日弁連新聞 第384号

ゲートキーパー問題 更なる運動方針を決議
12/16 理事会

12月16日の理事会で、弁護士に対するゲートキーパー立法を阻止するための運動方針が全会一致で採択された。


日弁連は従来、FATF勧告の完全実施のための国内法制度化に反対してきた。6月理事会で決議された行動指針では、法制度化が避けられない場合には、より侵害的でない制度の構築を目指すこととされていたが、11月17日、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部の決定により、この制度構築が危ぶまれる事態となったことから、この度、再度運動方針を決議したものである。


運動方針では、今回の政府決定により想定される弁護士に対するゲートキーパー立法は、弁護士・弁護士会に対する国民の信頼を損ね、弁護士制度の根幹を揺るがすものとの基本認識から、次のような運動をすることにしている。


  1. 弁護士制度の存在意義を危うくする危険があることなどを訴える運動を展開し、国民的支持を得ることを目指す。
  2. 政府や政府機関に対しても、依頼者が真実を述べて弁護士から適切な助言を受けることによる法遵守の促進を阻害し、かえって立法目的に反する結果となることを訴え続ける。
  3. ゲートキーパー制度の弁護士への適用阻止や廃止を求めて活動している諸外国の弁護士会との連携を強化する。
  4. 弁護士がマネーロンダリングやテロ資金の移動に関与することのないよう、研修を更に強化して行う。

今後日弁連は、各弁護士会と連携しながら、この運動方針に沿って、国民や政府・政府機関に向けた運動を展開していく。


未決拘禁制度改革
「有識者会議」が発足

「未決拘禁者の処遇等に関する有識者会議」が法務省・警察庁の共管で発足し、12月6日、第1回会議が開催された。行刑改革会議の未決版として、日弁連が従来から強く要望し続けてきた審議機関が、ようやく実現したものである。委員9名のうち久保井一匡会員(大阪)を含む6名は行刑改革会議委員、3名は新たに警察庁の推薦による。通常国会への未決拘禁法案上程を控え、本年2月には提言を取りまとめることが求められており、極めて限られた時間の中、厳しく対立する問題点が議論されることとなる。


第1回有識者会議では、法務省・警察庁・日弁連からそれぞれプレゼンテーション(日弁連からは西嶋勝彦・刑事拘禁制度改革実現本部長代行)を行った。早くも、代用監獄の廃止をはじめ未決拘禁制度の抜本的改革を求める日弁連と、代用監獄の維持を主張する法務省・警察庁との間の対立が鮮明となった。


短期間ではあっても充実した審議が行われ、国際社会に恥ずかしくない有意義な提言が取りまとめられることを期待している。


なお、死刑確定者処遇問題は、警察庁の所管外という理由でテーマから外された。そこで日弁連は急遽、別途有識者会議を設置するよう法務省に要望した(要望書全文は日弁連ホームページに掲載)。


(刑事拘禁制度改革実現本部事務局次長 田鎖麻衣子)


新年のご挨拶
「改革の着実な実行を」 会長 梶谷 剛

新年あけましておめでとうございます。新しい年が会員の皆様にとって実り多い年となりますよう心からお祈り申し上げます。


昨年は「司法制度改革実行元年」でした。本年も引き続き、司法制度に関する諸課題につき新しい制度の実行及び運用開始への準備を進めていかなければなりません。


日本司法支援センターは、いよいよ設立・事業開始を迎えます。被疑者国選弁護がスタートするとともに、全国で法的サービスを受けることのできる社会の確立に向けた事業が開始されます。十分なサービス提供のための担い手の確保は日弁連の責務です。日本司法支援センターとともにわれわれ弁護士への確かな信頼が寄せられることを目指して、更なる協力をお願いいたします。


裁判員制度開始までの準備期間も残すところ約3年半となりました。全力で準備に当たり、円滑な実施を目指さなければなりません。裁判員裁判に対応できる知識と技術を会員全員が身につけなければなりませんし、取調べ状況の録画・録音(可視化)の実現、接見や保釈についても大きな改革が必要とされます。勿論、広報活動も引き続き精力的に進める必要があります。


法曹養成に関しては、新司法試験が実施され、法科大学院教育の成果が初めて検証されます。新司法修習カリキュラムや受け入れ体制の準備が進められています。後輩の育成のために更に努力を重ねていくことが必要です。


昨年秋に急展開したゲートキーパー問題は、弁護士制度の根幹を揺るがしかねない事態に直面しております。国民の理解を得る努力を続けて、このような立法を阻止する運動を展開していきたいと思います。


その他、未決拘禁の問題、犯罪被害者問題、共謀罪問題、少年法改正問題、憲法問題等々本年も難問が山積しております。いずれも大きなエネルギーを必要とする事項ばかりです。


さらに本年3月には、臨時総会において、「裁判所の処置請求に対する取扱規程」「開示証拠の複製等の交付等に関する規程」「法律事務所等の名称に関する規程」について審議をお願いしたいと考えております。


本年も、皆様のご協力を得ながら真摯に会務を遂行していく覚悟でおりますので、旧年同様皆様のご理解とご協力をお願い申し上げ、新年のご挨拶とさせていただきます。


臨時総会上程の議案承認される

12月15日、16日の理事会において、3月3日に開催が予定されている臨時総会に上程される以下の議案が承認された。


「裁判所の処置請求に対する取扱規程」(修正案)

執行部が提案していた「裁判所の処置請求に対する取扱規程」修正案は、12月15日の理事会において、更に若干の修正をした上で、臨時総会の議案とすることが承認された。


理事会における新たな修正点は、連合会に対する処置請求に対し連合会が自ら対処する場合は、全ての場合につき、あらかじめ弁護士会の意見を聞かなければならないとした点である。


「法律事務所等の名称等に関する規程」(案)、「外国法事務弁護士事務所の名称に関する規程」(案)

また、同日の理事会において、「法律事務所等の名称等に関する規程」案、「外国法事務弁護士事務所の名称に関する規程」案を臨時総会の議案とすることが承認された。各弁護士会に対し意見照会を行った結果を踏まえた案となっている。


現在、弁護士法人については「弁護士法人の名称に関する規程」があるが、弁護士については事務所名称に関する規程がない。今後、弁護士の多様化が進むことが予想される中で、事務所名称に関して何らかの規程が必要である。今回の規程案は、様々な事務所名称が現に存在するという実情を踏まえ、基本的には現状を大きく変えない範囲で最小限の規制にとどめるとの考え方に立っている。


主な内容は、事務所名称の届出、「法律事務所」の文字の使用、使用文字の限定、同一名称の原則的禁止、品位を損なう名称の禁止等である。


外国法事務弁護士事務所の名称についても、同様の規制を行うため規程をおくこととした。


開示証拠の複製等の交付等に関する規程
理事会に修正案を提示

日弁連執行部は、弁護士会及び関連委員会に対する意見照会の結果を踏まえ、12月理事会に「開示証拠の複製等の交付等に関する規程(案)」に関する修正案を提示した。主な修正点は、以下のとおりである。


  1. 第一条(目的)を、「…弁護士の職務の規律を定め、もって被告人の防御権及び弁護人の弁護権を保障しつつ、弁護士に対する信頼を確保することを目的とする」と修正した。第一条(目的)に旧第六条(解釈・適用指針)の内容を盛り込む修正である(横線部分を加筆)。旧第六条は削除。
  2. 第三条(被告人への交付等)のうち、第二項に関し、「被告人の正当な利益を擁護するための必要な助言」の文言を削除した。第三条の規定する「行為規範」の内容は、適正な管理の指示、流出防止の配慮(第一条)、及び目的外使用禁止規定及び罰則についての説明(第二項)である。
  3. 被告人への交付等(第三条)と、被告人以外の者への交付等(第四条)に分ける「二分論」を採用した。旧第四条と旧第五条を一体化したことに伴い、批判の多かった「関係人」の概念は使わないこととなった。また旧第五条の「特段の事情があって」の文言も削除した。
  4. 新第四条(被告人以外の者への交付等)は、「行為規範」を定めるものである。第一項は、複製等を交付等する段階で、目的達成に必要ではない情報を削除したり、交付等の相手方に対して秘密及びプライバシーに関する情報を第三者に伝えないように注意を与えること等を求める。第二項は、複製等を交付等する時点で、審理準備等の目的での使用を終えた後の対応について必要な注意をすること等を求めるものである。

TAKE OFF!司法支援センター《13》
「法テラス鳥取」情報提供業務の試行実施される

12月1日から14日にかけて、日本司法支援センター(法テラス)の情報提供業務の試行が鳥取県下において実施されました。


同期間中、鳥取県弁護士会館に情報提供窓口を設置し、鳥取県弁護士会をはじめとして九士業団体等が無料相談会を実施し、その受付業務を行いました。情報提供窓口には、消費生活相談員が配置され、架電のあった案件に対し最適な相談機関を紹介し、相談機関によっては予約まで行い、これにより、法テラスのアクセスポイントとして予定されているコールセンター業務や情報提供業務がスムースに行なわれるかの試行・実験がなされたのです。


この法テラス試行については、地元のテレビ局や新聞が取り上げ、また、新聞への広告掲載や折込み広告等の広報を行った結果、多数の市民の知るところとなり、期間内に453件の情報提供依頼を受け付けました。


日弁連も、この試行の一部に立ち会い、試行の視察を行うと共に、実際に情報提供業務を体験しましたが、その中で、幾つかの問題点や改善の必要性が実感できました。


まず、電話により個別の相談ができると誤解して架電してくる相談者が多かったことです。法テラスを広報する際には、最適相談機関の紹介業務を行う機関であることを、より明確に示す必要があります。


また今回の試行では、受付担当職員に消費生活相談員3名を配置しましたが、この3名の中でも能力差が歴然としていました。一定の経験者とされる消費生活相談員であってもレベルの差があることから、コールセンターオペレータや情報提供担当職員に対しては、FAQの整備と研修の必要性・重要性を改めて感じました。


試行中、当職が相談を受けた案件では、相談者はテレビ放映を見て架電し、その結果、弁護士のアドバイスを受け、問題解決の糸口が見えたと喜んでいました。法テラスが、法律問題を抱える市民との適切なアクセスポイントとなり、潜在的な需要の掘り起こしになり得るでしょう。


アクセスポイントは、市民と法テラスをつなぐ窓口であり、その重要性はいうまでもありません。今後は、中・大都市圏でも同様の試行を行ったり、コールセンター自体の試行を実施するなどして、2006年10月の業務開始に向け、できる限りの準備を進める必要があります。


(日本司法支援センター推進本部アクセスポイントPT座長 伯母治之)


人権と死刑を考える国際リーダーシップ会議
12/6・7 弁護士会館
日弁連・EC・ABA共催の国際会議に国内外から約300名が参加

2日間にわたり開催された会議は、人権・死刑分野の第一線で活躍する15名のスピーカーを海外から招聘し、来賓として三ツ林隆志法務大臣政務官(衆議院議員)、亀井静香衆議院議員(死刑廃止を推進する議員連盟会長)を迎え、世界19か国から延べ約300人が参加するという画期的なものとなった。


梶谷会長に続き挨拶をするABA会長のマイケル・グレコ氏

開会にあたり梶谷会長は「自国での極刑が、他国では極刑ではない。本会議が死刑問題について自国の常識を見直す機会となり、国境を越えて人権と死刑制度に関する真摯な議論がわき起こることを願う」と挨拶した。駐日EC代表部のライテラー公使は、裁判員制度を目前に控え、被害者問題を含め死刑制度が幅広く議論される必要性を指摘し、「世論調査による80%の死刑支持率は、死刑継続の正当化ではなく、さらなる議論を要することを示すもの」と語った。死刑執行停止の提唱という点で日弁連と同様の立場をとるABAのグレコ会長は「命が奪われる前には、公正な裁判が行われなければならない」と法律家の責任を強く訴えた。


さらに、元FBI長官で米連邦判・検事を歴任したウィリアム・セッションズ氏から「死刑事件に関与する判・検事の責務」について、また欧州評議会議員会議・法務人権委員会人権小委員会のプルゴリデス委員長(急遽帰国のため代読)から「欧州評議会による死刑廃止の取り組みと日米両国への働きかけ」について、基調講演がなされた。


今後、死刑執行停止法の制定という日弁連の課題に向けて、本会議の成果を十二分に生かす必要がある。


(日弁連死刑執行停止法制定等提言・決議実現委員会事務局次長 田鎖麻衣子)


少年法「改正」法案 問題点の解消を求める市民集会 PartII
児童福祉と教育に警察は似合わない 12月7日・弁護士会館

発達心理学の視点から論じる内田教授

少年法「改正」法案には、(1)触法少年やぐ犯少年に係る事件への警察官調査権(2)14歳未満少年の少年院送致を認める等、様々な問題点があると日弁連は従前より指摘してきた。前通常国会に提出された同法案は衆議院解散とともに廃案となったが、次期通常国会には再度提出される見込みである。


基調報告 発達心理学とジャーナリスト的視点

まず内田伸子教授(お茶の水女子大学)が、人間発達の可塑性を無視し、福祉的観点を切り捨てた少年法「改正」には反対であると述べ、可塑性の実例を紹介した。次にジャーナリストの斎藤貴男氏が、警察から出向した教員が各学校の通信状況を監視している室蘭市の例を挙げて、子供の安全を口実に少年に対する警察権限が強化されることへの危惧等につき説明した。


触法少年等には児童相談所が対応すべき

参加した児童福祉関係者、家庭裁判所調査官、教諭等から、「大人社会のシステムに子供を取り込むことに無理がある」、「触法少年等には、専門知識に乏しい警察官ではなく児童相談所が対応すべきであり、スタッフ拡充が必要だ」、「勝組負組が固定化し逆転のチャンスのない社会状況が少年に閉塞感を与える。失敗が許され希望が持てる社会にしたい」などの意見が出され、最後に現役高校生が「ぐ犯の疑いだけで警察官の調査対象とされているため、誰でも理由なく調査されるおそれがあり非常に不安」と少年の立場から現実の危機感を述べた。


国会議員2名も参加した本集会での議論が、来るべき国会審議へ反映されることが望まれる。


司法試験合格祝賀会 ~日本司法支援センターガイダンス 開催
11月21日・弁護士会館

合格者と談笑する梶谷会長(右)と金平輝子氏(中央)

司法試験合格発表会場付近の路上にて、推進本部委員らによるちらし配布等の広報を行った結果、昨年を大きく上回る220名の合格者が参加し、会場は立錐の余地もないほどであった。


開催にあたり、梶谷会長、法務省の倉吉敬・司法法制部長、最高裁事務総局の園尾隆司・総務局長、日本司法支援センター理事長予定者の金平輝子氏がそれぞれ祝辞を述べた後、日本司法支援センター推進本部本部長代行の宮崎誠会員(大阪)の乾杯により懇親会が始まった。立食形式で、来賓をはじめ、日本司法支援センター推進本部関係者、スタッフ弁護士への就任を予定している57期、58期の弁護士、日弁連公設事務所・法律相談センターの関係者等と合格者とが自由に懇談を行うスタイルがとられた。


法曹三者の話を一か所で、しかも自由かつ直接に聞くことのできる数少ない機会ということもあり、参加した合格者は、日本司法支援センターの説明はもちろん、弁護士過疎地域で弁護士活動を行う意義・魅力に関する説明など、食事もそこそこに、自らの法曹としての進路を模索すべく、積極的に会場内の諸先輩に話しかけ、あるいは、熱く想いを語る先輩法曹の話に耳を傾けていた。


11月にもかかわらず、冷房が役に立たないほどの熱気に包まれ、松崎隆副会長の閉会の辞にて盛会のうちに幕を閉じた。閉会後、熱気冷めやらぬ会場では、合格者が室内に残って先輩弁護士を引き留めて話し込んでいた。


当連合会としては、多くの優秀な弁護士によってセンターの事業を支えていくべく、今後もスタッフ弁護士確保のための取り組みに力を入れて行く。


(日本司法支援センター推進本部事務局次長 櫻井光政)


シンポジウム「新司法試験のあり方を考える~プレテストの検証を通して」開催
12月10日・早稲田大学 全国の法科大学院教員ら172名が参加

このシンポジウムは、これまでに日弁連法科大学院センターが中心的役割を果たしてきた新司法試験に関するシンポジウム(04年6月・9月、05年1月・7月)の成果も踏まえ、今年8月に実施された新司法試験のプレテストの検証を通して新司法試験のあり方を考えるために開催された。


午前の部では、まず早稲田大学助教授の椛嶋裕之会員による「法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度における新司法試験の在り方」と題する基調報告が行われた。


続いて基調報告を受けたパネルディスカッションが行われ、新たな法曹養成制度における新司法試験の位置づけ、短答式試験、論文式試験のあり方など、各科目に共通する問題が、4人のパネリストによって議論され、会場からも多数の意見が出された。


午後の部では、公法系・民事系・刑事系に分かれてパネルディスカッションが行われた。各系に分かれて議論が行われたことで、プレテストの短答式の問題を分析した結果や、学生の再現答案をベースにした議論など、よりテーマを絞った深い議論が展開できた。


また、会場からも積極的な発言が多数あり、極めて活発な意見交換がされた。今年から、いよいよ新司法試験が実施されるが、日弁連では、日弁連法科大学院センター及び法曹養成対策室において、今後も新司法試験に関する問題に積極的に取り組んでいく予定である。


(法曹養成対策室嘱託 石本伸晃)


家庭裁判所シンポジウム「離婚訴訟はどう変わったか」
11/26 弁護士会館

このシンポジウムでは「新人事訴訟法施行後1年半を振り返る」をコンセプトに、4つのテーマが取り上げられ、各テーマ毎に冒頭で寸劇を演じ、続いてパネリストがそれについてコメントするという方式で行われた。土曜日にもかかわらず、会員、調停委員、学生など317名が参加した。


第1のテーマ「離婚調停と離婚訴訟はどう連携していくのか」では、調停の独自性を尊重することにより、調停の記録が裁判に引き継がれない結果となったことが紹介された。もっとも、秋武憲一氏(東京家裁部総括判事)は「どの点で折り合いがつかず調停が不成立になったのか、正確に把握できていないと、調停が無意味になってしまう」と指摘し、調停段階から代理人として関与する場合の問題に触れた。


第2のテーマ「離婚訴訟の審理はどのように進められるか」では、弁論準備手続の場面が寸劇で演じられ、梶村太市教授(早稲田大学大学院法務研究科)が陳述書の目的や効果的な提出時期を解説した。


第3のテーマ「親権者の指定はどのように審理されているか」では、子供の看護状況の調査方法、調査上の留意点について、原千枝子氏(東京家裁次席調査官)が説明した。特に、子供と面接をする際に「面接した子供にポジティブな思いを残して終了できるように配慮している」という話が印象的であった。


第4のテーマ「参与員は離婚訴訟の審理にどのように関与するのか」では、実際に参与員として審理に立ち会っている我妻愛子氏(東京家裁家事調停委員)から、現在の実務上の運用について説明があった。我妻氏は「代理人の弁護士には、もう少し尋問のやり方を研究してもらいたい」と指摘していた。


第27回近畿弁護士会連合会定期大会報告
11月25日・奈良市

午前中、第一分科会では「消費者契約法の改正―もっと使える消費者契約法を目指して」というテーマでシンポジウムを行った。はじめに消費者契約法の運用実態と改正の必要性、近弁連消費者保護委員会作成の消費者契約法の改正試案について同委員会委員から報告がなされた。


次いで松岡久和教授(京都大学大学院法学研究科)をはじめ消費者相談に携わっている担当者、近弁連シンポジウム実行委員会の山本健司会員(大阪)ら4名のパネリストを迎えてディスカッションが行われた。現行の消費者契約法では消費者保護は不十分であり、改正が必要というのがパネリストの共通した認識であった。最後に中田邦博教授(龍谷大学法科大学院)が総評を行った。


第二分科会では「どんと来い!連日的開廷~連日開廷に向けての環境整備と弁護人の対応」というテーマでシンポジウムを行った。はじめに、「公判前整理手続及び連日開廷の実際」と題して、髙野嘉雄会員(奈良)、明石葉子会員(兵庫県)等により手続きに沿ったシミュレーション劇が演じられた。次いで川崎英明教授(関西学院大学法科大学院)、高野隆会員(第二東京)ら4名のパネリストを迎えてパネルディスカッションが行われた。連日的開廷の前提となる弁護人接見・証拠開示の拡充、取調べの可視化の実現等につき議論がなされた。


午後からの大会では、「充実した法教育に取り組む宣言」、「真に実効性のある消費者契約法の改正を求める決議」、「適正で充実した連日的開廷のために諸制度整備を求める決議」、「外国籍者の調停委員任命を求める決議」、「国際自由権規約の第一選択議定書の批准を早期に求める決議」につき審議が行われ、いずれについても採択された。


(奈良弁護士会副会長 藤田 滋)


第51回四国弁護士会連合会定期大会報告
11月18日・松山市

パネルディスカッション「体験者が語る取調べの実態」

午前中開催された記念シンポジウムでは、「取調べの闇に光を~取調べの録画・録音を求めて」とのテーマで、取調べの全過程の録画・録音の必要性が強く叫ばれた。同シンポでは、秋田真志会員(取調べの可視化実現委員会事務局長代行)による基調報告「取調べ可視化に向けた日弁連の取り組みと課題」、渡辺顗修教授(甲南大学法科大学院)による記念講演「取調べの可視化と被疑者の包括的防御権」の後、実際に取調べ過程で悲惨な実体験を持つ市民2名を加えて、パネルディスカッション「体験者が語る取調べの実態」が行われた。


拳銃型ライターを頭に押し付けられ点火された話や、刑事から受けた手首の傷害の痕が現在も残っている話などが体験者から披露された。会場は、定員一杯の約200名(一般参加者約50名)の参加のもと、体験者からの想像を絶する生々しい実話に、一丸となって取調べ可視化実現に向けて努力する気運が高まった。


定期大会では、シンポジウムのテーマに添った「取調べの録画・録音を実現するための宣言」をはじめ、「弁護士過疎の問題の解消に向けた取り組み、特に、ひまわり公設事務所の開設・運営に向けた積極的な支援をより一層拡充する宣言」、「四国ロースクールへの更なる支援に向けての宣言」及び「伊方原発へのプルサーマル導入に反対する決議」が各々満場一致で可決された。


(愛媛弁護士会副会長 田口光伸)


新弁護士会北から南から〔第47回〕 函館弁護士会(1)

新年明けましておめでとうございます。今年最初の「北から南から」の取材をするため、はるばる来ました函館へ。逆巻く波を乗り越えて~。2号にわたって、北海道の玄関口・函館で活躍する会員と函館弁護士会をご紹介いたします。


(広報室嘱託 五三智仁)


会員急増中 初の女性会員も誕生

函館市を中心とする道南圏は、北海道の南西部にある渡島半島のほぼ全域と日本海上にある奥尻島をもって構成されている。市は函館市のみで、その他20の町と1つの村がある。


近頃は姿を見かけなくなった路面電車に乗って、いざ函館弁護士会へ

道南圏の面積7443平方キロメートルは、熊本県(7402平方キロメートル)や静岡県(7779平方キロメートル)と肩を並べ、埼玉県(3727平方キロメートル)の約2倍、北海道全体の約1割を占める。


道南圏の人口は約52万人であるが、近年は人口減少傾向にあり、高齢化も進んでいるという。


かつては、札幌高裁函館支部や函館地家裁寿都支部が存在したが、高裁支部は1971年に、寿都支部は1990年にそれぞれ廃止されており、現在では、函館地家裁本庁、同江差支部と松前、八雲、寿都の各町に簡裁と家裁出張所が残るのみとなった。


このような道南圏ではあるが、今回訪問させていただいた函館弁護士会では、1998年まで22名だった会員数が、7年後の現在は30名にまで急増し、2003年には武部吉昭会員によって茅部郡鹿部町に事務所が設置され(それまでは、函館市内にしか法律事務所が存在しなかった)、さらに、2004年には函館弁護士会の歴史上初の女性会員(辻中佳奈子会員)が誕生した。


バリアフリーの会館

開港150年の歴史を誇る函館港。港のすぐ側にJR函館駅と並んで市電の駅「函館駅前」がある。そこから四つめ「昭和橋」で市電を下車すると、函館地方裁判所の隣に、弁護士会館が姿を現した。


会館では、会長の小笠原義正会員(31期)と副会長の植松直会員(51期)が迎えてくれた。


バリアフリーが徹底された会館内は誰でも利用しやすい

弁護士会館は2001年11月、検察庁が移転した跡地を函館弁護士会が取得し、建設された。 それまでは、函館地裁の中の控室を利用していたというから、会館設立による会員の喜びはさぞかし大きかったことであろう。


会館は1階に事務局、小会議室と2つの相談室があり、身体障害者のためのトイレもある。段差はないバリアフリー。バリアフリーの弁護士会館はこの函館弁護士会だけであり、今年の人権擁護大会でもこの点が取り上げられた。


また、受付には、年代に合わせた老眼鏡も用意されていた。市民に優しい函館弁護士会と言えよう。


函館の豊かな自然を求めて

会員は地元函館の出身者が多いのかと思いきや、実はそうでもないようだ。


左から小笠原会長と植松副会長。お二人とも道外から当地を希望し活躍している

小笠原会長は岩手県、植松副会長は東京都の出身。ともに函館で司法修習をした後、この地で開業することとなった。


「イカ刺しの味が忘れられなくて」とは、小笠原会長の弁。そう、函館と言えば海産物の宝庫だが、中でもイカが有名。函館のイカ水揚げ量は年間約3万5000トンで、日本国内の総水揚げ量の66パーセントを超えている。色の透き通ったスルメイカの味は絶品なのだ。


ちなみに、1999年以降に函館弁護士会に登録した10名の会員のうち、6名が函館修習経験者とのこと。


筆者が訪問した当日は、日中は割合と暖かだったが、夜になると冷え込み、翌日は昼間から雪が舞っていた。それでも北海道の他地域に比べれば温暖であるそうだ。豊かな自然、温暖な気候、絶品のイカとくれば、その恵みを求めて函館弁護士会を希望する会員が増えてきたのも頷ける。


管内全体として弁護士過疎状態

このように、会員数が増加傾向にあるとはいえ、30名で管内人口52万人をカバーするのは並大抵のことではない。弁護士1名あたりの人口は計算上約1万7300人となるが、これは、面積が同程度と紹介した熊本県の約1万3000人、静岡県の約1万6000人を超えている。管内全体として弁護士過疎状態と言っても過言ではない。


当然、会員の負担は大きい。会では、もちろん当番弁護士名簿を組んであるものの、出動できる会員は優先的に出動するなど、会員の都合に合わせて融通を利かせ、年間300件の要請に応じている。若手会員の中には、年間40件超の出動をした人もいる。出動先は函館市内の2つの警察署が多いとはいえ、中には遠方の警察署もあるから移動だけでも大変である。ちなみに函館から江差までは自動車で約1時間半、寿都町までだと実に3時間半かかる。


法律相談も、弁護士会館では週2回の相談日を設けて、年間約870件に対応しているが、現在では相談申込者が2週間先の相談日を待っている状態だという。


次号では、このような中で活躍する若手会員の様子を中心にご紹介する。