日弁連新聞 第370号

第47回人権擁護大会開催
シンポジウムは3分科会を開催
1500人を超す参加者  各報告を受け、宣言・決議を採択

人権擁護大会

第47回人権擁護大会が、10月8日、宮崎県宮崎市ワールドコンベンションセンターサミットで開催された。1500名を超す参加者の下、事業活動報告、シンポジウム報告、特別報告(司法制度改革に関する報告、監獄法改正をめぐる情勢)が行われ、その後、宣言及び各決議が満場一致または賛成多数で採択された。また10月7日には、シンポジウムが3分科会に分かれ開催された(13面)。次回、第48回人権擁護大会は鳥取県鳥取市で開催されることが決まった。


1.多民族・多文化の共生する社会の構築と、外国人・民族的少数者の人権基本法の制定を求める宣言

外国人に対しても基本的人権を原則として等しく保障し、さらに、民族的少数者固有の権利を確立すること等を骨子とする外国人・民族的少数者の人権基本法や条例を制定するとともに、多民族・多文化の共生する社会を推進するための部局を設置して、必要な施策を実施することを、国及び地方自治体に対し求める。


2.リゾート法の廃止と、持続可能なツーリズムのための施策・法整備を求める決議

国及び地方自治体に対し、リゾート法の廃止、自然環境の維持や良好な景観形成の観点から行う土地利用規制の強化など法制度の整備、真のツーリズム確立のための施策・法整備を求める。


3.死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の公開及び死刑問題調査会の設置を求める決議

わが国でも死刑制度の存廃について、早急に広範な議論を行う必要がある。政府及び国会に対し、死刑執行停止法の制定、死刑制度に関する情報の広範な公開、衆参両院に死刑制度に関する調査会を設置することなどの施策を実行することを求める。


4.子どもの権利条約批准10周年にあたり、同条約の原則及び規定に基づく立法・施策を求める決議

政府・国会・最高裁判所に対し、教育基本法「改正」の要否の検討や青少年育成に関する基本法の制定、その他、子どもに関わる全ての立法・政策において、権利条約に基づく子どもの権利基盤型アプローチの実現を図ることを求める。


5.弱者の裁判を受ける権利を侵害する「弁護士報酬敗訴者負担」法案に反対する決議

少なくとも、消費者契約、労働契約及び一方が優越的地位にある当事者間の契約等に盛り込まれた敗訴者負担の定めを無効とし、更にこの趣旨を徹底するため、消費者訴訟、労働訴訟及び一方が優越的地位にある当事者間の訴訟においては、合意による弁護士報酬敗訴者負担制度それ自体を適用しない立法上の措置を強く求める。


会長談話
「犯罪被害者等基本法案」における犯罪被害者の刑事手続参加について

自由民主党、民主党、公明党の各党は、犯罪被害者基本法案を今国会に提出する予定であると伝えられている。


当連合会は、2003年10月17日の人権擁護大会において、「犯罪被害者の権利の確立とその総合的支援を求める決議」を採択し、犯罪被害者の支援に係る我が国の現状は国際水準と著しく乖離していることを指摘し、犯罪被害者基本法の制定、犯罪被害者に対する経済的支援制度の整備、民間支援組織の活動援助、犯罪被害者に対する弁護士支援制度の創設、捜査機関に対する教育研修の徹底等について国の施策を求めてきた。


今般自民党がまとめた「犯罪被害者等基本法案(仮称)骨子案」は、犯罪被害者の権利を保護する諸施策を具体的に記載するものである。


しかし当連合会は、自民党骨子案が「刑事に関する手続への参加の機会を拡充するための制度の整備等必要な施策を講ずる」としている点については、十分な議論を尽くし、慎重に対応することを求めるものである。


犯罪被害者の刑事手続参加については、被疑者、被告人に対して適正手続と無罪推定原則を厳格に求める近代刑事司法原則との関連、裁判員裁判における裁判員の心証形成や量刑判断への影響など、解決あるいは検討を要する重要課題が残されている。当連合会としても、先の人権大会で犯罪被害者が刑事訴訟手続に参加する諸制度の是非およびあり方につき早急に議論を深めることとされたことを受け、「犯罪被害者の刑事訴訟手続参加に関する協議会」を設置し、慎重かつ真剣に協議を重ねているところである。


犯罪被害者の刑事手続参加問題については、基本的人権を保障する刑事訴訟手続の原則を守りつつ、犯罪被害者の権利保護の具体的方策を広範な議論の中で希求するべきである。当連合会は、未だ立ち後れている犯罪被害者の権利の確立とその総合的支援を求めて全力で取り組む決意であり、この刑事手続参加問題については、さらに検討を重ね、当連合会としての見解をまとめていく所存であるが、各政党におかれても、幅広い議論の上で基本法を制定されることを求めるものである。


2004年10月21日
日本弁護士連合会 会長 梶谷 剛


IBA(国際法曹協会)
オークランドで大会を開催

日弁連が団体加盟している世界最大の法曹団体・国際法曹協会(インターナショナル・バー・アソシエーション)の2004年次大会が、10月24日からニュージーランドのオークランドで開催された。


二四日の開会式の後、人権や商事法、国際法や実務問題など様々なセッションが5日間にわたり開催され、各国からの法曹が参加し熱心な討議が行われるとともに、理事会において重要なテーマについて検討が行われた。


日弁連からは、田中宏副会長、川村明日弁連代表理事ら五名が出席し、主要な会議に出席するともに、各国の法曹界関係者と情報の交換のための懇談を精力的に行った。


今回の大会では、重要な組織改革が行われ、従来のHRI(ヒューマン・ライツ・インスティチュート)のほか、LPD(リーガル・プラクティス・ディビジョン)とPPID(プロフェッショナル・アンド・パブリック・インタレスト・ディビジョン)の二つの部と、BIC(バー・イシューズ・コミッション)を置くこととなった。


新しく設置されたBIC議長に日弁連代表理事の川村明理事が選任された。BICは、弁護士会が直面する重要な問題について国際的に検討する機関である。今回の組織改革でも特に重要なものとされ、その議長は、IBAの主要な役職と位置付けられている。今回の議長人事は日弁連の国際活動が国際的に高く評価された結果といえる。


ひまわり

情報主権の確立に関する宣言。まちづくりの改革を求める決議。情報主権は90年、まちづくりは93年の人権擁護大会での決議である。今年は、リゾート法見直しの宣言がなされたが、すでに九一年の大会でリゾート法廃止を求める決議をしている。それぞれのテーマは2004年のいまも大きな課題である▼人権大会の宣言や決議のテーマで、80年代後半から目立ったのは、消費者保護に関するものである。この問題意識が消費者契約法に結実した。近年は環境・資源の保護に関する決議が繰り返され、人権のグローバル化を求める内容も増えた▼人権擁護大会のテーマは先進的だ。例えば昨年は先端医療と科学に潜む可能性と危険性を取り上げていたが、最先端の技術を理解できなくても、進む技術に社会が巻き込まれていくとき、まさに人権の問題が発生するのだと理解した▼弁護士会が抱えている問題は多い。法曹養成も身近な司法の実現も、会員の合意を形成することも、簡単に解決できるものではない。会員として、自分と離れたところでいろいろなことが決まっていく気がすることもある。しかし人権擁護大会が毎年開催されることは、弁護士や弁護士会の進取の精神と力を示すものだと思う。その力があれば間違わずに進めると思う。(M・K)


第4回日弁連市民会議
「日本司法支援センター」に関する要望書、「弁護士職務基本規程案」、「法定での被告人の服装」について議論

市民会議

第4回日弁連市民会議が10月12日開かれた。


はじめに、日本司法支援センター構想を取り上げ、日弁連に対する要望書について議論がなされたた。委員からは、センター自体の監視の必要性が指摘され、また、ユーザーの使い勝手を考えたサービス内容とすべきであること、公的弁護の関係で弁護活動の国からの独立性を指摘すべきなどとの意見が出され、内容をより具体的にして完成させることとされた。


第二に「弁護士職務基本規程案」については、山田勝利副会長が、その趣旨・内容について説明を行った。弁護士の非行を監視するシステムの問題が取り上げられ、苦情相談窓口を広く設置すべきとの意見も出された。他方で企業内弁護士について、会社の違法行為の報告義務や共同事務所における利益相反について質問が出た。


最後に、法廷での被告人の服装に関連して、海渡雄一会員から未決被拘禁者の法廷内での処遇等について報告があった。毛利甚八委員から、弁護士を対象としたアンケート結果を踏まえ、なぜ被告人は法廷で普通の服装をすることが許されないのか、それを可能にすべきではないかとの問題提起があった。委員からは、管理する側が自分たちの都合を優先させているのではないか、着替えのための部屋を設けるなどで対応ができないか、などと発言があり、またフット委員は、以前法廷を傍聴した時に、手錠・腰縄のまま法廷に現れる被告人を見て、無罪推定がないのだとショックを受けたという経験を話した。この件は今後も検討していくこととなった。


途中、委員の方々には、最高裁がモデルとして東京高裁内に設置した裁判員裁判用法廷を見学していただいた。


次回は1月18日に開催の予定。


日弁連司法改革 総合推進会議 第一回全体会議

10月13日、日弁連司法改革総合推進会議第一回全体議が開催された。


同会議は、司法制度改革で新たに創設された制度の運用や、残された課題への取り組みを推進するために、情報を共有化し、広報はじめ全国の活動の充実と発展に努めることを目的として、8月の理事会で新たに設置されたものである。


会議は、弁護士会やブロック及び関連委員会から推薦された120名の委員で構成される。第一回全体会議では、司法改革の各テーマについて、これまでの取り組み状況と今後の課題について担当委員が説明した。


なお、同日付をもって、日弁連司法改革実現本部はその役割を終え、解散することとなり、会議終了後、実現本部の解散セレモニーが行われた。梶谷会長の挨拶の後、同本部の杉井厳一前事務局長、宮本康昭前本部長代行より、同本部の活動を振り返って講演が行われ、最後に山内堅史本部長代行から、所期の目的に対し大きな成果を上げたことを評価し、共に活動してきた関係者への感謝とともに、引き続き総力を挙げて取り組む旨のメッセージを採択して終了した。


弁護士会連合会定期大会報告

関東弁護士連合会

創立50周年記念大会を開催

関東弁護士会連合会の創立50周年記念定期大会が、9月25日、栃木県藤原町のあさやホテルで、300余名の会員の参加を得て行われた。


シンポジウムのテーマは、「里山保全の新たな地平をめざして」。里山を単に農村の自然環境を象徴するものとしてとらえるだけでなく、社会の循環性や持続可能性の象徴として、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会経済システムを、自然生態系における物質やエネルギーの循環に即した新たな経済システムに転換することにより、里山を保全することが必要であると訴えた。シンポジウムをうけて大会では「循環性の象徴として里山を保全して行くための宣言」を賛成多数で採択した。


この宣言のほかに、2005年度定期大会のシンポジウムのテーマとなる「食の安全を考える」と「子どものための法教育に関する決議」を採択した。


我々が安全な食品を摂取することは人として当然の権利である。決議では国及び地方自治体に対し、この権利の実現を働きかけるとともに、我々自身も責任ある消費者となることを宣言した。


また法教育は、国民一人ひとりの自己実現にとって、さらには自由で公正な民主主義社会の実現のために必要不可欠のものである。決議ではこの点を再確認し、関係諸団体に対し、法教育の重要性を広く訴えるとともに、法教育をより普及させるためいっそう尽力することを誓った。


本大会は関東弁護士会連合会の創立50周年にあたる記念すべき大会であり、1989年度に理事長を務めた前田茂会員による記念講演や歴代理事長に対する感謝表彰式も併せて行われた。


(栃木県弁護士会 白井裕己)


中部弁護士連合会

「自然と地域振興の調和」についてのシンポを開催

10月15日、岐阜市で2004年度中部弁護士会連合会定期大会が開催された。


午前中「自然と地域振興の調和を目指して‐中部山岳国立公園の現状と未来‐」と題したシンポジウムには、255名の参加があった。はじめに公害環境委員会が、視察した中部山岳国立公園やオーストリア・スイスの国立公園の映像を使い、問題の所在を分かりやすく説明した。加藤峰夫教授(横浜国立大学)の基調講演の後、パネルディスカッションでは、加藤教授の他、中村浩志教授(信州大学)、地元から丹生川村の村長である小谷伸一氏と環境省担当者を交えて議論が行われた。シンポジウムには例年より30分長く時間を取ったこともあり、参加者からは「内容が充実していた」「分かり易かった」など肯定的な意見が寄せられた。


午後の定期大会には264名が参加した。日弁連会務報告や日弁連との意見交換会が行われた後、シンポジウムの成果を踏まえて「自然公園の持続可能な利用と環境保全のための法整備等を求める宣言」を満場一致で採択し、その他「取調べの可視化を求める決議」「司法支援センターに関する決議」「日本国憲法の平和主義を堅持する決議」が採択された。


大会後の懇親会には、新入会員を無料で招待し、被表彰者と新入会員に登壇してもらい、皆で祝福する和やかな会となった。次回開催地の福井弁護士会会長の辞で閉宴した。


(岐阜県弁護士会副会長 伊藤公郎)


中国地方弁護士連合会

地方における都市型公設事務所の意義と課題を討論

10月22日、岡山市で中国地方弁護士会連合会定期大会が開催された。


シンポジウムは「地方における都市型公設事務所の意義と課題」というテーマで、萩原誠司氏(岡山市長)、金田美佐緒氏(医療ソーシャルワーカー)、山下都氏(県消費生活相談員)、石田武臣会員(前東京パブリック法律事務所長)、錦織正二会員(前石見ひまわり基金法律事務所支援委員長)、水谷賢会員(岡山パブリック法律事務所長)をパネリストに迎え、地域司法計画の具体化について議論した。


本年8月に中規模単位会で初めて開設された都市型公設事務所である岡山パブリック法律事務所に、場所を無償提供した岡山市長からは、「『法の支配』をあまねく行き渡らせるためのニーズがあった」との発言があり、水谷会員は、「地域のニーズは地域で解決すべき」と、中国弁護士会連合会の支援を受けて開設した同事務所の意義を強調した。今後、都市型公設事務所が司法アクセスの解消のみならず、法曹一元への架け橋となることを期待する。


本年の定期大会は、議案が七つと例年以上に多かったが、「『イラクにおける人道支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法』の廃止を求める議題」、「全国全ての地裁支部所在地に拘置所を設置することを求める議題」をはじめ、いずれも原案通り可決・承認された。


中国地方弁連には議論をとことん尽くすという伝統がある。今回も、イラク特措法の廃止を求める議題に関しては、「政治的な問題である」という反対意見が出たり、議長が日弁連会長の発言を求めたりするなど、議論は長時間に及んだが、会員はこの伝統を大切にし、引き継いでいる。


(岡山弁護士会副会長 水田美由紀)


どうなるLSC(最終回)
良い制度にしましょう

司法支援センターが国民にとって有用なものになるかどうかは、この制度の中心的な担い手となる弁護士にかかっています。これまで扶助事件や当番・国選事件を担ってきた弁護士が引き続き積極的にこれらの実務を担い、更にこれらの実務に専念できる常勤スタッフ弁護士が加われば、新たに被疑者にまで拡大された公的弁護制度を有効に機能させ、扶助事件や弁護士過疎対策を一層充実させることが可能になるでしょう。


とりわけ常勤スタッフ弁護士の配置は、会員の少ない地方における被疑者国選の実施に不可欠のものですし、弁護過疎の解消にも大きく寄与するものになるでしょう。


新しい制度ですからさまざまな不安がつきまとうのは当然のことと思います。しかし、司法支援センターに関する不安のほとんどは、弁護士自身の努力によって払拭できるものです。


ひまわり基金法律事務所は、今日では弁護士過疎地を抱える多くの弁護士会で歓迎され、あるいは設置を待たれています。しかし、そのひまわり基金法律事務所であっても、当初はむしろ消極的な弁護士会が少なくありませんでした。「他の地方から縁もゆかりもない若い弁護士が任期付で過疎地に来ても何の役にも立たない。」「大都市の弁護士にいいように事件漁りをされてしまい、本当に困っている人の救済にならない。」というような理由からでした。赴任を受け入れるとしても民事事件の受任を認めるべきではないという議論さえありました。それが今では、会によっては、ひまわり基金による過疎地型公設事務所は歓迎するが、センターのスタッフ弁護士が常駐する公設事務所の設置は希望しないという声さえ聞かれるようになりました。赴任した弁護士の努力や、それにも増して地域の人たちの強力な支持が、ひまわり基金法律事務所の今日の地位を築いたのです。


司法支援センターや常勤スタッフ弁護士に対する漠然とした不安も、私たちが良い働きをすることで、広く支持されるようになると信じています。


(日弁連司法支援センター推進本部事務局次長 櫻井光政)


人権擁護大会シンポジウム報告

10月7日、人権擁護大会に先立ちシンポジウムが開催された。参加者は第1分科会820名、第2分科会598名、第3分科会846名、計2264名。地元の高校生や大学生、法科大学院生なども参加するなど、シンポジウムに対する関心の高さがうかがわれた。


第1分科会
多民族・多文化の共生する社会をめざして
外国人の人権基本法を制定しよう
基調報告

北村聡子会員(東京)より、外国人に対する人権侵害の背景には(1)日本人の心に潜むゼノフォビア(外国人嫌悪)、(2)外国人を管理の対象としか見ない法制度の不備、(3)出入国管理に法務大臣の広範な裁量権を認める司法の消極性があり、これらを解決するために基本法制定が不可欠と報告された。


続いて高英毅会員(第二東京)が、実行委員会の作成した基本法要綱試案を解説し、制度の実効性確保のため、政府から独立した救済機関の設置が重要であると強調した。


在日外国人の発言
人権大会

在日コリアン、在留特別許可取得者、難民申請者らの生の声が寄せられた。


在日コリアン3世の朝鮮大学校女子生徒は「日本の小学生と交流した際に『日本語が上手だね』と何気なく言われショックだった。私たちが日本社会で多数暮らしていること自体が知られておらず、そのような無知が恐怖を生み、矛先は弱者である女性や子供に向けられる」と、在日コリアン問題の根深さを訴えた。


特別報告

「戦後補償裁判の現状と課題」(高木健一会員・日弁連人権擁護委員会特別委嘱委員)、「中国残留日本人と家族の現状と課題」(前田恒善会員・福岡県)。これらの問題解決なくしてアジアとの信頼は築くことはできないと指摘した。


パネル1「外国人及び民族的少数者の現状と課題」

近藤敦教授(九州産業大学)、辛淑玉氏(人材コンサルタント)、田中宏教授(龍谷大学)、二宮正人氏(ブラジル国弁護士)、松尾良一氏(浜松市国際課長)、渡辺英俊氏(移住者と連帯する全国ネットワーク共同代表)をパネリストに迎え、討論が行われた。


公的機関による様々な場面(社会保障、公務就任、就学など)での外国人差別、外国人犯罪についての誇大報道、近現代史に触れたがらない教育の現状などの問題が指摘された。


パネル2「多民族・多文化共生社会への展望」

近藤教授、佐藤信行氏(外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会)、千葉景子参議院議員(民主党)、遠山清彦参議院議員(公明党)、山崎公士教授(新潟大学)、関聡介会員(東京)をパネリストに迎え、「諸外国でも人種差別問題について様々な工夫をしてきた。日本もそのような経験に学んで人権政策を進めなければならない」(山崎教授)という観点から、外国人人権基本法制定の是非や運動のあり方について意見が交わされた。


第2分科会
リゾート法の検証と新たな展望
環境保護と持続可能な地域振興
人権大会

基本方針の見直しが始まったリゾート法の検証と環境を保護しながらどのように地域振興を図るかがテーマ。施設建設のための規制緩和を中心に据えたリゾート法によるのではなく、環境規制を強化し自然保護に責任を持ちながら地域振興をはかるべきとの観点から議論がなされた。


リゾート開発の問題点を指摘したビデオ上映の後、基調講演で入谷貴夫教授(宮崎大学)が、宮崎市の観光開発の歴史とリゾート開発の失敗、宮崎県綾町の世界一といわれる照葉樹林を資源とした独自のまちづくりを紹介し、自然生態系と共生し地域の暮らしと密着した地域産業の重要性を述べた。佐藤誠教授(熊本大学)は、今後は自然再生法・景観法を生かした“ツーリズム(「人々が行き来する」の意)”を中心に据えた地域振興を官民の協力で実現すべきだとした。


シンポジウムで小野塚昭治氏(新潟県塩沢町観光協会副会長)は、地元がリゾートマンションやスキー場建設ラッシュの痛手に今も苦しんでおり、国の施策や法律が間違うと、混乱と実害が起きると指摘し、木村治和氏(農林水産省農村振興局地域振興課グリーンツーリズム推進室長)は、休むことに罪悪感を持つ日本人にリゾート利用の機運がなかったことがリゾート法の失敗の要因であったと分析した。中島慶二氏(環境省自然環境局総務課自然ふれあい推進室長)はリゾート開発が円滑に行かない理由に自然公園法の問題があることや地域ごとのルール制定の必要性を指摘した。


野村秀雄氏(宮崎県商工観光労働部観光・リゾート課長)は、「リゾート法により旅行が啓発された面もあり、失敗ばかりというわけでもない」とリゾート法の評価すべき面について述べるとともに、行政として地域の自主的な振興を支えていきたいとした。これにこたえて木村氏も、国の補助事業を地域振興にうまく取り入れることを提案した。入谷教授は、第三セクター方式についての評価がなされていないことを問題とし、佐藤教授は土地所有権絶対の見直しやバカンス法制定の必要性を強調した。


また、シンポジウム会場でもあるシーガイヤリゾート建設のために破壊された潮害防備保安林伐採差止運動、宮崎県綾町の町づくり、大分県安心院の体験農業、同県湯布院町の合併に伴い考えうる環境破壊、沖縄県西表島のグリーンツーリズム運動などについて、実体験が報告された。


第3分科会
21世紀わが国に死刑は必要か
―死刑執行停止法の制定と死刑制度の未来をめぐって―

冒頭、寺井一弘・分科会実行委員会委員長は、「人権擁護大会において死刑廃止問題を取り上げたことは画期的であり、意義深い。死刑廃止に向けて多数の人と意見交換を行うべく、各地でプレシンポジウムを行い、合計1500名が参加した。本日は、その集大成である」と挨拶した。


第一部では、まず金子武嗣会員(大阪)が、世界における死刑の現状を説明し、日弁連の死刑制度問題に関する提言と取り組みについて基調報告を行った。


続いて、村上満宏会員(名古屋)が、検察官による死刑と無期懲役の求刑はどのような基準に基づいて行われているかを調査した結果について、資料を示しながら報告した。その中で、同会員は、検察庁が一九九七年ころ作成したとされる死刑求刑事案の一覧表に記載された事案の中には、無期懲役とされても不思議ではないものが多数存在することを指摘し、「一覧表の存在は、裁判所をして死刑を適用させる方向にミスリードする虞のある極めて不公正かつ危険なものである」と批判した。


さらに、石塚伸一教授(龍谷大学)、李相赫弁護士(韓国死刑廃止運動協議会会長)がアメリカと韓国の状況について報告した。


第二部では、安田好弘会員(第二東京)をコーディネーター、ジェームズ・コールマン氏(ABA死刑モラトリアム実行プロジェクト責任者)らをパネリストとして、パネルディスカッションが行われた。


ミヒャエル・ライテラー氏(駐日欧州委員会代表部副代表・公使)は、死刑を存置する日本の制度に強く反対し、「EU加盟国も日本も、価値観は共通するはずであり、日本も直ちにモラトリアムを導入すべきである」として、日本政府が死刑廃止の議論に積極的に参加しないことに対する不満を述べた。


人権大会

亀井静香衆議院議員(死刑廃止を推進する議員連盟会長)も、内閣で死刑問題について議論が行われていない現状を認めつつも、「国会議員の中には、死刑の廃止・終身刑導入について議論をすることに賛成する人は多い。これから若い世代の人たちが、この問題について議論を繰り広げていくことが大切である」と、会場に訴えた。


会場には、高校生180名、大学生120名を含め、合計750名が参加し、パネリストらに対し、賛否両論の意見が積極的に出されていた。


新規登録弁護士研修

快晴の10月2日・3日、弁護士会館で日弁連新規登録弁護士研修が実施された。57期司法修習を終えた934名と昨年10月以降に登録された弁護士227名の受講対象者のうち、997名が受講した。


例年は全修習生を一同に集め一度に研修を行っていたが、本年は、1日目は第1東京弁護士会と地方の弁護士会の新会員、2日目は東京弁護士会と第二東京弁護士会の新会員を対象に、2日に分けて実施した。


研修は、午前は集合研修、午後は2名の講師と約20名の受講生を一クラスとした双方向のゼミナール形式によるクラス別研修。集合研修では、民事介入暴力対策の視点からみた弁護士活動について、1日目は矢島正孝会員(大阪)、2日目は北川恒会員(福井)が講演を行った。


午後からのクラス別研修では、弁護士倫理、報酬、現代における法曹の役割から、弁護士自治や会務活動まで密度の濃い授業が行われた。報酬規程の廃止や弁護士職務基本規程の制定については、新会員も関心が高いのか、どのクラスでも議論は活発であった。


昨年から法科大学院の教員に研修の傍聴を認めているが、「具体的な事案に即して解説するなど実践的な講義である」と大変好評であった。


今後、司法修習生数は更に増加するため、東京で一度に研修を実施することは現実的ではなくなってきている。研修センターでは、弁護士会と協力して新規登録弁護士研修を実施する体制作りに向けて、検討を開始している。


(日弁連弁護士研修センター 春日秀文)


法の支配を社会の隅々に~ユニークな領域で活躍する弁護士たち
その2「任期付公務員」(1)

部長室にて 青木会員(写真左)と萩原部長

部長室にて 青木会員(写真左)と萩原部長

今回から2回にわたって、「任期付公務員」を紹介する。一口に「任期付公務員」といっても、勤務先や仕事の内容、任期年数は様々である。その中で今回は、日弁連の弁護士推薦委員会(弁推)を通じて推薦され、本年4月から2年の任期で、弁護士資格を有したまま、東京法務局訟務部の「部付」として、訟務検事と同じ仕事をされている青木優子会員(46期、第二東京)にインタビューをした。同時に、訟務部長の萩原秀紀氏(判事出身、35期)にもお話を伺った。


(広報室嘱託 五三智仁)


―まず、弁護士としての経歴・取扱っていた業務について教えてください。

青木 司法修習46期で、1994年に弁護士登録し、イソ弁を五年間やり、その後本年3月まで5年間独立して弁護士業務を行ってきました。主な取扱い業務は、破産管財業務を除けば、民事訴訟事件が中心で、そのうち3分の1くらいは離婚等の家事事件でした。


―現在のお仕事の内容は。

青木 私は、東京法務局訟務部の「部付」弁護士であり、訟務検事ではありませんが、仕事の内容は訟務検事の方々と同じです。主として入管事件で、仕事の中心は、国や行政庁の代理人としての訴訟活動で、弁護士の時とほとんど同じです。その他に、意見照会への回答や各種の研修等での講師の仕事もあるようですが、これはそれほど多くありません。


―本年三月までになさっていた弁護士業務と業務内容が随分違うようですが、訟務部「部付」弁護士に応募しようとしたきっかけは。

青木 行政事件や租税事件など、これまで弁護士として取り組んだことのなかった事件に取り組んでみたかったのです。現在の仕事の中心は入管事件ですが、部長にお願いして、租税事件や国家賠償請求事件の代理人もやらせていただいております。


萩原 やりたいことを積極的におっしゃってくれて、大変ありがたいです。仕事をお願いしやすい(笑)。


―どのような手続を経て採用に至ったのでしょうか。
「青木さんが来てくれて、皆喜んでいます」と部付訟務検事の藤澤祐介さん(判事出身・51期 写真左)

「青木さんが来てくれて、皆喜んでいます」と部付訟務検事の藤澤祐介さん(判事出身・51期 写真左)

青木 昨年5月上旬に、所属する第2東京弁護士会から配信される「二弁eニュース」というメールマガジンの中で、法務省が日弁連を通じて「部付」弁護士を募集しているのを知り、当時の二弁の担当副会長に応募の意思を伝え、夏に職場見学を兼ねて、当時の訟務部長とお話をさせていただきました。その後10月に日弁連の弁推に推薦され、法務大臣官房参事官らの面接を受けて、年明けに内示をいただきました。


―もう少し、早めに内示を受けられるとよいですね。

青木 そうですね。業務の引継などを考えれば、できれば就任半年まえの10月、遅くとも年内には内示をいただけると有り難いと思います。


萩原 法務省サイドでも、日弁連の弁推による推薦をいただいた方に対しては、可能な限り早く採用の内示ができるように工夫することが望ましいでしょうね。


―さて、就任されてから生活に変化はありますか。

青木 生活にはそれほど変化はありません。収入についても、同期の検事と同程度の俸給をいただいておりますので、収入面で困るようなことはありません。


―弁護士が訟務部「部付」に就任することの意義はなんでしょうか。

青木 法曹三者が同じ職場で一つの目標に向かって仕事をしていくことは、とても良いことだと思います。弁護士と裁判官、検察官が机を並べて仕事をし、日々接することで、お互いに対する固定観念や思いこみをなくし、相互理解を深められるのではないでしょうか。


萩原 弁護士の応募者には、在野法曹として培ってきた経験を国の事件処理に生かしていただきたいと思います。部付の訟務検事は、3年目から5年目といった若い期の人も多く、弁護士経験者が入ることで、大いに刺激を受けるはずです。


―「部付」に就任されたことについて、ご自身にはどのようなメリットがあるとお考えですか。

青木 弁護士登録してから10年経ちますと、普通は、他の人から仕事の内容をチェックされることは少なくなりますが、ここでは現役の裁判官や検察官の方の決裁を受けなければなりません。また、法廷で尋問を行う機会も多いですし、訟務部内や法務省での勉強会もあるので、法曹としてのスキルアップに大変役立ちます。行政事件について言えば、私は、採用が決まってあわてて行政法の教科書を読んだくらいだったので最初は大変でしたが、半年間鍛えられて、事件処理についても手応えを感じるようになりました。


―最後に、これから訟務部「部付」弁護士を目指す後輩の方にメッセージを。
九段下の合同庁舎にある法務局の職場 検事や職員が机を並べ業務を行う

九段下の合同庁舎にある法務局の職場 検事や職員が机を並べ業務を行う

青木 とても勉強になる職場です。東京法務局訟務部では、「部付」弁護士の募集を続けていますので、皆さん是非応募してください。


萩原 国が関わる民事・行政事件に関心のある方には、是非来ていただきたいと思います。これまで扱ったことのない法律を扱ったり、行政庁の人たちと意見交換したりすることは、法律家としての活動領域を広げる上で、必ず役に立つはずです。