日弁連新聞
2007年 10月1日 第405号
テレビ会議システムが全国で利用可能に
業革シンポジウムを中継
10月から、一部の工事未了の場所を除いて、全国の弁護士会でテレビ会議システムが利用可能となる。
同システムは、これまで同時に5か所しか接続することができなかったものが、55か所程度でも同時に結ぶことができるようになるものである。同システムについては、全国の52弁護士会のすべてから参加の申込みをいただいた。
9月11日には全国規模で接続テストが行われ、設置済みの全端末との同時接続が順調に行われた。
このシステムを利用すれば、これまで日弁連や弁連まで来なければ参加できなかった会議等につき、各弁護士会の会館に行くことで参加が可能となる。また、日弁連や各弁護士会で行われる研修等を安価で全国に配信するなどの利用も可能となる。なお、この会議システムは日弁連を介しないで、弁護士会同士を接続することも可能である。
本年10月5日には、札幌で開催される第15回弁護士業務改革シンポジウムの第一分科会「小規模事務所の人事戦略」(10時40分〜16時30分)を、希望する弁護士会に中継。今後ぜひ、このシステムの有用性を体験していただきたい。
弁護士偏在対応パイロット事業
第1号案件を承認
弁護士偏在解消のための経済支援策のパイロット事業(試行)としての第1号案件が9月14日の理事会で承認された。福島地裁いわき支部管内(弁護士1人あたり人口3万人超に該当)にて本年10月開業の新規登録弁護士(現行60期)に対し、独立開業支援として、事務所開設費用および当初の運営費用として350万円を無利子貸付(返済期間5年)する。
新規登録弁護士独立開業支援については、地元弁護士会の技術的支援が日弁連による経済的支援の要件となるが、本件では、福島県弁護士会が支援委員会を作り、個別指導担当弁護士による指導、事件の定期的・継続的な共同相談や共同受任、メーリングリストの活用による相談などの支援体制を組む。
偏在対策パイロット事業については、現在10数件の申請、相談があり、順調な滑り出しである。12月の臨時総会で本格実施承認を目指す。
裁判員マンガ第2弾発行!
事件は「藪の中」、裁判員の判断は?
10月に、裁判員マンガ第2弾が発行される。前作と同じく、原作毛利甚八氏・作画幡地英明氏の本格的ストーリーマンガである。今回は法学部生が主人公で、事件は傷害致死、弁護人は正当防衛を主張するが…。
ゼミの教授も登場して司法改革を解説し、裁判員制度誕生の経緯を語るほか、被害者のためになる償いとは?など、前作と違った切り口も加わっている。
巻末には、選定方法や、裁判員になったら何をするのかを具体的に解説した実践的ガイドもつく。
個人での購入は1部100円、郵送での申込み先は日弁連法制第二課(03−3580−9844)だが、霞が関の弁護士会館地下ブックセンター、全国の政府刊行物サービス・センターでも販売されるほか、弁護士会で販売する所もある。
3月発行の前作は発行部数8万部を超えた。「母校へ贈ろう運動」も引き続き行っているので、ともにぜひご検討願いたい。
「ひまわりサーチ」に決定!
弁護士情報提供サービスの愛称を公募
インターネット上で弁護士を取扱業務などから検索できる「弁護士情報提供サービス」が、11月にスタートする予定。日弁連では、本サービスをより市民に親しんでいただくため、8月9日から愛称を募集していた。
9月7日の締切まで、約1か月間で667件の応募があり、その中から、明るく親しみやすい、弁護士を探すという意味が伝わりやすいなどの理由により、「ひまわりサーチ」が採用された。「ひまわりサーチ」の応募者は3名いたが、賞金の5万円は、厳正な抽選の上、大阪府の宮崎英明氏に贈られることとなった。
愛称は決まったが、本サービスが市民と弁護士との垣根を低くするのに真に役立つよう、まだ登録していない方はぜひご検討願いたい。登録方法の問合せは所属弁護士会まで。
登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)の民間委託について
2008年4月から一部の登記所において、登記簿等の公開に関する事務(乙号事務)を民間委託します。2007年度には、そのための「市場化テスト(民間競争入札)」を実施します。詳細は
法務省ホームページをご覧ください。
ひまわり
「天災は忘れた頃にやってくる」。物理学者、天文学者にして夏目漱石門下の随筆家、俳人でもあった寺田寅彦の言葉とされる▼中越地震は2004年10月23日に発生したが、そのわずか2年9か月後の2007年7月16日に中越沖地震が発生している。「天災は忘れなくてもやってくる」のである▼過去200年の統計によれば、陸上での大地震は20年に一度はやってくるそうだ。ただ、大地震の起きる間隔には疎密があり、1943年から48年までは毎年大地震が発生したが、これらの震災については、戦時中の報道管制と戦後の混乱に紛れてしまったことや、その後は地震活動が低下したため、あまり知られていない事実だという▼自宅が火災に遭う確率よりも大震災に遭う確率の方が高いともいう。21世紀中には南海地震、東南海地震は必ず起こると言ってもいいそうだ▼震災発生の混乱が治まると、境界、倒壊危険建物に対する妨害予防、保険適用問題等の解決が求められる。阪神淡路大震災の時、多くの兵庫県弁護士会員が被災する中で、近隣弁護士会との連携による復興支援の貴重な経験は現在も生きている▼中越地震や中越沖地震における相談弁護士派遣等の復興支援の経験も、全国会員の共有財産としたいものだ。(T・O)
第50回 人権擁護大会・シンポジウム
11月1日・2日 静岡県浜松市
大江健三郎氏の記念講演も
日弁連で最も大きな行事の一つである人権擁護大会が、11月1日と2日に静岡県浜松市で開催される。
今回は記念すべき節目の第50回大会で、1日目は3つのシンポジウムが、2日目の大会では、「原理としての『人間らしさ』」をテーマとする大江健三郎氏の記念講演(午前中)のほか、特別報告や宣言・決議の討議が予定されている。
第一分科会では、9・11以降急速に人権を制約する施策が進められているが、「市民の自由と安全を考える」を主題として憲法や国際人権法上の市民の自由を保障するための方策を探る。
第二分科会では「当番付添人制度の全国実施と全面的な国選付添人制度の実現へ向けて」と題し、弁護士付添人の様々な役割の紹介と当番付添人制度の全国実施の成果と課題を報告し、国選付添人制度の全面的な実現の展望と課題を明らかにする。
第三分科会では「住み続けたいまち・サスティナブルシティへの法的戦略」の主題の下、快適なまちに住むために、世界各国の先進事例と新たな地球環境問題を踏まえて、誰もが快適な生活環境を保持しうるまちづくりと都市法体系を模索する。
全国の会員をお迎えするため、開催地の静岡県弁護士会には、全会あげて記念ゴルフ大会・観光・大会などの諸準備に取り組んでいただいている。当日参加も可能なので、ぜひ多くの会員のご参加を!
新司法試験の合格発表
9月13日に新司法試験の合格発表がなされた。今回の試験は、大学で法律学を履修していない法学未修者を対象とする初めての試験であり、その結果が注目されていた。
合格者数は1851名であり、事前に司法試験委員会で予定していた1800名から2200名の間の数字ではあるが、低めの合格者数となっている。
受験者総数は4607名、合格率は40.2%であり、昨年の合格率48.3%を下回った。既修者コース(2年制)の合格率は46.0%、未修者コース(3年制)の合格率は32.3%であり、未修者の合格率が低くなっている。
合格平均年齢は29.20歳。女性の合格者は全体の27.93%だった。現在、法曹三者と法科大学院、文部科学省の五者で、法科大学院教育と新司法試験の連携に関して検討が行われているが、未修者の合格率の低さの原因についても検討が必要である。
この試験での合格者は新61期となる。現行61期の合格者数は549人であったので、61期修習生は全体で2400名となる。2008年中にはこの2400名が修習を終了して新たに法曹となる予定である。
DASH ! ! 業推センター〈14〉
「遺言の日」法律相談アンケート集計結果
遺言信託プロジェクトチームでは、4月15日の「遺言の日」にちなんで、全国の弁護士会にご協力いただき、各弁護士会で開催された遺言や相続関係の法律相談会に来られた市民と相談担当弁護士にアンケートを行った。その目的は、来るべき高齢化社会において、遺言や相続に関し、弁護士に対する社会的ニーズを探ることにある。
以下、簡単にアンケート集計結果を報告する。
相談者アンケートから 〜弁護士はどこに?
相談者の65%が女性で、年齢は50歳代から70歳代が66%と多かった。やはり、中高年層の関心が高いことが伺える。
法律相談会の存在を知ったきっかけは、新聞報道がほぼ半数で、ついで案内チラシの順となった。
法律相談に来た理由は、予想された結果だが、「弁護士に相談したかったから」という項目が最も多く67%を占め、次に「相談料が無料または安い」という項目が続いた。
また、これまで相続や遺言について専門家や金融機関に相談した経験のある人は29%であり、そのうちの半数以上が弁護士に相談したとの結果が出た。
一方で、相談者の66%がこれまでも弁護士に相談したいと思いながら、実際にはその28%しか弁護士に相談していなかったこともわかった。
弁護士に相談しなかった理由については「弁護士の知り合いがいなかった」、「どこへ行けば弁護士に相談できるかわからなかった」、「相談料がわからなかった」という項目の合計が72%にのぼり、弁護士へのアクセス情報が不足している実態が浮き彫りになった。(有効回答数227通)
担当弁護士アンケートから 〜相続開始前と後が半々
相談案件のうち、被相続人の生前の相談と被相続人の死後の相談とがほぼ半々であった。
被相続人自身が相談に来たケースでは、遺言の形式や遺言の内容についての相談と、それ以外の雑多な質問に大別される傾向がある。
他方、相続人自身あるいはその関係者が相談に来たケースでは、遺言の効力を争いたいという内容や、特定の相続人に相続させる意図での遺言の内容に関する相談が多かった。 (有効回答数298通)
(弁護士業務総合推進センター遺言信託プロジェクトチーム 須郷知徳)
TAKE OFF!司法支援センター 《33》
スタッフ弁護士として川越へ… 弁護士を必要とする人たちのために
10月1日から埼玉総合法律事務所を離れ、法テラスのスタッフ弁護士として埼玉県の川越に赴任する。赴任初日から被疑者国選の担当になっており、同じ週に2件目の被疑者国選担当日が入っている。たった1年で養成事務所を離れスタッフ弁護士として1人で川越に行くことに不安がないと言えば嘘になるが、それ以上に経営や採算を気にせずに刑事弁護を思う存分できるという楽しみの方が強い。
私が生まれ育った淡路島にある夫婦がいた。息子がヤミ金の被害に遭い、親である彼らも執拗な取り立てを受けた。彼らは誰にも相談できず、夫婦そろって自分たちの命を絶つという最悪の選択をした。必死に生きていた彼らは、弁護士にたどり着くことができなかった。私が弁護士になろうと志した学生の頃の出来事である。
この国には、弁護士の助力を得れば救われるのに、地域的理由、経済的理由、そして弁護士事務所の敷居の高さという心理的理由のために弁護士にたどり着けない人たちが数多くいる。これまで弁護士の助力を受けられなかった人たちに法の光を当てなければならない。この国で生きる誰もが弁護士にたどり着けるようにしなければならない。そのためには、法テラスが必要なのだ…私はそう確信している。
川越には弁護士の助力を必要としている被疑者・被告人が多い。彼らの中には財産もなく頼るべき家族もいない人たちも少なくない。弁護士の助力を最も必要としているのはそのような最も弱い立場に置かれた被疑者・被告人である。そして彼らには弁護人しか味方がいない。無辜の不処罰という当然そうあるべきことを実現するだけでなく(現実はそれさえも実現されていないが)、誰も味方がいない彼らの唯一の救いになりたい…だから、私はスタッフ弁護士として川越に行く。
(法テラス川越法律事務所 岡本卓大)
消費者問題シンポジウムを開催
消費者のための特商法・割販法大改正を!
9月22日 弁護士会館
被害実例を生の声で
呉服店パート従業員だった被害者が登壇し、販売員として着用する着物を次々と購入、ノルマ達成のための自己購入などで総額1300万円を超えるクレジットを組まされたと訴えたほか、絵画レンタル商法、読者モデル商法の被害実例が報告された。布団次々販売業者のインタビュー録音も公開され、クレジットが悪質商法の手段となっていること、クレジット会社の加盟店審査が簡単なことなど、実態調査からの問題点が浮き彫りにされた。
消費者が安心できる制度の実現を目指して
池尾和人教授(慶應義塾大学)の講演では、良質な市場経済のためには自生的秩序形成を促進する制度設計を目指す視点が必要で、悪質業者か否かの識別能力が消費者よりもクレジット会社の方が高いのであれば、そちらに責任を傾斜配分するのが効率的だとの見解が示された。
続くパネルディスカッションでは、谷みどり氏(経済産業省審議官・消費者政策担当)から、クレジット会社に、既払金の返還義務を負わせる無過失共同責任には学者からの反発が強いという審議会の議論状況や、特定商取引法の原則例外の転換(指定商品制の廃止)のためのネガティブリスト作成に追われていることなどが報告された。鹿野菜穂子教授(慶應義塾大学大学院)が、クレジット会社の共同責任を認めるイギリス消費者信用法を例に共同責任は法体系的にも可能と主張すると、池本誠司会員(消費者問題対策委員会副委員長)も、消費者が安心して利用できるクレジット制度の実現が、クレジット産業の発展にもつながると述べた。
参加者は330名を超え、会場はほぼ満員。福島瑞穂社民党党首をはじめ5名の国会議員も参加した。この盛り上がりを、クレジット被害をなくすための法改正を求める請願署名活動にもつなげ、法改正に向けた大きな運動としたい。
第9回 犯罪被害者支援全国経験交流集会
参加者は過去最高の約240名
9月1日 大分市・コンパルホール
大分での支援活動の歩み
大分では2000年から弁護士会と臨床心理士会による被害者支援協力が始まり、2003年7月に被害者支援センターが発足、昨年9月には社団法人となって、相談・直接支援・法廷同行などの活動が行われていると報告された。
支援と弁護の関係は?
被害者参加が認められた改正刑事訴訟法の下での支援と弁護のあり方につき、芦塚増美会員(福岡県)―被害者代理人側、鈴木宗嚴会員(大分県)―弁護人側、臨床心理士の進藤啓子氏によるパネルディスカッションが行われた。進藤氏や芦塚会員からは、被害者の気持ちの動転・不安定さを理解してほしい、訴訟参加にはバックアップ体制が必要との意見が出された。鈴木会員は、被害者供述調書は不同意にするべきだが、争いのない事件では対立構造ではなく被害者と被告人の関係が修復される形で解決を図りたいとも述べた。
活動報告―マスコミも注目した2事件について
交通事故による子供の遺体がインターネット上で公開され二次被害が生じていた事件で、被害者の感情と適用刑に乖離がある(著作権法違反で告訴、その後児童ポルノ処罰法違反)等の問題点が報告された。
次に、加害者が少年で殺害されたのが女子高生であったためマスコミの関心を集めた事件で、報道対応窓口を弁護士に絞ったこと、自宅が殺害現場となり住み続けられない遺族の気持ちをくんで賃料免除交渉をした等の実例が報告された。
韓国では令状請求が激減
9月1日〜3日 大韓弁協と第21回定期交流会
大韓弁護士協会との定期交流会において、韓国の弁護士から身体拘束下の取調べや保釈実務について、改正刑事訴訟法(2007年6月1日改正、2008年1月1日施行)に触れつつ報告を受けた。
新法では、これまで実務上認められてきた被疑者取調べの録画が明文化され(244条の2)、これまで制限的に運用されてきた弁護人の取調べの立会は、取調べ終了後の弁護人による意見陳述、取調べ中の不当な質問方法に対する異議の申立ておよび取調官の承認を条件とした意見陳述、立会弁護人の意見を記載した調書は同弁護人が閲覧した上で署名捺印する規定が新設された(234条の2)。さらに「被疑者に対する捜査は不拘束の状態で行うことを原則とする」という規定も新設された。
日本の勾留請求手続に相当する拘束令状審査では、1997年から審査の実質化が図られ、2002年頃から令状請求の棄却率が高まったため、1996年には15万件超だったものが2005年には7万4000件強になるなど、令状請求件数が激減した。これに伴い1996年には約11万件あった身体拘束中の起訴事案が2005年には約5万6000件に半減し、2005年の保釈請求率は23%、保釈許可率は55%であった。近時の傾向としては、実刑相当事案であっても逃亡および証拠隠滅の可能性が低い場合は、被告人の防禦権保障、原則保釈という法文の体裁および不拘束裁判の原則に忠実に、保釈を運用していることが指摘されている。我が国の実務が学ぶべき点は多い。
(国際室嘱託 宮家俊治)
日弁連交通事故相談センター 設立40周年記念講演会
9月13日 弁護士会館
9月13日、財団法人日弁連交通事故相談センター設立40周年を記念し、記念講演会および記念式典が行われた。
山下友信教授(東京大学大学院)による「自動車事故に関する損害賠償と保険の課題」をテーマとした記念講演に会場は満員となり、急きょ、第二会場として会館内の会議室にテレビ会議システムを使って中継した。会員の同テーマに対する関心の高さを物語っていた。
山下教授は、保険法の改正につき、中間試案の主要改正内容を紹介し、人傷保険の請求権代位について判例・諸説を紹介・解説した。また、根底にある問題点として損害算定基準が多々並立している点を挙げ、今後の課題を「一義的な解釈が困難な商品は問題であり、再構築すべきではないか。人傷保険金・賠償の請求の仕方による結果の異同・相違がもしあるとすれば、その内容は請求者に説明されているか」と指摘した。
JFBA PRESS −ジャフバプレス− Vol.12
今、刑務所は? 〜様々な取り組み〜
弁護士にとって、刑務所での処遇等は知っておくべきことの一つでしょう。けれども、修習生時代の刑務所見学以来、刑務所を訪れたことのない人も多いのでは? 今回の特集では、タイプの違う3つの刑務所をご紹介し、現代刑務所事情についてお伝えします。
(広報室嘱託 中田 貴、西浄聖子)
喜連川社会復帰促進センター 〜官と民の知恵を結集
栃木県さくら市にある道の駅「きつれがわ」から車で1、2分。総面積約42万平方メートル、東京ドーム9個分の広さを持つ。収容定員は2000人。犯罪傾向の進んでいない懲役8年未満の男子受刑者が対象で、10月に運営を開始する。
「民間刑務所」と報道されることがあるが、サービスの提供主体はあくまで国。国が事業の一部を民間業者に委託し、官民協働で運営する。職員380人のうち民間人は130人で、残りは国家公務員。同じ部屋で国家公務員と民間人が一緒に働く。民間職員の多くは地元から雇用する。
4か所に分かれた収容ユニットのうち1か所は、軽度の身体障害や精神障害、知的障害を持つ受刑者を収容する。グラウンドまで行けない受刑者に配慮して庭園型の運動場を設け、運動場に出るのも困難な者のために、体を動かすための屋外スペース付居室を設けた。他に類を見ない設備だと言う。
受刑者用の図書検索システムや、インターネットでの面会予約システムの構築など、民間業者のアイディアやノウハウを生かした工夫が随所に見られる。
受刑者が社会復帰した後、「即戦力」として就労できるよう、職業訓練について「いろいろ考えている」(室井誠一センター長)。例えば、センター内の施設で「実習」することによって調理師の資格を取得できるようにした。目下、ホームヘルパー2級の資格を得られるよう関係各所に働きかけを行っている。
官民の知恵を結集した新たな取り組みが始まる。
松本少年刑務所 〜全国唯一の中学校分校を持つ
松本少年刑務所内では、通常の刑務所と同様に様々な作業や電気工事・自動車整備・木材工芸・情報処理等充実した職業訓練が行われる。また、多くの資格を取得することもできる。
しかし、何といっても同所が特徴的なのは、刑事施設内に全国で唯一の中学校分校を有する点であろう。
同所内の松本市立旭中学校「桐分校」には、全国の刑務所から中学校を卒業しておらず、卒業の意欲を強く有する受刑者が集められ、一年間で中学校教育を行い卒業している。1955年の設立当時から現在までの卒業者数は666人、今年は日本人5人と外国籍を有する8人との計13人が入学した。
授業は、一日一時間×7コマと非常にハードであるが、脱落者はほとんどいない。授業風景をのぞかせてもらったところ、最高齢68歳、最年少24歳、国籍も年齢も異なる様々な受刑者たちが一つの教室で熱心に学んでいた。
同施設内では、長野県立筑摩高校の通信制による高校教育も実施しており、1987年以来、103人が卒業し、現在17人が教育を受けている。
同所内の中学・高校いずれにも、本校から教員が来て指導するなど、地元の教育委員会や学校等のバックアップが非常に大きいという。また、入学式・卒業式、そして一番盛り上がる運動会には地元のボランティア団体「母の会」が必ず参加するが、この母の会が心の支えだったと卒業時に涙を流す受刑者も少なくないそうだ。
教育熱心な信州の気風と、温かな地元の人々の支援が、同所内の受刑者の心を支え未来を大きく切り開いている。
千葉刑務所 〜深刻な過密収容
千葉市街の一角約12万平方メートルを占める。赤れんがの正門は、明治40年の設置当時の姿を今に残す。犯罪傾向の進んでいない懲役8年以上の男子受刑者が対象だ。殺人・傷害致死が35.5%、強盗殺人・強盗致死が31%を占める。同じ敷地内に拘置所がある。
未決と既決を合わせた収容定員は1150人だが、8月31日時点の収容実数は1322人で、収容率は115%。既決に限れば、定員723人に対して、実数は1019人、実に141%という超過密状態だ。
こうした現象の一因として、大當紀彦総務部長は、厳罰化の影響を挙げる。厳罰化によって刑期が長期化した上、仮釈放の適用が厳しくなり、無期懲役刑の者も含めて出所しづらくなり、結果的に収容者数が増加しているというのだ。
収容者の増加は、職員の業務負担を増大させる。とりわけ、病人への対応に苦慮している。入院となれば、受刑者一人に常時3人の職員が張り付くことになる。職員は途中交代させる必要があるので、結局、1日に6人がかかりきりになる。
千葉刑務所では、毎年食事に関するアンケートを行ってメニューを改善したり、慰問コンサートや運動会などのイベントを行ったりして、受刑者の心情面の安定を図っているが、過密状態が続けば受刑者の心身に悪影響を及ぼす可能性もある。
収容者増に対し、現在、法制審議会で被収容人員適正化に向けての検討がなされているところであるが、深刻な問題であることを実感した。
日弁連委員会めぐり(11)
男女共同参画推進本部
9月10日、男女共同参画推進本部が立ち上げられ、第一回全体会議が開催されました。そこで、同会議にお邪魔し、菅沼友子事務局長(第二東京・写真左)と斉藤誠委員(東京・写真右)に、同本部設置までの経緯と今後の活動、そして同本部が目指す「男性も女性も共にいきいき活躍できる社会」についてお話を聞きました。
(広報室嘱託 西浄聖子)
本部立上げの経緯と内閣府表敬訪問
同本部は、日弁連が、今年4月に「日弁連男女共同参画施策基本大綱」を制定し、5月に「日本弁護士連合会における男女共同参画の実現をめざす決議」を定期総会において決議したことを受け設置された。その背景には両性の平等に関する委員会が昨年創立30周年を迎え、記念事業としてこの問題に取り組んだ経緯もある。
内閣府では、2020年までに、指導的地位に女性の占める割合を3割とする、という数値目標を含む基本計画を立て、各分野での取り組みを推進しようとしているが、特に職能団体では意識的な取り組みが遅れている。そのような中で、今回、日弁連がこのような大綱を制定し決議を行ったことが高い評価を受け、今年7月、内閣府男女共同参画局長が日弁連を表敬訪問した。
今後の活動と目指すもの
今後同本部は、男女共同参画施策基本大綱普及のため、全国の弁護士会を回るキャラバンを行い、より多くの女性会員の意見を直接聞きながら、これを現在策定中の男女共同参画推進基本計画に反映させていくという。また、同キャラバンを通じ、より多くの会員のコンセンサスを得ることにも努めていきたいとしている。
これまで、ともすれば「男性が弱い立場の女性を保護する」という視点から見られることの多かった男女共同参画問題であるが、実は、そうではない、とお二人は言う。「家事や育児のために女性が参加困難なスケジュールの会務や仕事は、実は男性にとっても過大な負担を強いるものであることが多い。男女ともに参加しやすく担いやすい仕事や会務を目指すということは、性にかかわらず人間が共に生きやすいものへと社会のあり方を変えていくことにつながります。そのためには、女性・男性を問わず、より多くの会員のコンセンサスを得ることがまず必要です。」
人が、より自然に生きやすい社会を目指す同本部の今後の活躍が大いに期待される。
メディアの眼
【新司法試験】
法科大学院未修者コースの修了者が初めて受験したため注目度が高かったが、合格率の低さを懸念する報道が多かった。合格者数を限定するのではなく、一定の水準に達していれば合格させる方法に変えるべきとの意見もあった。(9月14日・各紙)
【司法修習生に就職窓口】
日弁連が初めて、就職先を探している修習生の情報を全国各地の弁護士会に提供したり、採用情報を収集したりする窓口を設置したとの報道。(9月16日・日本経済新聞)