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ひまわりほっと法律相談室 第5回

「商標」について

弁護士 中井 陽子

■プロフィール
中井 陽子 
日弁連中小企業法律支援センター 事務局次長(東京弁護士会 所属)

1 商標とは

  商標法において、「商標」とは、文字、図形、記号もしくは立体的形状、もしくはこれらの結合またはこれらの結合、またはこれらと色彩との結合であって、かつ、①業として商品を生産し、証明し、または譲渡する者がその商品について使用をするもの、あるいは②業として役務を提供し、または証明する者がその役務について使用するもの(①に掲げるものとを除きます)をいいます(第2条第1項)。
  商標は、文字、図形、記号、立体的形状から構成されるもの、これらの文字や図形等を組み合わせたもの、これらと色彩を組み合わせたもので登録することが可能であり、この文字、図形、記号もしくは立体的形状、もしくはこれらの結合またはこれらの結合、またはこれらと色彩との結合のことを「標章」といいますが、この「標章」を商品やサービスに使用したものが「商標」と呼ばれています。
  したがって、「標章」が全く同じであっても、商品やサービスが異なれば同じ標章の「商標」が複数併存することになります。

2 商標の機能

  商標には、①出所表示機能、②品質保証機能、③広告宣伝機能の3つの機能があると言われています。すなわち、①の出所表示機能とは、商標は自己の商品・サービスと他の商品・サービスとを識別する、いわゆる自他識別力があるため、商品・サービスを誰が提供したものかを需要者・取引者に示すことができる機能をいいます。②の品質保証機能は、同一の商標を付した商品・サービスは、一定の品質または質を備えていることを示す機能をいい、③の広告宣伝機能は、商標を広告宣伝に利用することにより、商品・サービスが当該事業者のものであることを需要者・取引者に伝える機能のことをいいます。
  このような機能をもつ商標を活用することにより良質のブランドを形成し、企業の提供する商品・サービスの消費者への訴求力を高め、自己の商品・サービスの需要拡大を図ることが可能になります。

3 登録商標制度について

(1) 登録主義・審査主義
  商標の使用の事実がなくても、出願した上で登録により商標権の成立を認める立場を登録主義といいます。これに対し、商標が現実に使用されているという事実に基づき商標権の成立を認める立場を使用主義といいます。
  わが国の商標法は、登録主義の立場を取っており、使用する意思があれば、使用の事実がなくても、出願に基づく登録により商標権の発生を認めています(商標法第18条第1項)。
  もっとも、商標法には継続して3年間以上使用されていない商標の登録を取り消す審判制度(第50条第1項)も置かれていることに注意が必要です。
  また、特許庁に出願のあった商標について、登録要件を具備しているかどうかを審査官が実体審査すべきことになっていますので(商標法第3章)、わが国の商標法においては、審査主義を採用しています。

(2) 先願主義
  商標法においては、同一または類似の商品・サービスについて使用する同一または類似の商標について出願が競合した場合には、最も先に出願した商標のみが登録されます(第8条第1項)。これを先願主義といいます。
  この先願主義のもとでは、最も早く登録商標を得ようと出願をした者が保護されることになります。

(3) 商標権の存続期間 
  商標権の存続期間は、設定登録の日から10年をもって終了しますが(商標法第19条第1項)、更新登録の申請を行い、所定の登録料を納付すると(商標法第40条第2項)、存続期間をさらに10年間更新することが可能です(商標法第18条第2項)。
  もし、登録商標を存続させる必要があるのであれば、更新登録の申請を商標権の存続期間の満了前6月から満了の日までに行わなければなりません(商標法第20条第2項)。

4 出願から登録まで

(1) 手続の流れ
  商標登録を受けようとする商標、指定商品または役務の区分を決定した上で、出願書類を作成し、これを特許庁に提出します。
  なお、出願に際しては、商標法第5条及び関係法令において求められる事項を記載し、所定の出願登録手数料を納付する必要があります。
  また、出願方法には、書面により手続を行う場合とオンラインによる場合とがあり、いずれの手続を取るかによりその記載方法や手続方法が異なる場合がありますので注意が必要です。
  書面による場合の書式例及びオンラインによる手続並びに手数料については、特許庁のホームページ(http://www.jpo.go.jp/indexj.htm)が参考になります。
  出願するとまず、形式上の要件を備えているか方式審査が行われ、商標登録要件を満たしているかどうかの実体審査がなされます。
  実体審査により、拒絶理由がある場合には、出願人に拒絶理由が通知されます。出願人から補正書、意見書が提出され、最終的に拒絶の理由がないと判断された場合には、商標登録すべき旨の登録査定がなされます。
  登録査定された場合には、出願人は登録査定の謄本の送達があった日から30日以内に所定の登録料を納付しなければなりません。
  この登録料が納付されると、特許庁では商標登録原簿に商標権の設定の登録をし、登録証を交付します。前述したように、この設定の登録により商標権が発生します。
  これに対し、意見書等によっても拒絶理由が解消しない場合には拒絶査定となり、これに不服があるときには、特許庁に対し拒絶査定不服審判を請求することが可能です。

(2) 商標登録の実体的要件
  商標登録出願をすればすべての場合において登録が認められるものではなく、商標登録の実体要件を備えていることが必要です。
  この商標登録の実体的要件は、①自己の業務に係る商品または役務について使用すること(商標法第3条第1項柱書)、②商標法第3条第1項において定める識別性を有さない商標にあたらないこと、③商標法第4条の不登録事由に該当していないことです。

(3) 出願に際して検討すべき事項
ア 商標及び商品・役務の検討
  商標は、商品及び役務に標章を付して使用するものですので、出願に際しては、①出願する「商標」を何にするのか、②いかなる商品・役務に使用するのかを検討する必要があります。
  前述のように商標は、商標は、文字、図形、記号、立体的形状から構成されるもの、これらの文字や図形等を組合わせたもの、これらと色彩を組み合わせたもので登録することが可能ですので、単純に文字のみの商標とするのか、ロゴを商標とするのか、立体的な商標とするのか、さらには、図形、たとえばキャラクターとするのか、などについて検討する必要があります。
  また、商標は、商品、役務に付されるものですので、出願の対象となる商標をどのように使用するのか、事業範囲はどの程度かを把握し、どの商品・役務について商標登録を得ようとするのかを検討する必要もあります。

イ 商品・役務の区分の指定
  前述のように商標を使用する商品又は役務についての検討を踏まえて、さらに実際に出願する商品または役務を特定する必要があります。
  すなわち、商標法上、商標登録出願は、商標の使用する1または2以上の商品または役務を指定して、商標ごとにしなければならないと定められています(商標法第6条第1項)。
  また、商標登録出願に際しては、商品または役務を指定し、区分にしたがって出願しなければならないとされています(商標法第6条第2項)。
  この指定された商品または役務を「指定商品」「指定役務」といいます。
  また「区分」とは、商品または役務を類型別に分けたもので、「第○類」と呼ばれます。
  また、区分数が出願、登録などの際の手数料算定の基準とされていますので、区分数が増えるにつれ、手続に要する費用が増加します。
  したがって、出願に際しては出願を要する商品、役務とともに、コスト面から区分の数についても検討が必要です。

(4) 商標調査の必要性
  商標及びその商標の指定商品または指定役務が決定されれば、商標登録の出願が可能となります。
  もっとも、前述のように、出願のみでも出願手数料がかかり、商標登録出願しても実体登録要件を満たさなければ登録査定されませんので、費用を無駄にしないためにも出願したい商標について登録可能性があるのかどうか、調査する必要があります。
  なお、資金に余裕があれば商標を使用する前に出願をすることが可能ですが、一般的にはある事業に商標をまず使用してから、出願の是非を検討することが多いものと思います。
  その場合に仮に出願しないにしても、使用している商標が他者の有する登録商標と同一又は類似している場合には、商標権侵害にあたり(商標法第37条)、使用している商標の使用が差し止めされたり(商標法第36条)、損害賠償請求を受けたりすることもあります(民法第709条)。
  その意味でも出願をするかどうかを決めていなくても、商標を使用する際には、商標調査の必要性があることにも注意が必要です。

参考ページ> 知的財産制度の活用・模倣品対策

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