日弁連新聞 第380号

第2回 日本司法支援センター地方準備会全国委員長会議開催
8月4日・法務省

2006年4月に設立、10月に業務開始される日本司法支援センターに関し、全国の地方準備会委員長が一堂に会し、現段階での準備状況を確認し、今後の方向性について意見交換するための標記会議が開催された。


会議に先立ち、各ブロックごとの懇談会が開催され、地方事務所設置にかかる主なスケジュール確認と支部や出張所設置についての意向確認が行われた。支部・出張所の設置については、法務省より本年11月に第1次提示があり、さらに各地における調査・折衝を経て設置場所が決定される予定。


続いて全体会議が開催され、関係機関・団体との連携・協力関係の構築の在り方や、地域の実情を業務運営に反映させるための方策等について意見交換した。特に公的弁護への対応については、現状の弁護士数で対応可能か否か、不可能な場合はスタッフ弁護士確保の方法としてどのような対応をするのか(地域から選出するか、大規模会から派遣するか)等について、地域の希望を踏まえつつ対応していくことになる。


約8か月後に迫ったセンター設立に向け、日弁連の推進本部、各地の地方準備会、法務省の各々の立場での連携・協力の必要性が改めて確認された。


ゲートキーパー問題の動き
日弁連を報告先として認めるよう要請中

6月17日の理事会で、ゲートキーパー制度に関する行動指針が採択されたことを受けて、ゲートキーパー問題対策本部は、今日まで法務省との間で数回の折衝を重ねてきている。


法務省との折衝において同本部は、行動指針に即して、報告義務の国内法制度化に反対の立場を堅持しつつ、国内法制度化される場合には、(1)守秘義務の範囲が新たに制約されることがないよう明確化すること、(2)報告先を日弁連とすること、など、弁護士にとってより侵害の少ない制度とすることを目標とする基本姿勢で臨んでいる。


こうした中、政府の組織犯罪等・国際テロ対策推進本部の国際テロ対策幹事会(関係省庁の局長クラスの担当者で構成)が、7月28日、非金融機関に対する顧客等の本人確認・取引記録の保存及び疑わしい取引の届出にかかる義務及びその遵守のための制裁措置の導入については法律の制定により対応すること、一定の事項については、FATF(金融活動作業部会)勧告が認める自主規制機関の規則による対応も可とすることなどを内容とする合意に達した。


法務省によれば、この合意が、2004年12月の「テロの未然防止に関する行動計画」にある「平成17年7月までにその実施方法を検討して結論を得ること」に当たるとのことである。


この合意に基づき、法務省は、弁護士に関する上記義務については、基本的に法律により対応するが、日弁連はFATF勧告が認める自主規制機関と認められるので、上記義務の遵守確保に関する具体的手段など規則で定めることが相当と認められる事項にについては、日弁連の内部規定に委ねるとの方針を表明した。


以上のとおり、弁護士について、報告義務の国内法制度化の方向が明確となるとともに、日弁連の内部規定に委ねられる事項があることも確認された。


今後は、制度の具体的内容や法律と会規との振分けといった問題をめぐって、法務省との協議を継続していく予定である。


59期対象 スタッフ弁護士説明会開催
体験研修に「満足」の声

8月6日、59期修習生を対象に研修とスタッフ弁護士説明の企画を行った。6月12日に開催したスタッフ弁護士体験研修企画が好評だったので、説明会にも研修をセットしようということになり、今回の企画が実現したものである。実務修習中にもかかわらず64名が参加した。


はじめに、日弁連の日本司法支援センター推進本部事務局次長でもある溝呂木雄浩会員(第二東京)の講義があり、ヤミ金と戦う弁護士の実務について、ビデオ上映を交えて生々しい実態が語られた。


刑事弁護実務に関する高野会員の講義

続いて、高野隆会員(第二東京)が、刑事弁護実務に関わるいくつかの設例について参加者に意見を問う形で講義を行った。


講義の後、スタッフ弁護士の今後の採用スケジュールと応募方法についてのガイダンスを行い、4時間を超える企画が終了した。


参加者のアンケート結果を見ると、ほとんどの参加者が「充実した講義に満足した」と回答しており、このような研修を受けられるなら、スタッフ弁護士への応募も前向きに考えたいという心強い回答もあった。


修習生にとって学びたいという要求が切実なものであることを改めて感じた。正面からこれに応えて、優れた59期生を沢山募集したいと考えている。


(日本司法支援センター推進本部事務局次長 櫻井光政)


最高裁・法務省・最高検・日弁連共催「裁判員制度」模擬裁判開催される

8月3日から5日にかけて、最高裁、法務省・最高検、日弁連の法曹三者は、東京高等裁判所に設置された裁判員裁判用の模擬法廷で、裁判員制度を前提とした模擬裁判を実施した。


これまで法曹三者は、「刑事手続の在り方等に関する協議会」などで、裁判員制度における刑事手続の運用について議論してきたが、現時点で三者が共有する運用イメージを確認し、それを一つの参考資料として全国の法曹に示すことを目指して、今回の模擬裁判実施の運びとなった。


裁判員裁判では、裁判員に対して、いかに「分かりやすい」裁判を行うかが大きな課題となる。今回も、法廷に大型ディスプレイを置くなど「ビジュアル化」のための設備を整えた。検察官役も弁護人役もプレゼンテーションソフトを利用し、ディスプレイに画像を映し出し、それぞれ「分かりやすい」主張・立証を心掛けた。


裁判員役になったのは法曹三者の職員や一般市民で、いずれも、これまで裁判とは関わりのなかった人たちである。模擬裁判終了後、裁判員役の方から感想を聞くことができたが、いずれも裁判員裁判における訴訟活動のヒントとなる貴重な意見であった。また今回は、評議の様子も公開され、裁判所がどのように評議を進めていきたいと考えているのかが、ある程度明らかになった。


模擬裁判の様子は、評議の場面も含めてすべて録画されている。日弁連では、これを編集したビデオや模擬裁判で当事者が作成した書面等を資料として全国の会員に公開する予定である。裁判員裁判に対する対応態勢を整えるために、是非ともこれらの資料を役立てていただきたい。


(裁判員制度担当嘱託 鍜治伸明)


ひまわり
被疑者国選弁護制度への対応

日弁連には執行部を中心とした戦略会議がいくつかある。刑事、司法ネット、国会対応などの分野にそれがある。いずれも本音で何をどうやって取るのか守るのかを論じなければならない分野だからであろう。中でも国会対応はギリギリに追い詰められた状況下にあるものを扱うため戦略的判断が欠かせない▼内閣提出法案は法制審等の審議会、内閣法制局、与党の法案審査等を経て提出される。与党の政策決定が先行することもある。この間に日弁連では意見書や会長声明を出している場合も多い。審議会には日弁連推薦委員が参加しているのも普通のことである。しかも日弁連意見どおりの法案にならないことがまた多い▼こうして国会に提出された法案を跳ね返すのは至難である。しかし何とかしなければ執行部の責任は果たせない。国会対応が必要な理由がここにある▼ここで一番大切なことは舞台が国会であり議員は国民代表であることを意識することである。議員への説得力とは国民への説得力である。これは我々が国民を説得できる理と言葉を持っているのかに掛かっている。この点裁判員制度に似ている▼戦略会議では国民の目線で日弁連意見を読み直すことも多い。本音で何を取るのか守るのかのギリギリの判断には欠かせないからである(Y・S)。


裁判所の処置請求に対する取扱規程(案)
弁護士会・関連委員会への意見照会へ

従前から存在した刑事訴訟規則303条に加え、本年11月1日施行の改正刑事訴訟法にも裁判所の処置請求について定める規定が置かれた。


これを受けて弁護士会及び日弁連は、同法及び同規則に基づいて裁判所の処置請求がなされた場合にとるべき対応について会内手続を整備する必要がある。処置請求の対象となる当該弁護人の弁護権擁護と適正手続保障の観点からも、裁判所の処置請求に対処する会内手続の整備が不可欠だからである。


そこで執行部は、7月理事会での議論を踏まえ、提案内容を修正した「裁判所の処置請求に対する取扱規程(案)」を作成し、弁護士会及び関連委員会へ意見照会を行うこととした。回答期限は10月末日。


開示証拠の複製等の交付等に関する規程(案)も意見照会へ

改正刑事訴訟法による新しい証拠開示制度の適正な運用を確保し、同時に、弁護活動の萎縮を防止し、被告人の防御権及び弁護人の弁護権を十全のものとするためには、開示証拠の複製等を担当事件の審理の準備目的で交付・提示等する際のルールを明確にする必要がある。


執行部は、被告事件の審理準備のために開示証拠の複製等を交付等する場合の「行為規範」及び「行動指針又は努力目標」を規定した規程(案)を理事会に提案した。そして、7月理事会での議論を踏まえ、提案内容を一部修正した「開示証拠の複製等の交付等に関する規程(案)」を作成し、弁護士会及び関連委員会へ意見照会を行うこととした。回答期限は同じく10月末日。


TAKE OFF!司法支援センター《9》
公的弁護制度の対応態勢

1 被疑者国選の開始

2006年10月、改正刑訴法(被疑者国選弁護制度導入を含む国選弁護制度の整備部分)が施行される予定です。2年半の助走期間を経て、2009年4月頃には対象事件が拡大されます(年間約10万件を想定)。


膨大な数の被疑者国選弁護人を迅速かつ確実に選任するために、日本司法支援センターが、国選弁護人の候補者を契約により確保する事務を任されました。


被疑者に対する公的な弁護制度の実現は、弁護士会の悲願でした。刑事弁護人となる資格を独占している弁護士会としては、国選弁護人候補者の確保に責任ある協力が求められます。


2 ブロック別意見交換会

国選弁護人の候補者は、現在の国選弁護登録弁護士のように一般開業弁護士が担当する「ジュディケア制」を基本とします。平均的な事件数(例えば年間10件)よりも多くの事件(例えば年間30件)を担当する形での協力も募集し、対応態勢が不足する場合には支部間協力、隣接県協力、そして、日本司法支援センターのスタッフ弁護士を配置することを検討しています。


日本司法支援センター推進本部、刑事弁護センター、裁判員制度実施本部、及び子どもの権利委員会では、執行部と連携して、8月からブロック別意見交換会を開催し、全国各地域での国選弁護の対応態勢が整っているのか、忌憚のない意見交換を行っています。


2006年の事件数であれば現有会員(自然増を含む)で対応可能ですが、2009年になると相当数のスタッフ弁護士の配置が必要だ、という意見が多くあります。


3 即決裁判手続

2006年10月には、即決裁判手続も開始されます。被疑者が即決裁判に同意を求められたときに、アドバイスを受けるための被疑者国選が同時にスタートします。


事案が明白、軽微、争いがなく、執行猶予相当事案の数はどの程度か、予測困難ですが、その対応態勢も整えなければなりません。


4 扶助協会の自主事業

ブロック別意見交換会では扶助協会が実施する自主事業の今後のあり方も検討していますが、特に少年付添扶助について検討を要します。


少年について被疑者段階で国選弁護人に選任され、その後、家裁送致されると国選付添人になれない(対象事件外)という場合が相当数見込まれるので、扶助を利用して私選付添人となる必要性があります。その財源をどうするか、大きな課題となっています。


(刑事弁護センター事務局次長 木下信行)


未決等拘禁制度改革
具体的な議論はじまる

8月2日、代用監獄問題を含む未決等拘禁制度に関して、日弁連と法務省、警察庁との三者協議会(第6回)が開催された。三者協議会は、6月28日に続き、再開後2回目となる。


日弁連からは、7月23日、24日の刑事拘禁制度改革実現本部での議論を踏まえ、「無罪推定と未決拘禁者の処遇」「国際人権法による警察拘禁に対する規制」「夜間・休日接見の必要性」「電話等を利用した外部交通」「弁護人との信書の検閲」「未決拘禁者の作業と教育の機会の保障」「死刑確定者の処遇」について、考え方を詳しく説明した。


しかし、この日の協議会は時間が限られており、議論を深めることはできず、また、日弁連が要求している有識者による審議機関の設置についても、引き続き検討課題とされた。


第6回協議会を受け、8月9日、三者協議会の準備会を開催した。しかし準備会においても、議論は十分に深まっていない。例えば、夜間・休日接見については、法務省より人的な制約が強調されており、夜間・休日接見の具体的な必要性について説明が求められている。


電話を利用した外部交通についても、「なりすまし」「入れ替わり」「弁護人の背後に第三者がいる状態」を技術的に排除することが求められており、次回準備会(9月9日)で、日弁連から更に具体的な提案をすることが必要になっている。


「更正保護制度のあり方を考える有識者会議」発足
更生保護制度全般についての議論始まる

重大再犯事件の発生を受け、法務省は、国民の期待に応える更生保護を実現するために幅広い観点から更生保護制度全般について検討することを目的とした「更生保護のあり方を考える有識者会議」を立ち上げた。委員は10名。座長は前法務大臣の野沢太三氏。日弁連は、堀野紀会員(東京)を委員として推薦した。


既に7月20日と8月23日に会議が開かれ、保護観察官や保護司、警察関係者等からのヒアリングが始まった。ヒアリングでは、保護観察官の不足や少年専門保護司の必要性が指摘され、また社会全体の理解を得てこそ更生保護は成功するとの意見が述べられた。保護司活動支援の連携の必要や保護司への無報酬・実費弁償制の問題点も指摘された。有識者会議では、引き続き、更生保護の現状理解のため関係者からのヒアリングを行うとともに、保護観察所等の視察も実施する。その上で現状把握に基づき取り上げるべき検討事項を取りまとめ、各論点について議論を進める。


今後は、本年12月までに中間取りまとめを行ない、2006年5月までには提言を取りまとめるという極めて早いスピードで検討が進められる。実施できる施策については、提言取りまとめ前でも実施される可能性もある。


日弁連では、既に委員のバックアップ会議を設置し検討を開始した。有識者会議の進行に合わせ、早期の検討を行っていく。


衆議院解散
少年法改正案、共謀罪関連法案も廃案に

衆議院が解散されたことで、国会は8月8日で閉会した。この結果、郵政民営化関連6法案を含む政府提出法案15件と、議員立法46件の計61件が廃案となった。


日弁連は、少年法改正案、共謀罪関連法案に対し反対の立場を取り、審議入りを可能な限り遅らせるよう運動を展開してきたが、郵政関連法案に伴う政局の混乱も手伝って、廃案に追い込めたことは一定の成果といえる。今後の政治情勢次第では、法案の再提出もあり得ることから、引き続き注視していく必要がある。


第7回日弁連市民会議

7月26日、第7回市民会議が開催され、宮本一子議長(日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会消費生活研究所所長)以下7名の委員が出席した。


依頼者からの苦情処理システムについての要望

前回に引き続き「市民窓口」のあり方が議論され、市民が安心して弁護士の法的サービスを利用できるよう、市民会議より日弁連宛の要望書がとりまとめられることとなった。主要な要望事項は以下の3点となる模様。


一.懲戒処分情報を、依頼者が容易に入手することができるような仕組みをつくる


二.市民の弁護士に対する苦情への対応が迅速、適正に行われているかにつき、検証を行う


三.独占禁止法に抵触しない形で、適正な弁護士報酬の情報を提供する方策を検討する


弁護士任官推進について

日弁連が作成した「弁護士任官推進ビデオ」を上映してから議論に入った。内容については概ね好評で「弁護士任官者と仕事をしたキャリア裁判官の感想も聞きたい」などの感想も出された。


任官推進の具体的方策については、「都市型公設事務所や司法支援センターを任官者輩出の拠点とすべき」、「多様なキャリアを経ること(リボルビング)が評価されるような土壌を形成する必要がある」などの意見が出された。さらに、弁護士に戻った時の受け皿の必要性、判事補・検事の弁護士職務経験制度にも議論が及んだ。


次回(11月7日)は、これまでの議論を踏まえ、市民会議として日弁連宛の意見をまとめる方向で検討がなされる予定。


裁判員に伝わる分かりやすい話し方研修

8月9日、「裁判員に伝わる分かりやすい話し方研修」が開催され、全国から集まった裁判員制度実施本部の委員約50名が参加した。


財団法人NHK放送研修センター日本語センターの幸田儔朗氏を講師に迎え、約1時間半、実践的トレーニングも織り交ぜて「裁判員制度」を意識した研修を行った。


研修では、最初に話し言葉の特性を理解し、その特性に応じて、聞き手に伝わる話し方について講義が進められ、最後に参加者全員で課題に取り組んだ。


話し言葉は文字の言葉とどこがちがうのか。


最大の特性は、話し言葉は耳から順番に入り、すぐに消えていくこと。しかも裁判員裁判では、対話型ではなく裁判員への一方向型なので、裁判員は聞き直しもできない。


では、「誰にでも、すぐに、はっきりと」伝えたいことが伝わるようにするには、どうしたらよいか。


  1. 分かりやすい言葉で、話す内容を組み立てる
  2. 「声」の高低、区切りにより、はっきりと意味を伝える
  3. あいまいな表現はしない

トレーニングでは、この当たり前のことをどのように実現するかを具体的に習得した。


研修後は、話し出す前に「何を伝えたいのか、どう話そうか」と意識するようになり、話す楽しさも実感するようになった。


本研修は、日弁連から各弁護士会へ案内され、すでにいくつもの弁護士会で実施されている。人に向けて話すことは弁護士業務のあらゆる場面で必要である。研修は即実践で使えるものなので、是非、体験していただきたい。


(裁判員制度実施本部委員 溝内有香)


法教育夏季セミナー開催される
8/20 弁護士会館

昨年好評を博した教員・弁護士のための「法教育夏季セミナー」のPARTIIが開催された。


まず、法教育活動の先駆者である江口勇治教授(筑波大学)と、橋本康弘助教授(福井大学)から基調報告がなされた。


江口教授は「『自由で公正な社会』の実現のために法教育が重要であり、現場の教員も、弁護士と交流することで新たな観点を見いだすことができ、教材や授業方法に活かすことができる」と熱く語り、一方で橋本助教授は、比較法的観点から、法制度や法規範を静態的に見るのではなく、運用の実態を理解し、法や法制度の望ましい姿を追究することを目標とする授業が実践されるべきと指摘した。


続いて、後藤直樹会員(市民のための法教育委員会副委員長)と村松剛会員(同委員)による基調報告第2部があり、法務省内に設置されていた「法教育研究会」における議論の経過、実際の法教育授業から生まれたノウハウやヒントが披露された。


午後は、小・中・高校の各現場における法教育授業の実践報告が行われた。質疑応答では、教員と弁護士が活発に意見交換し、法教育に関する具体的な論点が提示された。


わずか1年の間に、予想以上のスピードで法教育が学校現場に浸透し、展開していることを印象づける意義深いセミナーであった。


(市民のための法教育委員会委員 池田耕一郎)


第14回弁護士業務改革シンポジウム
司法改革と弁護士業務
~弁護士の大幅増員時代を迎えて・10/7(金)金沢市

第14回弁護士業務改革シンポジウムが、10月7日、伝統文化の街・金沢市で開催される。このシンポジウムは、利用者である国民のための弁護士制度を目指し、弁護士の役割と弁護士が抱える課題を明らかにし、その課題を克服するためになすべき改革を提言し、改革を実践するための方策を議論して、あるべき弁護士像を模索する。


今回は、標記のメインテーマを掲げ、数年後に弁護士人口が大幅に増加する状況を踏まえて、法的サービスの向上を図るための方策を具体的に検討する。弁護士過疎あるいは弁護士へのアクセス障害の解消、弁護士業務の新たな分野への開拓、弁護士業務におけるIT活用という、いずれも実務的かつ今後の弁護士業務に多くのヒントを与える内容となっている。


是非とも多くの会員が参加されるよう期待している。


(弁護士業務改革シンポジウム運営委員会副委員長 山出和幸)


第1分科会
地域の特性に応じた法律事務所の多様な展開
~大・中・小都市におけるマーケティングの必要性

「弁護士ゼロワンマップ」が発表されてから12年。未だ弁護士過疎は解消されておらず、隠れた過疎地域も全国的に存在する。弁護士過疎問題は、市民の弁護士に対するアクセス障害の一つである。


当分科会では、いまだにゼロワン地域が49支部あり、人口10万人あたりの弁護士数が1名の支部が30、5万人あたり1名の支部が85あるという過疎実態をマップで紹介する。その上で過疎解消に向け、地方のロースクール院生の意識調査、裁判所・検察庁の司法過疎の実態調査等をふまえ、弁護士会の役割を提案する。203地裁支部地域における法的ニーズの特性分析をふまえた「法律事務所開業おすすめマップ」も発表し、事務所立地可能な支部情報を提供したい。


また、市民からのアクセス障害を解消する上で、今後、大・中都市の法律事務所は、マーケティング手法の積極的導入により、市民のニーズに応えていくことが重要であることを、実践をふまえて問題提起する。その中で、弁護士会から市民への会員情報の提供方法についてもふれたい。


午後は、弁護士3人の他、専門家、学者を交えてパネルディスカッションを行う。


(第1分科会分科会長 吉岡良治)


第2分科会
新たな挑戦に向けて
~弁護士業務の新領域を探る

弁護士が、社会の隅々まで進出し、その本来の使命を果たすことは、公正で活力ある社会の実現にとって不可欠であるといえる。当分科会は、弁護士増員時代における弁護士業務拡大の可能性を展望し、新規業務開発5カ年計画要綱を含む報告書を発表する。


報告書は、まず弁護士業務発展の条件を過去の事例から抽出するとともに、本年3月のサンフランシスコ法曹事情視察の体験を踏まえ、米国弁護士の活力を生み出している源泉を探る。要綱では、わが国の弁護士業務拡大に向けて取り組むべき方策を提言するが、この提言には、全国の弁護士会に対して実施されたアンケートの結果も反映する。


その他、新たな業務領域に取り組んできた弁護士に率直な経験談を語ってもらうが、今後の弁護士活動の可能性に、貴重な示唆が得られるはずである。


パネルディスカッションでは、日米の弁護士、学者をパネリストに、業務拡大のために弁護士と弁護士会が何をなすべきかを探る。


(第2分科会分科会長 小原 健)


第3分科会
ここまで来た司法IT化の波
~e裁判所構想とロースクールのIT教育その現状と展望

司法のIT化は、利用する国民の便宜に役立たなければならず、そのためにより良いIT化の方向性を探る必要がある。当分科会では、司法の各方面でのIT化について検討する。


アメリカの連邦レベルでは、既に7割程の連邦地方裁判所で訴訟記録の電子化システムが実施され、一部の州裁判所でも複雑な訴訟では訴訟記録の電子化が当事者に義務付けられている。日本の裁判所手続でも、督促手続の電子化などが実施されつつあるが、今後の日本における訴訟記録の電子化を展望するため、アメリカでの調査結果を報告する。


一方、日本では、昨年開校されたロースクールにおいて、教員と学生間の各種連絡をはじめ、授業中の判例・文献・法令検索等にIT技術が駆使されている。高度なITスキルを身につけた人材が法曹界に入ることで、弁護士業界全体に大きな影響を与えることが予想されることから、ロースクールにおけるIT教育の現状と展望を考える。


また、今回は実演として、ブロードバンド回線を利用したテレビ会議システムを用い、3地点をつないで実施する遠隔地の通訳を介した外国人の法律相談や、IT化を迎え撃つ弁護士・弁護士事務所が備えるべきスキル(メール、事件管理システムの使い方、判例・文献検索、文書管理システムの使用方法等)のデモを行う。


(第3分科会分科会長 上原武彦)


北海道弁護士会連合会 定期大会報告

大会決議(7月22日)
いずれも道内の四会から共同提案され満場一致で議決
大会の様子

第1議題「憲法の基本原則に違背する憲法改正国民投票法案の国会提出に反対する決議」は、政府与党が提案を予定している同法案が、不明確な構成要件により広範な制限・禁止を行なおうとするものであり、表現の自由・知る権利が著しく制約される法案であることから今回決議された。


第2議題「公的弁護制度の導入に向けた基盤整備を求める決議」と第3議題「理想的な裁判員制度の実現を求める決議」は、いずれも刑事裁判に関連し、公的弁護制度や裁判員制度の導入を前にして、是非とも必要とされる基盤整備の充実や刑事実務上の諸問題の解決を求めるもの。


また第4議題として、北海道の支庁消費生活相談窓口廃止に対し、地方における消費者相談体制の強化を求める決議がなされた。


シンポジウム(7月23日)
「知床の生態系保護を考える」
世界自然遺産登録をめぐる光と影

弁護士市民合わせて150人が参加した。


冒頭、知床の自然を紹介するビデオが上映された後、鳥居敏男氏(環境省自然環境局自然環境計画課課長補佐)と俵浩3名誉教授(専修大学北海道短期大学)の講演があった。


その後、近藤昌幸氏(北海道森林管理局保全調整課課長)、石川幸男教授(専修大学北海道短期大学園芸緑地科)、山中正実氏(財団法人知床財団統括研究員・事務局長)が加わり、パネルディスカッションが行われた。トドの保護と漁業の関係、ダムの問題、外来種による在来的な植物相崩壊の問題、ツーリストによるオーバーユース問題について議論した。


(札幌弁護士会 副会長 高橋 智)

法の支配を社会の隅々に~ ユニークな領域で活躍する弁護士たち
その7 弁護士職務経験制度

2004年6月11日に成立した「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」に基づき、判事補及び検事が弁護士職務を経験する制度が本年4月から開始された。現在、判事補から10名、検事から3名が弁護士登録している。 彼らは、どのような意識を持って弁護士登録し、業務に取り組んでいるのだろうか。


(広報室長 生田康介、同室嘱託 五三智仁)


審議会意見書の提言を受けて

2001年6月、司法制度改革審議会意見書は、「多様で豊かな知識、経験等を備えた判事を確保するため、原則としてすべての判事補に裁判官の職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませることを制度的に担保する仕組みを整備すべきである」、「検事に、一定期間、その身分を離れ、一般の国民の意識・感覚を学ぶことが出来る場所(例えば弁護士事務所等)で執務させる」旨を提言した。


これを受けて、2004年6月に「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」が制定された。


法律によれば、最高裁または法務省は、判事補または検事(司法修習を終えた者であって、その最初に検事に任命された日から10年を経過していないものに限る)の同意を得て、それぞれを裁判所事務官・法務省に属する官職に任命した上で、原則として2年間、弁護士の業務に従事するものとされている。


自ら希望する事務所を選択

判事補出身の佐藤会員(森・濱田松本法律事務所)

今回、取材にご協力いただいたのは、判事補出身の佐藤久文会員(第二東京・52期)と、検事出身の沖田美恵子会員(第一東京・52期)である。両会員とも、本年4月1日付で弁護士登録している。


佐藤会員によれば、裁判所では、希望者に対して「受入先弁護士事務所」のリストが配布され、その中から希望する弁護士事務所を選択して、面接を受け、勤務先を決めたという。現在、所属弁護士数約200名の森・濱田松本法律事務所(東京都千代田区)に勤務している。「事件の種類が豊富であり、判事補の他職経験の趣旨に資するのではないかと考えた」というのが、同事務所を選んだ理由だという。


検事出身の沖田会員の場合も、弁護士登録までの手続はほとんど同様である。現在、企業法務を中心に取り扱う岩田合同法律事務所(東京都千代田区)に勤務する。「これまでに検事として扱ったことのない、ビジネスの世界を知りたかった。自分の知らない世界に身を置くことで、謙虚な気持ちになれると思った」とのことである。


弁護士の労力は想像以上

検事出身の沖田会員(岩田合同法律事務所)

佐藤会員は、事務所のパートナー弁護士とともに、訴訟事件や意見書の作成、企業の合併・再生の際の企業価値精査(デュー・ディリジェンス)業務を担当している。「弁護士が1つの事件にかける労力は想像以上のものがあった。裁判所の内部にいるときには見えなかった手間がかかっているということを知った」というのが実感だそうだ。


接見に行くのは大変

沖田会員も、通常の訴訟事件や意見書の作成を担当するほか、これまでに執行や保全の申立も行った。「あらゆる法律を駆使する企業法務の仕事は、とても新鮮」と語る。


また、既に国選弁護事件も担当し、「警察署に接見に行くのがこんなに大変なのかと実感した」と苦笑していた。


経験を将来に活かしたい

佐藤会員は「どのような点が『裁判所は国民のニーズに十分応えていない』と指摘される原因なのかを弁護士の目で検証し、裁判官に復帰した後にそれを生かしたい」との決意を聞かせてくれた。


沖田会員は「この制度が存在することを、是非、法曹関係者以外の一般の人たちにアピールしてもらいたい」との希望を述べていた。


両会員とも、これまでにできなかった経験を楽しみながら、将来、裁判官・検察官に復帰してから、その経験を十分に生かそうと、意欲的に弁護士業務に取り組んでいる様子であった。


先輩弁護士よりひとこと

山岸良太会員(森・濱田松本法律事務所)

佐藤さんは、判事補として5年の経験をお持ちですから、当初から戦力として活躍してくれています。


また、一緒に仕事をする中で、「裁判所はこう考えているはずだ」という視点を提示してくれるので、大変参考になります。


端から見ても、2年間弁護士業務を「垣間見る」のではなく、1人の弁護士としてしっかり勤め上げようという心構えがあることが分かります。


弁護士職務経験を通じて、当事者の生の想いを知り、裁判所に戻った際に、裁判という制度に期待する人々の気持ちを踏まえて執務していただけるようになればと思います。


島田邦雄会員(岩田合同法律事務所)

私は沖田さんが就職活動をされていた時の採用担当でした。真面目でさっぱりした性格の方だという印象でしたが、今ではその印象に違わぬ活躍をしてくれています。


もちろん刑事事件については教えを請うことが多いですし、検事としての経験からくる新鮮な視点は、事務所に新たな活力を加えてくれているといっても過言ではありません。裁判官に対してもはっきりものを言いますし、人を使うのもうまい(笑)。「さすが検事」と感じますね。


私どもの事務所は企業法務を取り扱いますので、企業がどういうシステムやプロセスを経て意思決定していくのかを学んで頂ければ、検事として企業に関連する刑事事件を担当した際に、より的確な対応ができるようになると思います。 是非この経験を有意義なものとして、検察庁に持ち帰っていただきたいですね。