日弁連新聞
2007年 3月1日 第398号
犯罪収益移転防止法案から弁護士の届出義務を削除 〜その経緯〜
警察庁は、弁護士等に疑わしい取引の届出を義務づける規定を含む犯罪収益移転防止法案について、1月中旬には内容をほぼ固め、予算関連法案として3月中に成立させることを予定していた。
緊迫した情勢の下、日弁連は、全国紙への意見広告掲載、そのためのカンパ、署名活動、国会一斉要請行動、院内集会、パレードなど、できることはすべて行うという方針で、1月下旬からカンパの要請等を始めた。また、国会議員への再度の説明などの活動を精力的に行った。
1月25日、近畿弁護士会連合会および所属全弁護士会によって、産経新聞大阪版に、近畿の弁護士が依頼者密告制度に反対することを表明する意見広告が掲載され、大きな反響を呼んだ。
1月26日、自民党で法案の検討が始まり、法案についての慎重審議を求める意見なども出された。1月30日、日弁連は自民党の部会で考え方を説明した。
その後、弁護士等の届出義務を削除する方向となり、2月2日朝、その報道がなされた。日弁連は、2月初めに予定していた意見広告やカンパ、署名運動、パレード等をすべて中止し、カンパは返還することとした。
弁護士等の届出義務を削除することになったのは、これまでの各地における地道な活動、集会、会長声明、地方議会への働きかけ等の成果である。
2月13日に閣議決定された法案では、本人確認、記録保存については、日弁連の会則で定めることとしている。3月1日の臨時総会で制定された「依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程」は、これに対応するものとなっている。
FATF(金融活動作業部会)の相互審査が今年の秋に予定されており、今後も法律の行方については見守っていく必要がある。
平山会長が中小企業庁長官と意見交換
2月6日、日弁連と中小企業庁は、弁護士による中小企業への法的サポートを促すために、意見交換会を行った。日弁連からは、平山正剛会長、飯田隆副会長、菊地裕太郎会員(弁護士業務総合推進センター事務局長)、高橋理一郎会員(同センター中小企業関連業務推進PT座長)、伊藤茂昭会員(弁護士業務改革委員会委員長)をはじめとする11人が出席し、同庁からは、石毛博行長官、近藤賢二事業環境部長、松井哲夫経営支援部長を含む8人が出席した。
意見交換会では、今後の検討事項として、(1)事業承継、(2)中小企業再生支援協議会の機能強化を含む事業再生、(3)商工会議所、商工会等の中小企業支援機関との連携強化等があることを確認し、これらの検討事項につき定期的に会合を行い、相互に協力し合うことを共同で発表した。
(弁護士業務総合推進センター中小企業関連業務推進PT幹事 中井陽子)
臨時総会 「依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程」など6議案を可決 3/1弁護士会館
第1号議案
「広報室規程中一部改正の件」
広報室業務の拡大に伴い、幹事(無給)をおく旨の改正を行うもの。
第2号議案
「懲戒処分の公告及び公表等に関する規程中一部改正の件」
懲戒処分を受けた弁護士(戒告処分を除く)等が、日本司法支援センターの業務に関連して裁判等に関与することを防止するため、懲戒処分の連絡先として同センターを加える等の改正を行うもの。
第3号議案
「日本司法支援センター常勤スタッフ弁護士所属会への助成に関する規程制定の件」
同センター常勤スタッフ弁護士の会費負担を軽減して、民事法律扶助や国選弁護等の担い手を確保するために、所属会がスタッフ弁護士の会費の一部免除措置を採った場合に、免除額と同額を所属会の申請に基づき日弁連が助成するもの。
第4・5号議案
「弁護士法及び商業登記法の改正、総合法律支援法の制定並びに法律事務所等の名称等に関する規程等の制定等に伴う会規(外国特別会員関係を除く。)の整備に関する規程制定の件」
「弁護士法及び商業登記法の改正並びに法律事務所等の名称に関する規程等の制定等に伴う外国特別会員関係会規の整備に関する規程制定の件」
弁護士法及び商業登記法の改正、総合法律支援法の制定並びに法律事務所等の名称等に関する規程等の制定等に伴い、日弁連の関連諸規程を一括して改正するもの。
第6号議案
「依頼者の身元確認及び記録保存等に関する規程制定の件」
犯罪収益の移転防止等職務の適正を確保するために、弁護士等がその職務を行うに際し、依頼者の身元確認や記録保存をすることその他必要な事項を定めるもの。
犯罪収益移転防止法案における弁護士の通告義務削除を評価し自主ルールを制定すべきとの賛成意見と、弁護士を市民の監視者にすべきでないとの反対意見が対立したが、圧倒的多数の賛成で可決された。
ひまわり
オウム事件死刑囚の元弁護人2名を「処置しない」とする日弁連決定については「異例の裁判打ち切りを招いた弁護活動をどう見るのか」、「弁護士自治への信頼が揺らぎかねない」などの批判的論調が目立った。本来、弁護活動の当不当は綱紀懲戒手続で判断されるべきという「原則」に理解を示す向きは少なかった▼最近は、刑事事件の弁護人が積極的に記者会見を実施するケースが増えているが、弁護人の意図とは逆に受け止められることもあるやに見受けられる。3月17日には大阪で「刑事事件でのマスコミ対応」を議論するシンポジウムが開催されるが、研究はまだ始まったばかりだ▼先日開催された企業の広報担当者向け研修において「広報担当者は片足を社内、もう一方を社外に置くバランス感覚が重要」との指摘があった。自社の言い分に終始するのではなく、マスコミに迎合するのでもない、第三者的な視点を意識すれば、より説得力を増すという意味と理解した▼弁護権の独立、被疑者の防御権などの「原則」が市民になかなか理解されないのは、「伝える」ことを軽視してきた結果ではなかろうか。組織としての広報はもとより、「独立」して活動する弁護士一人一人が「広報担当者」であることを意識すべき時機が、来ているように思う。(K・I)
犯罪被害者の刑事裁判手続関与の要綱が出される
法制審議会は2月7日、犯罪被害者関係の刑事手続に関わる要綱を決定した。
この要綱は、(1)被害回復手続、(2)公判記録の閲覧・謄写の拡大、(3)被害者特定事項の秘匿、(4)被害者の刑事裁判手続参加を定めている。中でも、(4)については、日弁連の反対にもかかわらず、被害者の在廷を認めた上、証人尋問や被告人質問、いわゆる「被害者論告・求刑」を導入することとしている。
すなわち、故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、業務上過失致死傷等の罪、強制わいせつ及び強姦等の罪について、被害者等は、「被害者参加人」として手続に参加することができる、とする。被害者参加人は、情状に関する事項についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について証人の尋問ができる。また、被害者参加人が意見を述べるために被告人に対する質問をすることができる。証拠調べが終わった後に、被害者参加人は、従前の意見陳述のほか、事実または法律の適用について「弁論としての意見陳述」ができることとなる。
日弁連は刑事手続の現場から、要綱が提案する新制度の問題点を検討していく。
国選弁護対応態勢確立推進本部を設置
2009年5月までに対象が飛躍的に拡大される被疑者国選弁護に十分に対応するために、前回の理事会で設立された国選弁護対応態勢確立推進本部の第一回全体会議が、2月15日の理事会において開催された。本部長代行に川副正敏副会長(福岡県)が、事務局長に山口健一会員(大阪)が選任された。その他、会議では、京都の国選対応の実態等の報告がなされた。
同本部の2006年・2007年の活動方針としては、(1)各弁護士会へのアンケートと回答の集計・分析、(2)ブロック別キャラバンの実施、(3)特に問題を抱えている弁護士会との意見交換、(4)未契約弁護士、新規登録弁護士への国選弁護契約締結勧奨のための方策の立案・実行、(5)スタッフ弁護士の必要数と配置場所の検討、(6)日本司法支援センター・最高裁・法務省等との協議のバックアップ、(7)国選弁護報酬の改善・増額のための取り組み方策の立案・実行等を予定している。
拡大市民会議
法テラスに市民の「注文」と「期待」相次ぐ 2/7弁護士会館
外部の有識者からなる日弁連市民会議は、法テラス(日本司法支援センター)の構想段階からその制度設計に注目していた。今回は「拡大市民会議」と銘打ち、約50人の弁護士・市民の参加を得て、開業後約4か月の実績を踏まえた法テラスの現状分析と、今後の改善点などを議論した。
コールセンターのPRに工夫を
コールセンターへの架電数が当初の予測を下回っていることに関し、「『コールセンター』の実態が端的に分かるネーミングを」、「単なる窓口紹介では不満が出る。定型的な質問には回答できるよう一層の工夫を」などの要望が出された。
従来のアクセス対策との連携を
片山善博委員(鳥取県知事)が「法テラス開業を理由に自治体等の法律相談窓口を縮小する動きがある。これではアクセス改善につながらない」と懸念を示すと、ダニエル・フット委員(東京大学)も「弁護士過疎解消のため、並行して公設事務所の設置にも力を入れてほしい」と語るなど、既存の対策との連携の重要性が強調された。
スタッフ弁護士に中堅・ベテランを
法テラス倉吉(鳥取県)の一藤剛志会員(58期)と同多摩(東京都)の宮本康昭会員(13期)から、過疎地域、都市部のいずれにおいても豊富なニーズがあることが報告された。土屋美明委員(共同通信社)は「現在のスタッフ弁護士数24人では少な過ぎる。新人の登用だけでなく、宮本弁護士のような中堅・ベテランも就任できるよう条件整備すべき」と要望した。
DASH ! ! 業推センター〈7〉
フル稼働する13のPTの湧き上がるエネルギー
13PTの躍動
業推センターは、昨年7月から本格的な活動を始め、現在、次の13のPTがフル稼働している。(1)弁護士就職問題、(2)地方活性化、(3)弁護士情報提供制度、(4)研修、(5)法的ニーズ・法曹人口調査検討、(6)立法、(7)人権と企業の社会的責任(CSR)の評価と支援、(8)内部統制システム、(9)国選弁護報酬、(10)地方自治体関与業務推進、(11)任期付公務員・企業内弁護士推進、(12)中小企業関連業務推進、(13)遺言信託の各PTがあり、委員と幹事の合計約310名が結集している。遺言信託PTは、昨年10月に発足したが、40期中頃以降の60数名が参集し、さらに全国各地で拠点を設置する勢いである。
偏在解消と就職問題は盾の両面
60期司法修習生の就職問題は、業推センターが最初に直面した重大課題であるが、弁護士の大都市集中・偏在問題の解消の重要な契機でもある。両問題のまさに同時的解決が求められている。
偏在問題は、多くの弁護士会それぞれが抱えている課題でもあり、弁護士会全体での取り組みが必要である。もちろん、日弁連自身で積極的に取り組まなければならない課題であるとともに、会員各位におかれても、後進の養成は弁護士・弁護士会が担わなければならない責務であるという観点から、就職問題への協力を是非お願い申し上げたい。
情報提供制度の全国展開
本年1月の理事会において、弁護士情報提供制度(弁護士の取扱分野の情報を弁護士会ホームページ上で検索可能な形で提供する制度)を日弁連において創設・運用し、各弁護士会に参加を求めることが採択された。各弁護士会それぞれがソフト開発と制度運営を行えば、弁護士会ごとに高額の費用が発生するので、日弁連でシステムを開発・運用し、日弁連をキー・ステーションとして、各弁護士会が参加する(東京三会は、東京都として一括りにする)という企画である。5月にはソフトも完成し、この秋からの運用を目指している。全弁護士会の参加と多くの会員の登録を是非お願いしたい。
湧き上がるエネルギーのさらなる燃焼を
業推センターは、自らその存続期間を2年間と短期間に設定し、その間にまさにDASHし、全力投球して成果を上げることを期している。この結集・凝縮したエネルギーのさらなる燃焼に期待したい。
(弁護士業務総合推進センター本部長代行 飯田 隆)
TAKE OFF ! 司法支援センター《26》
日弁連法律援助事業の実施について
刑事被疑者弁護援助、少年保護事件付添扶助、犯罪被害者法律援助、その他、国庫補助金によらずに法律扶助協会が実施してきた「自主事業」については、これらを整理して日弁連が「法律援助事業」として行う方針の下、必要な会規の整備が昨年12月の臨時総会で可決された。これにより、「自主事業」は日弁連の事業として存続することとなった。
この法律援助事業については、日本司法支援センター(以下「法テラス」という)に委託することとしているが、システム構築に時間を要することから、2007年10月1日から法テラスにおいて実施すべく準備が進められている。
法テラスにおいて法律援助事業の業務が開始されるまでの間は、犯罪被害者及び難民に関する事業を除き、暫定的に各弁護士会の協力を得て、各弁護士会が日弁連の窓口となって申込書の受付や終了報告書の受付事務を行い、また援助費用等の支払等の事務を行うことを検討している。
犯罪被害者及び難民に関する事業は、日弁連が直接受付事務等の事務を行う。
2月15日に開催された理事会において、事業開始までの取扱いを含めた処理方針案について説明し、議論を行ったところであり、3月の理事会においても再度審議を行う予定である。
これらの援助の利用方法は、基本的には従来の法律扶助協会で行われていた方法を踏襲することとしている。これまでと同様に、弁護士によって持ち込んでいただくことになる。変更される主な点は、申込書、報告書等の書式が変更になること、申込先が弁護士会(犯罪被害者及び難民に関する事業は日弁連。10月以降は法テラス地方事務所)に変更になることなどである。
申し込みは、従来通りファクシミリによる申し込みが可能である。また、援助開始決定については、申込弁護士において利用希望者が援助要件を満たすかどうかの判断を行い、弁護士会において、当該申込弁護士の判断を尊重して決定することになる。
援助費用等の基準については、日弁連の諸規則で定められる。
援助費用等は日弁連から弁護士会へまとめて支払われ、加算援助費用等が支払われる弁護士会では、これに上乗せして受任弁護士に支払われる。
詳細は、事業開始までに作成される「利用の手引き」を参照いただきたい。
(日本司法支援センター対応室嘱託 彦坂浩一)
ICC加入で日本の刑事司法に変革を
国際刑事法セミナープレシンポジウム開催
シンポジウムが開催された2月27日は、政府が国際刑事裁判所(ICC)規程への加入を閣議決定した記念すべき日となった。
本年5月18日・19日には、ICCの活動を支える国際刑事弁護士会(ICB)の拡大理事会と国際刑事法セミナーが日本で開催予定である。シンポ冒頭には、その実行ワーキンググループ(WG)事務局次長である一井泰淳会員が、ICCの機構などを紹介した。
続いて、フィリップ・オステン氏(慶應義塾大学専任講師)が「ICCへの加入と国内法制への影響」と題して基調報告し、ニュルンベルク裁判ショックから立ち直ったドイツが徹底して国内法を整備し、絶対的効力を認めるICCへの協力規定(犯罪人の引渡や移送)をつくり、詳細な国際刑法典を制定したことを紹介した。
基調報告を受け、北村泰三教授(中央大学)は、国際人権法の観点から「アジアの一員としての責任が大事」と語り、前田裕司会員(日弁連刑事弁護センター副委員長)は、国内の冤罪事件に触れて、ICC加入への期待を語った。フロアーからも活発な質問があり、東澤靖会員(WG事務局長)はICBへの登録を呼び掛けた。最後に、中村順英会員(WG座長)が、刑事手続の国際水準を踏まえ、被害者の救済にも配慮したICC規程が良い刺激となることを期待すると締めくくった。
5月のセミナーにおいては、ICC裁判官や書記局長、さらには中国・カンボジアの弁護士などを迎えシンポジウムが開催される。20日には国際刑事弁護研修プログラムも予定している。
(ICB拡大理事会等実行ワーキンググループ委員 新倉 修)
2006年懲戒請求事案集計報告
日弁連審査第2課・審査第3課では、2006年(暦年)中の各弁護士会における懲戒請求事案並びに日弁連における審査請求事案・異議申出事案及び綱紀審査の申出事案の概況を集計して取りまとめた。
POINT
2006年中の弁護士会における懲戒請求新受件数は1367件となり、2003年以降連続で1000件を超え、また懲戒処分も69件を数え、いずれも過去最多となった。
日弁連に対する審査請求は22件なされ、裁決内容は請求棄却13件、原処分取消6件、軽い処分への変更が4件であった。
弁護士会懲戒審査に関する異議申出新受件数は26件あり、昨年同様2件の不処分決定が取り消され、戒告に変更となった。
弁護士会綱紀調査に関する異議申出新受件数は538件(昨年比129件増)、異議申出棄却・却下決定に対する綱紀審査申出新受件数は239件(昨年比74件増)となった。日弁連綱紀委員会および綱紀審査会がそれぞれ懲戒審査相当と議決し、弁護士会に送付された件数は14件、3件となり、新受件数とともに過去最多の数字となった。
JFBA PRESS −ジャフバプレス− Vol.5
どうする? どうなる?
企業の裁判員制度対応
2009年の裁判員制度導入に向け、企業の積極的な環境整備が期待されています。そのような中、化粧品大手のマンダム社(大阪市)が、本年1月1日、裁判員の特別有給休暇制度を導入したと全国紙で大きく報道されました。今号は、企業・組織の裁判員対応についてお伝えします。
(広報室長 生田康介)
「うーん。マンダム」って何ですか?
マンダム社が就業規則を改定したと報道されたのは昨年暮れのこと。「あの『うーん。マンダム』でしょ?」と広報課職員(20代)に話し掛けると、「何ですか? それ…」とつれない返事。このCM、若い人は知らないのね…。
気を取り直して、2月13日、マンダム本社に制度導入のキーパーソンである井下和繁法務室長をお訪ねした。
全国紙で報道されてびっくり
複数の全国紙で大きく報道された今回の規則改定だが、井下室長は「全く予期してませんでした」と苦笑する。他の企業も検討しているとの情報があり、まさか第一号だとは思わなかったそうだ。同社は重要な法改正があれば迅速に対応するという企業姿勢があるとのこと。社員の啓発のためにも、現段階での規則改定について特に異論なく進められたという。
重要なのは会社の風土作り
気になるのは業務への支障だが、井下室長は「従業員数約1000人の当社では、年間1人選ばれるかどうか。組織でカバーすれば大丈夫」と語る。むしろ「休暇中に業務上の迷惑をかけてしまうが、上司や同僚の理解を得られるか、また休暇の間に仕事を外されないかなど不安に思う人が多いはず。安心して休めるような会社の風土作りこそ重要でしょう」と指摘する。
毎週発行している社内報での連載や監査役弁護士による研修など社内の啓発活動もすでに始まっている。ちなみに同社監査役は小寺一矢日弁連副会長。取材の取り次ぎなど大変お世話になりました。
裁判員の心のケアも重要
井下室長自身、裁判員制度については「裁判官が気付かないような市民の良識や常識を生かせることに意義がある」と語る。ただし、死刑事件への関与や、凶悪犯罪の証拠を見ることによる精神的負担には懸念を抱いており、「会社もフォローしますが、まずは法律家の皆さんにきちんと対応を考えてもらいたい」と注文を忘れない。「NBL」(商事法務)の2月15日号には同室長の論文が掲載されているので、企業の生の声としてご一読いただきたい。
トヨタ会長と平山会長の対談が実現!
昨年8月にはトヨタ自動車も特別休暇制度を導入する方針であると報道され、日弁連は早速「大いに歓迎したい」との会長声明を発表した。現在、具体的検討が進められているという。
今年1月には、トヨタ自動車の張富士夫会長と平山会長の対談が実現した。米国法人での勤務経験もある張会長は「アメリカでの経験から考えると、日本でもやれないことはない」と語り、企業の社会的責任として裁判員制度へ協力することを明言された。
(対談の模様は3月20日発売の「月刊ウェッジ(WEDGE)」4月号の広告に掲載されます)
導入第2号は日弁連かも!?
それではお膝元の日弁連はどうなのか。日弁連職員労働組合の木村友則委員長によると「すでに執行部から就業規則改定案が提示されており、現在組合で検討中です」とのこと。
改定された暁には、マンダム社に次ぐ第2号としてぜひプレスリリースしようと目論む筆者であった。何年か後にめでたく(?)選任される人が出たら、皆で気持ちよく送り出しましょう!
メディアの眼
【1月後半】
犯罪被害者の訴訟参加大幅拡大の見通し(法制審要綱案)につき、各紙が驚きを持って大きく報道。日弁連の反対論も紹介されたが、制度設計の実質的議論に入れなかったとの指摘も(朝日)。その後、各紙社説でも多く取り上げられたが、「報復の場になってはならない」などメディア側も慎重論を展開しているところがほとんど。
【2月前半・中旬】
ゲートキーパー法案で弁護士など5士業が対象外になったことについて、FATF勧告とも絡めて各紙が報道し、同法案に対するメディアの関心の高さがうかがえた。
また、松本智津夫死刑囚の元弁護人2名への処置請求に対する日弁連決定については、各紙が報道。形式論に過ぎる、弁護士自治への信頼が揺らぎかねないなどの批判的論調が目立った。
日弁連委員会めぐり(5)
「市民のための法教育委員会」
「法教育」。分かるような分からないような…。もうすぐ裁判員制度が始まるのに、文科相が「人権メタボリック症候群」なんて発言をしてしまう今の日本。「法教育」って何となく大事そうな気がする。市民のための法教育委員会は、いったいどんな委員会?
(広報室嘱託 中田 貴)
「考えてもらう」が目的
2002年に設置された市民のための法教育対策検討ワーキンググループからの要望を受け、2003年に委員会が設置。「法教育といっても、法律知識を教えるのではありません。民主主義社会を支える市民として、考える力、議論する力をつけてもらいたい、それが目的です」と古井明男委員長(=写真)。「民主主義=多数決」と短絡的にとらえている人が多い。そんな現状を改善したいと、古井委員長は言う。
まずは子どもに向けて
法教育委員会では、学校教育に法教育を広める活動を中心に展開している。
2006年8月19日には、関弁連と共催で法教育夏季セミナーを実施。全国から44人の会員と53人の教員・研究者が参加した。
また、主に小学生向けの法教育絵本「はじめての法教育」を作成した。本年3月15日に岩崎書店から出版される予定である。
すべての弁護士会に受け皿を
学校教育に法教育を広めるには、地元の弁護士会の協力が不可欠。古井委員長は、「すべての弁護士会にあまねく受け皿を作りたい」と意気込む。
法教育委員会は、法教育に興味のある会員に研修を行い、法教育イメージの共有や、情報交換、資料提供等のバックアップを行っている。
法教育に取り組む弁護士会は増加しており、各地で出前授業やサマースクール、ジュニアロースクール、教員向け研修などが企画・実施されている。
どんな弁護士でも参加できるやりがいのある活動
法教育委員会の委員は現在33人。学識者も2人参加している。40期代後半から50期代の若手会員が多い。
鈴木啓文事務局長は、「法教育は、どんな弁護士でもかかわりやすい。テーマが一般的なので、自分が普段していることを基礎に、自分の切り口で話ができる」という。企業法務専門でも若手でも参加でき、自分の活動を見直す契機にもなるとのこと。
文部科学省も、法教育の実践校を指定するなど、学校教育に法教育を取り入れることに前向きな姿勢を示している。
「学習指導要領に法教育が取り入れられれば、学校側から弁護士会に講師派遣の要請が来ることになるでしょう」と鈴木事務局長は指摘する。
「美しい国」や「愛国心」といった言葉に振り回され、校内暴力やいじめが絶えない日本の学校。そんな教育現場の改善にも、法教育は重要な役割を果たしそうです。
ロ・イヤーズ・ベストセラー (2006年年間) 協力:弁護士会館ブックセンター
| 順位 | 書名 | 著者・編者 | 出版社 |
|---|---|---|---|
| 1 | 訟廷日誌 合冊 2007―付・訟廷便覧― | 大阪弁護士協同組合出版関係委員会 編集 | 全国弁護士協同組合連合会 |
| 2 | 模範六法 2007 平成19年版 | 編者 判例六法編修委員会 代表 鈴木祿彌・大塚 仁 | 三省堂 |
| 3 | 離婚問題法律相談ガイドブック 2006年 | 東京三弁護士会 編 | 東京三弁護士会 |
| 4 | 模範六法 2006 平成18年版 | 編者 判例六法編修委員会 代表 鈴木祿彌・大塚 仁 | 三省堂 |
| 5 | 株式会社法 | 江頭憲治郎 著 | 有斐閣 |
| 6 | 論点解説 新・会社法 千問の道標 | 編著 相澤 哲・葉玉匡美・郡谷大輔 | 商事法務 |
| 7 | Q&A過払金返還請求の手引〔第2版〕 | 編者 名古屋消費者信用問題研究会 | 民事法研究会 |
| 8 | クレジット・サラ金処理の手引 四訂版 | 東京三弁護士会 編著 | 東京三弁護士会 |
| 9 | 六法全書 平成18年版 | 編集代表 菅野和夫・江頭憲治郎・小早川光郎・西田典之 | 有斐閣 |
| 10 | 労働審判実践マニュアル | 日本労働弁護団 | 日本労働弁護団 |
編集後記
今年は暖冬でしたね。吐く息の白さもあまり感じず、季節感に欠けるなあ、これも異常気象?と思っていたら、やって来ました、招かれざる春の使者が。そう、花粉です。
日本人の約2割が花粉症だとか。これはもう環境問題からくる公害病ではないのか、林野行政の失敗ではないか、法律家として何とかできないのか、と気持ちの上では鼻息を荒くしていますが(実際は鼻が詰まっているので、荒くはできない…)、身の回りを漂う現実の花粉に、法律で太刀打ちできるわけもなく、痒い目をこすりながら、やっとのことで原稿を書いています(というわけで原稿遅くなってごめんね、Y君)。季節感が失われがちな昨今ですが、憂うつな春の風物詩は健在です。トホホ…。
(A・S)