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知って得する!法律活用術

ここがポイント!初めての店舗賃貸借契約

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はじめに

みなさん、こんにちは!ひまわり中小企業センターです。私たちは、中小企業のみなさまにとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるよう日本弁護士連合会が設置したセンターで、みなさま向けの相談窓口(ひまわりほっとダイヤル)等を運営しています。

今回から6回にわたり、創業者が、事業を立ち上げて軌道に乗せるまでのストーリーをもとに、それぞれの場面で直面する、数々の法律問題やその解決方法について、それぞれの分野で専門的な知識をもつ弁護士が解説してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

第1回目は、「ここがポイント!初めての店舗賃貸借契約」と題し、「ココだけは知っておきたい」店舗賃貸借契約のポイントについてお伝えします。

創業ストーリー(公子さんの奮闘)

まずは、今回のストーリーの主役「公子(こうこ)さん」をご紹介します。

公子さんは、専門学校で調理師免許を取得後、飲食店創業を夢に、国内有名店で修業しながら腕を磨き、創業資金もコツコツと貯めてきました。飲食業界で経験を積むこと5年。調理、接客から資金管理等の一連の業務を経験し、いよいよ満を持して、有機野菜を使った安全・安心・ヘルシーな食事と国産ワイン、ケーキを提供する洋風カフェ・レストランの創業を目指すべく、一歩を踏み出します。

最初に向かったのは不動産屋さん。期待を胸に、未来の店舗を想像しながら、物件情報を検索する公子さん。

ここは立地も広さもちょうどいいなぁ。あ、居抜き物件もある。すぐに他の人の申込みが入りそうだし、早く契約しないと!
マンションの賃貸借契約はしたことあるし、契約条件は後で確認すればいいや。この物件に決めた!

公子さん、ちょっと待って!!
このまま契約したら、あとあと大変なことになるかもしれませんよ!

創業時にかかる経費

飲食店を創業する際には、厨房機器などの設備取得費、内装費、食材仕入れや人件費等の運転資金のほか、店舗を借りるために以下のような費用がかかります(注)。
(注)これ以外にも、店舗を借りる際には、礼金や仲介手数料等がかかることがあります。

・敷金、保証金

借主の賃料その他の債務を担保する目的で交付されるお金です。賃料の6~10か月程度に設定されることが一般的です。

敷金、保証金から差し引くべき借主の債務がなければ、全額が借主に返還されるべきものですが、「保証金の償却」が発生する物件もあります。例えば、「保証金の償却:年3%」、「解約時償却1か月」等の条件が設定されている場合には、借主の債務がなくても保証金が目減りすることになります。償却の条件を外してもらえないか、交渉することも検討してください。

・造作(内装)譲渡料

居抜き物件(前テナントが使用していた内装の造作や設備・什器等が残っている物件)の内装等を、前テナントのオーナーから購入する際の費用です。

飲食店のオープンから退去までのサイクルが早まっている近年、少しでも低コスト・短工期で創業したい人が増え、居抜き物件の人気が高まっています。もっとも、居抜き物件の場合、新築やスケルトン物件(床・壁・天井・内装等が何も施工されていない、建物の躯体だけの物件)と違って、内外装や設備機器を自由に選べないという自由度の低さや、内外装や設備機器が中古のため耐用年数が短く、故障のリスクが高まる等のデメリットもあります。

居抜き物件を内見する場合には、内装業者や厨房設備業者にも同行してもらい、修繕費用等がどの程度かかりそうか、事前に見積もっておくとよいでしょう。

知って得する豆知識 物件情報の取得方法 
公子さんは、不動産屋さんで物件情報を探していましたね。不動産屋さんのほかにも、商工会(地元を熟知した経営指導員がいます)や商工会議所、日々店舗に出入りしている飲食関連業者、内装業者、設計事務所、建築メーカー等にも、優良物件の情報が水面下で出回っている可能性があります。ご自身の人脈で心当たりがあれば、どんどんあたってみてください。

店舗賃借中の条件

夏のある日。夕立が降ってきたと思ったら、店舗天井から雨漏りがしてきた…。冬のある日。窓の建てつけが悪くて、冷たいすきま風が入ってくる…。これらの物件の不具合は、大家さんの費用で直してもらえるのでしょうか。

一般に、大家と賃借人の修繕義務の範囲については、建物の改造や造作等の大修繕は大家が、小修繕は賃借人が修繕義務を負うとされています。賃借人が負担すべき修繕範囲はどこまでか、賃貸借契約書に定められていますので、今後見込んでおくべき修繕費用も想定しておきましょう。 

そのほか、看板の設置許可の要否や、営業時間の制限の有無、ゴミ捨てや清掃の付加サービスへの加入が条件とされるかどうか等も、営業戦略や資金繰りに密接にかかわりますので要チェックです。

退去時の条件

店舗経営には万が一の事態も起こり得ます。退去時に「知らなかった…」ということにならないよう、退去時の条件も確認しておきましょう。

・原状回復費用

一般に、賃貸借契約書では、退去時にスケルトンにしなければならないという条件になっていることが多いでしょう。仮に、居抜き物件で内装等を前テナントのオーナーから購入した場合でも、退去時のスケルトン費用は賃借人が負担しなければなりません。

また、店舗用物件の場合は、居住用物件の場合よりも、賃借人の保護を目的とした判例法理の適用が緩くなる傾向にあります。例えば、居住用物件の場合、賃借人は通常損耗(通常使用している時に発生する消耗のこと)を回復させる義務はないと解されていますが、店舗用物件については、通常損耗費(クリーニング費用やクロスの張替費用等)まで賃借人に負担させる特約も有効とする判例も示されています(東京高裁平成12年12月27日判決)。

・有益費償還請求/造作買取請求

民法や借地借家法には、賃借人が物件に造作等を取りつけて、その物件の価値を高めた場合には、物件の価値上昇分や造作費用を請求できる定めがあります(民法608条1項:有益費償還請求権、借地借家法33条1項:造作買取請求(注) )。

もっとも、賃貸借契約では、これらの定めを「排除する」特約が入っていることが多いため、実際に賃借人から大家に請求できる場面は少ないと思われます。契約前に確認しておきましょう。
(注)造作買取請求の対象は、賃貸人の同意を得て付加した造作に限られます。

知って得する豆知識 「定期建物賃貸借契約」って? 
賃貸借契約には土地建物賃貸借契約と定期建物賃貸借契約(定借)があります。定借においては、契約更新ができず、物件の使用継続を希望する場合は、再契約をする必要があります。また、定借の契約期間中は、原則として、大家・賃借人ともに解約をすることができません。解約可能の特約を付す場合には、同時に、解約違約金の条件が付されることが通常です。さらに、定借において賃料の改定に関する特約がある場合には、賃料増減請求(借地借家法32条)もできません。
このように、定借は、賃借人にとって、地位が不安定・不利な条件になることが多くありますので、特に契約条件に注意しましょう。

最後に

今回は、「ココだけは知っておきたい」店舗賃貸借契約のポイントをお伝えしましたが、みなさんが知って得する法律活用術は、まだまだたくさんあります。

全国の弁護士会では、弁護士が面談で相談(原則無料)をお受けする窓口「ひまわりほっとダイヤル」を開設しています。今回の賃貸借契約書や契約書一般に関するご相談はもちろん、経営に関する悩みは何でも相談してください。 

安易な契約を無事に回避できた公子さん、次回は初めてのホームページ作成時の法的ポイントについてご説明します!お楽しみに。

【執筆者について】
日本弁護士連合会 ひまわり中小企業センター

当センターは、中小企業のみなさまにとって、弁護士がより身近で頼りがいのある存在となれるよう日本弁護士連合会が設置したセンターで、みなさま向けの相談窓口等を運営しています。各回の執筆は以下の弁護士が担当いたします。
第1回 平田 えり(福岡県弁護士会) 起業家応援マガジンVOL.79(1月25日配信)
第2回 横田  亮(岡山弁護士会)  起業家応援マガジンVOL.80(2月22日配信)
第3回 杉浦 智彦(神奈川県弁護士会)起業家応援マガジンVOL.81(3月22日配信)
第4回 大宅 達郎(東京弁護士会) 起業家応援マガジンVOL.82(4月26日配信)
第5回 久野  実(愛知県弁護士会)  起業家応援マガジンVOL.83(5月24日配信)
第6回 樽本  哲(第一東京弁護士会)

「知って得する!」法律活用術 トップ第2回 ここがポイント!初めてのホームページ作成

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