日弁連新聞
2006年 7月1日 第390号

「弁護士業務総合推進センター」設立を理事会で承認

弁護士の社会における活躍の場を拡大

6月15日の理事会で、平山会長の公約である「弁護士業務総合推進センター」(本部長は日弁連会長)の設立が承認された。弁護士大増員時代を迎え、弁護士の社会における活躍の場を拡大し、もって司法アクセスの改善を促進するための活動を戦略性をもって継続的かつ総合的に企画・実践することを目的とする。
存続期間は2年に設定され、正副会長及び理事を含む140名以内の本部委員からなる「本部会議」のもと、本部長代行が議長を務める「運営委員会」が具体的活動のかじ取りを行う。

会員の業務支援を具体的に実践

運営委員会の下に多くのプロジェクトチーム(PT)を設置し、過去に関連委員会で検討されてきた会員の業務支援のための研究・提言などを、平山執行部の存続期間中に具体化し実践することを目指す。
現在のところ、(1)弁護士就職問題への対応、(2)大都市集中問題への対応・地方弁護士会活性化、(3)弁護士情報提供制度・弁護士紹介制度の実施、(4)研修体制の検討、(5)法曹人口問題の検証、(6)立法活動(民事訴訟貼用印紙額低額化など)、(7)全国組織への需要喚起、(8)弁護士業務分野の開拓、(9)国選弁護報酬の増額を含む司法予算の拡充、などのPTを設置することが予定されている。

このページの最初へ

多重債務問題シンポジウム 6/15 イイノホール(東京)
利息制限法による救済をサラ金・クレジット・商工ローンのすべての利用者に!! 

利息制限法の遵守を訴える宇都宮本部長代行

悪天候にもかかわらず、会場には全国から600名を超える参加者が集まり、世論の関心の高さを窺わせるなかシンポジウムは始まった。

冒頭、自らサラ金の高金利に苦しめられホームレスに追い込まれた元債務者、返済のためヤミ金融に手を出した元債務者らが自らの体験を生々しく報告した。さらに、大手消費者金融の元支店長が、過酷な営業ノルマ、取立の実態を報告した。「顧客を自殺に追い込んだのは自分の責任であると悩み退社したが、その後一年間はショックで求職もできなかった」、「消費者金融業界の自浄能力はまったく期待できない」との発言が非常に印象的であった。

参加した5名の国会議員は、異口同音に出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げる必要性を力強く訴えた。

続いて、呉東正彦会員(横浜)による最近の最高裁判決の分析、上柳敏郎会員(第一東京)による金融庁・貸金業制度等に関する懇談会の中間整理についての報告、鳥畑與一教授(静岡大学)による経済学的見地からの高金利正当化論への批判などの報告が行われた。上限金利引き下げ実現本部の宇都宮健児本部長代行は「一連の最高裁判決は、貸金業者に対して利息制限法を守れというメッセージを伝えている。利息制限法の遵守がこの問題を考える上でのテーマである」と語り、グレーゾーン撤廃後の金利規制を、出資法の上限金利に近づけるのではなく、利息制限法の制限金利まで引き下げなければならないと強調した。

このページの最初へ

新しい国選弁護報酬基準決まる
後半に手続類型ごとの概要を掲載

6月25日、日本司法支援センターの諸規則が法務大臣の認可を受けたことに伴い、新しい国選弁護報酬基準が決まった。

新基準は、手続の類型ごとに一定額の基礎報酬額を定め、これに接見回数・公判回数に応じた加算を行う。弁護人の「労力」を客観的基準のもとで報酬に反映させるという観点から、かかる方式が採用された。また、記録謄写費用、遠距離接見交通費等の支給についても明確に定められることになる。

このページの最初へ

新たな国選弁護制度対応態勢確立へ基本方針策定

新たな国選弁護制度等への対応態勢の確立方策に関する基本方針が6月16日の理事会で承認された。内容は以下のとおり。

(1)できるだけ多くの会員が日本司法支援センターとの間で国選弁護人となる契約をするよう勧奨する。

(2)支援センターとの契約にあたっては、弁護士会が推薦を含めたとりまとめをするよう会内コンセンサスの形成を図る。

(3)支援センターによる国選弁護人候補名簿の調製に協力して名簿を作成する。

(4)国選弁護人候補名簿の作成にあたっては、各弁護士会の実情を踏まえつつ、例えば特別案件、裁判員裁判対象事件、即決裁判事件等の事件の特性に応じ、これらの事件について充実した弁護活動を遂行しうる弁護士を登載した数種の名簿を作成するなどして、その国選弁護人の確保に努める。

(5)支援センターによる国選弁護人候補の具体的な指名・通知が円滑かつ適切に行われるよう、弁護士会は対応する支援センター地方事務所及び裁判所との間で綿密な協議を行う。

(6)「弁護士会を指定した私選弁護人紹介申出制度」については、できる限り迅速に接見する態勢の確保と、私選受任をしない場合の国選選任手続が円滑に行われるための具体的な対応策を構築する。

(7)以上の諸方策に関し、指名業務開始後における具体的運用状況を不断に検証し、問題点が生じた場合は、支援センター、裁判所等に必要な改善・改革方策を提言し、その実現を図っていく。

このページの最初へ

取調べの可視化 平成18年度新活動方針を承認
可視化試行について検事総長に申入れ

最高検察庁が5月に発表した取調べ可視化の限定的試行の方針を踏まえ、6月15日の取調べの可視化実現本部全体会議において、本年度の新活動方針が承認された。検察庁の方針はあくまで一部での試行にすぎず、取調べ全過程の可視化を実現することになっていないとの現状分析を踏まえ、日弁連として、(1)日々の弁護活動における可視化申入れ、被疑者ノートの活用など実務における可視化の実践、(2)刑事司法関係者との対外折衝、(3)啓発・広報活動、(4)理論的検討を進めるとされている。

6月13日には、検事総長に対し、「取調べの録画・録音試行についての申入れ」を行った。試行を決めた事件では全過程を録画・録音すべきこと、警察の取調べについても試行すべきこと、試行対象事件の拡大(少年事件、知的障がいのある被疑者・被告人の事件など)、重点対象地域の拡大(大阪府下、福岡県下など)などを求めている。

今後、会員に対する可視化弁護活動実践の呼びかけ、可視化弁護研修開催(8月29日を予定)などの具体的取り組みが全国規模で進められることになる。

このページの最初へ

ゲートキーパー立法の新たな動き
「犯罪収益流通防止法案」(仮称)の概要が明らかに
日弁連は6月15日に一斉国会要請を実施

6月5日、政府の国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部は、ゲートキーパー立法として「犯罪収益流通防止法案」(仮称)を策定することを決め、その概要を発表した。金融機関本人確認法及び組織的犯罪処罰法第五章を母体にして規定の整備を行うとしている。

そのうち「疑わしい取引の届出」については、届出情報の通知先は国家公安委員会とされ、また、弁護士のほかに、公認会計士、行政書士、司法書士、税理士、宝石商・貴金属商などを義務対象事業者とする方向で関係方面との調整を進めるとしている。同本部の→ホームページに詳細が掲載されている。

法案の趣旨や内容は昨年11月の同本部の決定にほぼ沿っており、日弁連は、立法の実現は、弁護士制度ないし司法制度の根幹を揺るがすことになるとして全面的に反対している。
 
6月15日には、日弁連理事者が一斉国会要請を実施した。国会議員らに対して弁護士への適用には深刻かつ重大な問題があることを重ねて説明し、ゲートキーパー立法の阻止に向けて理解と協力を要請した。

このページの最初へ

論説・解説委員との懇談会開催
ゲートキーパー立法、少年法「改正」などの重要課題について意見交換

5月31日、日弁連とマスコミ各社論説・解説委員との懇談会が開催された。出席者は、北原斗紀彦(時事通信)、桐山桂一(東京新聞)、古西洋(朝日新聞)、土屋美明(共同通信)、丸山伸一(読売新聞)、三木賢治(毎日新聞)、安岡崇志(日本経済新聞)の各委員。

ゲートキーパー立法の弊害を具体的に示していくことが必要

来年の通常国会に法案上程が予定されているゲートキーパー立法について、日弁連より、弁護士が警察へ依頼者を密告するような制度は到底受け入れられないこと、諸外国でもイギリスを除き法整備は進んでいないことなどを説明した。
弁護士の守秘義務の重要性については各委員とも理解を示し、「警察庁は『治安』の名の下に強気でくるので、弊害を具体的に示していかなければ太刀打ちできない」、「立法に反対する以上、弁護士の側もマネロン防止のための研修を実施するなど積極的取り組みを示す必要がある」などの貴重な示唆があった。

少年法「改正」反対運動は体感治安の悪化を念頭に

少年法「改正」問題に関連して、「2000年改正の評価が定まらない現段階で改正を進めることの問題性をもっと強調すべきではないか」、「体感治安の悪化は軽視できず、不安を感ずる市民にどう説明するかを考えなくてはならない」などの意見が出された。

このページの最初へ

新事務次長に谷眞人会員(東京)が就任

谷 眞人会員(東京)

事務次長を退任した山本眞弓会員(東京)の後任として、7月1日に谷眞人会員(東京)が新たに就任した。

谷 眞人(東京・42期)

司法改革は実行から展開の時代に入り、現場に根ざした弁護士の智恵と活力が求められていると思います。微力ですが頑張ります。

このページの最初へ

日本司法支援センター対応室を設置

6月16日の理事会において、日本司法支援センター対応室の設置が承認された。センターについて日弁連として取り組むべき課題に関し、関連本部・委員会と連携して、施策立案のための調査・研究、各弁護士会との連絡その他必要な事務を行う。当面は担当次長が室長を兼任し、ほかに嘱託5名の体制でスタートする。10月の業務開始を目前に控え、コールセンターが円滑に運用されるためのシステムの検討(FAQの内容など)、開業当初の弁護士会対応態勢の企画立案などが喫緊の課題となる。

このページの最初へ

通常国会閉会
共謀罪法案、少年法「改正」案は継続審議に

第164通常国会は6月18日に会期を終えた。
共謀罪については、2003年以来、二度の廃案を経て長期にわたる審議が継続してきた。日弁連は一貫して抜本的見直しを主張してきたが、今国会終盤にかけて、与党修正案、与党再修正案、民主党修正案が相次いで上程され、最後は、与党側が民主党の提案を「丸呑み」する姿勢を示すなどの展開があったが、最終的には継続審議となった。臨時国会に向けて、日弁連では、これまでに明らかになった論点について改めて整理し、準備を進めている。

今国会で成立した重要法案としては、改正入管法、いわゆる未決拘禁法、犯罪収益の処理に関する関係法、法例を改正する法律などがある。日弁連のこれまでの対応が相当程度反映されたものもあるが、入管法のように、必ずしも反映されなかったものもある。結果を分析して、つぎの取り組みを検討する必要がある。
 
少年法改正案は継続審議となり更に粘り強い対応が求められる。ゲートキーパー、上限金利引き下げに関しては法案立案段階に入っており、集中した運動が展開されつつある。

このページの最初へ


裁判員制度実施本部
裁判員裁判における審理のあり方についての提言案(討議資料)を公表

6月21日、日弁連は裁判員制度実施本部がとりまとめた「裁判員裁判における審理のあり方についての提言案」を公表した。一般市民が参加する裁判員制度においては、裁判官が多数の書証を法廷外で読み心証形成するという従来の証拠調べのあり方を根本的に見直す必要があることから、会内外での検討の素材を提供するために、実施本部の検討結果をとりまとめたもの。

提言案は証拠調べの基本的あり方として、つぎのような課題提起をしている。

(1)核心司法への転換

(2)人証中心審理への転換

(3)争いがある事実−自白の任意性・信用性の立証には、取調べ過程の録画・録音記録制度の導入

(4)争いのない事実の立証として、誘導尋問、合意書面、同意書面などから最も適切なものを検討する。

これらによって、捜査段階で作成される書類に依拠した裁判からの転換を図る。
同時に、提言案は、裁判員裁判という新しい条件のもとでの弁護活動の課題として、事案の核心に迫る説得力ある主張の重要性がより高まることなどを指摘している。
(全文を→こちらに掲載)

このページの最初へ

TAKE OFF! 司法支援センター《19》
コールセンター稼働に向けて

法テラスの行う情報提供業務の情報とは、(1)裁判その他の法による紛争の解決のための制度の有効な利用に資するもの(法制度情報)、(2)弁護士、司法書士等隣接法律専門職者等の業務に関するもの(関係機関情報)です。法律相談は行いません。

情報提供業務を円滑に、さらに利用者に便利な形で行うためには、電話による情報提供が不可欠です。しかし、電話による情報提供を各地方事務所で受け付けると、窓口がその対応に追われることになりかねません。
 
そこで、全国で一カ所、コールセンター(以下、CC)を設置し、簡易・定型的な情報提供は電話で対応するとともに、窓口対応が必要なものは情報提供窓口に振り分け、適切な関係機関窓口を紹介するなど、情報提供の前さばきを行います。
 
パンフレットなどを通じて、「法的トラブルでお困りの方、まずは○○○○番へお問い合わせ下さい。オペレーターが解決への道案内をします」などとCCの電話番号を広報し、CCに問い合わせを集中することで前さばきを行えるようにします。法テラス地方事務所の電話番号の広報の方法については、現在検討中です。
 
CCは、設立当初は、東京に置かれます。オペレーター(OP)としても、消費生活相談員などの有資格者を150から200名程度確保します。
 
OPが問い合わせに応じる際に必要とされる「よくある質問と答え(FAQ)」を法テラスで作成しています。日弁連はその作成に協力をしています。
OPに対する研修、問い合わせに応じるトークスクリプトの作成にも積極的に関与する必要性があると考え、対応をしています。
 
さらに、CCから全国の相談窓口等に適切に誘導するためには、CC内で、OPに対するアドバイザー役として弁護士を置くことが是非とも必要です。東京を中心にCCへの派遣が可能な弁護士会の会員約450名を募集します。9月の横浜、東京でのCC試行も見据え、6月中から希望者の募集を行い、7月から9月に研修を実施する予定です。

(日本司法支援センター対応室嘱託 鈴木啓文)

このページの最初へ

フジテレビで裁判員制度研修
局アナと弁護士のコラボレーション -- 視覚に訴える模擬裁判

大スクリーンを使った模擬裁判風景

5月26日、東京・お台場のフジテレビ本社において、同社の社員研修の一環として裁判員制度研修が実施された。裁判員制度実施本部が、模擬裁判の台本作成や実演(日弁連側から弁護士9名を含め11名が出演)に全面的に協力した。

司会者突然の逮捕でスタート

同局アナウンサーの佐々木恭子氏と田中大貴氏が司会をしている会場に、刑事が乱入して田中氏を逮捕するという設定で研修が始まり、その後取調べ、法廷、評議のシーンへと続いた。
要所では佐々木アナウンサーと弁護士が対話形式で解説を加える、ニュース映像やパワーポイントを使用して視覚に訴えるなど、刑事手続の流れや無罪推定の原則が分かりやすく伝わるよう工夫が凝らされた。

裁判員の一言で有罪から無罪へ

事件は現住建造物放火。目撃証言等から有罪へ評議が固まりつつあるなか、ある裁判員の発言で、放火ではなく自然発火の可能性もあることがわかり、一転無罪の判決が言い渡された。

制度導入理由がわかりにくいとの声も

参加者は約200名。模擬裁判は分かりやすかったと好評だったが、今までの裁判のどこが問題で、どう改善されるのかがわかりにくいとの声も聞かれた。研修の模様が同局の番組で紹介されるなど、テレビ局での研修は間接効果を含めその意義は大きい。裁判員制度実施本部では、今回の台本やノウハウを活かして、模擬裁判形式の研修を展開することを検討している。

このページの最初へ

第10回市民会議 (6月5日・弁護士会館)
弁護士任官の推進、日本司法支援センターのあり方などを議論

第10回となる市民会議(中川英彦議長)に8名の委員が出席し、弁護士任官の推進、日本司法支援センターの運用のあり方などを議論した。今回より松永真理氏((株)バンダイ社外取締役)が委員に参加している。

弁護士任官の促進についての要望書

前回に引き続き任官推進のための方策について議論した結果、以下の3点を骨子とする日弁連宛要望書がとりまとめられた。(全文は→こちらに掲載)

1、弁護士任官を法曹一元実現の手段として考えるだけでなく「市民にとってより使いやすい、満足度の高い司法制度を実現する」ための制度として位置づけるべきこと

2、任官しやすい環境づくりのため、最高裁判所に人事政策上の配慮などを働きかけたり、日本司法支援センターを活用するなどの方策を検討すべきこと

3、弁護士の身分を保持したまま裁判官の仕事を経験できる制度など任官をめざす弁護士を増やす仕組みを整備すべきこと

司法支援センターは「初動」対応が重要

センターの運用のあり方について、「市民がたらい回しにならないようコールセンターが適切に運用される必要がある」、「官僚の天下り先にならないよう監視を継続する必要がある」などの意見が出された。10月の業務開始を控え、複数の委員から「いわゆる『初動』対応で評判を落とすと挽回に苦労する」との指摘があったことに関連し、日弁連側から「各弁護士会と連携をとって十分な対応態勢を確保したい」との説明があった。

このページの最初へ

第15回憲法記念行事
改憲…どうして!? 日本はどうなる?5月27日 弁護士会館

コーディネーターの土井たか子氏

憲法改正国民投票法案が検討されるなど、憲法改正が大きく動き出そうとしている中、今年の記念行事は改憲問題に取り組んだ。

ドラマ「憲法はまだか」

基調講演を行った古関彰一教授(獨協大学)の著書「新憲法の誕生」をもとに作られたNHKドラマ。第二部「戦争放棄」のうち50分が上映され、「押しつけ憲法」と語られがちな憲法だが、誕生当時から法学者等の評価は高かったことが、分かりやすく伝えられた。

憲法の誕生とこれから

古関教授は、GHQが旧憲法改正を主導したのは、天皇制を維持し国内情勢を安定させるためには、天皇が政治権力をもたず平和主義に徹した憲法を早急に作る必要があったからだと述べた。また、自民党の新憲法草案は、軍事力を強化し人権保障に制限を加えるものだと説明した。

改憲は必要か?−パネルディスカッション

吉岡達也氏(ピースボート共同代表)は「九条が持つ国際紛争予防効果は大きい。九条を変えることは安全保障上とても危険」と述べ、沖縄の元平和バスガイド、糸数慶子参議院議員も「琉球は武器を持たないことで平和を守る、という知恵を持っていた」と語った。評論家の佐高信氏は、今ここにいない人にどう呼びかけるかが大切と言い、最後にコーディネーターの土井たか子氏が、「九条は近隣諸国への誓いであり世界へのメッセージ、改憲問題で国民は主権者としての真価が問われている」と締めくくった。

このページの最初へ

新しい国選弁護報酬基準の概要

新しい国選弁護報酬基準は、法テラスの国選弁護人契約約款に定められ、6月25日確定した。
いわゆる諸規則3点セット(業務方法書、法律事務取扱規程、国選弁護人契約約款)は、法テラスのホームページにおいて公表されている(→こちら)。
また、新しい国選弁護の解説として、冊子「国選弁護関連業務の解説」(以下「解説」)が法テラスから提供されたので、近々、会員の手元に届く予定である。同冊子には、国選弁護報酬の解説も含まれている。

特徴:弁護人の労力を反映させた客観的基準

新基準の特徴は、弁護人の労力を反映させた客観的基準とした点にある。これまでは、一応の基準はあったものの具体的事案についての報酬決定は裁判官の判断に委ねられており、明確ではなかった。ただ、基準の明確化は初めての作業であり、今回の基準がベストのものではない。いくつかの重要な論点については最後まで検討が重ねられたが、満足できる結論に至ったとは言えない。後述のとおり、将来に向けて課題が残された。

基本的仕組み
    I 事件類型による分類
    <被疑者段階>
      (1)通常事件 (2)即決事件(同意確認手続)
    <被告人段階>
      ・即決事件:(3)普通契約 (4)一括契約
      ・簡裁事件:(5)公判前整理あり (6)公判前整理なし
      ・地裁単独事件:(7)公判前整理あり (8)公判前整理なし
      ・地裁合議通常事件:(9)公判前整理あり (10)公判前整理なし
      ・地裁合議裁判員対象事件:(11)公判前整理あり (12)公判前整理なし
      ・上訴審:(13)控訴審 (14)上告審

    II 労力を反映する指標
    <被疑者段階>
      基本報酬に接見回数に応じた加算
    <被告人段階>
      基本報酬に公判回数に応じた加算
    <即決事件>
      基本報酬のみ(定額)

    ※もちろん、接見回数、公判回数のみをもって、弁護人の労力を正確に反映しきれるものではない。しかし、今回の基準は、裁量的判断要素を排除することを原則としており、一定の限界があった。将来、より優れた基準を定立するための検討が必要である。

    III 加算・減算要素
    <加算要素>
    勾留決定取消や示談の場合の成果加算、重大案件加算、特別案件加算など
    ※それぞれ加算の要件が限定されているので、詳しくは「解説」をご参照いただきたい。
    <減算要素>
    記録の閲覧・謄写を行わず、あるいは被告人との接見・打合せを持たないまま第1回公判に臨んだ場合。

    IV 費用
      (1) 遠距離接見交通費
      (2) 出張旅費・日当等
      (3) 通訳人費用
      (4) 謄写費用(1丁20円)

    ※ただし、200丁分までは基礎報酬に含まれており、200丁を超えた分から加算される。実費額でなく1丁20円の定額とされたことから、実費がこれを超えた場合には弁護人の負担となる点で課題を残した。現在、一丁20円での謄写を可能とするための方策を検討している。

いくつかの算定例
    A:地裁単独事件(起訴後選任、審理期日1回、判決期日1回、示談成立)
        →10万3,000円
    B:地裁通常合議事件(起訴後選任、公判前整理2回、2時間及び4時間の審理期日各2回、判決期日1回、記録謄写700丁)
        →21万9,000円
    C:重大合議事件(起訴前から選任、起訴前接見5回、公判前整理4回、2時間及び4時間の審理期日各2回、5時間の審理期日3回、判決期日1回、記録謄写2,000丁)
        →67万7,200円
    ※紙幅の制限上、詳細な前提は捨象しているので、正確な内容は、前記「解説」をご覧いただきたい。
将来への課題

国選弁護報酬全般の抜本的増額については、今回の新基準では実現されなかった。将来を見据えて、長期的戦略を組む必要がある。
また、新基準は、今後随時見直しを行うことが予定されており、報酬決定に際して裁量的判断要素を取り入れることの是非、労力を反映させる指標や加算要素のさらなる検討など将来に残された課題は多い。

このページの最初へ

新弁護士会北から南から〔第52回〕
長崎県弁護士会(2)

離島が多く、「司法過疎の百貨店」(水上正博会長)と言われる長崎県弁護士会。その弁護士会に、昨年10月、58期の会員が5名入会しました。大西由紀子、佐野竜之、濱口純吾、山口裕介、山下肇の各会員です。5名もの新入会員が同時期に登録したのは、長崎県弁護士会始まって以来の出来事でした。今回は、この5名の会員の声を中心にお届けします。

(広報室嘱託 五三智仁)

中島川に架かる「めがね橋」は長崎の観光名所だ

就職説明会の効用

5名のうち、長崎県出身者は濱口会員と山下会員だけで、佐野会員、山口会員は福岡県出身、大西会員は奈良県の出身。
大西会員は、長崎県弁護士会の就職説明会に参加し、弁護士会のアットホームな雰囲気と長崎県内の豊富な事件数から「地縁・血縁のない長崎でも、将来独立することが十分に可能であると判断して」入会を決めたと言う。
福岡修習だった佐野会員、山口会員は、やはり修習生時代に長崎県弁護士会の就職説明会開催の知らせを受けた。山口会員は「大都市である福岡以外のところの方が、自分が必要とされていると感じた」と言い、佐野会員は「他の弁護士会の説明会にも参加したが、長崎県は、弁護士会の先輩会員の人当たりがとてもよくて、会員同士の仲が良さそうに見えたので、長崎県に決めた」そうだ。
前号で紹介したように、長崎県では毎年11月に開催している修習生に対する就職説明会に力を入れており、それが効を奏したと言えそうだ。

長崎の勉強会は多種多様、多数の参加者が詰めかける

充実した勉強会

山下会員は、長崎県弁護士会の特徴として、勉強会が充実していることを挙げた。
5名の新入会員が所属している消費者問題特別委員会では、定期的に事例研究の勉強会が開催されている。これには会員のほか、消費者センターの相談員、司法書士、修習生なども合わせ、総勢60名から70名が参加するという。特に福ア博孝会員(33期)が講師を務める特定商取引法に関するケース研究は、いつも大好評だそうだ。
それ以外にも、法律扶助協会長崎県支部が主催する勉強会もあり、地裁の書記官によるDV事案での仮処分手続の講義や、検察庁の次席検事による公判前整理手続の講義なども随時開催されている。
5月30日にも、法律扶助新人研修会が開催され、裁判所書記官による「配偶者暴力に関する保護命令事件における留意事項」の講義が行われ、弁護士、司法書士、修習生合わせて20名程の参加があった。

移動時間は苦労ではない

濱口会員は「長崎県では、若手でも一人前の弁護士として扱ってもらえるので、業務の面でも、委員会活動でも、やりがいがある。その点が都市部との違いではないか」と語った。
現に、濱口会員は対馬弁護士相談センターの担当員として活躍中である。対馬までは20人乗りの飛行機で30分かけて通うそうだ。
山口会員は、当番弁護として五島市で発生した刑事事件を受任し、現在同事件の国選弁護人として活動中である。五島市には船で片道1時間半かかるらしい。
また山口会員は、今年の4月には他の会員との交替も含めて3回の当番弁護を担当し、1回につき4件接見したこともあった。一回の接見に往復2時間を要することもあるという。
やはり移動時間の長さは避けて通れないようであるが、そこは元気な若手会員、「たしかに移動時間は長いけれど、忙しい日常業務から一時離れることができて良い息抜きになるから、むしろ楽しい」(大西会員)とのこと。長崎県で活躍するには、長時間の移動くらいは苦にしてはいけないのだろう。

水上会長を囲む新入会員の皆さん

同期の絆

今回お集まりいただいた5名の同期生は、とても仲が良く結束が固い。
濱口会員は「同期の仲間は抱える悩みが共通するので、心強い」と言い、山下会員も「仕事でわからないことがあっても、同期の仲間に聞けば誰かが経験していることがある」と話してくれた。
やはり、同期の絆は何にも代え難いのだろう。
5名を父親のような表情で見守っていた水上会長は「同期がたくさんいて、切磋琢磨していくことで将来の弁護士会の基盤が出来上がっていく。今のつながりをずっと持っていてもらいたい。そして、5年後、10年後にみなさんが弁護士会を引っ張っていってほしい」と語りかけていた。

※今回この記事に掲載する写真の撮影に関して、長崎県弁護士会の中西祥之会員および事務局の松下美穂さんに大変お世話になりました。紙面をお借りして心より御礼申し上げます。

このページの最初へ