目的別メニュー

トップページ > 事業者のための法律相談 > 第一回~中小企業・小規模事業者によくある法律問題は?~

事業者のための法律相談

第一回 ~中小企業・小規模事業者によくある法律問題は?~

※本記事はPDFでもご覧になれます PDF版はこちら

当社は、私と妻のほか従業員3名の会社です。幸いにして、これまで大したトラブルに巻き込まれたことはなく、当社のような小規模の会社で何か弁護士に相談しないといけないような法律問題があるのか、あまりイメージが湧かないのですが、中小企業・小規模事業者から弁護士に寄せられる法律相談にはどのようなものが多いのでしょうか。?

中小企業・小規模事業者から寄せられる法律相談で多いものとしては、①契約・取引に関するトラブル、②債権回収・債権保全、③事業再建・倒産、④損害賠償請求、⑤雇用・労務、⑥クレーム対策などがあります。

1 はじめに

日本弁護士連合会(以下「日弁連」といいます。)は、全国の弁護士会と協働して、中小企業・小規模事業者向けに、電話又はウェブサイトによる弁護士相談受付システムである「ひまわりほっとダイヤル」を運営しています。ひまわりほっとダイヤルには、主に小規模事業者の方々から、年間5,000件強の相談が寄せられています。

多くの中小企業・小規模事業者の方々は、裁判になって訴えられたという場面以外に、弁護士に相談する場面というのはなかなか想像できないかもしれません。しかし、事業を行う上では様々な法律問題が起こり得ます。実際にどのような法律相談があるのかを予め知っておくことは、トラブル予防の観点から大いに役に立つと考えられます。 ひまわりほっとダイヤルに寄せられる相談で多いものとしては、①契約・取引に関するトラブル、②債権回収・債権保全、③事業再建・倒産、④損害賠償請求、⑤雇用・労務、⑥クレーム対策などがあります。相談の具体的なイメージが湧くように、以下では実際に寄せられた相談内容に基づく事例をご紹介します。

2 よくある相談事例

(1)契約・取引(リース契約のトラブル)

小売業を営んでいる小規模事業者A社は、B社から電話機器の周辺ネットワーク関連機材等についての訪問営業を突然受け、内容をよく理解しない状態のまま言いくるめられ、毎月8万円ずつ期間5年、総額480万円のリース契約を締結してしまった。冷静になって考えると、A社の業務にはこれほど高度な電話機器等は必要ないので解約したい旨をすぐに伝えたところ、「解約はできない。もし中途解約するのであれば、期間分のリース料全額を支払わなければならない。」と言われた。

契約締結までの過程に問題があるこのようなリース契約トラブルの相談事例は、実はよくあります。もしA社が一般消費者であれば、特定商取引法上の訪問販売にあたるものとして、クーリング・オフ制度の適用により一定期間内は契約を解除することができますが、事業者間の取引には原則として特定商取引法が適用されません。そのため、実態は一般消費者に近いような小規模事業者を狙った詐欺的な商法がよくみられます。
ただ、事業者間の取引であっても、購入商品や役務(サービス)が、事業用というよりも主として個人用・家庭用に使用するためのものであった場合は、原則として特定商取引法が適用されます。また、そのような場合には該当せず特定商取引法の適用がない場合であっても、民法の規定に基づいて、錯誤により契約が無効である、詐欺なので取り消す、公序良俗に違反するため無効である、などといった主張ができる可能性もあります。弁護士が間に入ることで解決することがありますので、まずは弁護士に相談してみましょう。

(2)契約・取引(取引に関するトラブル)

中小企業A社は、B社からの依頼を受けて装置の製作・据付工事を行ったが、もともとの納期が厳しかったことや、B社から必要な協力が得られなかったこと等により、納期より2ヶ月ほど遅れてしまった。また、できあがった装置は、B社に当初説明していた数値までの性能は有しなかった(なお、B社に渡した仕様書にも、参考程度の軽い気持ちで数値を記載していた。)。A社はできる限りの補修等は行い、B社は現在もその装置を使用しているので業務上特段支障はでていないはずであるが、製作請負代金約3,500万円のうちの残代金約1,300万円を払ってくれない。

A社としては残代金全額を支払って欲しいところですが、B社としては、契約どおりの装置が納入されていない、納期遅れにより業務に支障が出たのでその分の損害を補償してほしいなどの主張もあるでしょう。このB社の主張に対しては、A社としては、仕様書に記載した数値はあくまで参考値で現在問題なく使えているのならばよいではないか、納期遅れはB社から必要な協力がなかったことにも原因がある、との反論がありえます。このように、お互いに言い分があるために話し合いが解決に向けて進まないケースがよく見られ、このような場合には弁護士等の専門家が入って争いのある点を整理し、判断していくことになります。

また、契約を締結する前に弁護士に相談し、仕様書に記載どおりの数値を保証するのかあくまでも参考値なのかや、納期どおりに引き渡すための条件等につき相手方と擦り合わせておけば、トラブルを未然に防ぐことができた可能性もあります。

(3)債権回収

小規模事業者A社は、B社の依頼により機器の設置工事をしたが、B社がその代金約30万円を支払わない。B社に対する工事は2回目であるが、B社は、「今回の工事は1回目の工事の出来が悪かったためになされたものであるから支払う必要はない。」として支払を拒絶している。なお、機器の不都合は、機器を扱っているメーカーからは設置工事の問題ではなく、B社の使用上の問題が原因であるとの回答を得ている。

債権回収は、相手方が支払義務を認めている場合は、あとは相手方に支払能力があるかの問題になりますが、上記のようにそもそも相手方が支払義務に異議を述べるケースもあります。債権回収の最終手段は訴訟ですが、訴訟をする場合には一定の費用がかかり、また、相手方の支払能力の関係で必ずしも債権回収できるとは限りません。債権回収はどうしても費用対効果を考えざるを得ないケースが多く、できるだけ債権回収トラブルが起きないよう予防に努めることが重要です。

(4)事業再建・倒産

当社は、卸売業を行っている。先月末に当社の社長が倒れて現在意識不明の状態である。社長が資金繰りを担当していたこともあり、資金が回らず今月末にも不渡りがでそうな状況である。会社は、社長が代表取締役、専務(社長の義妹)と常務(社長の娘)が取締役として登記されているほか、3名の従業員がいる。金融機関から6千万円、取引先から1億2千万円ほどの借入がある。今後どうすればよいかについて相談したい。

事業を運営していると、売上げの減少や資金繰りの悪化など様々な要因で経営が窮境に陥り、事業を再建して継続すべきか、あるいは会社を閉じるべきかの岐路に立たされることがあります。上記は社長が倒れるという突然の事態によるものですが、まずは会社の状況を把握した上で、事業継続の見込みはありそうか、継続するのであれば誰が経営するのか、借入は一時返済猶予を受ければ将来的に返済可能かなどを検討した上で方針を決め、新たな代表取締役の選任など必要な会社法上の手続も経た上で、方針に従って進めていくことになります。

経営が窮境に陥った場合、早めに対応すればその分事業継続の可能性も高まりますので、早めに適切な専門家に相談しましょう。どの専門家が適切なのかが自分ではよくわからない場合、まずは弁護士に相談すれば、必要に応じて適切な専門家の紹介や協力を得ることができます。

(5)損害賠償請求

当社(A社)は高齢者の介護施設を運営している。かつて当社で事業責任者であった者が独立して同業の会社B社を設立した。B社は当社従業員の引抜きを行ったほか、当社の施設利用者への営業活動をしており、当社の事業に多大な支障が生じている。損害賠償請求等できないか。

事業を行っていると、取引先・従業員の契約違反や第三者の違法行為などにより事業上の損害を被る場合があり、損害を回復するために損害賠償請求をしたいという場面が出てきます。なお、上記の事例では、確かにA社の事業に支障が生じており許しがたいように思われますが、元従業員が退職後に競業事業を立ち上げること自体は、元従業員が有効な競業避止義務を負っていない限り禁止されるものではなく、また、従業員の引抜きや顧客への営業活動が許されないものであるかどうかについても、経緯や態様その他の状況等によって判断されることになります。

(6)雇用・労務

業務態度に問題のある従業員を解雇した。しばらくして復職を求められたが、これを拒絶したところ、解決金として700万円を請求されている。

従業員に問題があると思われる場合であっても、解雇はそれほど簡単にできるものではありません。また、解雇が無効とされてしまうと、まだ会社の従業員であることになり、原則として解雇無効とされるまでの間の給料も支払わなければならないことになります。近時はインターネットの発達などにより、労働法に関する知識を得ることは容易になっており、労働法を遵守しないことにより生じる不当解雇や未払残業代請求などの雇用・労務に関する紛争は増加傾向にあります。

(7)クレーム対策

当社は、インターネット販売も行っている小売店である。地方のお客様(個人)からクレームを受けている。注文を受けてお客様から指定された配達希望日に合わせて発送したが、当店のミスで品違いの商品を送ってしまった。正しい商品を送り直したが、当初の品違い商品は返品してもらえず、さらに追加の対応をしろと求められ困っている。

もとは当方側の落ち度が原因ではあるものの、それにつけ込まれて過剰な要求を受ける場合があります。このような場合、そもそも法的な義務として対応しなければならない範囲がわかっていないと、相手に要求されるままズルズルと対応してしまい、過剰な約束をさせられてしまいかねません。
なお、もしあまりにも執拗に過剰な要求をされる場合には、対応窓口を弁護士にすることで過剰な要求が止む場合もあります。

3 最後に

今回は、より具体的にイメージをもっていただくために、よくある法律相談事例を少し広めに紹介いたしました。次回以降は、もう少し具体的にテーマを絞った上で、それぞれのテーマにつき詳しい弁護士が解説して参ります。どうぞよろしくお願いいたします。

≪執筆者紹介≫ 弁護士 土森 俊秀(東京弁護士会)
 日本弁護士連合会ひまわり中小企業センター事務局次長
 中小企業の海外展開業務の法的支援に関するワーキンググループ副座長

 

第二回~会社設立時における法律の予備知識~|
事業者のための法律相談 トップ

▲ページの先頭へ戻る