日弁連新聞 第397号

「警察への依頼者密告制度」情勢緊迫

法案は2月上旬に国会上程の見込み

弁護士の警察への依頼者密告制度を含む「犯罪による収益の移転防止に関する法律案」(仮称)が、2月上旬、通常国会に上程されると見込まれている。予算関連法案であることから、国は3月中に法律を成立させようとしている。日弁連は、依頼者密告制度に反対するため、カンパを行って、全国紙への意見広告を2月中旬及び3月に行うこととした。2月15日(理事会開催の日)の昼には、国会に一斉要請行動を行うことが予定されている。


また全国から署名も集めることにした。ぜひ活発な署名活動をお願いしたい。


※上記掲載記事について
犯罪収益移転防止法案(いわゆるゲートキーパー立法)の通常国会提出にあたり、弁護士の警察への依頼者密告制度は削除する方向で修正される見込みとなりました。
そこで、意見書広告掲載のためのカンパ募集、2月15日の一斉国会要請行動及び反対書面活動は中止となりました。


「依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程案」理事会で承認

弁護士が職務を行うに際し、依頼者の身元確認及び記録保存などの義務を定め、犯罪収益の移転防止等職務の適正を確保することを目的とする規程案が1月の理事会で承認され、3月の臨時総会の議案となった。
規程案は、依頼者の身元確認・記録の保存をするべきことを中心としているが、官公署の委嘱の場合(破産管財人など)は除かれている。次の場合に身元確認の義務がある。


  1. 法律事務に関連して、依頼者から100万円以上の金員等を預かる場合
    ただし、予納金、供託金等を納付するために金員の預託を受けたとき、相手方から弁済金等を受領したとき、報酬や費用の前受けをしたとき等は除かれる。
  2. 法律事務に関連することなく、金員等を預かるとき
  3. 依頼者のために、不動産の売買、会社の設立、法人の設立、会社の買収・売却等の準備又は実行をするとき

身元確認の記録及び取引等の概要を記載した記録は5年間保存しなければならない。
このほか、法律事務の依頼を受けようとするときは、依頼の目的が犯罪収益流通の実現に関わるものであるか否かについて慎重に検討しなければならないことなども定めている。


「それボク」試写会大盛況  12月25日 弁護士会館

痴漢冤罪を題材に裁判をリアルに描いた映画「それでもボクはやってない」(全国東宝系で公開中)の試写会が弁護士、司法修習生、法科大学院生を対象に行われた。直前に決定した企画にもかかわらず定員いっぱいの約200人が来場し、監督の周防正行さんと弁護士役で出演した瀬戸朝香さんが舞台挨拶を行うなど、会場は大いに盛り上がった。


上映後には、周防監督と川副正敏副会長、酒井幸会員(東京・裁判員制度実施本部副本部長)、四宮啓会員(第二東京・早稲田大学法科大学院客員教授)及び高野隆会員(第二東京・同客員教授)が裁判員制度を考えるパネルディスカッションを行った。川副副会長は「本映画を通じて日本の刑事裁判の現実を多くの人に知ってもらいたい」と語った。


検察庁の録画・録音試行拡大へ
各地での試行・検証を

昨年5月9日、最高検察庁は「裁判員裁判対象事件に関し、必要性が認められる事件について、取調べの機能を損なわない範囲内で、検察官による被疑者の取調べのうち相当と認められる部分の録音・録画を試行することとした」と発表し、同年8月から東京地検での試行を開始した。報道によれば、現在までに10件程度試行がなされているとのことである。


この試行は、あくまで検察官の裁量による一部録画・録音であって、日弁連の求める取調べ全過程の可視化にはほど遠い。全過程可視化の実現のためには、会員各位の弁護実践こそが重要である。


そこで日弁連は、「被疑者ノート」「可視化申入書」の改訂や各活用マニュアルの作成、特別研修(昨年8月29日)の実施などの取り組みを行ってきた。これらの取り組みをさらに発展させていかなければならない。


そして今回、最高検察庁は、本年2月から、東京以外の各地地検でも試行を実施することを前提に、録画・録音機器を16セット準備したとのことである。これから東京地検以外でも試行が実施されることになろう。今後は拡大された試行の検証作業も不可欠である。会員各位におかれては、試行事例を担当した際は、その結果を日弁連(法制第二課・電話03―3580―9876)に報告していただくようお願いしたい。


(取調べの可視化実現本部事務局長 秋田真志)


3月1日臨時総会

3月1日の12時30分、弁護士会館クレオで臨時総会が開催される。下記6議案。いずれも成立には出席会員の過半数の賛成が必要となる。


(1)広報室規程改正の件

広報関係会務の広がりに伴い、広報室に幹事を配置できるようにするもの。


(2)懲戒処分の公告及び公表等に関する規程中一部改正の件

改正事項は三点。第一は、日本司法支援センター(法テラス)が国選委嘱事務を担当することになったこと等にかんがみ、業務停止以上の懲戒処分につき弁護士会が同センターへ通知を行うようにするもの。第二は、弁護士会の懲戒処分が日弁連で取り消されたとき又は軽く変更されたときにも、その理由の要旨を「自由と正義」に掲載するようにするもの。第三は、名称規程が制定されたことに伴い公告内容の文言を整理するもの。


(3)常勤スタッフ弁護士受け入れ弁護士会への助成に関する規程制定の件

法テラスの常勤スタッフ弁護士の会費を免除した弁護士会に対し、その要請に基づき助成を行う旨の規程を制定するもの。


(4)(5)弁護士法及び商業登記法の改正、総合法律支援法の制定並びに法律事務所の名称等に関する規程等の制定等に伴う会規の整備に関する規程制定の件

昨年3月の名称規程制定に伴い、関係諸規程の文言を整備する。(4)は国内弁護士、(5)は外国法事務弁護士に関するもの。


(6)依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程制定の件

弁護士等がその職務を行うに際して、一定の取引等の場合や金銭を預かるときは依頼者の身元の確認や記録を保存する義務等を定めるもの。


ひまわり

昨年11月に市販の四輪駆動車がジャンボジェット機を牽引するというイベントがイギリスの空港であった。ジャンボジェット機の重量は155トン以上あるため、この四輪駆動車は鉄板等を積み、7トンの重さにしたとのことである。しかし、航空機専用の牽引車は70トンあるそうだ。市販車が航空機の牽引に利用できれば、空港としてはかなりの節約になると思われるが、今のところ空港から牽引用にその市販車を注文するという話はないらしい▼このイベントのニュースから、マンションの強度計算偽装事件を思い起こした。航空機用牽引車の重量が70トンある理由は定かではないが、素人として推し量ると、牽引される航空機とのバランスから安全を配慮して設計されたのであろう。絶対に事故を起こさないよう安全のマージンを取ることが、命にかかわるものを作るときの基本であると思う。経済的な市販の四輪駆動車の注文がないのも肯けるところである▼日本には地震が多いが、築何百年もの木造建築物が幾つも残っている。特に法隆寺の五重塔は、680年頃に建築されたとされ、約1300年もの間、倒壊せずに存続している▼単にこの技術を再現するだけでは意味がないが、その精神と技術を現代に活かす方法はないであろうか。(M・K)


法制審議会 被害者刑事手続参加検討大詰め

被害者の刑事手続参加関係について、法制審議会における検討が大詰めを迎えている。日弁連推薦の委員が反対している部分もあるが、要綱案はおおむね次のような内容で固まろうとしている。


  1. 損害賠償の請求
    故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、強制わいせつ、逮捕監禁、誘拐等(業務上過失致死傷を含まない)の被害者又はその相続人は、訴因を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求をすることができ、被告事件について有罪の言渡しがあった後、直ちに手続が開始される。4回以内の期日で終結しなければならないものとし、当事者の申立て又は職権で通常の民事裁判所に移行させることができる。

  2. 被害者等への公判記録の閲覧及び謄写の範囲を拡大する。

  3. 被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。また検察官は、弁護人に対し、被害者特定事項が被告人の防御に関し必要がある場合を除き、被告人以外の者に知られないようにすることを求めることができる。

  4. 被害者参加
    故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、業務上過失致死傷等の罪、死刑・無期・短期一年以上の懲役の罪について、被害者等は、「被害者参加人」として手続に参加することができる。被害者参加人は、情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について証人の尋問ができる。また、被害者参加人が意見を述べるために、被告人に対する質問をすることができる。証拠調べが終わった後に、被害者参加人は、従前の意見陳述に加え、(事実又は法律の適用について)「弁論としての意見陳述」ができることとなる。

裁判員裁判併合事件に区分判断導入へ

この他、裁判員裁判において、裁判員の負担を考慮し、併合事件の一部を区分し、順次区分事件ごとに審判することができるとする案が提案されている。ただし、被告人の防御に不利益を生ずるおそれのある場合等は除かれる。区分事件ごとに別々の裁判員(裁判官は共通)が順次有罪か否かの判断をし、併合事件の全体について終局の判決を行うことが考えられている。


教育基本法改正後の取り組み
諸法令の改正作業に注視の必要

昨年12月15日、改正教育基本法が成立した。教育基本法は、憲法の諸原則にのっとり、憲法の理想を実現することを目的として制定された教育に関する根本法である。国家に対して、すべきこと、してはならないことを義務づける権力拘束的な規範と解されている点で立憲主義的性格を有する。改正によってこの立憲主義的性格が損なわれるのではないか、ということが最も危惧されていた。


しかし、今後の学校現場での具体的な教育のあり方や教育行政のあり方は、学校教育法や地方教育行政法あるいは学習指導要領についての改正がどのようになされるか、教育振興基本計画がどのように定められるかによるところが大きい。


改正法の解釈適用においても教育への「不当な支配」は許されないものであることを明確にしつつ、今後見込まれる教育関係諸法令の改正作業に対する注視を怠ってはならない。


基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする法律専門家としての立場から、憲法の教育条項を踏まえた提言を行うとともに、教育現場での思想信条の自由、教育を受ける権利や学習権が侵害されることのないよう不断に取り組み続けることが求められている。


就職情報説明会に修習生400人余が参加
12/23 弁護士会館

大勢の参加者で講堂は熱気に包まれた昨年12月23日、弁護士会館クレオで新60期修習生向けの弁護士会による就職情報説明会が開催された。


新60期については、就職状況が厳しいと予想されており、また、弁護士の大都市偏在解消を図るため、東京・大阪を除く33弁護士会が各地の採用動向について情報を提供することとしたもので、日弁連が主催するものとしては今回が初の試みである。


当日は、修習生400人余りが会場を埋めつくした。会場には、公設事務所と日本司法支援センターのブースも設けられ、修習生は各ブースで真剣に説明を聞いていた。終了予定の時刻を過ぎても席にとどまる修習生も見受けられ、熱意のほどが伝わってきた。修習生のアンケート結果によると、東京・大阪以外でぜひ就職したい、良い事務所があれば就職したいという回答が回答者の8割以上もあり、地方への関心の高さがうかがえた。


(弁護士業務総合推進センター副本部長 愛須一史)


TAKE OFF!司法支援センター 《25》

各地域でスタッフ弁護士養成を

最近の司法修習生が、法テラスのスタッフ弁護士養成事務所を選択する基準として、自分の出身地、実家のある地元であることを挙げる場合が多い。


スタッフ弁護士の任期終了後の地元での弁護士事務所開業など理由はさまざまだが、自分の生まれ育った地元に愛着を持ち地域で活動をしたいと考えている若者が増えていることも事実だ。


スタッフ弁護士は、過疎地での法的サービスの担い手として期待されているほか、国選・扶助事件を担う。これからは、国選・扶助の担い手(ジュディケア)が十分でない本庁・支部でのこれらの事件を担当する(補完的機能)だけでなく、裁判員裁判をはじめ、刑事事件の連日的・集中的開廷に対応できる刑事弁護のプロフェッションとしての役割(専門的機能)を果たすことがますます期待されていくと考えられる。


特に、裁判員裁判は、地域の選挙民から選ばれた市民が裁判に参加することから、地域で育てられた力強い刑事弁護人として、スタッフ弁護士が刑事弁護を担うことは刑事裁判の充実にとって意義がある。


スタッフ弁護士の養成については、養成事務所がスタッフ弁護士候補者を勤務弁護士として採用し、1年間養成後、法テラスに採用されるスタイル(従来スキーム)に加え、昨年12月の理事会で、修習終了後直ちに法テラスがスタッフ弁護士として採用し、養成事務所において養成研修を行う新スキームが承認された。これは、地域での補完的機能だけでなく、スタッフ弁護士の専門的機能の充実・強化のため、各地でスタッフ弁護士養成に参画してもらいやすくするための方策として立案されたものである。


新スキームにおいては、法テラスが給与負担を行うが、弁護士としての倫理や弁護活動の基本的鍛錬は、いわゆるOJT方式により、指導弁護士の指導によって行われる。弁護実務修習と似ているところがあるが、修習生と異なり弁護士資格を持つから、法廷はもちろん法廷外も弁護士としてもろもろの活動が可能であり、まさに生きた事件を指導弁護士の下で担当することで、実践的弁護技術と弁護士精神を身に付けることが期待される。


(日本司法支援センター推進本部事務局長 小林元治)


DASH!! 業推センター〈6〉

“華麗な転身”官庁・企業はあなたに期待している!

前例のないアンケートの実施

司法制度改革が目指す法の支配があまねく貫徹される社会とするために、弁護士がさまざまな分野に進出し、法化社会の担い手となることが期待されている。さらに、社会や経済界の弁護士への需要は多く、活動領域は広いと言われてきた。


そこで、当PT(プロジェクトチーム)は「本当に官庁や企業の弁護士需要はあるのか」と弁護士の採用状況、今後の採用見込み、業務内容、勤務形態、待遇、採用に対する障害などを調査項目とし、調査対象は証券取引所の全上場会社と生損保、マスコミなど、有力非上場企業の3795社(1129社)、主要外資系企業1457社(317社)、官公庁46省庁(32省庁)と、これまでにない大規模なアンケート調査を実施した。なお、かっこ内は回答数。


期待に反する調査結果

今回のアンケート調査結果は、回答企業のうち現在企業内弁護士のいる会社は57社99名であり、今後5年以内に弁護士を採用する計画のある国内企業は53社で47~127名、外資系企業は18社で19~49名と極めて少なく、期待外れの結果であった。この要因の一つは、一般企業の意識が常勤の弁護士ではなく顧問弁護士で対応が十分であるということによる。また、人事、昇進、給与や報酬問題などが採用のネックとなっている。
他方、官公庁は、任期付公務員を含め弁護士有資格者が在籍しているのは回答32省庁のうち、12団体35名であり、企業に比べ高い割合であった。しかもその満足度はかなり高く、法律専門家として職務において高い評価を得ており、今後5年間の採用予定は42~50名強となっている。


日弁連の今後の対策と活動

そこで、これらの調査結果を踏まえて当PTは、次の諸施策を実施すべく検討している。


  1. 経済団体・官公庁との協議会や意見交換会の開催(組織内弁護士の有用性の理解と必要な情報提供)。
  2. 日弁連の組織内弁護士人材バンクの創設の検討(優秀な人材の発掘と提供、組織内弁護士の募集と研修育成、求職と求人情報の双方向的提供機関)。
  3. 全国の弁護士会との協働による企業・官公庁と地方自治体への弁護士採用推進活動。

(任期付公務員・企業内弁護士推進PT座長 青山 学)


現場感覚を最高裁に生かす
田原睦夫判事を訪ねて

田原睦夫最高裁判事

1月9日、昨年11月1日に最高裁判事に就任した田原睦夫元会員(大阪)を最高裁判事室に訪ね、弁護士生活の思い出や就任後の感想等をお聞きした。


(広報室嘱託 佐々木 文)


弁護団事件で鍛えられた新人時代

登録後間もない1970年1月、大阪国際空港公害訴訟の弁護団に加わった。騒音公害訴訟のリーディングケースで何もかも手探りの状態だったが、現場を訪れ救済が必要な事態であることを痛感する。住民のヒアリングや住民団体との協議を重ねる一方、学者との研究会、弁護団では徹底した集団討議を繰り返した。弁護士としての基礎はこのとき鍛えられたという。


管財事件でも現場重視

倒産法の第一人者として知られる判事は、民訴法や倒産法の法制審議会でも活躍。末野興産などいくつもの大型破産・更生事件の管財人を手がけたことでも有名だ。発表した論文等が多いため理論派との印象も強いが、管財事件でも現場重視の姿勢は変わらない。自ら帳簿を読み営業現場に立ち、経営に深くかかわって、文字通り企業再建の陣頭指揮を執った。当然、従業員たちとの交流も深く、今でも付き合いがあるという。


3件の完全無罪事件

刑事事件も熱心に手がけ、国選事件を中心に約200件の刑事事件を引き受けた。そのうち殺人事件など3件で完全無罪を勝ち取っており、一部無罪も3件ある。否認事件の方が弁護士としてのやりがいを感じるという。国選特別案件も3件受任し、拘置所に日参してようやく被告人との信頼関係を築いたこともある。


膨大な上告事件数

最高裁判事になってまず驚いたのは事件数の多さだという。真に審議が必要な事件にかける時間を確保しにくい現実に、本当に上告が必要な事件かどうか、弁護士側も考えなければならないと感じている。最高裁判決には、保守的な面もあるが、時代を先取る感覚も求められる。そのバランスをどうとるのか、37年の弁護士生活で培った現場感覚を生かしたいと語る。
日中は広い判事室に一人こもって執務をする。窓の外には皇居の緑、分厚い二重窓のおかげで戸外の騒音も聞こえない。「共同事務所の喧騒の中で仕事をしていたので、静謐な環境にはまだ戸惑っている」そうだ。


人生の師匠は2人

学問上の師は、大学時代ゼミの教授だった故・林良平元京都大学教授。修習生時代にたくさんの研究会に誘ってもらい学問上の目を見開かされたという。もう一人は、八海事件の弁護団にも参加した故・前堀政幸会員(京都)。弁護士としての生き様を学んだそうだ。八海事件は冤罪を社会問題化させた事件であり、高校生だった田原少年が弁護士に興味を持つきっかけとなった事件でもある。「二人の師匠の他にも、人に恵まれ、事件に恵まれ、本当に幸せだった。優れた人に囲まれているので天狗になんかなれない」と笑う。


夏山登山で心を空に

趣味は夏山登山。60度の斜面も登ってしまうというから、本格的である。何も考えない「空」な時間を持つことで、「下界」の肩書や雑事から解放される。登山仲間はご子息で、「一人で登ってもいいと思っているが、家族が許してくれずついて来る」とのことだ。ちなみに、ゴルフの経験は一度もない。「ゴルフ場の管財人をしていたので、芝の管理方法なら分かるけど」と苦笑した。


◇ ◇ ◇


最高裁判事の定年(70歳)まで7年の任期がある田原判事、現場感覚を生かした判断に期待が集まる。


田原睦夫最高裁判事
1967年 京都大学法学部卒業・司法修習生
1969年 弁護士登録(大阪弁護士会)
1983年 日弁連公害対策委員会副委員長
1990年 法制審議会民事訴訟法部会幹事
1996年 法制審議会倒産法部会委員
2005年 日弁連司法制度調査会副委員長・倒産法制検討委員会委員
2006年 11月1日 最高裁判事就任

民放連との懇談会
メディアスクラム・実名報道など議論  1/16 弁護士会館

メディアスクラムについてガイドラインを

昨年5月の秋田連続児童殺害事件を調査した弁護士が、100人を超える取材陣が詰めかけ関係者への過剰取材が行われた状況を報告し、「メディアスクラム防止のため一定のガイドライン作成の必要があるのではないか」と問題提起した。
民放連(日本民間放送連盟)側からは「不十分ではあるが、秋田のケースでは報道側の自主規制も一定程度試みられている。取材対象者との関係では、弁護士会等が調整役となることも期待される」などの意見が出された。


番組に対する行政指導は増加の傾向

近年、番組の編集内容に対する行政指導が増加しているとの指摘について、民放連側より「以前なら考えにくかったケースでも指導が出ているという印象はある」との発言があった。弁護士側からは「この問題について民放連としてもっと声を上げるべき」、「行政指導を出させないためにも、自主規制機関強化の必要性があるのではないか」等の指摘がなされた。


匿名・実名について個別具体的判断を

昨年9月の高専生殺害事件で、自殺した被疑者少年の実名および顔写真が一部メディアで報道されたことに関し、弁護士側から「少年事件に限らず、人格権や犯罪者更生の観点から、個別具体的に判断してもらいたい」との要望が出された。
民放連側からは「実名か匿名かという問題には日々直面するが、なぜ実名かという判断根拠をきちんと説明できるよう心がけている」との認識が示された。


1/13 弁護士会館
思想・良心の自由の現代的意義を考える
学校現場における「日の丸」・「君が代」強制問題をめぐって

教師を追い詰める社会を批判する野田教授

冒頭、伊礼竜之助会員(東京)が、「日の丸」・「君が代」の強制問題に関する検討プロジェクトチーム(人権擁護委員会)の活動や同問題に関する会長声明を紹介した後、野田正彰教授(関西学院大学)による基調講演が行われた。


野田教授は、国旗及び国歌に関する法律の制定後、「日の丸」・「君が代」強制による精神的・身体的苦痛により早期退職する教師が増えていることを指摘し、「退職する教師ではなく、教師に精神的・身体的苦痛を与える社会の方が病理なのだ」と訴えた。


引き続いて行われたパネルディスカッションでは、元都立高校校長が教育現場における「日の丸」・「君が代」強制の実態を紹介すると、中川明会員(第二東京)は「教育の目的は、自律的な人格を完成させる点にある。自分とは違う考え方、多様な価値観があることを学ぶことこそが大切だ」と述べ、生徒の教育という観点から強制問題に反対した。西原博史教授(早稲田大学大学院)も「1989年の学習指導要領改訂により、国家の意思に生徒を従属させ、教師による生徒に対する害悪が行われるようになった」と指摘し、教育現場において生徒の視点が欠けていることを強く批判した。


会場には都立高校の教師や卒業生など約200人の参加者が集まり、パネリストに熱心な質問を投げかけていた。


JFBA PRESS -ジャフバプレス- Vol.4

話を聞く生徒達は未来の裁判員でもある

「社会科見学」をご存じですか?


 「社会科見学」とは、簡単に言えば、小・中・高校生に「弁護士とは何か」を伝える取り組みです。様々な反応をする子どもたちを相手に話をするのは、実に面白いものです。今回は、そんな社会科見学の一面をお伝えします。


(広報室嘱託 中田 貴)


ある女子高生の場合

日比谷公園の紅葉が色づき始め、何となく気怠い昼下がり。ちょっと油断すると眠気が。そこへ、弁護士会館にはおよそ似つかわしくない清楚な少女が現れた。
彼女は、都内の私立高校に通う女子高生。緊張している様子が伝わり、自然に眠気が吹っ飛ぶ。
なるべく分かりやすい表現を心掛け、微笑を浮かべて(決してにやけているわけではない)話をしていると、徐々に彼女の緊張が解けていくのが分かる。彼女は、法学検定試験4級なるものに既に合格しており、過疎地で弁護士をするのが夢だという。
理想高く向学心旺盛な彼女に感心しつつ、弁護士としての心掛けなどを偉そうに話していると、広報課の職員が遠くからしきりに合図をしているのが目の隅に入った。「先生、そろそろお時間です」(「いい加減に切り上げろ」の意味)。あっという間に小一時間が経っていた。


小学校以来の体験

今度の見学者は、中学三年生の総勢280人。160人と120人の2組に分け、それぞれ1時間ずつ話をする。会場は弁護士会館クレオ。こんなに大勢の前で話をするのは、児童会副会長をしていた小学校以来だ。
生徒を乗せたバスが渋滞に巻き込まれ15分遅刻。しかも、入ってきた生徒を見ると、全員男子。そうか、男子校か…。
気を取り直して話し始める。なるべく柔らかい話からと、出身地のことなど話していると、あちこちで机に突っ伏す姿が。完全に寝入ったやつもいる。慌てて実際に担当した案件について話し始めると、生徒の目がキラキラし出した。相当興味を引かれたらしい。子どもは素直だ。
話を終えると、引率の先生の掛け声で、全員が大声で「ありがとうございました」と挨拶。すがすがしい。元気を分けてもらった気分だ。


見学後のアンケート

社会科見学の後、見学者にアンケートを提出してもらう。受け取り方が様々で面白い。中には、「知的で格好良かった」などと一体誰を見たのかと聞きたくなるような感想を書いてくる子もいて、思わず頭をなでてやりたくなる。


社会科見学の効用
「弁護士に必要なバランス感覚とは…」

他人の紛争に首を突っ込むという因果な仕事柄、ややもすれば心が荒みがち。そんなとき、純真無垢な生徒たちと触れ合うと、心が洗われたような気持ちになれる。社会科見学は、精神衛生上いいらしい。
現在、社会科見学にご協力いただいている先生方は約50人。本当にありがとうございます。しかし、昨年の社会科見学の件数は130件、個人的訪問あり学年単位の見学ありで、延べ人数は3140人。人手不足は否めません。
将来の日本を担う生徒たちに「弁護士とは何か」を伝え、静養にもなる社会科見学、あなたも担当してみませんか。

社会科見学にご協力いただける場合は、日弁連広報課(電話03-3580-9864)までご連絡ください。ボランティアとしてのご協力ですので、原則として東京三会ご所属の方を対象としています。


メディアの眼

【12月後半】

名張毒ぶどう酒事件を各紙が詳細に報道。「疑わしきは罰するのか」(朝日)など、社説でも多く取り上げられ、裁判員制度と絡め、判断の難しさや事件の迷走を懸念する論調も目立つ。会長の批判声明も紹介された。
4名の死刑執行も全国紙各紙が報道。会長の遺憾声明も併せ紹介された。


【1月前半】

弁護士「激増元年」(毎日大阪)や「急増する弁護士」(日経)など、弁護士の就職難が大きく報じられた。「ノキ弁」を紹介するコラムもあり(読売大阪)、就職問題は世間の関心も高いようだ。


日弁連委員会めぐり(4)

「日弁連研修センター」

弁護士のスキルアップに欠かせない「研修」。委員会組織で企画・運営されていることをご存じでしたか?今月は委員会ニュース「研修」も同封されているので、詳細はそちらを読んでいただくとして、本コーナーでは委員の皆様のご苦労などをご紹介しましょう。


(広報室嘱託 佐々木 文)


満員御礼の特別研修

研修センターが運営する研修の中で特に会員の関心が高いのは、全会員向けの特別研修だろう。重要な法改正など要研修マターを選び、年間25回程度行われる。全国68か所にライブ中継され、地方会でも最新の情報に触れられると好評だという。


気になるのはその費用だが、撮影や配信の費用だけで1回200万円以上かかるそうだ。しかし、大規模な研修で多数の参加があれば、参加費により、赤字にはならないという。内容の詳細は該当委員会が担当するが、費用は研修センター持ち。「『特定の委員会の研修に偏っているのでは』など、各委員会と研修センターの間でテーマ選択で揉めることはないのですか?」と聞くと、「実務の必要度を厳密に検討して決定するので、不満の声は聞かない」とのこと。委員会から要望があっても、必要度に疑問があるときは、委員会主催シンポで実施して欲しいと調整することはあるという。


ちなみに、昨年最も人気があった研修は離婚時の年金分割の講座で、約2300人が受講した。人気講座は申し込み開始後早々に埋まってしまうこともあるので要注意だ。


PCでオンデマンド研修

ここまで読んで、「みんなそんなに研修に参加しているのか」と焦った方、安心していただきたい。特別研修は後日聴講が可能である。ただし、日弁連会員用ホームページに登録すればの話。会員ページからログインできる日弁連研修総合サイトで、過去1年分の特別研修の動画をオンデマンド配信しており、無料で視聴できるのだ。将来的には、Eラーニングシステムを導入し、双方向的なウェブ研修の実施を目指しているそうだ。


知られざる5条研修
小川宏嗣委員長(愛知県)

改正弁護士法5条に基づく弁護士資格付与研修も、研修センターが担当している。司法修習を2か月弱に凝縮したようなものだが、特任検事、司法試験合格後の国会議員経験者、大学教授等が受講する。会員対象でないため、通常の研修とは異なる苦労もある。受講者が実務研修中に所在不明となり、委員が探し歩いたことも。また、将来的には無給の司法修習を回避して弁護士資格を得る手段となるのではないか、との危惧もあるという。
新規登録弁護士研修も登録会員大増員を受け、会場や講師の確保をはじめ苦労が多い仕事だ。
小川宏嗣委員長(愛知県)=写真は、「弁護士自治を支えるためには、弁護士の質の維持が大切で、研修の重要性は今後ますます大きくなる。この使命感があるからこそ頑張れる」と語ってくれた。


ロイヤーズベストセラー(2006年12月)
協力:弁護士会館ブックセンター

順位 書籍 著者・編者 出版社
新版 注釈民法(13)債権(4)契約総則§§521~548〔補正版〕 編者 谷口知平・五十嵐 清 有斐閣
訟廷日誌 合冊 2007―付・訟廷便覧― 大阪弁護士協同組合出版関係委員会 編集 全国弁護士協同組合連合会
東京家庭裁判所における人事訴訟の審理の実情 東京家庭裁判所家事第6部 編著 判例タイムズ社
模範六法 2007 平成19年版 編者 判例六法編修委員会 代表 鈴木祿彌・大塚 仁 三省堂
訟廷日誌 分冊 2007―付・訟廷便覧― 大阪弁護士協同組合出版関係委員会 編集 全国弁護士協同組合連合会
Q&A 交通事故診療ハンドブック(改訂版)―医療機関のためのガイドラインと患者対応のノウハウ― 監修 羽成 守 / 編集 日本臨床整形外科学会 編 ぎょうせい
クレサラ実務最先端 2006年版   全国クレジット・サラ金問題対策協議会
刑事尋問技術 改訂版 山室恵 著 ぎょうせい
要件事実の考え方と実務〔第2版〕 著者 加藤新太郎・細野 敦 民事法研究会
10 特定商取引法 梶村太市・石田賢一 編 青林書院

編集後記

先日受講した企業の広報セミナーで印象的だったのは「プレスリリースしたニュースは必ず社員にも知らせる」ということ。確かに、自分が所属する組織のニュースを外部から知らされ、「聞いてないよ!」となるのは愉快ではないでしょう。11月号の特集では主に市民向け広報を取り上げましたが、当然、会内広報も重視しており、タイムリーな情報提供や、興味を持って読んでいただくための工夫を続けています。
その一環として、昨年秋、日弁連新聞の体裁について複数の印刷会社から提案をしていただきました。おかげで紙面のあり方について改めて考えることができ、その結果、二色刷りなどの導入につながりました。ちなみに製作費用も従前より低くなっています。「最近の新聞結構いいよ」と言っていただけるよう、前例にとらわれない紙面作りを心掛けていきます。(K・I)