日弁連が取り組む重要課題
取調べの可視化(取調べの全過程の録画)実現

取調べの可視化(取調べの全過程の録画)実現

現在、被疑者の取調べは「密室」で行われています

日本の刑事司法制度においては、捜査段階における被疑者の取調べは、弁護士の立会いを排除し、外部からの連絡を遮断されたいわゆる「密室」において行われています。このため、捜査官が供述者を威圧したり、利益誘導したりといった違法・不当な取調べが行われることがあります。その結果、供述者が意に反する供述を強いられたり、供述と食い違う調書が作成されたり、その精神や健康を害されるといったことが少なくありません。

「裁判の長期化」や「冤罪」の原因となっています

そのうえ、公判において、供述者が「脅されて調書に署名させられた」、「言ってもいないことを調書に書かれた」と主張しても、取調べ状況を客観的に証明する手段に乏しいため、弁護人・検察官双方の主張が不毛な水掛け論に終始することが多く、裁判の長期化や冤罪の深刻な原因となっています。

最近でも、

  1. 被告人12名への無罪判決の中で「警察による押し付けや誘導のような、追及的・強圧的な取調べがあったことが強く疑われ、自白の信用性は認められない」と指摘された鹿児島選挙違反事件(志布志事件 約3年半の間に審理回数54回 無罪確定)
  2. 逮捕当初は否認したものの、強圧的な取調べで虚偽自白がなされた結果実刑判決が確定したが、服役後に真犯人が現れたことで元被告人の無実が明らかになった富山県下での誤認逮捕事件(氷見事件 再審無罪確定)
  3. 死刑を求刑された被告人への無罪判決の中で、自白獲得を目的とした一日10時間に及ぶ違法な長時間の取調べが、17日間続いたことが指摘された佐賀・北方事件(無罪確定)

など、裁判が長期化した事例や違法・不当な取調べによる冤罪事例が多く発生しています。

取調べの全過程を録画(可視化)すべきです

取調室の中で何が行われたのかについて、はっきりした分かりやすい証拠を用意することはきわめて簡単です。取調べの最初から最後まで (取調べの全過程) を録画(可視化)しておけばよいのです。そうすれば、被告人と捜査官の言い分が違っても、録画したものを再生すれば容易に適正な判定を下すことができるでしょう。これは誰でも思いつくことです。

裁判員制度成功のためにも取調べの可視化が必要です

裁判員制度が2009年5月から始まっています。たとえば、取調べの可視化(取調べの全過程の録画)をしないまま、市民が裁判に参加する裁判員制度が始まった場合には、裁判員となった多くの市民が、これまでと同様の不毛な水掛け論に延々と付き合うことは不可能です。取調べの全過程の録画が認められれば、取調べの様子を事後に検証することが容易になり、裁判員も判断しやすくなります。

欧米諸国だけでなく、韓国、香港、台湾、モンゴルなどでも導入されています

今日、イギリスやアメリカのかなりの州のほか、オーストラリア、韓国、香港、台湾、モンゴルなどでも、取調べの録画や録音を義務付ける改革が既に行われています。

また、国連の国際人権(自由権)規約委員会は、日本における被疑者取調べ制度の問題点を特に指摘して、被疑者への取調べが厳格に監視され、電気的手段により記録されるよう勧告しています。

取調べの可視化の「試験的実施」を提案しています

私たちは、いまこそ、取調べの可視化を実現して、日本の刑事司法制度を文明国の名に恥じないものにすべきと考えます。そのための第一歩として、裁判員裁判対象事件・少年事件などにおいて取調べの可視化(取調べの全過程の録画)を試験的に実施し、その実施によって問題が生じるか否か、問題が生じた場合の対策について検証することを提案しています。

なお、以下に述べる検察庁や警察庁での一部録画の試行は、日弁連が求めている取調べの可視化(取調べの全過程の録画)とは、全く異なるものです。あくまで、全過程の録画が必要であり、重要なのです。

検察庁による取調べの一部録画・録音

従来、検察庁は、取調べの録画・録音は取調べの機能を阻害するなどとして、これを極めて否定的にとらえていました。その検察庁も、裁判員裁判で充実した迅速な裁判を実現するためには、そのような試行が必要不可欠であると判断し、2006年5月、「裁判員裁判対象事件に関し、立証責任を有する検察官の判断と責任において、任意性の効果的・効率的な立証のため必要性が認められる事件について、取調べの機能を損なわない範囲内で、検察官による被疑者の取調べのうち相当と認められる部分の録音・録画を行うことについて、試行することとした」と発表しました。これは検察官の裁量によって、検察官による取調べの一部のみを録画・録音するというものです。

この試行を経て、 現在検察庁は、全国の地方検察庁で、原則として自白調書を証拠請求する裁判員裁判対象事件の全件で、取調べの一部録画・録音を行っています。

警察庁による取調べの一部録画・録音の試行

こうした検察庁の試行の影響も受けて、警察庁は2008年9月から警視庁、大阪府警、神奈川県警、埼玉県警、千葉県警など、大規模警察本部の警察署において、取調べの一部を録画・録音する試行を始めました。この試行も裁判員裁判対象事件の中から警察官の裁量によって、警察官による取調べの一部を録画・録音するというものです。

現在警察庁は、裁判員裁判対象事件であり、かつ被疑者が自白している事件について、全国の警察本部において取調べの一部録画・録音を試行しています。

取調べの可視化の意義と一部録画・録音の問題点

取調べの可視化(取調べの全過程の録画)の本来の意義は、捜査過程を透明化し改革するところにあります。それは、違法・不当な取調べを著しく減少させて取調べの適正化をもたらし、また、取調べの状況を直接に客観化し、自白の任意性立証を容易にする(もしくは、任意性の争いを消滅させる)という効果を持つものです。

しかし、現在検察庁や警察庁が実施しているように、取調べの一部のみを、検察官や警察官の裁量によって録画・録音するだけでは、これらの効果は生じません。かえって、取調べの一部だけでは、捜査側に都合の良い部分だけが録画・録音されかねず、取調べの実態の評価を誤らせる危険があります。

検察官による取調べ と警察官による取調べの最初から最後まで録画・録音する取調べの可視化(取調べの全過程の録画)の実現が、是非とも必要なのです。

所管委員会

意見書、会長声明等

総会決議、人権大会宣言・決議

これまで開催したイベント

パンフレット等

被疑者ノート(取調べの記録)の活用について(2009年4月更新)

取調べの可視化申入書(モデル案)の活用について(2009年4月更新)

取調べ一部録画事案弁護活動マニュアル(2009年4月掲載)

取調べ一部録画DVD他についての類型証拠開示請求書式

なぜ無実の人が自白するのか?−講演録−

本公演録は、なぜ取調べの可視化が必要なのか、なぜ取調べの可視化が世界の潮流になっているのかということについて、様々な角度から答えを用意しています。取調べの可視化実現に向けて、必読の書となることでしょう。ぜひご一読ください!!

→ 下記よりPDFデータのダウンロードができます。

PDF なぜ無実の人が自白するのか?(PDF形式・2.6MB)

主な内容
→なぜ、無実の人が自白するのか?−アメリカの虚偽自白125事例が語る真実
→イリノイ州におけるえん罪調査と取調べの可視化の状況について
→名張毒ぶどう酒事件における虚偽自白とドリズィン教授の法廷意見書について

冊子での購入を希望する場合

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