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中小企業のための ほっと通信

国際倒産 ―債権回収の対策―〈1〉

弁護士 平良 夏紀

■プロフィール
平良 夏紀
日弁連中小企業法律支援センター 幹事(兵庫県弁護士会 所属)

 日本経済の国際化に伴い、海外に進出する中小企業が急増しています。海外進出には、外国の個人や法人と取引を行う場合から、外国に子会社や支店を設立する場合まで、様々な形態がありますが、海外進出をした中小企業は、たとえば外国の取引先が現地で法的倒産手続を開始したり、事実上倒産状態になるという事態を経験することも少なくはないと思います。
 本稿では、日本の中小企業が債権債務関係を有している外国の個人や法人が現地で法的倒産手続を開始した場合や、事実上倒産状態になった場合に想定される国際倒産の特有の事態および予防策を2回に分けて、簡単にご紹介します。


外国の取引先が現地で法的倒産手続きを開始した場合

 日本を含めたほとんどの国において、法的倒産手続は、その個人または法人の住所地または所在地等を管轄する国の裁判所で申立をすることができます。
 日本で法的倒産手続が開始された場合、債権者は、遅くとも法的倒産手続の開始の時点で通知を受け、手続に参加していくことになります。しかし、どの国でも債権者にこのような手続が保障されているとは限りません。また、国際的な経済活動を行う債務者は、複数の国において法的倒産手続の申立を行うこともあり、それぞれの国の手続の整合性が問題になることもあります。
 こうした事態を想定し、日本には「外国倒産処理手続の承認援助に関する法律」(以下、「外国倒産承認援助法」※)という法律が存在します。国際的な経済活動を行う債務者に対して外国で法的倒産手続が申立または開始された場合には、管財人または債務者は、外国倒産承認援助法に基づく申立を行うことにより、当該外国倒産手続の効力を日本に及ぼし、国際的に整合のとれた清算または再建手続を図ることができます(外国倒産承認援助法1条)。
 しかし、外国で法的倒産手続が申立または開始された場合は、必ず外国倒産承認援助法に基づく申立がされるとは限りません。また、特に、直接契約関係等がない(たとえば不法行為等による)債務者が外国で法的倒産手続を行う場合には、日本の債権者は債権者として認識されないまま手続が結了してしまい、債権回収が不可能となってしまう事態も考えられます。

 このような事態を避けるためには、外国の債務者による債務の履行が遅れている場合等には、こまめに債務者の経済状況を確認することが必須です。また、状況によっては、債務者の住所地または所在地にて債務者に対する法的手続が開始されていないかを確認し、開始されている場合には速やかに手続に参加する必要があります。なお、外国での法的倒産手続の開始の有無は、その国の弁護士等を通してしか確認できない場合が多いので、早めに弁護士にご相談されることをお勧めします。

※外国倒産法は、UNCITRALのモデル法に則り制定されています。日本以外では、オーストラリア、カナダ、コロンビア、エリトリア、ギリシャ、モーリシャス、メキシコ、モンテネグロ、ニュージーランド、ポーランド、韓国、ルーマニア、セルビア、スロベニア、南アフリカ、ウガンダ、イギリス、アメリカ合衆国がUNCITRALのモデル法を採用しています (http://www.uncitral.org/uncitral/en/uncitral_texts/insolvency/1997Model_status.html

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出典:帝国データバンクの情報誌『日刊 帝国ニュース』

参考ページ> 企業再生・清算

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