日弁連新聞
2006年 6月1日 第389号
第57回定期総会
通算10度目となる「司法改革実行宣言」を採択
5月26日、岡山市において日弁連定期総会が開催された。出席会員は6576名(本人出席749名、代理出席5775名、会出席52名)。平成17年度決算報告、平成18年度予算案のほか、通算10度目となる司法改革実行宣言案、3本の決議案などが審議され、いずれも承認・可決された(予決算資料は
会員用ホームページ、宣言・決議全文は
こちらに掲載)。
決算報告・予算案審議
平成17年度決算は、収入約41億2900万円(うち前年度からの繰越金4億6300万円)に対し、支出が約35億9300万円であり、次年度への繰越金は約5億3600万円となった。平成18年度予算では、約47億7100万円の収入見込に対し、約47億300万円の支出が計上されている。
なお、司法支援センター常勤弁護士養成のため、全国の養成事務所に対し援助金を支給していくとの方針に基づき、本年1月に設置された「日本司法支援センター常勤弁護士養成援助基金特別会計」に3億円の予算が計上された。
司法改革実行宣言〜司法アクセスのさらなる拡充と公的弁護対応体制確立のために
市民の期待に応える「大きな司法」の実現は弁護士・弁護士会の責務であることを確認し、ことに10月に業務を開始する日本司法支援センターの活動を全面的に支えることを宣言するもの。討論では弁護活動の自主性・独立性に対する干渉を懸念する意見も出されたが、採決の結果、圧倒的多数で採択された。
引き続き未決拘禁制度の抜本的改革と代用監獄の廃止を求め、刑事司法の総合的改革に取り組む決議
衆議院を通過し現在参議院で審議中の未決拘禁制度改革法案に関連して、引き続き代用監獄の廃止を求めるとともに、取調べの可視化、人質司法の見直しなど刑事司法手続の総合的改革に取り組む決意を表明するもの。討論においては、法案に明確に反対すべしとする立場からの修正案が提案されたが、採決の結果修正案は否決され、原案どおり可決された。
弁護士から警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)の立法化を阻止する決議
2007年の通常国会への上程に向け作業が進められているゲートキーパー立法に関し、弁護士が依頼者を警察に密告する制度を決して容認することはできず、全会員が一丸となって立法を阻止する運動をさらに強力に推し進める決意を表明するもの。
出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げること等を求める決議
2007年1月を目途に行うとされている上限金利の見直しに向けて、国に対し、出資法の上限金利を利息制限法の制限金利まで引き下げること、「みなし弁済規定」を廃止することなどを求めるもの。
共謀罪法案に対する市民の懸念高まる
今国会での成立は不透明に
いわゆる共謀罪法案は、4月21日に衆議院法務委員会で審議入りし与党修正案が提案されたが、法案に対する市民の懸念の高まりを受け、4月中の委員会採決は見送られた。このため、与党は5月12日、共謀罪が適用される団体を「組織的な犯罪集団」と明示し、また、「犯罪の実行に資する行為が行われた」との要件を「犯罪の実行に必要な準備その他の行為が行われた」とするなどの「再修正案」を提示した。
これに対し、日弁連は同日「与党再修正案に対するコメント」を発表し、
適用対象となる「団体」の定義は以前と変わっておらず、「その他の行為」についても範囲が明確でなく拡大解釈の余地を残していること、
依然として「越境性」は要件とされておらず、対象犯罪も「4年以上の懲役・禁錮」となる犯罪のままであるなど絞り込みが不十分であること、
このような重大な立法について拙速審議すべきでなく、条約の審議内容と各国の実施状況を徹底調査したうえで、条約の趣旨・目的を損なわず、かつ濫用の危険性を払拭するため十分に議論すべきことなどを指摘した。
日弁連はさらに、5月17日に、参議院議員会館で共謀罪に反対する院内集会を開催した。5月15日に発表された日本ペンクラブ(井上ひさし会長)の反対声明が紹介されるなど、引き続き市民団体等と協力して運動を展開していく方針が確認された。
ここにきて共謀罪の問題点を指摘する報道が相次ぐなど、法案についての関心と懸念が拡がっており、今国会で成立するか否かは不透明な情勢となっている。日弁連はこれからも、法案の問題点を指摘し、将来に禍根を残すことのないよう、慎重な上にも慎重な審議を重ねるよう求めていく。
検察庁が取調べの録画・録音の限定的試行を発表
日弁連はあくまで「全過程」の可視化を求め活動を展開
検察庁は5月9日、裁判員制度導入に備えるため、検察官による被疑者取調べ状況の録画・録音を東京地検等で試行すると発表した。ただし、録画・録音の範囲は裁判員裁判の対象となる重大事件に限定され、録画・録音の要否についても検事が任意に選択し、警察段階では導入しないなど極めて限定的な内容となっている。
日弁連は、上記方針について「一歩前進」と歓迎する一方、「取調べの一部だけが可視化されても任意性・信用性の問題の解決にならない」と指摘し、あくまで取調べの全過程の録画を求め「関係当局のさらなる英断を期待する」とのコメントを発表した。
上記発表に先立ち、5月1日に開催された取調べの可視化実現本部全体会議では、(1)実務における可視化の実践、(2)刑事司法関係者との対外折衝、(3)市民・マスコミ・国会議員等へのPR活動、(4)反対論を克服するための研究調査等を内容とする活動方針が承認された。特に(1)については、捜査段階における録画・録音申入れ、被疑者ノートの活用、公判(公判前整理含む)における可視化の主張明示等を日々の弁護活動で実践するよう、全国の会員に協力を求めていく。
ひまわり
まだまだ昔話をする年ではないが、弁護士になって20年余の間に、弁護士業務を巡る状況は大きく変わってきた▼ここでは仕事の「道具」の点をとりあげよう。20数年前には、「和文タイプ」があり「ワープロ」も出始めたばかりだった。ファックスも珍しかった。「自動車電話」が運転手付きの車と同じような、特権的なものだった(もちろん、コンパクトなケータイなどなかった)▼いまや、弁護士会の活動を見ても、委員会のメーリングリストにより、遠く離れた多くの人たちが瞬時にやりとりができる。インターネットで国会の審議がリアルタイムで(録画でも)手に取るように見える。国会会議録の入手も簡単だ。日弁連でもテレビ会議が開かれ、遠方の仲間と活発な議論ができる。日弁連の会員専用ホームページでは、ビデオ研修が可能になっている▼日弁連ホームページといえば、アクセスが7万件を超えた日があった。われわれの発信を受け取ってもらえるチャンスが増えた。一般の方々の声もわれわれに届きやすくなった▼何でも早ければよいというものではないが、あっという間に情報が流布される今日、多くの会員を擁する日弁連がいかに情報伝達して議論するか、どうやって意見を集約するか、今後も一層の工夫が求められよう。(A・I)
金融庁・懇談会中間整理まとまる
出資法上限金利引き下げ請願署名の成功を
4月21日、金融庁貸金業制度等に関する懇談会は、みなし弁済制度を廃止し、出資法の上限金利を「利息制限法の上限金利水準に向け、引き下げる方向で検討することが望ましいとの意見が委員の大勢であった」とする中間整理をとりまとめた。
この中間整理を受け、各党で検討が進められ、自民党でも7月までには、方向性を出すといわれている。
現在、上限金利引き下げ実現本部では、各弁護士会に働きかけ、与党を中心に議員への要請を強めている。自民党の有力議員が賛意を示すなど確実に運動は広がっている。
また、与党の有志議員の勉強会「被害者をださない健全な消費者金融を考える会」も開催されていて、そこでの議論の方向も注視する必要がある。
日弁連の高金利引き下げ運動の成否は、市民の圧倒的な支持を得た活動ができるかどうかにかかっており、5月1日から始めた「出資法の上限金利引き下げ等を求める請願署名」は極めて重要な運動である。5月17日には、実現本部委員が有楽町駅前で市民にチラシを配布し署名を求めた。高金利問題が広く報道されていることもあり、市民の関心も高まりつつある。
既に市民団体でも18万の署名を集め、労働福祉団体(中央労福協)でも同様の署名運動を開始しており、9月までには、市民団体と協同で100万筆の署名運動を成功させることを目標としている。会員各位のご理解のもと数多くの署名を集めて頂くようお願いする。なお、署名用紙は
こちらからダウンロードできる。
(問い合わせ先 日弁連人権第2課:03−3580−9910)
(上限金利引き下げ実現本部事務局長 新里宏二)
TAKE OFF! 司法支援センター《18》
民事対応態勢整備本部の設立
去る3月に、法務省が茨城県下でコールセンター(以下、CC)の試行に取り組みました。その結果、CCには全国から年間120万件の電話が予想されること、電話の多くは弁護士が対応するべき法律相談を求めていること、試行段階でのシステムでは弁護士会や司法書士会への振り分けが必ずしも適切に行われないこと、などの課題が浮き彫りとなりました。
CCにアクセスした利用者を適切な相談機関に誘導し、各相談機関が迅速に的確な助言や情報を提供し、必要に応じて事件として受任できる体制を敷くことが、総合法律支援法の求めるところです。このためには、CCにおける的確な振り分け業務、CCと弁護士会などの相談機関との密接な連携、そして各地における充実した法律相談と事件受任、という3つの視点に立った態勢の整備が不可欠です。
このような民事対応態勢の確立と充実を図るために、日弁連では4月の司法支援センター推進本部全体会議において、民事対応態勢整備本部を設置しました。
この本部内本部においては、現在、CCにおける的確な振り分け業務に資するため、CCのオペレータ(以下、OP)が使用するFAQ案(よくある質問と回答集)やトークスクリプト(オペレータマニュアル)の案の提供を受けて、その内容の検討に着手しています。 このFAQとトークスクリプトについては、(1)記載内容が法的に正確であること、(2)OPが各士業の業務範囲に関する正確な知識を利用者に伝達できることの2点を特に重点に検討しています。また、振り分け業務の的確性を確保する一つの方法として、OPの背後に弁護士をスーパーバイザーとして配置することなども検討課題としています。
他方、各地における法律相談と事件受任の態勢充実化を図るために、弁護士会の法律相談体制をより一層強化していただくことは勿論、法テラス地方事務所において定例日の扶助相談を実施する必要性をあらためて確認していただきたいと考えています。また、CCから弁護士会に転送された電話に対応して、弁護士によるミニ電話相談(東京では弁護士電話ガイドと称している)ができないか検討を進めているところです。
(日本司法支援センター推進本部副本部長・民事対応態勢整備本部本部長 松崎 隆)
未決拘禁法案 参議院審議始まる
法案修正を求め精力的活動を継続
未決拘禁法案は、4月18日に衆議院で原案のとおり可決された。衆議院法務委員会では14項目にわたる附帯決議がなされたが、日弁連としては、代用監獄の廃止・漸減に向けての道筋を法案の附則において明確にするよう、参議院において求めていくこととした。このほか、刑事施設の規律及び秩序を害する行為があったとして弁護人との面会を一時停止することを認める条項の削除、未決拘禁者の処遇原則としての「無罪推定を受ける者にふさわしい処遇」の明確化等いくつかの法案修正を求め、また、刑事司法制度の総合的改革に直ちに取り組むべきこと、視察委員会に弁護士会推薦委員を選任すべきこと、弁護人と未決拘禁者との連絡手段としての電話・テレビ電話・ファックスの導入についての全国的展開などの附帯決議も求めることとした。
参議院においてこれらの法案修正や附帯決議を求めるべく、刑事拘禁制度改革実現本部では、5月18日に国会議員に対し、一斉に要請行動を行った。当日は、全国から委員が議員会館に集まり、精力的な活動がなされた。
同法案については、5月18日に参議院法務委員会での審議が始まっている。
少年法「改正」案をめぐる動き
審議入りを控え院内集会・国会議員要請などの活動を展開
少年法「改正」法案は、今国会に再上程された後、衆議院法務委員会での審議は開始されていない。法案の問題点について国会議員に理解を得るため、関係議員の地元弁護士会や子どもの権利委員会のメンバーを中心に、要請活動が続けられている。
5月12日には、衆議院第一議員会館において、4回目の院内集会が開催された。出席者は、国会議員、議員秘書、一般参加者、弁護士合わせて70名以上に上った。
冒頭、本庄武氏(一橋大学専任講師)から、少年法「改正」問題研究会の作成した意見書をもとに、今回の「改正」法案のねらいと社会に与える影響について報告があった。
民主党からは枝野幸男、平岡秀夫、高山智司、江田五月、社民党からは保坂展人、重野安正、共産党からは仁比聡平の各議員の参加が得られ、児童福祉の現場に警察が介入することの問題点、集会などを通して法案の問題点を多くの人に知ってもらうことが大事である等の発言があった。
さらに教育現場からの発言として、松島裕子氏(日本教職員組合教文局・中央執行委員)が「法律で子どもたちを押さえこむのではなく、一人一人の子どもの声に耳をかたむけることが大事」、小池由美子氏(日本高等学校教職員組合・書記次長)が「厳罰で子どもは立ち直れない。やり直しの機会を保障し、家庭・学校・地域が共同して育てていくことが必要」と述べた。
家庭裁判所調査官の伊藤由紀夫氏からは「少年による殺人などの凶悪な犯罪が増加していると報道されているがそれは誤っている。厳罰化ではなく、それぞれの少年に合った対応が必要」との指摘があった。
最後に斎藤義房会員(子どもの権利委員会・少年法「改正」問題緊急対策チーム座長)が、国会の情勢は流動的であるが、今後も市民集会を行うなど、最後まで法案の問題点を訴えていくと決意を述べた。
「共謀罪」に関する審議の影響で、国会の動きは予断を許さないが、日弁連は、引き続きねばり強く国会議員に対する働きかけを続けていく予定である。
司法支援センターの諸規則・国選報酬基準が確定
日本司法支援センター(法テラス)のいわゆる諸規則3点セット(業務方法書・法律事務取扱規程・国選弁護人契約約款)が、法務大臣認可により確定した(5月22日発行のFAX速報83号に詳細記事)。
国選弁護の契約締結
契約締結の方法、指名・通知の方法については、業務方法書と契約約款で定められる。
契約締結の原則的運用として予定されているのは、「とりまとめ」または「推薦」方式である。「とりまとめ」方式とは、弁護士会が法テラス地方事務所に申し出ることにより、弁護士からの契約申込みを弁護士会がとりまとめて地方事務所に提出する方式であり、「推薦」方式とは、さらに弁護士会が「推薦」する弁護士のみをとりまとめる方式である。
国選弁護人の指名・通知
法テラス地方事務所は、国選弁護人の「指名・通知用名簿」を調製するが、調製にあたっては、弁護士会の協力を得ることが原則的運用である。具体的には、各地方の実情に応じて、関係機関の協議によって指名・通知の方法を定め、その上で、実質的には弁護士会が「指名・通知用名簿」を作成して地方事務所に提出し、地方事務所ではこの名簿によって配点業務を行う。名簿の運用状況について、地方事務所は弁護士会と協議を行う。
措置の基準・要件・手続
契約弁護士に対する契約解除、契約の効力停止等の措置については、法律事務取扱規程で定められる。
措置の基準は、確立された弁護士倫理である弁護士職務基本規程から23項目の条項が抽出されている。努力目標である条項について措置の範囲を限定するため、違反の程度により措置の要件でしばりがかけられている。また、措置に至るまで、各段階で弁護士会・日弁連の意見が反映される仕組みが用意されている。
国選弁護報酬
国選弁護報酬基準は、労力に応じて算出することを基本としており、事案の重さに応じた基本報酬に、被疑者段階では接見回数、被告人段階では公判回数(公判前整理手続を含む)に応じて金額が加算される仕組みである。
ゲートキーパー立法阻止のための運動計画を承認
新たな名称は「弁護士による警察への依頼者密告制度」
ゲートキーパー立法は、来年の通常国会への上程に向け現在警察庁において検討が進められており、本年秋頃までには法案の骨子が固まるといわれている。
日弁連は、昨年11月に政府の「国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部」が金融情報機関(FIU)を金融庁から警察庁へ移管することを決定したことにより、ゲートキーパー立法自体が到底容認できず強力な反対運動を展開するとの方針を確認している。
上記方針に基づき、5月2日の理事会に合わせて開催されたゲートキーパー問題対策本部全体会議において、2006年度の運動計画が承認された。
早速6月には、推進本部委員による国会議員への一斉要請など国会対応を続けていくほか、マスコミ論説・解説委員との懇談会や、各弁護士会会長名での地方紙への投稿など制度の問題点を広く市民に訴えていく。また、本制度を「ゲートキーパー制度」と呼んできたが、その名称は国民、国会議員などに分かりにくいとの声があったので、同本部全体会議で「弁護士による警察への依頼者密告制度(ゲートキーパー制度)」へ変更することが承認された。
シンポジウム「弁護士のあり方を地域から考える」
司法過疎解消の呼びかけに修習生90名が参加 5/20弁護士会館
将来、ひまわり基金法律事務所に赴任を考えている司法修習生、若手弁護士らに向けてのこのシンポジウムも、今年で6回目を数える。今年は、4月に発足した日本司法支援センターも加わり、スタッフ弁護士募集の説明も行われ、約90名の修習生を含む250名以上が参加した。
冒頭、昨年4月に相馬ひまわり基金法律事務所に赴任した葦名ゆき会員(福島県)を特集したテレビ番組がビデオ上映され、同会員の活躍ぶりや地元での歓迎ぶりが紹介された。
引き続き、熊坂義裕氏(岩手県・宮古市長)、岩井重一会員(日本司法支援センター事業企画本部長)、大山勉会員(鹿児島県・鹿屋ひまわり基金法律事務所所長)、冨田さとこ会員(第二東京)、葦名会員によるパネルディスカッションが行われた。
葦名会員は「弁護士がいなかった地域は法律がなかったのと同じ」と述べ、地元の人たちから「弁護士に相談できる日を待っていた」と言われたことへの喜びを語った。大山会員は「過疎地域では、自分で予想した以上に市民の弁護士への期待が大きい。2年半の鹿屋での活動に自分自身では満足しているが、市民はまだ弁護士不足を感じているはず」と問題意識を披露した。法テラスのスタッフ弁護士への就任を考えているという冨田会員は「司法過疎は深刻な問題。法テラスはこれからの組織であり、自分たち若手弁護士が制度を作っていける点に魅力を感じる」と述べた。
熊坂氏は、宮古ひまわり基金法律事務所所長の田岡直博会員の活躍に謝意を述べるとともに「弁護士を必要とする地域に望まれて赴任することは大きなやり甲斐に通じるはず。今や弁護士がいなければ地方行政も機能しない。本当に困っているところで頑張ってみようという気持ちを持っている人に是非活躍してもらいたい」と、過疎地域を代表する立場で司法修習生らに力強く呼び掛けた。
午後からは、29の弁護士会、司法支援センターによるPR、供給型A協力事務所、常勤スタッフ弁護士養成事務所による合同説明会が行われ、多数の修習生が熱心に説明を受けていた。
4/28 会員報告集会
知的障がいのある人の刑事弁護のあり方を考える
宇都宮誤認逮捕事件を契機として
宇都宮市で2004年4月に発生した強盗事件において重度知的障がいの男性が誤認逮捕・起訴された問題で、日弁連は今年3月、捜査過程で虚偽の自白を強要するなど重大な人権侵害があったとして、検事総長らに対し人権救済申立に基づく警告を発した。同警告書は、捜査機関に取調べの可視化などの再発防止策を求める一方、「知的障がいのある人の弁護活動のあり方の十分な周知・研修等」の必要性にも言及しており、本集会はそのための取り組みの第一歩として開催された。
報告においては、人権救済申立の代理人である副島洋明会員(東京)が「被疑者が最重度の知的障がい者であっても捜査機関は詳細な供述調書や図面を作り上げてしまう。弁護人が乙号証の内容を安易に前提とすると方針を誤ることになる」と警鐘を鳴らした。同様に精神発達遅滞のある被告人を弁護し無罪判決を得た阿部潔会員(仙台)は「被告人は相手に強く出られると迎合する傾向があり、捜査官に理詰めで問われると弁解できず自白調書をとられてしまった。捜査の現場では知的障がいのある被疑者の取調べについて何の配慮も無いようだ」と捜査機関の問題に言及した。
発達心理学者の浜田寿美男教授(奈良女子大学)は、甲山事件など多数の冤罪事件に関わった経験から「知的障がい者が被疑者・被害者・目撃者などのかたちで刑事裁判に登場する場合、取調官が『一人称独白型の供述調書』を作成することにより彼らの供述を歪曲して利用してしまうケースがみられる。今の刑事取調べの問題が最も顕著に表れる場面だと思う」と指摘した。
日弁連は、今後も知的障がいのある被疑者・被告人の刑事弁護のあり方について取り組みを続けていく。
日弁連新聞モニターのご意見から
日弁連新聞では、毎年4月に全国から71名のモニターをご推薦頂き(任期1年)、そのご意見を紙面作りに生かしています。
最終面の「新弁護士会北から南から」(以下「北南」)は、「他会の実情が分かる」「気楽に読める」と好評。マンネリを避けるため、昨年度は一時休載し「ユニークな領域で活躍する弁護士たち」の連載を試みたところ、こちらもまずまずの評価でした。その他、モニターの「公判前整理手続についての情報が欲しい」との声を踏まえ、本年5月に特集記事を掲載しました。今後も「北南」を続けながら、適宜「番外編」を提供していきます。
2005年1月号から連載している「TAKE OFF!司法支援センター」も多く読まれています。センターのあり方は弁護士実務に関わる関心事であり、可能な限り情報提供していきたいと考えています。
定期的に掲載する役員紹介、ブロック大会記事、懲戒請求事案集計報告などについて、「必要性はあると思うがここまで紙面を割く必要があるのか」との意見が複数ありました。定番記事でも毎回体裁を工夫することの重要性を痛感しています。
新聞の性格上、日弁連の政策に関する記事が大半を占めるため、「もっと業務に役立つ記事が読みたい」との意見も寄せられます。自由と正義、ホームページとの役割分担もありますが、今後は業務関連ニュースも載せたいと思います。
見出しの付け方、写真の使い方についても率直なご意見が寄せられます。斜め読みしても概略を掴めるよう、「一見して分かる見出し」「臨場感ある写真(難しいですが)」を掲載するよう心がけます。皆さんもご意見を下記メールアドレス宛にお寄せ下さい。
(広報メールアドレスは廃止しました。こちらの
ご意見・ご感想フォームよりお送りください。)
(日弁連広報室長 生田康介)
新弁護士会北から南から〔第51回〕
長崎県弁護士会(1)
公判前整理手続解説のため先月号はお休みをいただきましたが、今号より連載を再開します。前回は会員数1000名を超えた愛知県弁護士会をご紹介しました。今回は会員数81名の長崎県弁護士会です。異国情緒あふれる長崎県弁護士会の様子をご覧下さい。
(広報室嘱託 五三智仁)
長崎は今日も大雨だった♪
長崎県の気候は、温暖・多雨というのが特徴。対馬暖流に洗われ、海岸線が複雑に入り込み海域面積が大きく、海の影響を受けやすいためである。
1982年7月23日の長崎大水害では、降り始めから翌日までの総雨量572ミリメートル、死者・行方不明者299名、住宅被害は約4万戸に達した。
筆者が長崎県弁護士会を訪問した日も、朝から大雨であった。
「2期目」の水上会長
大雨の中、心許ない折りたたみ傘を差しつつ、いざ長崎駅から徒歩約10分の長崎県弁護士会へ。ビル4階の弁護士会で、にこやかに水上正博会長(33期)、梶村龍太事務局長(51期)ら執行部の皆さんが応対してくれた。弁護士事務局長にお目にかかるのは久しぶりだ。
水上会長は、昨年度に引き続き会長職2期目。「2001年以降、会長は毎年交替していたはずなのに、どういうわけか自分は2期目に入ってしまった」と苦笑い。ご苦労様です。
司法過疎の百貨店
水上会長は「長崎は、司法過疎の百貨店だ」という。
地図を見ると、壱岐、対馬、五島など、長崎県には離島が多いことがわかる。このため、早くから公設事務所設置の動きが活発であり、2000年4月、対馬に派遣型の公設事務所が設置されると、長崎県弁護士会では、福岡県弁護士会と共同で、5年にわたって会員を毎週2泊3日で派遣してきた。現在では、その対馬を含め、島原、五島にそれぞれ常駐の公設事務所が開設されている。このほか、平戸の相良勝美会員は、平戸にひまわり基金法律事務所の所長として赴任した後、自らの事務所を開設して定着した。島原では第2公設事務所の設置が予定されており、6月以降に所長弁護士が選任される予定だそうだ。壱岐についても毎週1泊2日での派遣型公設事務所を設置しており、現在、福岡県、佐賀県の各弁護士会と共同して弁護士を派遣している。
「離島問題は、九州全体でカバーしなければならない」と永田雅英副会長(43期)は強調していた。
佐世保支部の弁護士不足は深刻
水上会長が離島問題よりも深刻に捉えているのが佐世保支部問題(会員数11名)である。佐世保支部の第一審通常訴訟事件数は本庁の約半数あるにもかかわらず、本庁管轄の弁護士一人当たりの人口が約9000人であるのに対し、佐世保のそれは実に3万2000人。水上会長は「被疑者国選弁護制度に対応するためには、是非とも司法支援センターの地域事務所を設置し、スタッフ弁護士を派遣してもらわなければならない」と話していた。
是非、長崎県弁護士会へ
弁護士会としても、会員数増加のための様々な努力を重ねている。毎年秋には、全国の修習生に向けて就職説明会の案内を発送しており、昨年も東京や千葉から10名以上の修習生が説明会に訪れたという。
その甲斐あって、3、4年前から新入会員が増加傾向にあり、昨年は58期の修習生5名が新規登録した。
森本精一副会長(43期)は「現在81名の会員が150名に増えたとしても、十分に受け入れが可能だと思う。若手弁護士の勉強会も充実しているので、司法修習生や若手弁護士の方は、是非、長崎県に来てもらいたい」と呼びかけていた。
市民に好評のホームページ
長崎県弁護士会のホームページは、昨年12月に完成した弁護士検索機能の充実が目立つ。地域、性別、年代で弁護士を検索できるほか、遺言相続、労働事件、民事介入暴力など30を超える分野毎にその分野を取り扱う弁護士を検索できるようになっている。各事務所の位置もわかりやすい。市民には非常に好評だという。
裁判員制度に関しては、5月9日に、裁判所・検察庁と共催で一般市民向けのビデオ上映と質疑応答の説明会を開催した。平日の午後であるにもかかわらず180名もの市民が参加した。
会員向け広報としては、水上会長手作りの「FAX便り」が好評だ。毎月1回、常議員会報告、日弁連理事会報告、行事案内などを掲載する。5月9日発行の本年度第2号は資料を含め実に22頁。水上会長のご努力に敬服するばかりである。
上海、台湾法曹界との交流
長崎県は、もともと日本の窓口として異国文化が溶け込んでいる土地柄。弁護士会では国際委員会が中心になって、上海の浦東新区司法局と長年にわたって交流を続けてきた。
さらに、2003年3月には、台湾の台南律師公会と交流合意書を取り交わし、姉妹会となった。なんでも、近松門左衛門の戯曲「国性爺合戦」のモデルとして有名な鄭成功(テイセイコウ)が、平戸の出身でかつ台湾の英雄であるというのがきっかけになったそうだ。隔年でお互いに行き来し、交流を深めているとのこと。佐世保問題等で深刻な顔をされていた皆さん、この話のときが一番楽しそうであった。
次回は、「司法過疎の百貨店」を解消するべく長崎県に飛び込んだ58期の精鋭会員5名の活躍を中心にご紹介しようと思う。