界がNPO法人(全国就労支援事業者機構)を設立し、経済界全体の協力による就労支援に乗り出す。日弁連にとって新たな検討課題である。


更生保護施設「更新会」
更生保護法人更新会常務理事 岩渕道夫氏

さまざまな援助で自立を支援する
「地域社会や学校との協力、人間関係が重要です」と岩渕氏

更生保護施設は、法務大臣の認可を受けて更生保護事業を営む更生保護法人が運営する継続保護施設である。現在、全国に101施設がある。その源流は古く、1888年にさかのぼる。「更新会」は1926年に創設された。現在は早稲田大学との緊密な提携関係の下で運営が行われている。


更生保護施設の保護対象者は、保護観察を受けている人や刑事収容施設から釈放された人など、身寄りがなく保護を必要とする人である。保護観察所の委託によって保護が行われる。更新会の平均在所期間は約2か月余であり、定員は男子成人20人である。


更生保護施設の役割は、(1)宿泊や食事などの生活援助、(2)規則正しい生活、金銭管理などの社会適応性の涵養、(3)ハローワークや協力雇い主探しなどの職業補導、④退所後の環境調整などを行って対象者の自立を支援することである。


更生保護施設の課題

更生保護施設が現在抱える問題は、(1)財政難、②処遇の困難性と職員の待遇の低さ、③施設の老朽化、④地域社会との関係などである。国から支給される更生委託費のみでの経営は困難で、そのためか他の福祉業界と異なり、民間企業からの新規参入の例はないという。


また、地域社会との関係は、重要である。少しでも問題が起きると施設排除の運動が起こる可能性が高く、細心の注意を払う必要がある。国は自立更生促進センターや就労支援センターの設置を決めているが、地域住民に反対されることも多いという。


岩渕氏によれば、刑事収容施設に長くいればいるほど、基本的な挨拶やコミュニケーションの取り方、金銭感覚などの社会性が失われてしまい、社会生活に適応するのに時間がかかるという。あやまちを犯した人を排除するのではなく、社会全体で温かく「立ち直り」を見守り、支えていくことの重要性を改めて考えさせられた。


日弁連委員会めぐり 23

司法制度調査会民事部会

民法、商法、会社法、行政法、税法―私たちの日常業務に直結するこれらの法制度について調査・研究を行っているのが本委員会です。民事部会は、その中でも最も身近な法律である民法を扱っています。今回は、本部会の活動について、最近の債権法改正問題への対応を含め、吉岡一彦委員長(大阪)と中井康之部会長(大阪)にお話を伺いました。


(広報室長 中田 貴)


債権法改正について熱心に語る吉岡委員長(右)と中井部会長

吉岡委員長は、現大阪弁護士会司法委員会委員長。本年5月に本委員会の委員長にも就任した。会議などに出席するため、月2回程度大阪から東京に通っている。司法制度調査会の最近の活動としては、債権法改正問題への対応のほか、成年年齢引下げに関する調査・研究、父権訴訟や家事審判・調停における子どもの代理人制度創設に関する諮問に対し、意見書の作成などを行った。


債権法改正の動き

債権法については、以前からさまざまな改正提案がなされていたが、2006年に学者が集まって発足した「民法(債権法)改正検討委員会」(以下「検討委員会」)の動静を注視しなければならない(吉岡委員長)。


検討委員会は、判例・解釈で確立した法原則を明文化するほか、消費者契約法と商行為法を民法に取り込み、世界に通用する契約ルールを発信することなどを目指している。民法総則のうち法律行為、期間計算、消滅時効、債権のうち総則と契約を検討対象とし、5つの準備会を設けて検討作業をしている。


検討委員会には、法務省官房審議官や同参事官らが参加している上、東京大学を辞した内田貴氏が法務省参与として同委員会の事務局長に就任している。既に準備会は100回以上開催され、来年4月の改正試案公表に向けて急ピッチで作業が進められている。試案は、そのまま法制審議会にあげられる可能性がある。


5つの班を設けて対応

本部会では、検討委員会の5つの準備会にあわせて5つの班を設け、準備会の議論を整理して実務上の問題点を洗い出す作業を行っている。また、会員に順次情報を提供し、関心をもって議論に参加してもらうための活動を行う。検討委員会が考えているのは、債権者代位権や債権者取消権、消滅時効の見直しなど、私たちの日常業務に大きく影響する債権法の抜本的な改正だ。吉岡委員長は、「これまでの知識が役に立たなくなる可能性がある。全ての会員に関心をもってもらいたい」と話した。


ブックセンターベストセラー(2008年9月・六法、手帳は除く) 
協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書籍 著者・編者 出版社
弁護士職務便覧 ―平成20年度版― 東京弁護士会・第一東京弁護士会・第二東京弁護士会 編 日本加除出版
最高裁判所判例解説 民事篇 平成十七年度(上)(1月~6月分) 法曹会 編 法曹会
最高裁判所判例解説 民事篇 平成十七年度(下)(7月~12月分) 法曹会 編 法曹会
最高裁判所判例解説 民事篇 索引 (昭和56年度~平成16年度) 法曹会 編 法曹会
東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情 改訂版 東京家庭裁判所家事第6部 編著 判例タイムズ社
民事再生QA500【第2版】 須藤英章 監修 企業再建弁護士グループ 編 信山社
離婚事件処理マニュアル 冨永忠祐 編 新日本法規出版
解説 保険法 大串淳子・日本生命保険生命保険研究会 編 弘文堂
要件事実マニュアル 別巻家事事件編 岡口基一 著 ぎょうせい
10 会社法大系[機関・計算等]第3巻 江頭憲治郎・門口正人 編集代表/西岡清一郎・市村陽典・相澤 哲・河和哲雄 編 青林書院

編集後記

日弁連広報室嘱託になって、約3か月が経ちました。この間には、人権擁護大会、「法の日」週間記念行事(法の日フェスタ)などもあり、本当にあっという間でした。
実は、「法の日」週間記念行事に参加したのは初めてだったのですが、ちょっとしたお祭りのような雰囲気で、家族で楽しんでいる方も多くいらっしゃいました。私自身も、予想していた雰囲気とは違っていたので、こんなに楽しい行事なら、もっと前から参加していればよかったと思いました。また、広報室嘱託になって、今まで扱ったことのなかった分野のシンポジウムなどに参加させていただくことも多く、弁護士登録をした頃のような新鮮な気持ちになっています。
このような、自分が感動したこと、体験したこと、知った情報などを、微力ながらお伝えできればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。 (H・Y)