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ひまわりほっと法律相談室 第12回

踏み出しましょう!事業承継対策

弁護士 幸村 俊哉

■プロフィール
幸村 俊哉
日弁連中小企業法律支援センター 事務局次長(第二東京弁護士会 所属)
1 はじめに

 「事業承継対策」と聞くと「またか」と思われる方が多いと思います。
平成17年10月に事業承継協議会が発足し、その後、全国各地でセミナーや研修会も開かれ事業承継の専門家の育成もされましたが、実際の事業承継の対策はまだまだというのが私の感想です。
 実際に経営承継円滑化法の民法特例の確認は34件、金融支援の認定は45件しかありません。事業承継税制の事前確認は2103件ありますが、贈与認定は96件、相続認定は297件です(以上いずれも平成23年6月末までの集計)。
 ちょうど本年3月に独立行政法人中小企業基盤整備機構から「事業承継実態調査 報告書」(以下「実態報告書」)が出されました(以下のグラフは同書からの引用)。これは中小企業1万社にアンケートを行い、約3000社から得た回答結果をまとめたものです。当機構のHPからダウンロードできますので、この機会に一度ご覧いただくことをお勧めします。

2 事業承継対策の方法と現状

 事業承継対策の方法としては、一般に①親族内承継②企業内承継③M&Aの3つがあるとされています。実態報告書によると、「明確に決まっていない」先が28.8パーセントもありますが、①の親族内承継に分類される「家族・親族への承継」が40.2パーセント、②の企業内承継に分類される「役員・従業員への承継」が14.3パーセント、③のM&Aに分類される「第三者への承継」が2.6パーセントのようです。ただし、「廃業しようと考えている」も7.8パーセントあり、ちょっと残念な状況もあります。
 このように、事業承継の中心はやはり①の親族内承継です。親族内承継の対策というとすぐに「相続税」の問題が頭に浮かびます。しかし、事業承継は経営を承継することが重要であり、相続税対策で株式を分散させてしまうと後継者が実質的に会社を支配することができず、運営に困難を生じさせてしまいます。少なくとも取締役の選任決議を通せる過半数の株式の議決権を確保したいところで、できれば合併や会社分割などの会社の行く末を決定する重要な決議を通すことができる3分の2以上の議決権を確保したいところです。
 通常はこのような決議をすることはないでしょうが、後述4で記載するような中小企業の存亡をかける危機の場合には必要なこともありますので、可能であれば3分の2以上の議決権を確保したいところです。
③のM&Aの割合は以前に比べれば増えているのでしょうが、やはり少ないのが現状のようです。これは「会社の身売り」というイメージがつきまとうからですが、「第三者への事業引き継ぎ」と考えてこれを伝えて行けば、周囲からも身売りとは思われなくなってゆくものと思われますので、今後はこの方法もより増えてゆくと思われます。
 事業引継ぎについては、全国47都道府県の認定支援機関に「事業引継ぎ相談窓口」が設置されていますので、すでに後継者不在で事業を第三者に引き継ぐことを決めている場合には、相談されるとよいでしょう。詳しくは中小企業庁のHPをご覧ください。

3 事業承継対策をいつから始めるか?

 実態報告書によれば、現在の経営者自身が会社を創設したときの平均年齢は37.6歳、企業を引き継いだときの年齢の平均は41.7歳だそうです。創設・企業引継の全体で「20歳代」が12.6%、「30歳代」が29.5%もいます。
 自分が創業したり、事業を承継した年齢を考えれば、「早すぎる」ということはないはずです。ただ、ここが事業承継の難しいところで、どうしても「まだまだ」と感じてしまうのでしょうが、後継者候補が30代の半ばになれば十分事業承継の適齢期です。
 事業承継は、経営者の相続(死)を想起させるものですし、経営者が実権を後継者に譲ることですから、経営者自身からはなかなか言い出したくない問題ということは理解できます。でも「10年後、20年後の自分と会社はどうなっているか?」を考えれば、自分の会社についても事業承継対策を始めなければならないことは自ずとわかってくると思います。

創業時、企業を引き継いだ時の年齢

4 ピンチはチャンス

 株価が低ければ事業承継のよいタイミング
 本年3月11日に発生した東日本大震災や福島原子力発電所の被災をきっかけにエネルギー問題が生じました。世界に目を向けるとギリシャやアメリカの財政問題を発端とした円高が進んでおります。このように中小企業はさまざまな危機にさらされています。この危機によって業績が悪化している中小企業も多いはずです。すでに震災の影響で倒産している企業も出始めていますし、阪神淡路大震災の際の状況を踏まえると震災問題の倒産への波及は1年後くらいがピークとの予想もあるので、これからが心配です。また、円高が原因で倒産した企業も増えているようです。
 事業承継協議会が発足した平成17年頃はバブル崩壊からの立ち直りの時期で比較的中小企業の業績も安定していたようで、評価をすれば高額になってしまう株価の問題の方にむしろ注目が集まりました。しかし、前述のような現在の状況を踏まえると中小企業の株価は以前よりも低額になっている可能性が高く、事業承継の際にネックになる税金問題は比較的小さくなっている可能性があります。ぜひ、ピンチをチャンスに変えて事業承継をしていただきたいと思います。
 特に、過剰債務を抱え、資金繰りも危機的状況にある中小企業の場合には、「民事再生」とセットで事業承継を実行することが考えられます。実際、この方法で会社の過剰債務をカットした上で子供さんに事業承継しているケースがありますし、私も実現させたことがあります。勇気のいる決断ですが破産や廃業させるよりは、よい決断です。このような場合に前述2で記載したように株式の議決権の3分の2以上を確保しているとスムーズに解決できることがあります。
 もし自分の会社がこのような状況にあると思われる場合には、事業再生と事業承継を扱っている弁護士に相談するとよいでしょう。

5 最後に

 実態報告書を見ると、他社の事業承継の状況がよくわかりますし、自分が創業・事業承継を受けた時のことも思い出されると思います。
 弁護士は事業承継について総合的に考えて相談に応じます。ひまわりほっとダイヤル(0570-001-240おおいちゅーしょー)では地元の弁護士が対応しておりますので、ぜひこの機会に電話をかけ、事業承継について一歩を踏み出してください。

参考ページ> 事業承継

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