日弁連新聞 第407号

第50回人権擁護大会開催 全国から約2500人参加
11月2日 静岡県浜松市

第50回人権擁護大会

11月2日、静岡県浜松市で、第50回人権擁護大会が開催された。前日の1日には、同大会シンポジウムが行われ、3つの分科会で、それぞれのテーマにつき議論がなされた。(こちら(第1分科会第2分科会第3分科会)に分科会の報告記事を掲載)
大会当日は、前日のシンポジウムの議論を踏まえた後記3つの宣言・決議案が審議された。宣言案については、一部表現をめぐり修正案が提出され審議されたが、最終的には原案が可決された。また、2つの決議案については、いずれも圧倒的多数で可決された。


人権保障を通じて自由で安全な社会の実現を求める宣言

国等が、テロや犯罪防止のためとして進める施策につき、基本的人権の尊重と自由の保障が損なわれないよう(1)施策の必要性・態様を厳しく吟味、(2)共謀罪法案の廃止、(3)国等の個人情報の取得・利用の規制・濫用防止、(4)差別偏見を取り除き教育・福祉等の充実を図ること等を求めるもの。


全面的な国選付添人制度の実現を求める決議

2009年、被疑者国選弁護制度の対象事件が必要的弁護事件にまで拡大された場合、被疑者段階で少年の国選弁護人として選任されながら、家裁送致後にはほとんどの場合、国選付添人となれないという不都合を解消すべく、全面的国選付添人制度の実現と、併せて当番付添人の全国的実現を求めるもの。


持続可能な都市をめざして都市法制の抜本的な改革を求める決議

憲法13条・25条により保障される環境権の一側面として、誰もが良好な環境のもと快適で心豊かに住み続ける権利を有することを確認し、国に対し現行都市計画、建築法、土地利用、建築、都市交通、景観等についての整備を求めるもの。


第50回大会記念講演  大江 健三郎氏

原理としての「人間らしさ」

大江氏は学生時代から師事している故渡辺一夫氏の「ユマニスム」の思想について、自身の体験を交えながら語った。ユマニスムはフランスのルネサンス期に、宗教や考え方が違うからといってその人たちを殺していいわけはないと考えるところから生まれた思想だという。ご子息が障がいを持って生まれたことが分かったとき、師から「希望を持ちすぎず、絶望しすぎず」と言われたとの話も印象的だった。ご子息が音楽で自己表現できると分かったとき、大江氏は非常に喜びを感じ、人間が生きていくことの中心には、やはり人間らしさがあると実感したという。
国家全体と一個人が対する場合にどのような態度が人間らしいのか、人間らしさをすべての中心に置き、人間らしい方法を発見しようとすることがユマニスムであり、この思想はフランス人権宣言に結晶し、アメリカ独立宣言、日本国憲法へとつながっている。自分の原理として「人間らしさ」を持つ人たちがいたことで、今の日本の社会や文化があると語った。
時折ユーモアも織り交ぜながらの話に、大きなホールを埋め尽くした聴衆も熱心に聞き入っていた。


ぐ犯少年に関する国家公安委員会規則の改正

2007年通常国会で焦点となった「ぐ犯少年である疑いのある者」を警察官の調査対象とする少年法改正案は、警察官の調査権限の及ぶ範囲が不明確で調査対象が過度に拡大するおそれが大きいという日弁連のねばり強い訴えが国民の共感を呼び、国会でこの条項は削除された。ところが、この改正法の11月1日施行にあわせて、警察庁が公表した少年警察活動規則(2002年国家公安委員会規則)改正案は、「ぐ犯少年であると疑うに足りる相当の理由のある者」に対する警察官の調査権限を定めており、上記の国会の修正を無視するものであった。これに対し、日弁連と全国一九の弁護士会が反対声明や各界への訴えを行い、その結果、警察庁は、原案を大幅に修正して国家公安委員会に提出し、国会が否定した内容を国家公安委員会が規則として定めるという事態は回避された。


11月9日成立 被災者生活再建 支援法改正

11月9日、被災者生活再建支援法が改正された。改正法は、支給金の使途の限定を廃止して、被災地住民の長年の悲願だった住宅本体の建設・購入費や補修費にも支給金を使用できるようにするもの。また、年齢や年収等の支給要件を廃止し、手続も大幅に緩和して、本年発生した能登半島地震、新潟県中越沖地震、台風第11号および第12号の被災者についても遡って支給の対象とする。


日弁連は、本年6月および7月の二度にわたり同法の改正に関する意見書を公表し、内閣府の「被災者生活再建支援制度に関する検討会」をはじめとする国や地方自治体等に、改正法と同趣旨の早期改正を求め、開会中の臨時国会においても各政党に訴え続けてきた。改正法が、被災者救済に大きな威力を発揮することが期待される。


国選弁護費用増額 国会議員に一斉要請行動

10月24日、理事会の昼休みを利用して、日弁連理事が、国選弁護費用の増額を求める国会議員一斉要請行動を行った。250を超える国会議員の部屋を訪ね、議員本人に面会できた数も100を超えた。


要請では、現行法テラスの国選報酬基準が非常に低額に抑えられている事実、国際的にも予算が低い旨等を説明し、弁護士の活動実態から、赤字覚悟で行ってきたこれまでの経緯を説明し、増額への理解を求めた。面会した議員からは、「きちんとした弁護をしてもらうためには、ちゃんとした報酬水準にする必要があると思う」あるいは、「今後は法務委員に任せず幅広く関心を持ち支援したい」など、おおむね理解のある対応が得られた。今後は国会議員の理解を前提に2008年度予算についてできる限りの増額を求めるとともに、2009年度予算の大幅増額を求めて活動を継続の予定である。


ひまわり

浅草で地下足袋や法被を売っている店の主人と先日話をした。店先に飾ってある小さな神輿は、浅草三社祭のとき子ども用に使うそうだ。しかし全国から担ぎ手が集まる本社神輿は、来年は出ない予定だという。神輿に乗ることが禁止されているのに、守らない者が絶えないためらしい▼調べてみると、2006年に神輿に乗って本社神輿が毀損する事件があり、浅草神社から禁止通達が出ていたにもかかわらず、今年も乗る者がいて、都迷惑防止条例違反で3人が逮捕されていた。このため本社神輿の宮出し中止が決定された。逮捕された男性の一人は「暴力団に10万円支払って神輿に乗った」と述べたそうだ。担ぎ手が少なかったときに、町内で暴力団に担ぐことを頼んだことから関係が続いていたと報道されている▼本社神輿が出ないと、全国から担ぎ手が集まらず、近所の商店街は売上げが減るだろうと店の主人は嘆いていた。庶民の楽しみと地域経済に打撃を与える不法な行為は、許し難い▼日弁連と全国の弁護士会が民事介入暴力対策に取り組んで久しいが、暴力団の手法はウイルスのように常に形を変えていく。免疫力を高めるには、暴力団追放三ない運動(利用しない、恐れない、金を出さない)を地道に広めることが必要だ。(M・K)


好評! 弁護士会テレビ中継予定の番組表を会員ページに掲載

初学者対象税法勉強会の視聴風景(11月22日・大分県弁護士会)

10月からテレビ会議システムが全国の弁護士会で整備され、多くの委員会で利用されている。しかし、「会議システム」だからといってその利用方法は「会議」だけとは限らない。日弁連や弁護士会主催のイベント・研修を生中継する「弁護士会テレビ」にも活用されている。


弁護士にとって研修や情報収集が必要であることは言うまでもないが、地元にいながら各地の有益なイベントや研修に参加できる「弁護士会テレビ」は、そのために非常に有益なツールである。中継予定のイベントや研修は→会員ホームページの「弁護士会テレビ番組表」に掲載されているほか、本紙のイベント欄にも紹介されている。中継の希望は所属の弁護士会に申し出られたい(弁護士会の都合により中継できない場合もある)。中継予定のイベントや研修は今後ますます増えていく予定である。


日弁連市民会議

「裁判員制度への市民の積極的参加を実現するための要望書」について

11月5日、日本弁護士連合会市民会議から、国民が裁判員裁判に積極的に参加するため、日弁連に対して下記の要望が出された。(1)市民が積極的に参加できるようにわかりやすい広報をする、(2)守秘義務の範囲を必要以上に拡大しないようにする、(3)有給の特別休暇の創設を企業に働きかける等の支援策を検討する、(4)少なくとも裁判員裁判対象事件では、取調べの全過程の録画・録音の実現に努力する、(5)裁判員経験者同士の交流や、候補者からの相談に応じる機関の設立を日弁連が中心に検討する。


右要望を重く受け止め、今後の活動に生かしたい。


11/1 人権擁護大会シンポジウム第一分科会
市民の自由と安全を考える ―9・11以降の時代と監視社会―

「監視社会はモンスター」バリー・スタインハード氏

まず、実行委員による基調報告が行われ、安全のためとされる施策の問題点の指摘や、突然逮捕され「アルカイダと関係しているのか」と質問を受けたイスラム系外国人や、子どもを助けようとしたのに服装のためか不審者と思われ逮捕された大学准教授のビデオレター等とともに、安心・安全の名のもと人権侵害や監視社会化が進んでいる現実が報告された。


次に、バリー・スタインハード氏(米自由人権協会元共同代表)が、アメリカでは監視社会というモンスターが巨大化しており、プライバシーがまったくなくなる時を24時とすると今はもう23時54分だが、時計の針を逆転させようと呼び掛けた。


ついで、「近未来仮装劇・私も監視されていた」が実行委員により演じられ、ごく普通の市民生活がいつの間にか権力に監視されている恐怖を描き出した。


最後に、木下智史教授(関西大学法科大学院)、斉藤貴男氏(ジャーナリスト)、田島泰彦教授(上智大学)、スタインハード氏、浜井浩一教授(龍谷大学法科大学院)、森田ゆり氏(エンパワメント・センター主宰)、大谷美紀子国際室長が参加し、パネルディスカッションが行われた。安全を旗印にする施策は治安悪化イメージにとらわれず事実を客観的にみるべき、安心がビジネス化し監視社会化は構造的であること、国際的に安全施策の立法化が必要と唱えられても人権保障の観点から検証が必要であること、監視社会は立憲主義の空洞化をもたらすなどの意見交換がなされた。


TAKE OFF!司法支援センター 《35・最終回》

一年間の業務遂行を終えて

香川地方事務所も、本特集の名のとおり離陸しましたが、司法をより身近で利用しやすくするために、順調に飛行できているかどうかの検証はまだまだで、いまだに巡航高度に向け上昇中です。全国的には多数派である小規模地方事務所ですが、少数ながら精鋭の職員を得て、利用者のための『総合』法律支援を目指しています。


まずは、情報提供業務の開業後一年間の実績ですが、面談によるものが181件、電話によるものが715件。「電話はコールセンター、面談は地方事務所」の本部方針どおり、香川県在住者からコールセンターへの問い合わせ件数は、1565件となっています。


次に、国選弁護関連業務は、本庁への常勤弁護士1名の赴任を得て、支部管内の被疑者国選事件にも対応できています。しかし、2009年対応には不安がいっぱいで、弁護士会ともども常勤弁護士の大幅な増員を切望しています。


民事法律扶助業務では、厳格な資力要件確認作業にもかかわらず、法律相談援助業務などの利用者が順調に増加しています。地方事務所における弁護士相談対応枠の増加や、司法書士による相談対応枠の新設などを検討中です。


犯罪被害者支援業務は、関係機関との連携強化構築が比較的順調に推移し、新しい試みである精通弁護士紹介業務も何とか対応できています。


司法過疎対策業務については、開業後、観音寺支部管内がいわゆるゼロワン地域と定義されましたが、県域が日本最小面積ということで、過疎の実感はなく、出張相談会開催程度の対応となっています。


なお、10月から日弁連委託の法律援助事業を開始しましたが、予測された件数程度に留まっており、当面はパート職員による対応で足りそうです。


この間、業務に携わる基本的な態度として、常に「利用者(被疑者・被告人も含む)の目線で」ということを心掛け、併せて、具体的業務に携わる方々(事務職員も含む)が、最大限の能力を発揮できる環境を整備することに努力を払っています。


利用者にとって最適の関係機関・団体をご案内するとともに、関係機関・団体にとっても、最適の利用者をご紹介するのが、『総合』法律支援の究極の目的と理解しています。


各弁護士会の推薦などによって就任している地方事務所長に対し、各地の「法テラス地方事務所」が巡航高度に達し、その後も順調に飛行できるよう、引き続き、絶大なるご協力をお願いいたします。


(日本司法支援センター香川地方事務所長・日本司法支援センター推進本部委員 川東祥次)


お知らせ

今月号をもって、「TAKE OFF! 司法支援センター」の連載を終了し、408号からは裁判員裁判についての連載を開始します。


DASH!! 業推センター 〈16〉

eラーニングが本格的に始まります!

eラーニングによる研修は、本年9月から倫理研修の代替措置として試行運用されているが、いよいよ来年2月からは本格運用が始まる。


eラーニングとは、インターネットを利用した研修で、パソコンさえあれば、事務所でも自宅でも、時間の都合のつくときにいつでも受講ができるという研修方法である。これまでの日時と場所の決まった研修と異なり、会場に出かけることなく、会員一人一人の都合に合わせて、それぞれの受講したい研修メニューを受講していくことができるというものである。eラーニングの受講は、対象者が研修センターに申込み、付与されたIDとパスワードにより、パソコンでeラーニングサイトにアクセスして受講する。各会員のIDとパスワードは登録されているので、時間のないときには細切れでの研修受講もできるのである。


本格運用の最初の研修メニューは、新規登録弁護士向けの6本である。メニューの内容は、「民事保全・民事執行」、「交通事故」、「クレサラ問題」、「家事事件」、「証拠収集方法」、「刑事事件」である。これらのメニューは、弁護士業務総合推進センター地方活性化PT(プロジェクトチーム)の企画協力を得て、研修センターとともに各委員会の協力により、まさにオール日弁連体制で制作が進められている。


今後の会員増や業務範囲の拡大を見越したとき、一堂に会する形式の研修だけでなく、各会員のニーズに合わせた研修方法が求められているといえる。その意味で、現在、人工衛星を利用したライブ研修、会員専用サイトの研修総合サイトで配信されているビデオライブラリーとともに、今後、日弁連の研修の大きな柱として発展していくことが期待される。


今年度執行部の重点課題の一つである「研修の強化」においても強調されるように、研修は、高度専門職である弁護士に対する信頼を維持発展させ、弁護士自治を内部から支えるものである。今後、前記新規登録弁護士向けの六本だけでなく、順次eラーニングによる研修メニューを増加させていく予定である。多くの会員の利用を望むものである。


(日弁連研修センター委員長・弁護士業務総合推進センター研修PT座長 小林哲也)


11/1 人権擁護大会シンポジウム第二分科会
当番付添人制度の全国実施と全面的な国選付添人制度の実現へ向けて

第1部の特別公演 圧倒されるほどの迫真の演技

第1部では、演劇「もがれた翼―ひとりぼっち」(特別公演)が行われ、一少女が事件に関与するに至る過程や実母との軋轢、そして少女が弁護士付添人らとの関わり合いを通じ、立ち直っていく姿が描かれた。共演の現役高校生と弁護士らの迫真の演技に、会場の観客からは感動と驚きの声があがっていた。


続く第2部、ビデオによる少年審判手続の解説と、弁護士付添人が実際についた少年事件の経験者である「元少年」へのインタビュー、そして3人の弁護士と「非行と向き合う親たちの会」の保護者による具体的な事例報告がなされた。


さらに、第3部では、内田徳子会員(千葉県)による「全面的国選付添人制度実現への課題と展望」についての基調報告が行われ、第4部では、篤志面接委員経験者の毛利甚八氏(フリーライター)、葛野尋之教授(立命館大学)、伊藤由紀夫氏(家裁調査官)、大谷辰雄会員(福岡県)によるパネルディスカッションが行われた。「保護処分とはいえ、少年院で一年にわたる身体の拘束がなされるのに、弁護士の関与がなくていいわけはない。子どもにも、せめて大人並みの権利を。また、少年院に行くのは簡単だが、矛盾に満ちた社会で生き抜く力をつけるために、社会内での更生といずれが適切かという視点が必要」。「何よりも、少年の立ち直りのために、調査官や付添人という大人たちが、各自役割分担をして共にやっていければと思う」など、活発な意見交換がなされた。


11/1 人権擁護大会シンポジウム第三分科会
住み続けたいまち・サスティナブルシティへの法的戦略
―快適なまちに住む権利の実現に向けて―

都市政策について基調講演を行う西村教授

基調報告で玉村匡会員(京都)は、経済的利益を追及した乱開発や自動車交通への過度の依存によって景観や自然が破壊されていると指摘し、都市政策と交通政策および環境政策を関連づけた新しいまちづくりの必要性を訴えた。


続く基調講演で、西村幸夫教授(東京大学大学院)は、従来の都市計画は激増する人口を収容することを至上命題とし、それが乱開発を招いたと分析した。しかし2004年をピークに人口は減少に転じ、国民が心の豊かさを求めるようになったとして、「都市は生活の場という観点に立ち戻り、景観を重視して公共交通機関の整備や税制改革といった総合的な施策を行う必要がある」と述べた。


土地利用法制の抜本的見直しを

パネルディスカッションで、小島延夫会員(東京)は、快適で住み続けたいまちづくりを目指した「都市計画建築統合法(仮称)検討試案要綱」を紹介した。同要項は、(1)環境や交通などを総合的に考慮した都市政策、(2)既存の景観などを尊重する建築不自由の原則、(3)市町村への権限付与、(4)実質的な住民参加の確保など画期的な内容となっている。大倉紀彰氏(環境省総合環境政策局環境計画課課長補佐)は、本要項に「違和感はない」と述べ、「(今後の都市政策には)関連部署や省庁をまたいだ総合的・統合的な計画作りが必要」と述べた。


まちづくりは身近で重要な問題である。今後の取り組みが注目される。


岐路に立つ消費者行政
シンポジウム「国民生活センターの今後を考える」
11月5日 弁護士会館

会場からも、様々な意見が出された

基調報告で山口廣会員(第二東京)は、独立行政法人の整理合理化の流れの中で、国民生活センター(国セン)も、直接相談の廃止や商品テストの外部委託といった整理縮小の危機に直面していると説明した。


続く特別報告で、三木浩一教授(慶應義塾大学法科大学院)は、国セン内にADRを設置する構想について、消費者政策を行うという目的を明確に持ち、消費者の費用負担の軽減や事業者への資料提出の義務づけといった実質的平等を確保する仕組みづくりが必要と述べた。また、細川幸一准教授(日本女子大学)は、諸外国の消費者行政の現状を報告し、国センはその予算や人員の規模からして縮小するのは妥当でなく、むしろ機能強化を図るべきだと述べた。


消費者行政をめぐる新たな動き

パネルディスカッションで、堀田繁氏(内閣府国民生活局大臣官房審議官)は、福田康夫首相が首相として初めて国民生活センターを視察し、閣僚に消費者行政を総点検するよう指示したというエピソードを紹介し、消費者行政をめぐる新たな動きがあることを指摘した。石戸谷豊会員(横浜・写真)は、国センは、消費者政策の提言を行う機関として、情報収集の権限や政策を実現するための権限が与えられるべきであると訴えた。
本シンポジウムには、多数の国会議員が駆け付け、地方の消費生活センターの相談員も参加した。消費者行政が新たな局面を迎えていることが実感された。


離婚と子どもII -共同親権を考える
共同親権導入で『奪い合い』をなくそう
11月17日・弁護士会館

共同親権制度をイメージした寸劇も披露された

現在の単独親権制度のもとでは、離婚については合意に達していても、父母双方が親権を譲らず紛争が長期化する例も多い。本シンポジウムでは、欧米では一般的な「共同親権制度」を日本で導入することの是非が議論された。


冒頭、元裁判官の鈴木經夫会員(埼玉)が、家庭裁判所裁判官としての豊富な経験などを踏まえ、「離婚後の親子関係を考えるにあたり、共同親権制度があればと思うケースは非常に多い」と問題提起した。


パネルディスカッションでは、増田勝久会員(大阪)、中村多美子会員(大分県)、棚瀬一代教授(神戸親和女子大学)、山口惠美子氏(社団法人家庭問題情報センター常務理事)、新川てるえ氏(NPO法人Wink理事長)らを迎えて討論した。


単独親権の実務上の障害については、「一つしかない親権だからこそ奪い合ってしまう」、「離れた親の責任放棄を助長する面もある」などの指摘があった。


一方、共同親権制度を導入した場合、子の監護を決める手続、そのサポートをどうするかなどの課題があり、離婚と監護の手続分離や、民間ADRの活用などの方策が提案された。


新司法試験シンポジウム ~未修者教育の観点から~
10月27日 KDDIホール

法科大学院の今後の課題なども指摘された

冒頭、大橋正春前法科大学院センター委員長から、新司法試験や法科大学院の現状につき基調報告が行われた後、法科大学院を修了し、新司法試験に今年度合格した3人による報告が行われた。


琉球大学法科大学院出身の喜多自然氏は「未修者にとっては、学ぶべき範囲が広いため、条文や制度についての基本的な理解が追いつかない、また科目の全体像や体系が分からず自分の勉強の位置づけが困難であるという問題が大きい。そこで、自習の道しるべとなるような、どこまで勉強すればよいのかにつき指針となる授業が望ましいと思う。新司法試験で要求されている能力を分析し日々の勉強の中で身につけることが大切と思う」と語った。


また、後半、古口章法科大学院センター委員長によるコーディネートのもと、塚原英治同委員、川崎達也司法修習委員会委員長、松原芳博教授(早稲田大学法科大学院)、そして上記合格者らとがパネルディスカッションを行ったが、松原教授は、教える側の立場から「法科大学院は、導入教育をも担う実務制度として作られてはいるが、時間と人員が不足しているという現状がある。また、実務基礎のイメージが大学や教員によって幅広く異なっている点も問題。この点のコンセンサスをどう図るか、そして、法科大学院と実務修習との連携をどう図っていくのかが今後の課題」と指摘した。


裁判員裁判 指導者養成集中プログラム 1月12~14日

米国から全米公判弁護協会の講師を招いて、裁判員裁判についての若手指導者養成のための集中研修プログラムが東京で開催される。各弁護士会で参加者(登録10年未満を優先)、傍聴者(研修責任者を優先)を各1名選任していただくこととなっている。研修の模様については録画し、後日、日弁連会員ページのビデオライブラリーで配信する予定である。講義もあるが、参加者は4組に分かれて実技の個別指導を受け、指導法を身につけることとなっている。


JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.14  2007年 年末号

業務開始一年 法テラス訪問記

昨年10月2日に業務開始した日本司法支援センター(法テラス)、1年たってどんな様子なのか、法テラス本部中野坂上分室(東京都中野区)に行ってお話を伺ってきました。


業務内容・実績の詳細については、委員会ニュース「司法改革最前線」をご覧ください。


(広報室長 佐々木 文)


コールセンター~てきぱき、かつ丁寧な対応

中野坂上のコールセンター。時には身振りも出てくるほど、熱心に対応している

まずは情報提供業務の柱の一つであるコールセンターを見学。オペレーター席数は80席、夕方だったので空席が目立つが、これは受電件数から適正な人員シフトを心掛けているため。夜間(17時~21時)や土曜日の受電件数は少ないのだそうだ。「公的機関なので受付時間外だという思い込みが多いのでは?もっと広報が必要」と関一穂情報提供課長は語る。


オペレーターは消費生活相談員、裁判所・検察OB、行政書士等で構成されている。電話を受けながらパソコンを操作し、適切な機関を紹介したり、データベース内のFAQを検索して可能な範囲で答えたりする。相談内容の入力も同時に行い、受電開始からデータ入力終了までの所用時間は平均約10分という迅速さだ。FAQは現在約2400問だが、3000問程度にまで増やしサービスの質を上げたいという。また、職員はコールセンター室外に私物を置いて入室するなど、情報流出防止にも努めている。


犯罪被害者支援 ~被害者と支援機関の橋渡しを

よりよい体制作りのために、今後も様々な取り組みをすると高際室長

犯罪被害者支援は総合法律支援法で定められた業務だが、高際みゆき犯罪被害者支援室長は「何をしていいのか、まったく手探りの状態で始まった」と言う。同室長自身、東京都庁からの出向で畑違いの業務に戸惑いながらも、自ら被害者の声に耳を傾けつつ体制作りを行った。今年七月に外部講師を招いて全国担当職員研修を行ったほか、10月からは業務マニュアルを全面改訂し、関係機関との連携を深めながら、被害者にとって一番いい支援をコーディネートする「橋渡し」役の機能を強化するそうだ。


犯罪被害者支援ダイヤルのオペレーターは、警視庁・検察庁出身者、自身も犯罪被害者など様々だが、DV相談も多いので女性の対応が可能となるようにシフトを組んでいる。また、支援業務の柱となる精通弁護士の紹介も、事案により適した弁護士を紹介できるよう、弁護士会との連携を強化したいという。


日弁連委員会めぐり(13)

「日本知的財産仲裁センター」の事業に関する委員会

今月号は、日弁連として日本知的財産仲裁センターの運営を支える「『日本知的財産仲裁センター』の事業に関する委員会」にお邪魔し、山崎順一委員長(第二東京・写真右)と林いづみ副委員長(東京・写真左)にセンターの活動や、利用のメリット等についてお話を伺いました。


(広報室嘱託 西浄聖子)


日本知的財産仲裁センターの幅広い活動

→日本知的財産仲裁センターは、知的財産に関する紛争を裁判外で解決することを目的に、日弁連と日本弁理士会が共同で一九九八年に設立し運営するADR(裁判外紛争解決)機関である。センターでは、弁護士、弁理士、学識経験者がそれぞれの知識と経験とを生かし、ユーザーのニーズに応えるべく、具体的事案についての有料相談業務・調停・仲裁・センター判定(技術標準に関する必須性判定も含む)・JPドメイン名紛争処理を行っている。
現在、東京本部のほか、関西支部、名古屋支部、そして北海道支所と九州支所とがあるが、中国支所のオープンも間近に控えているという。これらの支部・支所は、特許等の技術系の知財事件の管轄が、東京・大阪の地方裁判所および東京の知財高裁に集中している現状において、市民の司法アクセスを助ける大切な役割も果たしている。


センターを利用するメリットは?
料金表、手続の流れ、過去の参考事例や、必要な書式が掲載されているセンターのホームページも、ぜひご覧ください

裁判手続に比較した場合の大きなメリットは、(1)非公開手続、(2)申立手数料が一律で安い、(3)処理が速いという三点にある。
非公開手続であるため、申立ての存在自体も、手続内容や結果も一切外部に漏れることはない。また、特に訴額の大きな事件は、申立手数料一律のセンターを利用することに大きなメリットがある。さらに、裁判所では、一審弁論終結まで平均10か月かかるとの統計があるが、センターでは、平均6か月程度で処理が終了するという。加えて「双方とも取下げや中止によるペナルティは一切ないので、調停を申立ててみて、うまくいかない場合は取下げや中止することもできるし、顔を合わせ互いの主張をすることにより、訴訟にした場合の見通しまで見えてくるというメリットもある」(林副委員長)とのこと。一番の問題点は、民間ADRであるため、申立てをしても、いまだに応諾してくれない相手が多い点だという。裁判になっても実際には半数近くが和解に終わるという知財事件、上記メリットを依頼者にも理解してもらい、ぜひ、センターの活用を検討されたい。


第27回 日弁連野球全国大会in熊本 東京9連覇

多様な分野で活躍する弁護士によるパネルディスカッション

有志で結成された各弁護士会の野球チームが、毎年1回、トーナメント形式で対戦し、全国1位を決める日弁連野球全国大会・決勝大会。その決勝が、11月10日と11日、熊本市の藤崎台県営野球場・水前寺野球場において開催された。
集まったのは、全国4ブロックでの予選を勝ち抜いた強豪8チームであり、その試合結果は下記のとおりである。
注目の決勝戦は、4回までは、東京の古里健治投手(48期・第二東京)と福岡の篠原広幸投手(59期)の激しい投手戦となったが、前日からの連投のためか、篠原投手に疲れが見え始めた5回、東京がこのチャンスを生かし一気に11点を入れ、結局、14対1の大差で、東京が9連覇を果たした。


また、3位決定戦では、熊本が7対6で大阪を敗り、初出場で3位入賞を勝ち取った。
優勝した東京の鈴木修一監督(41期・第一東京)は、「今回は苦戦の連続で、各チームが力をつけてきていることを実感した。特に、初参加で3位となった熊本のバッティングがあそこまで鋭かったのには驚いた。来年は10連覇がかかっているが、原点である楽しい野球を続けていきたい」と語った。また、惜しくも準優勝となった福岡の古本栄一監督(46期)は、「上出来、燃え尽きました。特に、九州勢で2位と3位がとれたのが非常に嬉しい」と語った。


熊本チームは、惜しくも3位となったが、開催地チームとして初参加のチームが1回戦突破、3位入賞を果たしたのは初めてのことであり、今後の活躍が大いに期待される。


来年度の日弁連野球全国大会は、横浜で開催される。主催者の日本弁護士連合会野球連盟では、今後もより多くのチームの参加を募っている。「これからチームを結成し、来年度から参加を希望するチームがあれば大いに歓迎したい。ぜひ、名乗りをあげてください」とのこと。有志は、受付窓口052-932-3702:同野球連盟の那須國宏会長(愛知県)まで。


メディアの眼

【刑事弁護関連】

富山えん罪事件の再審無罪判決を受け、各紙の社説が刑事司法を取上げた。えん罪防止のために取調べの全面可視化を訴える論調が目立つ中、刑事弁護を扱う弁護士数の増加やスキルアップを求める意見(10月29日・中日新聞)もあった。


【「ひまわりサーチ」開始】

11月1日から、インターネット上で、取扱業務などから弁護士を検索できるサービスを日弁連が始めたとの報道(11月1日・日本経済新聞)。市民のアクセス向上のため、多くの会員の登録が期待される。


【地方自治体と弁護士会】

岡山市が岡山弁護士会の「行政仲裁センター岡山」を利用して和解を成立させた事例や、東京都江戸川区が東京弁護士会に債権回収を委任した事例など、地方自治体と弁護士会の連携が広がっているとの報道(11月5日・日本経済新聞)。


→お知らせ 

今月号をもって、「メディアの眼」の連載を終了します。


編集後記

「(付添人には)叱られもしたが、自分の話をとりあえず聞いてくれて嬉しかった。お前はバカじゃない、やれば必ずできると言ってくれ、力になった」(人権擁護大会シンポジウム第二分科会にパネリストとして参加した元少年の言葉より)。
この元少年の付添人を当時務めた大谷辰雄会員(福岡県)は家裁裁判官出身である。「弁護士になってすぐは、若手の弁護士指導にあたっても、『調査官に打ち勝て』と言っていましたが、そのうちに、そんなことはどうでもいいじゃないか、少年のために自分がやれるだけのことを精一杯考えてやることが大切だ、と変わってきたんですね」。
目先の結果や勝敗よりも、もっと大切なものがある。「その人のために、自分にできる精一杯を尽くす」、その心と姿勢のみが、相手の心にも真摯に響く。弁護士として人としての原点を考えさせられた。(S・S)