日弁連新聞 第355号
司法制度改革関連法案 通常国会ですべて成立
第一五六回通常国会提出の司法制度改革に関連する、裁判迅速化に関する法律案、司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案、仲裁法案などがいずれも国会で可決された。
裁判の迅速化に関する法律案
七月九日参議院本会議で可決成立。八日の参議院法務委員会においては、別掲のような附帯決議が採択された。このなかで、刑事の取り調べ状況の客観的信用性担保のための可視化などの制度改革を図るべきであるとしている。
司法制度改革のための裁判所法等の一部を改正する法律案
七月一八日参議院本会議で可決成立。一七日の参議院法務委員会においては、別掲のような附帯決議が採択された。附帯決議に関し、簡裁の事物管轄のさらなる見直しを盛り込むべきとの司法書士会側からの強い動きもあったが、最終的には盛り込まれなかった。
仲裁法案
七月二五日参議院本会議で可決成立。二四日の参議院法務委員会においては、別掲のような附帯決議が採択された。
第20回司法シンポジウム「あるべき裁判員制度の実現」をアピール
日弁連と関東弁護士会連合会、東京三会は、七月一九日、東京の日比谷公会堂で第二〇回司法シンポジウム「あるべき裁判員制度の実現に向けて‐考えよう市民の目から裁判を‐」を開き、市民が主人公となる制度を実現し、公正な刑事手続の実現を求める「裁判員制度に関するアピール」を採択した。午前中の日弁連製作のドラマ「裁判員‐決めるのはあなた」上映会に三〇〇名、午後からのシンポジウムに一三〇〇名が参加した。
報告では、六月二一日に米独仏伊の専門家を招いて実施した国際会議「国際水準から見た裁判員制度」の概要が紹介された。
全国各地と大学での裁判員ドラマ上映会の成果発表
学生からは、「専門的な法律用語を理解可能な用語に切り替えるべき。量刑資料の整備も必要」(早稲田大学西宮圭一郎氏)「裁判員が裁判官に気おくれしないルール作りが必要」(青山学院大学石原真理子氏)「評決は特別多数決が必要。法教育の契機となり、社会改革につながる」(東京大学村井智顕氏)などの意見が述べられた。
パネルディスカッション
裁判員ドラマのカット場面を観ながら、パネリストが討論した。ニュースキャスターの草野満代氏は、国民が広く裁判員になるには「雇用者の理解が必要」と述べた。
評議・評決のあり方について
須網隆夫教授(早稲田大学)が「(議事進行について)裁判長は今までになかった資質が求められる」とし、裁判員ドラマ総括プロデューサーの近藤晋氏は「(戦前の制度のような)おかみに対する陪審員ではなく、裁判員が意思を表現するようになる。これからは法廷もののドラマが大きな比重を占めるかも知れない」と会場を沸かせた。
捜査過程の可視化の必要性
指宿信教授(立命館大学)は「検察官の持つ証拠は有罪を得るためでなく真実を追究するための公共財産」と指摘した。
裁判員の数について
裁判官一人に裁判員一一人を主張する司法改革国民会議事務局長でもある須網教授が「健全な社会常識反映のためには裁判官の人数を上回る必要がある」と説明し、裁判員ドラマで裁判長役を務めた石坂浩二氏は「(ドラマの)七人でも少ない。将来は裁判官は入らない方がいいのでは」と述べた。
メディア規制や裁判員への接触について
草野氏が「評決までの裁判員の自由は大前提だが、裁判員の感想も知りたいので、記者会見の実施にあたっては『一回限り』『希望する人のみ』などの工夫が考えられる」と述べ、指宿氏も「英米では基本的に取材は自由。守秘義務の範囲を明確に限定的にすることも大切」とした。
ひまわり
これまで官僚が独占的に担っていた制度を弁護士、学識経験者のほか一般国民もその一部を担う改革が進んでいる▼裁判員制度は、無作為抽出で選ばれた国民が裁判官と対等な立場で刑事重大事件を裁く。非常勤裁判官制度は、弁護士が身分を残したまま、裁判官が行ってきた民事・家事調停の一部を主宰する。下級裁判所裁判官指名諮問委員会は、指名権限を独占してきた最高裁から諮問を受けて、裁判官の適否を答申する。リーガル・サービス・センターは、国の制度でありながら、むしろ弁護士が中心となって運営することを構想する▼このような官と民の共働の下で、日弁連はどうあるべきか。最近科学者は「共創思想」を提唱している。官と民がともに参加・協力して、新たな関係や価値観を創って問題を解決しようという思想である▼従来のように、官だけでは適切な問題解決ができず、官が持たない民の多様な知識と豊かな経験を取り入れなければならない。もはや官は民を下に見る傲慢さを捨てなければならない。他方で民は、官を敵視し、批判を専らとするだけではいけない▼いまや、国民は統治の客体から主体へと実質的に転換するときである。新しい官民共働の制度は、この「共創思想」によって根付くのではなかろうか。(S・O)
理事会報告(7月17日・18日)
LSCについて 法務省からの聴取結果報告
LSC構想が実現した場合に主務官庁となる可能性が高い法務省から、日弁連内で出されている疑問点についての聴取結果が報告された。法務省が「これだけは現段階でも約束する」と明言し、報告書の内容も確認したもので、Q&A方式。たとえば、国が第二日弁連を作るのではないかとの問いの対しては「LSCは、国民の司法に対するアクセス障害を解消するための中核的主体。日弁連が弁護士法上資格審査・懲戒権を持つ自立的な存在であることは、何らの変更もない。LSCの雇用するスタッフ弁護士が日弁連の監督に服するのは当然で、LSCが日弁連や弁護士会と代替ないし比肩するような存在となることは、全く想定されていない」と回答。
最高検「刑事裁判の充実・迅速化に向けた方策に関する提言」を発表
執行部は昨年末から法務省に対し、裁判員制度導入を視野に入れて、刑事裁判制度の改革を迫ってきた。これを受けて最高検が四月にプロジェクトチームを作り検討してきた結果を、裁判迅速化法成立を契機に「提言」として発表した。
各検察庁においてはこれをもとに検討するとしており、直ちに各弁護士会への協議の申し入れはないと思われる。日弁連としては、この内容を今後十分検討し、対応していきたい。
会務運営の透明化
市民会議規則案の審議
【規則案の主な内容】
- 目的 会務運営に広く市民の意見を反映させる。
- 弁護士および弁護士会の在り方、並びに連合会の会務運営に関し、会長からの諮問に答申し、また諮問がなくても意見を述べることができる。会長は意見や答申を尊重する。
- 三〇人以内の弁護士でない委員により組織し、議長と副議長は互選。
- 会議は会長が招集。
- 弁護士および日弁連職員による事務局を置く。
- 日弁連懇話会は廃止。
外国特別会員
基本規程の一部改正
今次の司法制度改革のためではなく、原資格国を二つとする外弁登録申請、あるいは登録後追加的に二つとする申請に対応するための改正。現に、ハワイ州とカリフォルニア州の二つを原資格国とする申請が本年あった。
提案どおり承認され、総会に付議される。
刑務所医療と死亡者の死因調査制度の抜本的改革を求める提言案(承認)
行刑改革会議へ向けた第二弾の提言で(1)刑務所内の医療の管轄を法務省から厚生労働省に変更する(2)死因調査制度を確立することを中心とするもの。
ハイテク犯罪に対処するための刑事法の整備に関する意見書案(承認)
現在法制審で検討している、日本政府が署名(未批准)したサイバー犯罪条約に対応するための法整備案に対する意見。法制審では八月上旬に意見をまとめ、秋の臨時国会に、条約の批准と法案が同時に提出される予定。
意見案は、新設を許容できない点(不正指令電磁的記録等作成等の罪のうち、作成罪・取得罪・保管罪の新設。コンピュータ・ウイルスを製造する行為、持っている行為等を犯罪化するもの)、修正を求める点(わいせつ物頒布等の罪)を整理したもの。
性同一性障害者の法的性別に関する意見書案(承認)
七月一〇日衆議院で成立。その前に正副会長会の承認により執行し、事後承認を求めたもの。子がいる場合にも、その福祉を害しないことを条件に戸籍変更を認めるべきという意見を出す意味が大きいと判断。
商法および株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律の一部を改正する法律案についての意見案(承認)
自己株式の取得に関する規制緩和(定時株主総会で決定しなくても、定款に記載しておけば、取締役会の決定でいつでも取得できる)についての議員立法で、参議院も通過見込み。株主の了解を得た上で行うべきことであり、反対する。
電子政府構築計画案に関する意見書案(承認)
政府案は、抜本的に再検討されるべきという意見。問題点は(1)個人情報保護・情報セキュリティに関する具体的な対策(2)国民の認証方法の策定、のいずれもが欠如しており、(3)共通的な環境整備も不十分であること。
―その他の承認事項―
- 「情報セキュリティ基本法」制定を求める意見書案
- 公益通報者保護制度要綱案
- 出資法の上限金利等の引き下げを求める意見書案
- 知的財産戦略推進計画案に関する意見案
- 国際刑事弁護士会(ICB)への団体加入に関する件
会則・会規改正案のポイント
弁護士法改正に伴い必要とされる、日弁連会則・会規の改正案が、理事会で継続的に審議されている。そのポイントを紹介する。
1 弁護士法三〇条関係
弁護士の公職の兼職禁止規定が削除され、営利目的業務が許可制から届出制になる。
(会則の改正)
二八条の四・五
(規程の新設)
- 営利業務の届出等に関する規程案(単位会に届出、日弁連には単位会から報告。事前届出制となる)
- 外国特別会員の営利業務の届出等に関する規程案
- 公務就任に関する届出等に関する規程案(事後届出制)
- 外国特別会員の公務就任に関する届出等に関する規程案
なお、営利業務については事前届出制となる関係上、施行日より前に単位会の届出制度を整備し、開始する必要がある。
2 綱紀懲戒手続
(主な弁護士法改正点)
- 日弁連綱紀委員会に、綱紀に関する異議の申出事案の審査機能を持たせる。
- 綱紀審査会の新設。
- 単位会綱紀委員会の参与員を廃止し、議決権を持った外部委員とする。
- 単位会・日弁連とも、綱紀委員会・懲戒委員会双方に、自己完結的に結論の出せる部会を設置できる。
- 懲戒処分や手続に関する関係者への通知について、法律上の規定とする。
- 「綱紀委員会の調査に付された」ことをもって「懲戒の手続に付した」ものであることが明文上あきらかにされ、いわゆる「限定説」「非限定説」の争いを条文上決着させた。懲戒手続きに付したら、以降は登録換・登録取消請求はできなくなる。
(会則の改正)
会則の改正案
(会規の新設・改正)
- 綱紀委員会および綱紀手続に関する規程新設
- 綱紀審査会および綱紀手続に関する規程新設
- 懲戒委員会および懲戒手続に関する規程新設
- 懲戒処分の広告及び公表等に関する規程新設
- 懲戒の報告に関する規程の改正
- 弁護士法人規程の改正
3 会務運営の透明化
司法制度改革推進本部法曹制度検討会において、審議会意見書にしたがって日弁連の会務運営の透明化が検討された。日弁連はプレゼンテーションにおいて、理事会で決定した透明化に関する基本方針などを説明し、実行を表明している。
隣接士業では、外部者を理事会などに参加させる形での透明化を図っているが、日弁連はこの方式をとらず、総会の公開・議事録や議事概要の公開などを原則とした。これに基づき、会則と議事規程を改正するものである。
4 弁護士報酬規程
弁護士法から「会則に報酬の標準を示す規定を記載する」との条項が削除される。
(会則改正部分)
二九条の三、八七条
(業務基本規程案)
三三条~三八条
(削除後の対応)
単位会は各報酬規程・外弁の報酬規程を廃止する必要がある。
5 外弁関係
(会規の新設・改正)
- 外国特別会員基本規程の改正
- 外国法事務弁護士綱紀委員会および綱紀手続規程新設
- 外国法事務弁護士懲戒委員会および懲戒手続規程新設
司法制度改革コーナー(46)
動きはじめた非常勤裁判官制度!!
いわゆる非常勤裁判官制度は、弁護士が弁護士としての身分をもったまま、地裁及び簡裁の民事調停官あるいは家裁の家事調停官として任官する画期的な制度です。
日弁連は、二〇〇二(平成一四)年八月二三日、最高裁との間で、「弁護士任官等に関する協議会」において非常勤裁判官の創設を合意し、準備を進めてきたところ、非常勤裁判官制度は、今国会で立法化が実現したことから、二〇〇四(平成一六)年一月の任官に向けて、大きく動きはじめました。
地裁と家裁の導入対象庁は、東京と大阪だけです。簡裁は、東京・大阪のほかに、横浜、京都、名古屋、福岡、札幌です。ブロックでいえば、東北、中国地方及び四国については導入されませんでした。今後、導入対象庁の拡充を早急に実現する必要があります。
日弁連は、同制度の推薦手続について検討を重ね、常勤裁判官との比較から審査手続を簡素化し、各ブロックの選考委員会が採用予定人数への絞り込みを行う方式を採用することなどを決めて、各ブロックは、短期間のうちに、無事審査を終えました。
日弁連が実施した応募アンケートによれば、前向きに回答された三〇一名のうち、無条件で任官すると回答された方は四二名で、採用人数の三〇名を大幅に超えました。時期や条件によると回答された方は一八三名にも達しました。しかし、今回の採用人数は、全国で三〇名であったため、いくつかの選考委員会で、推薦者を、採用人数まで絞り込むために大変な苦労をしました。
今後の課題として、導入対象庁の拡充を図ることはもとより、採用人数を拡大する必要があるほか、応募者が応募にあたって希望していた非常勤裁判官としての権限の拡充や勤務報酬の引き上げを、あわせて検討する必要があります。
当センターは、平成一六年一〇月任官(採用予定人数は今回と同数の三〇名と思われます)に向けて、準備をはじめることになりました。
(弁護士任官等推進センター第二部会部会長 北野幸一)
改革の天王山を迎えて 会長 本林 徹
これは、七月三〇日、三一日に開かれた日弁連司法改革実現本部の夏期合宿において、会長が冒頭のあいさつで述べたものである。
1、歴史の転換期に立って
わが国の司法は、明治維新後に形成されたときから、戦後改革を経た後においても、市民の利用しにくい、官僚的な小さな司法のままであった。今日に至る迄、個々的な分野での一定の改革や前進はあったものの、全体としては市民にとって縁遠く、利用しにくい存在であり、三権の中でもきわめて小さな存在でしかなかった。その最大の問題点は、(1)国民的基盤に乏しいこと(2)国民からのチェックが及びにくいこと(3)小さな司法であることである。
今次の司法改革で目指しているものは、これまでの司法とは対極に位置付けられる。それは、「法の支配」が貫徹され、透明で公正な社会をつくるため、(1)国民的基盤を確立し(2)司法制度を利用しやすく、説明責任を果たせるものにし(3)司法制度を支える質量ともに豊かなプロフェッションとしての法曹をつくることである。
この改革は、個々的な司法制度改革にとどまらず、法曹全体のあり方や意識改革、ひいては社会全体のあり方の改革(国民の統治客体意識から統治主体意識への転換等)に及ぶもので、まさにわが国の司法と社会のあり方を転換しようとするものである。
この歴史的転換期において、私たちがどこまで改革を達成できるのか、どのような内容のものを作りあげることができるのかは、私たちの双肩にかかっているといってよい。
日弁連は「市民の司法」を提唱して、主体的に今次の改革を担ってきたが、それは裁判制度改革にとどまらず、自らの弁護士制度改革をも受け入れるものであった。なぜなら、私たち弁護士、弁護士会自身も司法制度を担う責任ある立場にあり、そのために自らの改革が不可欠であると考えたからである。
最高裁・法務省においても、その改革姿勢に不十分な面があり批判すべき点はあるものの、今日の問題状況を踏まえ、さまざまな改革案を提示するなど、これまでの対応とは明らかに異なっている。
歴史の歯車を前へ動かすためには、弁護士・弁護士会の取り組みだけではなく、推進本部・最高裁・法務省を巻きこんだ大きな改革のうねりをつくっていかなければならない。
日弁連のこの取り組みは、まさに基本的人権の擁護と社会正義の実現の歴史的実践であり、私たちはこれに主体的に関与することに誇りを持って取りくんでいかなければらならない。
2、 これまでの取り組みと到達点
私たちは、このような歴史認識と基本視点に立ち、審議会意見書の到達点を具体化し、「市民の司法」の実現を目指すとともに、意見書の骨抜きや後退を許さないという姿勢でこれまでの総力戦を闘ってきた。
- 今次の司法改革における最初の「山」は、2002年秋の臨時国会で成立した法科大学院関連三法の取り組みであった。
三法の成立によって、わが国における新しい法曹養成制度の骨格が定まり、そのもとで21世紀の司法を担う、質量ともに豊かな法律家が生まれる基盤ができた。
日弁連は、法曹養成のための中核的な教育機関として、法科大学院の設置を提唱してきたが、それがようやく実現することになった。 - 第二の「山」は、2003年の通常国会に提出された裁判迅速化法案、弁護士法の一部改正・簡裁事物管轄の引き上げを含む裁判所法の一部改正などのいわゆる司法制度改革法案、仲裁法案、民訴法一部改正法案、人訴法案、担保物権及び民事執行制度改善のための民法等一部改正法案などの取り組みと一連の裁判官制度の諸改革であった。
これらの法案は、すべて国会で成立したが、概ね日弁連の主張が取り入れられたほか、不十分な点は衆参両院の法務委員会で重要な修正と所期の附帯決議を獲得することができた。また、裁判官制度改革は、すでに下級裁判所裁判官指名諮問委員会の設置など、いくつかの最高裁判所規則として成立したが、日弁連主張を反映したものとなった。
多方面にわたる弁護士制度の改革については、私たち自らの問題であるだけに、会員の意思を尊重し、かつ、十分な理解を得ることが重要であったが、大方の支持が得られる内容になったものといえよう。 - これまでの取り組みによって概ね以下の改革が実現することになった。
- 法科大学院は、予定どおり2004年4月に開校できることとなった。72校が設置認可申請し、募集人員の合計は約6000人である。法科大学院入学のための適性試験は本年8月実施される予定であるが、いわば官の大学入試センターだけでなく、日弁連法務研究財団も実施主体となる。また、多数の弁護士が法科大学院の実務家教員となることが予定されている。法科大学院を審議会意見の趣旨に沿ったものにしていくために、日弁連は今後さらなる努力をしなければならない。
- 法曹人口は大幅に増加する。司法試験の2004年度の合格者は1500人、その後3000人に増え、15年後には法律家の数が5万人となる。小さな司法を打破する新しい法曹が誕生する。
- 弁護士制度は多方面にわたって改革が進む。公職就任・営業等が届出制になり、社会への進出が促進され、そこにおいて、弁護士としての職務遂行の独立を維持しながらの活動により公正な社会をつくることに寄与することが期待される。
弁護士報酬は自由化され、個々の弁護士が顧客との間の信頼関係にもとづき自主的に報酬額を決めることになる。報酬契約の透明化・明確化も進む。
弁護士会の懲戒手続を、より一層客観化・透明化し、市民の意思を反映させ、懲戒手続きへの信頼を高めるために、綱紀審査会を新設する。
日弁連の会務運営を透明化するために、日弁連総会及びその議事録を公開するとともに、会務運営に民意を反映するために「市民会議」を設置する。
弁護士会による十分な事前研修を条件に、特任検事、司法試験に合格した国会議員・7年以上の企業法務経験者などに司法修習を経ずに弁護士資格付与の特例が実施される。能力担保研修を修了し、所定の試験に合格した司法書士が簡裁で代理人として活動する。なお、簡裁の事物管轄は90万円から140万円に引き上げられる。弁理士も能力担保研修・試験合格を経て、特定侵害訴訟につき弁護士と共同代理・共同出廷が可能となる。さらに、外国法事務弁護士による日本弁護士の単独雇用が可能となる。
これらの改革によって、弁護士のあり方は大きく変わるが、日弁連は改革の趣旨をふまえた適切な運用に留意しつつ、新しい弁護士像・弁護士会のあり方を提示して「市民の司法」を実践する弁護士のアイデンティティを追求していく。 - 裁判官制度については、非常勤裁判官制度が民事及び家事調停分野に導入され、弁護士が裁判官の役割の一部を担うことになり、弁護士任官の推進とともに、裁判官をより多様で豊かなものに変えていく契機となろう。
下級裁判所裁判官指名諮問委員会が設置され、裁判官の任命過程に国民の意思が反映され、国民のチェックが及ぶことになる。
また、地方裁判所委員会が新設され、家庭裁判所委員会も改組され、地家裁の運営に国民の意見が反映されることになる。これは司法行政を国民に開かれたものとする第一歩となろう。 - 裁判の迅速・充実化
裁判迅速化法の成立、民訴法の一部改正により、裁判はさらに充実・迅速化を目指すこととなる。
そのために、裁判官・検察官等の増加や物的施設の拡充、諸制度改革、弁護士も関与する客観的な検証など、審理充実のための基盤整備をしていくことが重要である。そして、政府及び最高裁に対し、衆・参両議院法務委員会における同法の附帯決議の具体化を迫っていくとともに、私たち弁護士、弁護士会もそれに向けた努力を続けていく必要がある。
- 法科大学院は、予定どおり2004年4月に開校できることとなった。72校が設置認可申請し、募集人員の合計は約6000人である。法科大学院入学のための適性試験は本年8月実施される予定であるが、いわば官の大学入試センターだけでなく、日弁連法務研究財団も実施主体となる。また、多数の弁護士が法科大学院の実務家教員となることが予定されている。法科大学院を審議会意見の趣旨に沿ったものにしていくために、日弁連は今後さらなる努力をしなければならない。
3、 今後の重要課題と主たる論点
2001年(平成13年)12月1日に発足した内閣司法制度改革推進本部は、3年後の2004年11月末日に組織解散することによって終了する。
残された期間は、1年4ヵ月であるが、その実質作業は2004年1月からはじまる通常国会に向けての法案づくりにあることからすると、実質的にはあと半年程度といえる。
しかも、この間に作成すべき法案は、裁判員制度、刑事司法改革、公的弁護制度、リーガルサービスセンター、弁護士報酬敗訴者負担制度、行政訴訟制度改革、労働訴訟改革、ADRの拡充などがあり、これまで取り組みを終えた法案と対比しても、社会的重要度がきわめて高く、推進本部事務局は、これらを「メガトン級の法案」とよび、その成立が容易でないと見通している。
すでに現時点において、これらの立法作業は同時進行しており、いずれもが多数の関係組織のせめぎあいのもとで、複雑な動きとなっている。私たちは、まさに司法改革の天王山を迎えたといってよい。
私たちは、今年5月の定期総会で決議した「司法改革宣言2003‐総力をあげて『市民の司法』を実現するために‐」を踏まえて、全会的な取り組みをさらに強化していかなければならない。
- 裁判員制度
日弁連の基本方針は、市民が裁判に主体的・実質的に参加しうる制度とし、裁判に対する市民の意識が自立的・主体的なものとなることを目指す。
その主要な論点は、(1)裁判官と裁判員の比率(2)無作為抽出による選出(3)裁判員の義務化の内容(4)直接主義・口頭主義を中心とする審理のあり方(5)評議・評決のルール(6)報道の自由との関係などである。『裁判員制度の具体的制度設計にあたっての日弁連の基本方針』および日弁連の『裁判員制度「たたき台」に対する意見』を踏まえ、市民の理解と支持を得る全国的な運動、国会議員やマスコミ等に対する説得作業などを強力に展開しつつ、制度の実現に向けて総力を結集する必要がある。
7月25日には、超党派の「裁判員制度推進議員連盟」が設立された。いま、各弁護士会においては、地元の国会議員に対する積極的な働きかけと裁判員ドラマの上映運動を拡げることが求められている。 - 刑事裁判改革
日弁連の基本方針は、裁判員制度の導入を契機として、調書中心の裁判に終止符を打ち、公判中心の裁判、完全な証拠開示、捜査の可視化、人質司法の抜本改革などの実現をはかっていくことにある。
その主要な論点は、(1)準備手続のあり方(2)争点明示義務(3)証拠開示(4)捜査の可視化(5)身体拘束制度の改革などである。
これらの改革は運用の改善にとどめず、刑訴法の改正を目指さなければならない。 - 公的弁護制度
日弁連の基本的方針は、被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利を実質的に確保することである。
その主要な論点は、(1)運営主体(2)対象事件(弁護士会の対応能力)(3)全弁護士会の準則制定(4)公的付添人制度導入(5)適正な弁護報酬額である。
いま、各弁護士会は準則制定はもとより、自らの対応能力とあるべき態勢について明確にすることが求められている。 - リーガルサービスセンター
日弁連の基本方針は、これまでの日弁連の諸取り組みをさらに前進させる組織とし、市民の司法へのアクセスを拡充し、法律扶助を充実させることである。
その主要な論点は、(1)運営主体(2)事業内容(3)弁護活動の自主性・独立性の確保(4)組織(5)人事(6)予算(7)日弁連の取り組みとの関係などである。
日弁連は「リーガルサービスセンター構想に関する方針」を踏まえて、問題点を克服しながら、主体的な取り組みを進めているが、各弁護士会においてもリーガルサービスセンターと法律相談センターや公設事務所との関係等についての検討が求められている。 - 弁護士報酬敗訴者負担制度
日弁連の基本方針は、敗訴者負担制度導入の是非を司法アクセス促進に寄与するか否かを基軸に個別具体的に検討していくことである。その意味で、一般的敗訴者負担制度には反対をしていく。マスコミの理解を得られはじめているのは心強く、さらなる全国的な市民運動・国会議員対策等を展開していく必要がある。すでに、全国の弁護士会で一般的導入の反対決議がなされているが、地元国会議員への働きかけが必要な段階にきている。 - 行政訴訟改革
日弁連の基本方針は、国民主権に根ざした司法の行政に対するチェック機能を強化する方向での抜本的な改革であり、そのための法制度に改正することである。
今後の限られた日程の中で、できるだけ改革を広く実現させることである。
若手国会議員の中に改革を求める動きが広がっているが、国会議員対応と同時に法務省、最高裁にも働きかけ、検討会が全力をあげて改革に取り組むよう強く要請していく。 - その他
労働訴訟改革、ADRの拡充・活性化、知的財産訴訟の改革も重要局面を迎えており、手をゆるめてはならない。裁判官・検査官の大幅増員の取組みも強化せねばならない。また、すでに取り組んできた課題の具体的な制度設計やフォローアップ作業も数多く残されており、これを軽視すれば、折角の改革が形だけのものになるおそれがある。
ちなみに、法科大学院関連では、(1)法科大学院生の経済支援及び法科大学院の財政基盤の強化(2)司法修習生の給費制(3)新司法試験のあり方(4)新しい修習制度のあり方(5)法務研究財団を第三者評価機関とするための支援(6)カリキュラム・教材の作成など、課題が山積している。特に、緊急なのは、経済支援であり、志ある優れた学生が誰でも法曹の道に歩めるよう、理解ある国会議員とともに小泉首相への直接要請も行う予定である。
裁判官制度改革も、すでに最高裁規則として制定されたものについては、その運用において留意を要するほか(1)人事評価制度(2)判事補の他職経験(3)特例判事補の段階的解消などの問題が残されている。
弁護士制度改革については、弁護士法一部改正をふまえた、会則・会規の改正作業と新しい組織の立ち上げ、弁護士倫理の改正など、なすべきことは多いが、確実にこれを実施していく責務がある。
弁護士制度改革については、弁護士法一部改正をふまえた、会則・会規の改正作業と新しい組織の立ち上げ、弁護士倫理の改正など、なすべきことは多いが、確実にこれを実施していく責務がある。
4、 これまでの取り組みの教訓とこれからの闘い
- 私たちは、司法改革立法作業に向けての1年余りの司法改革の取り組みを経験する中で、その事業はどの課題をとってもその実現は決して容易ならざることを実感してきた。
審議会意見書において、改革の方向性は示されているとはいえ、それが実現する保障はなく、常にそれを後退させようとする力との闘いを余儀なくされた。また、制度設計の段階のみならず、その運用の段階においても厳しいせめぎあいが最後まで続く。 - 立法作業は、推進本部事務局、法務省、最高裁などによって進められると同時に、国会議員、特に、自民党司法制度調査会をはじめとする与党議員の手によって進められている現状にある。しかも、両者は相互に関連し、影響を及ぼし合い、非常に複雑に展開する。
その二つの動きについて的確に情報収集をしつつ、いずれに対しても有効な働きかけをし続けなければならない。とりわけ自民党国会議員対応は決定的に重要である。 - 司法改革は、時間の制約がある。改革の具体的方向について、関係者の一致が得られても、時間切れで終わることも十分考えられる。私たちは、理想を追う一方で、この改革において現実に獲得できるのは何かを見きわめることも必要である。
- 私たちは、これまでの取り組みにおいて、司法改革とは市民の司法を実現するための闘いであり、弁護士会が総力を挙げなければならないことを痛感してきた。闘いとは、相手を説得するとともに自己改革することであり、その内容が問われるだけでなく、その説得を自己改革を踏まえた力強いものにしなければならない。
私たちは、推進本部事務局・検討委員、国会議員、関係諸機関、マスコミ関係者などに対する個別説得のために、調査・研究し、繰り返し議論を重ねて、方針を策定し、さらに説得のための工夫や自己改革の努力をしてきた。そして、課題によっては、多くの市民参加を得て質の高いシンポジウムを実施するとともに、市民の理解を求める大きな取り組みを展開してきたが、これらの努力は最後の最後までなされなければならない。
また、日弁連としての取り組みだけでなく、各地域の活動もきわめて重要である。各弁護士会で数多くの裁判員ドラマ上映会が実施されたことは、市民への理解を広げる画期的な活動であった。
国会議員に対する要請活動についても、地元選挙区の弁護士・弁護士会からの要請活動が重要かつ有効であることはいうをまたない。また、各弁護士会で作成した地域司法計画の活用と実践をはかるほか、地域における購読シェア率の高い地方紙など地元マスコミへの説得活動も改めて位置付け直し、取り組む必要がある。
私たちは、これまでの経験の中で、懸命にたたかえば成果が得られること、日弁連の力は決して小さくないこと、しかし手を緩めればたちまち後退し、情勢に遅れてしまい主体性を失う危険があること、最後まで諦めることなく取り組むことが何よりも大切であることを学んだ。いま、私たちには日弁連会員の英知を結集しての総力あげた悔いのない歴史的事業をやりとげることが求められている。 - 今回の立法過程において、日弁連は、はじめて、主体的に立法作業に関わり、最高裁、法務省、その他の行政官庁、政党・国会議員などとの厳しいせめぎ合いの中で市民の立場に立って高い理想を掲げて説得と協議を続け、あるべき司法制度改革の姿について理解を浸透させるように努めてきた。日弁連が、主体性をもって、関係官庁、国会関係者といわば緊張関係を保ちつつ行う共働は、今次司法制度改革の状況の中でも、市民の司法の観点からの改革の実現への展望を必ず切り開くものである。この天王山ともいうべき時期に、弁護士・弁護士会は、司法制度を担う一員としてその提言が改革のあり方を左右することができる立場にあることに確信を持ち、市民と連携しつつ全ての力を結集して、歴史を切り開く改革を成しとげる使命を果たさねばならない。
労使紛争の解決と労働裁判の役割 イギリス、ドイツの裁判官を招いて
7月5日弁護士会館「クレオ」
七月五日、弁護士会館講堂「クレオ」において、シンポジウム「労使紛争の解決と労働裁判の役割」が開催された。
基調報告(労働検討会の経過)
日弁連・労働法制委員会副委員長で司法制度改革推進本部・労働検討会委員でもある石嵜信憲会員(第一東京)が、二〇〇二年二月から開催されてきた検討会の状況を紹介した。今年八月までに中間取りまとめを行い、これに対する意見募集が行われるので「このシンポジウム参加者から、労働参審制についての意見を伺い、中間取りまとめに反映させたい」と話した。
ドイツ労働参審制の現状
カーリン・アウスト・ドーデンホフ氏(ベルリン州労働裁判所長官)によると、職業裁判官と、労使双方から選出された民間の「名誉職裁判官」とで裁判体が構成されている。労使関係について実務的知識を有する名誉職裁判官が裁判に関与することによって、「最終的な判断が現実に即したものとなり、当事者の納得性・受容性がより高いものとなる。」との利点を挙げた。
名誉職裁判官が労使双方から選出される場合、中立性や守秘義務に対して表される懸念に対しては、自身の経験に照らし、「名誉職裁判官は、裁判官の中立性がいかに重要か十分に認識しており、一方的な立場に偏った判断をされた経験はない。判決をするにあたっては、常に中立な立場を取っている」と述べた。
イギリス雇用審判所の現状
ピーター・クラーク氏(雇用控訴審判所裁判官)によると、労働審判の第一審、第二審手続とも、職業審判官と、労使双方から選出された「素人審判官」とで裁判体が構成されている。素人審判官を裁判に関与させることについては、ドーデンホフ氏同様の利点を挙げ、特に、法律審である第二審の雇用控訴審判所においても、「第一審の雇用審判所が認定した事実に、どのように法を適用するかについても、労使関係について専門的知識を有する素人審判官の役割は非常に大きい」と述べた。
会場から参審制導入の声
実際に労働参審制が十分に機能しているドイツ、イギリスの両裁判官からの報告により、会場から、労働参審制導入を待望する意見が出されていた。
シンポジウム 行政訴訟を変えると21世紀が見えてくる
七月二日、衆議院第二議員会館において、自民党若手国会議員、研究者及び弁護士からなる「国民と行政の関係を考える若手の会」メンバーを迎えた標記シンポジウムが、日弁連ほか関連六士業団体の共催で開催された。「若手の会」が提起した行政訴訟改革の試案は、日弁連案と重なる部分も多く、日弁連としては同会と連携しながら改革への運動を進めているところである。
冒頭、保岡興治自民党司法制度調査会会長が「行政訴訟改革は国民と行政との対等なパートナーシップを確立するための重要課題であり、若手の会のすばらしい提言も踏まえ、政府の検討会と歩調を合わせて検討していきたい」と挨拶した。
引き続きパネリストに「若手の会」から衆議院の塩崎恭久議員、下村博文議員、参議院の林芳正議員、世耕弘成議員のほか、福井秀夫教授(政策研究大学院大学)、安念潤司教授(成蹊大学)、玉井克哉教授(東京大学先端科学技術研究センター)、水野武夫会員(大阪)を迎え討論が行われた。
福井教授は「かつて国側代理人として一〇〇件近くの行政訴訟を担当したことがあるが、勝訴率は一〇〇%であった。これは行政法の仕組み自体が行政有利となっていることを表している」と問題提起した。
パネリストからは「事後チェック、自己責任への流れを推し進めるためには、規制緩和だけでなく司法の場で決着をつけるためのきちんとしたルール作りが必要」(林議員)「自民党内部の検討では改革推進の意見に対して手厳しい反論を受けることもある。ぜひ国民に関心を持ってもらいたい。経済界からも意見がほしい」(世耕議員)などの指摘のほか、会場に駆けつけた一〇名近い国会議員より改革に向けてのエールが送られた。
会場発言した藤川忠宏日経新聞論説委員は「行政訴訟改革は、当初はほんの手直し程度に収まると予想されていたが、ここにきて大きな変革の予感がある。場合によっては議員立法も考えてよいのではないか」と期待を語った。
最後に、本シンポジウムにおける議論を踏まえた「行政訴訟改革に関する宣言」が提案され、参加者全員の賛成により採択された。
知的財産法の研修会を実施
東京地区第1回433名が参加
七月二四日から三日間、弁護士会館講堂「クレオ」において、知的財産法集中研修会が開催された。
研修会には、東京を中心に、四三三名の会員が参加した。講義に遅刻、早退した場合には受講証明書を発行しないということもあって、ほとんどの会員が三日間をすべて出席した。
本林徹会長は、「政府は、『知的財産立国』を提唱し、『知的財産戦略大綱』を取りまとめ、知的財産基本法を制定し、知的財産の創出、活用、保護に関し様々な改革を進めている。経済・社会の国際化、情報革新の時代を迎えて、知的財産権に関する法的問題は、今後ますます増大する。今こそ、法律専門家であるわれわれ弁護士が、知的財産法の分野に積極果敢に取り組み、社会の法的ニーズに応えていくことがきわめて重要になってきている。今後、第二弾、第三弾と、内容をさらに深めた研修会の実施を検討していきたい」と挨拶した。
今回の研修会の講師には、中山信弘教授(東京大学)、特許庁の森次顕氏、知的財産専門部の飯村敏明判事のほか、知的財産法を専門的に扱っている弁護士があたった。
当初、東京会場は五〇〇名の定員を予定していたが、予想を大きく上回る二倍以上の応募者があったため、急遽八月三日から追加開催することとした。また、一〇月一六日からの三日間予定している大阪での研修も、収容人数の多い商工会議所に会場を移すことにした。
会員、なかんずく若手に、専門家研修への関心が強いことが明らかになった。
今回の研修の特色は、一つ目は、受講者には受講証明書を発行し、今後の第二段階の研修につなげること。さらに弁護士会の法律相談などで知的財産法関係の依頼があった場合には、研修修了者に事件を配点することも将来の構想として考えられている。
二つ目は、研修模様を録画し、ホームページにおいて配信することである(下参照)。
今後、租税訴訟についての研修が八月二九日・三〇日に予定されており、日弁連として専門弁護士育成のための研修会をこれまで以上に行っていくこととなっている。
研修ビデオ配信案内
日弁連ホームページ
会員専用サイトのビデオライブラリーコーナーにて
(登録方法は本紙最終面)
- 特別研修会「民事・刑事尋問技術」(今春実施)…現在配信中
- 知的財産法集中研修会…八月二〇日~配信予定
- 税務訴訟研修…九月二〇日~配信予定
東北弁連定期大会報告
7月4日・福島市
シンポジウム「司法アクセス障害解消のための弁護士会と地方公共団体の連携」
佐藤会員(左)と渡辺会員
冒頭、佐藤初美会員と渡辺慎太郎会員(いずれも福島県)が基調報告し、地方公共団体の相談窓口は、なかなか理想的な相談体制を確立できずにいる上、受任への流れがないために限界があること、弁護士あるいは弁護士会と連携した事件の受任を前提とする法律相談体制を確立することが必要不可欠であることなどを指摘した。
続いて、奥野滋会員(日弁連公設事務所・法律相談センター事務局長)、藤井範弘会員(財団法人法律扶助協会専務理事)および櫻井光政会員(日弁連刑事弁護センター委員)をパネリストに迎え、荒木貢会員(福島県)と小池達哉会員(福島県)のコーディネートで討論が行われた。
議論の中心は政府のLSC構想と日弁連との関係であった。奥野会員は「構想の具体的内容が見えないので予測のつかないところもあるが、ひまわり基金に基づく活動のニーズがなくなることはないと思う」と語った。個々の弁護活動の独立性が侵害されるのではないかとの懸念については「公的な機関である以上運営や収支については明朗を旨としなければならないが、業務についてはあくまで独立を押し通さねばならない」(櫻井会員)「全国各支部の支部長を誰が担うかが非常に重要であり、そこに然るべき弁護士を送り込む体制を整備すべき」(藤井会員)などの見解が示された。
定期大会
「刑務所・拘置所における被収容者の処遇について抜本的改革を求める決議案」「弁護士報酬の敗訴者負担制度に関する決議案」および午前のシンポジウムを受けた「地方公共団体が弁護士会と連携して地域の実情に応じた司法へのアクセス拡充に積極的に取り組むことを求める決議案」が審議され、いずれも満場一致にて可決された。
引き続き行われた日弁連執行部との意見交換会では、LSC問題、弁護士業務基本規程案、弁護士会活動への女性会員参画などが議論された。
新弁護士会 北から南から 〔第32回〕 福井弁護士会(2)
若手は弁護士会のイソ弁
ここ七年間、福井弁護士会は毎年新入会員を迎えている。四四人で全県をカバーする福井弁護士会にあって、若手は貴重な戦力。その一生懸命さが弁護士会に活力を与えてもいる。
(広報室嘱託 兼川真紀)
独立が早い
福井では概して独立が早い。登録後すぐに独立する人も珍しくない。
当初不安になるのはやはり経済状態だ。はたしてやっていけるのか。そこで多くは事務員を雇わず、一人で始めてみる。ところが、先輩弁護士からの紹介などもあって、仕事は次から次へと押し寄せ「一週間でパンクして、事務員を雇いました」(寺田直樹会員・五二期)となるのが通常のパターンらしい。
もう一つの不安は、勤務弁護士の経験なく開業して、仕事をきちんとやっていけるかどうかということである。しかしこの点も心配いらないという。先輩会員は仕事をまわしてくれるだけではなく、事件処理の相談にものってくれる。「私たちは弁護士会のイソ弁みたいなもの」と口を揃える。
五〇〇人もの若者が、消費者金融から借入をさせられた集団詐欺事件をきっかけに、学校への出前講義が始まったが、同じころ、若手の勉強会も発足した。みんなで勉強しようという機運が高まり、面倒見のよい弁護士のもとに月に一回程度、四九期以降の若手八~九人が集まり、新しい法律や税務を勉強したり、事件処理についての情報交換などをしている。
県外出身者の登録も
福井弁護士会では圧倒的に福井県出身者が多く、県外出身(「県外者」と言われている)は五人。若手の県外者は二人だ。安藤健会員(五〇期)は福井修習で、修習先事務所がすっかり気に入り、その事務所に入った。島田広会員(五〇期)は金沢修習の時に、受験仲間だった吉川健司会員(五四期・当時は学生)の父の弁護士からスカウトされた。金沢で結婚し、今も金沢から福井に通う。スカウトした弁護士は彼が登録して間もなく亡くなったが、今は弁護士となった吉川会員と一緒に事務所を経営する。
川村一司会員(五三期)は、福井県出身だが、東京で就職するつもりだった。大手銀行に勤めた後、修習生になり、東京修習時代には、そのまま就職するつもりで退職金を頭金として住宅を取得した。ところが、夏休みに帰省して先輩弁護士の話を聞き、そのまま福井で開業することを決めた。家は売った。
「人生の重要な友人の多くは東京にいる」という井上毅会員(四九期)も弁護士たちが生き生きと生活している姿を見て、福井に戻って開業することを選択した。
ただとにかく忙しい
こうして開業してみて、「事件の質にも不満はない」というのが、川村会員の感想だ。
ただとにかく忙しい。
月に2回はまわってくる法律相談に平均月に一回の当番弁護士、国選弁護に破産管財事件、先輩弁護士から頼まれる事件、法律扶助の審査会、それに勉強会。ほとんどの会員が、事務所から車で一〇分ほどのところに住んでいるが、夜、家で夕食をとり、また事務所に戻って、一〇時、一一時まで仕事をすることもしばしばらしい。
弁護士会の会務も次々と押し寄せる。
法律相談センターなどの設置についても、武生などは車で四〇分くらいだから今のままでもカバーできるという意見もある反面、「原告事件を受けるには、常設のセンターがなければ」(吉川会員)との声もある。ただ弁護士会の受け入れ能力にも限界があり、その実情はなかなか理解されていないとも思う。
弁護士会のあたたかさ
若手が福井の魅力としてあげるのは、弁護士会のあたたかさだ。「会をあげて育てよう、という雰囲気がある」(井上会員)と若い弁護士は感じている。東京で二年勤務し、開業した三田恵美子会員(四九期)は「人の顔が見えるよさ」も魅力という。
こうして若手は福井の弁護士会をしっかりと支え、ベテランたちは、若手もよくがんばっていると彼らを育て、見守っている。
「今後会員は六〇人くらいになってほしい」と野村直之会長は言うが、少ない人数でも充実した法律相談体制を整備したり、法教育の分野で地域も取り込んで多様な活動を展開しているところに、弁護士会活性化への地道な努力が見える。
おみやげガイド
天たつ(0776‐22‐1679)の塩うにはとてもおいしいが、値段も立派。甘いもの好きには羽二重餅。松岡軒(22‐4400)など。梅干しやらっきょうも有名。
悩んだ末に
東尋坊は越前加賀海岸国定公園の一部。美しい輝石安山岩の柱状節理が続く。サスペンスものの二時間ドラマでクライマックスに使われそうな景勝地だが、不況のために自殺者が急増。「今から飛び降りる」と「心の電話」に助けを求める人の悩みの多くが借金問題であるため、管轄の三国署からは、弁護士会にこの人たちの相談を受ける制度を作ってくれないかと打診があった。弁護士を一人貼り付けるわけにもいかないと悩んでいたが、警官経由で電話相談を受けることにしたという。