日弁連が取り組む重要課題
憲法改正手続法の抜本的見直しを

日本国憲法を改正するには、国民投票による承認が必要と定められています(憲法96条)。しかし、国民投票の具体的方法については、特に決められていませんでした。

そこで、自民・公明の与党は2006年5月26日、「日本国憲法の改正手続に関する法律案」を衆議院に提出し、民主党も同日、「日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続及び国民投票に関する法律案」を衆議院に提出しました。

しかし、与党と民主党が提出したそれぞれの法案には、重大な問題点が含まれていました。

そこで、日本弁護士連合会は、2006年8月22日及び12月1日にそれぞれについての意見を取りまとめて、公表しました。

2006年臨時国会では、衆議院に設置された日本国憲法に関する調査特別委員会において、与党と民主党が提出した法案についての審議が行われており、日弁連は参考人として出席し、意見書の趣旨実現に向けた活動に取り組んできました。そして、与党、民主党は国会審議の内容をふまえて、2006年12月14日に修正要綱案を公表しています。

その後、与党は2007年3月27日、更なる修正案を提出し、4月13日衆議院通過、5月14日参議院可決、成立となりました。

同法は広く国民的論議がつくされることなく、重大な問題点が解消されないまま成立したものであり、施行までに抜本的な見直しが望まれます。

日弁連の意見

  • 憲法改正手続法成立についての会長声明(2007年5月14日)
  • 憲法改正手続に関する与党案・民主党案に関する意見書(憲法改正の発議のための国会法の一部改正について)(2006年12月1日)

    →要旨

    はじめに
    当連合会は,与党案・民主党案の国民投票に関する手続についての問題点を指摘する意見書をすでに理事会にて採択し,公表したが,両案の国会法の一部改正に関する点についても,以下に述べるとおり,看過することが出来ない重要な問題点が存することから,本意見書において,その問題点を指摘するものである。

    1. 憲法改正案の発議要件等について
       法案は,議員が憲法改正案原案を発案する要件として,衆議院においては議員100人以上,参議院においては議員50人以上の賛成を要するとするとする点は,おおむね妥当であると思われるが,少数意見も十分尊重しながら慎重な審議がなされるべきことから,両案が修正の動議についても同様としているのは要件が加重にすぎると考えられ,この点は大幅に緩和されるべきである。
    2. 憲法審査会の設置・権限について
        法案は,「憲法調査会」を「憲法審査会」と改め,両院に日本国憲法及びそれに密接に関連する基本法制の広範かつ総合的な調査をする権限,憲法改正原案を審査し提出する権限,日本国憲法の改正手続に係る法律案等を審査し提出する権限を有する常設の機関としての「憲法審査会」を設置することを提案している。
        しかし,「日本国憲法について広範かつ総合的な調査を行う」ことを目的とした調査会を憲法改正原案を提出する権限をも有する憲法審査会に改めること,硬性憲法の下で常設の機関としての憲法審査会を設置することが憲法の構造に適合するのか疑問であることから,問題がある。
    3. 両院協議会について
        憲法改正案について両議院の意見が異なった場合に両院協議会を開くことは,両院の独立性(憲法96条は,憲法の改正は「各議院」の議員の3分の2以上の賛成で発議するとされている)を害することにならないか疑問があり,より慎重な検討を要する。
    4. 合同審査会について
        憲法審査会を設置したうえ,さらに,各議院の憲法審査会の合同審査会を開いてまで調整を図ろうとすることは,各議院の独立性を尊重しようとする憲法の趣旨に反することにならないか疑問がある。
    5. 公聴会の開催について
        憲法改正案の審議については,公聴会の開催など国民に対する情報提供及び国民の意見を反映する場を設けることが検討されるべきである。
                                       
  • 憲法改正手続に関する与党案・民主党案に関する意見書 (2006年8月22日 )

    →要旨

    この時期に、憲法改正を目的とした手続法を制定することについても議論が存するが、現在、提出されている与党案・民主党案にはその内容にも問題がある。

    1. 投票方式及び発議方式について
      条文ごと(さらに場合によっては項目ごと)に投票する個別投票を原則とし、複数条項を一括して投票することは、これらを一括で投票しなければ条項同士が相矛盾し、整合性を欠くことが明らかである場合に限定されるべきである。
    2. 公務員・教育者に対する運動規制について
      裁判官等についての全面的な運動禁止・公務員・教育者について「地位利用」した運動の規制をすることは、公務員・教育者の自由な活動・運動を規制し、萎縮させるもので反対である。
    3. 組織的多数人買収・利害誘導罪の設置について
      憲法改正のための活動について買収や利害誘導などがなされるかも検討されるべきであり、また、不明確な要件の下による規制は罪刑法定主義にも反する。
    4. メディア規制の削除と積極的な情報提供について
      (1)メディア規制の削除について
      反対の結果、メディア規制は削除された(評価)。
      (2)広報協議会について
      賛成意見・反対意見が公平に周知・広報されるために、協議会の委員の構成も平等にするとともに、議員以外の外部委員の選任も検討されるべきである。
      (3)ラジオ、テレビ、新聞の利用について
      賛成意見・反対意見の政党等が、公平・平等にラジオ・テレビ・新聞を利用でき、政党等以外の団体・市民も利用できる工夫を検討すべきである。
      (4)投票日直前の放送規制について
      反対である。
    5. 発議後投票までの期間について
      少なくとも1年以上とすべきである。
    6. 最低投票率について
      最低投票率と絶対投票率を併用することが望ましいが、少なくとも、投票権者の3分の2以上の最低投票率を定めるべきである。
    7. 過半数について
      憲法改正には少なくとも投票総数の過半数が必要とするべきである。
    8. 投票用紙の記載方法について
      改正に賛成する者だけが○を書く投票方法が正当である。
    9. 投票年齢について
      18歳以上の者に投票権を認めるべきである。
    10. 国民投票無効訴訟について
      提訴期間を30日とするのは短かすぎ、管轄裁判所を東京高等裁判所のみに限定するのも問題である。無効訴訟を提起できる場合、国民投票結果の確定時期については、より慎重な検討が必要である。

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