自由権規約 委員会による一般的意見一覧
訳 日本弁護士連合会
序 文 1
一般的意見
1(13) 40条・報告義務
一般的意見
2(13) 40条・報告のための指針
一般的意見
3(13) 2条・締約国の義務
一般的意見
4(13) 3条・両性の平等
一般的意見
5(13) 4条・権利の停止
一般的意見
6(16) 6条・生命に関する権利)
一般的意見
7(16) 7条・拷問、 品位を傷つける取扱い)
一般的意見
8(16) 9条・身体の自由及び逮捕又は抑留の手続
一般的意見
9(16) 10条・身体の自由及び逮捕又は抑留の手続
一般的意見10(19) 19条・表現の自由
一般的意見11(19) 20条・戦争宣伝、差別唱尊の禁止
一般的意見12(21) 1条・人民の自決権
一般的意見13(21) 14条・公正な裁判を受ける権利
一般的意見14(23) 6条・生命に対する権利と核兵器
一般的意見15(27) 規約上の外国人の地位
一般的意見16(32) 17条・私生活、
家族、 通信等の保護
一般的意見17(35) 24条・子どもの権利
一般的意見18(37) 26条・法律の前の平等
一般的意見19(39) 23条・家族の保護
一般的意見20(44) 7条・拷問、品位を傷つける取扱い
一般的意見21(44) 10条・自由を奪われた者の取扱い
一般的意見22(48) 18条・思想・良心・宗教の自由
一般的意見23(50) 27条・少数民族の権利
一般的意見24(52) 人権規約又はこれについての選択議定書の批准又は加入の際の留保に関する問題についての又は規約第41条に基づく宣言についての一般的意見
一般的意見25(57) 25条・政治に参与する権利
一般的意見27(67) 12条・移動の自由(PDF形式・28kB)
一般的意見28 3条・両性の平等(PDF形式・41kB)
一般的意見29 4条・緊急事態(PDF形式・34kB)
一般的意見30 規約第40 条で規定される締約国の報告義務(PDF形式・20kB)
一般的意見31(18) 規約締約国の一般的法的義務の性質(PDF形式・27kB)
一般的意見32 14条・裁判所の前の平等と公正な裁判を受ける権利(PDF形式・85kB)
一般的意見33 市民的及び政治的権利に関する国際規約第1選択議定書に基づく締約国の義務(PDF形式・29kB)
注1:カッコ内の数字は、当該意見が採択された会期を示す。
注2:「一般的意見27」からPDFファイルで掲載している。
序文 1
委員会は締約国がその報告義務を果たすことを進んで援助する意志のあることを繰返し表明する。これらの一般的意見はかかる事項の一部の側面に注意を喚起するものであるが、制限的な意味を有せず、 また規約の実施における異なる側面の間で優先的な順位を付すものではない。これらの意見には、 時間的制約が許し、 経験が累加されるに従い、 随時他の意見が続くであろう。
委員会は、 これまでのところ77の1次 (初回) 報告、 34の2次定期報告及び特定の事件における追加情報及び補足報告を審査している。この経験は、 現在規約を批准している締約国87カ国の内のかなりの数を網羅している。かかる締約国は政治形態、 社会体制及び法体系の異なる世界の様々な地域を代表しており、かかる締約国による報告は、規約の実施において発生しうる問題のほとんどを例証している。
ただし、 かかる報告は市民的及び政治的権利に関する全世界の状況を検討する完全な根拠を提供するものではない。
これらの一般的意見の目的は、 かかる経験をすべての締約国の利益に役立てることによって、締約国における規約の実施をさらに促進すること、 かかる締約国に対し、多数の報告により明らかにされた規約実施の不十分さに注意を喚起すること、報告手続の改善を提案すること、 及び人権の促進と保護におけるかかる締約国及び国際組織の活動を奨励することである。これらの意見は、その他の国家、 特に規約の加盟国になろうとしている国家にとっても有益であり、従って世界的な人権の促進と保護におけるすべての国家の協調を強めるためにも有益である。
一般的意見1 (13) (40条・報告義務) 1981.7.28採択
締約国は、 規約第40条に従い、 当該締約国についてこの規約が効力を生ずる時から1年以内に、そしてその後は委員会が要請するときに、 報告を提出することを約束した。現在まで、第1回の報告を要請する、 この規定の最初の部分のみが定めに従い実施されているにすぎない。委員会は、 その年次報告から明らかなように、少数の国のみがその報告を時間通りに提出したにすぎないことに留意する。大部分の報告は数か月から数年に及ぶ遅滞をもって提出されたし、 若干の締約国は委員会が何度も督促及びその他の行動をとったにもかかわらず、依然報告を未提出である。次のような事実、 つまり多くの締約国は多少の遅れにもかかわらず、委員会と建設的な対話をもってきたという事実から、 締約国は通常、 第40条第1項の定める期間内に報告義務を履行することができるはずであること、及び、今後そのように行動することは締約国自身の利益にもなること、 と思われる。規約の批准に際しては国は、 非常に多数の市民的及び政治的権利をカバーする報告の適正な準備には必然的に時間を必要とするものであることから、その報告義務にきちんと留意しておくべきである。
一般的意見2(13) (40条・報告のための指針) 1981.7.28採択
1 委員会は、 提出された第1回報告のいくつかが極めて短くかつ一般的であったため、報告の形式及び内容に関する一般的ガイドラインを作成することが必要であると認めたことに留意する。これらのガイドラインは、報告が均一の形で提出されるよう確保すること並びに委員会及び締約国が規約で述べられた権利の実施に関し各国における事態の完全な描写を得ることができるようにすること、を狙いとしていた。しかし、 ガイドラインにもかかわらず、 いくつかの報告は依然、極めて短くかつ一般的であって、 第40条の報告義務を満たしていない。
2 規約第2条は、 規約を実施するために必要な、 立法措置その他の措置をとりそして救済措置を与えることを締約国に要求する。第40条は、 締約国が、そのとった措置、 規約上の権利の享受についてもたらされた進歩並びに規約の実施に影響を及ぼす要因及び障害が存在する場合には、その要因及び障害、に関する報告を委員会に提出するよう要求する。 形式上一般的にはガイドラインに従った報告であっても、内容上不完全であった。 いくつかの報告からは、規約が国内法の一部として実施されているのか否かを理解することは困難であったし、そして多くの報告は、 関連する法令に関して明らかに不完全なものであった。いくつかの報告では、権利を守りかつ実施する国内機関の役割が明らかにされていなかった。 更に、 規約の実施に影響を及ぼす要因及び障害につき説明している報告は、ごくわずかしかなかった。
3 委員会の考えるところでは、 報告義務には、 規約上の義務に関する関連法令のみならず、規約で認められる権利の実際の実施と享受の程度を示すであろう、締約国の裁判所やその他の機関の実行及び決定及びそれ以外の関連事実、もたらされた進歩並びに規約上の義務を実施する際の状況及び障害、 も含まれる。
4 委員会実行では、 その暫定手続規則第68条に従い、 報告国の代表者の出席の下で報告を検討することとなっている。その報告が検討されたすべての国は、代表者の出席につき委員会に協力したが、代表者の地位、 経験、 人数については、 様々であった。 委員会の希望を表明すれば、第40条の自己の任務を可能なかぎり効果的に遂行することができ、かつ、 報告国がこの対話から最大限の利益を受けるべきものとしたら、国家代表は、 規約の扱う事項の全範囲にわたり委員会でなされた質問や意見に対応〔しうる〕地位と経験を持つべき (そして、 なるべくなら人数が揃えられるべき) ことが望ましい、 ということである。
一般的意見3 (13) (2条・締約国の義務) 1981.7.28採択
1 委員会は、 規約第2条が同条で示す枠組の範囲内でその領域内における実施方法の選択につき、関係締約国に一般的に委ねていること、 に留意する。委員会の特に認めることは、その実施が憲法制定又は法令制定 これ自身はしばしばそれのみでは十分でない にのみ依存するものでない、ということである。委員会は、 規約上の義務が人権尊重に限定されるものでなく、締約国がその管轄の下にあるすべての個人に対し、 人権享受を確保することをも約束していることに締約国の注意を喚起する必要があると考える。後者の側面は、個人が自己の権利を享受することを可能ならしめる締約国の具体的な活動を要求する。このことは、 多数の条 (例えば、 後出の一般的意見4 (13)で扱われる第3条) において明白であるが、 原則としてこの約束は、 規約の定めるすべての権利に関連するのである。
2 この関連で、 個人が規約 (及び、 場合により、 選択議定書) 上の自己の権利が何であるかを知ること、及び、 すべての行政機関と司法機関が規約により締約国の引き受けた義務を知ることは、極めて重要である。このためには、 規約が締約国のすべての公用語で公表されるべきであり、関係機関に対しその研修の一部としてその内容を習熟させるための措置がとられるべきである。締約国と委員会の協力についても公表されることが望ましい。
一般的意見4 (13) (3条・両性の平等) 1981.7.28
1 規約第3条は、 実際、 締約国が規約の定めるすべての市民的及び政治的権利の享有について男女に同等の権利を確保することを要求しているが、かなりの数の国家報告で扱いが不十分であり、多くの関心を引き起こした。 そのうちの二点が特に留意されうる。
2 先ず、 第3条は、 第2条第1項及び第26条が性を含む多数の事由に基づく差別の防止を主に扱っている限りでこれらの条と同様、保護措置のみならず、確実な権利享有を確保することを狙いとする積極的な差別防止行動 (affirmative action) をも要求する。 これは、 単に法律の制定によってなしうるものではない。それゆえ、一般的により多くの情報が現実の女子の役割に関し要請されてきたが、それは、 単なる立法上の保護措置に加え、 第3条の明確かつ能動的義務 (theprecise and positive obligation) を実施するために、 どのような措置をとってきたか又は現在とっているかを確認するためであり、かつ、どのような進歩が現在もたらされているのか、 又、 この点に関しどのような状況若しくは障害に現在遭遇しているのかを確保するためである。
3 第2に、 本条に基づき締約国の引受けた能動的義務はそれ自体で、 規約の扱わない事項であるが規約の認める権利に不利に作用するかもしれない事項を特に規律しようとする立法的又は行政的措置に対し不可避の影響を及ぼしうる。特に一例を挙げれば、男女間に区別を置く出入国管理が女子の非市民 (non-citizens) と婚姻する権利若しくは公務につく権利の範囲に対し不利に作用し又は作用しないかもしれない度合いの問題がある。
4 委員会はそれゆえ、 特別に任命された機関による、 男女間に生来上の区別を置く法律又は措置で、規約の定める権利に対し不利な影響を与えるもの、の審査 [の導入] に特別の注意が払われるならば、締約国を益しうることになろうこと、 そして、 第2に、 締約国が本条の約束を実施するための、立法上又はその他のあらゆる措置に関する具体的な情報をその報告中に含めるべきであること、と考える。
5 委員会は、 男女の同等の権利の確保に関連した実際上の諸問題を解決するに当り、経験の交換及び援助の組織化のために既存の国際協力手段がより活用されうるならば、この義務を履行する際の締約国の助けとなるであろう、と考える。
一般的意見5 (13) (4条・権利の停止) 1981.7.28採択
1 規約第4条に関しては、 いくつかの締約国の報告を検討する際、 数多くの問題が委員会で提起された。国民の生存を脅かす公の緊急事態が生起しかつ公式に宣言されているときは、締約国は、事態が真に必要とする限度において、 多数の権利を停止 (derogate) できる。 しかし、締約国は、 一定の特定の権利を停止できないし、様々な事由に基づく差別的な措置をとることはできない。締約国はまた、 そのとった権利停止につき、 その理由及びその終了日を含めて、事務総長を通じて締約国に直ちに通知する義務を負っている。
2 締約国は、 一般的に、 国内法制上の緊急事態宣言に係わる機関と権利停止を規律する法律の適用規定を示した。しかし、 明白に規約上の権利を停止した2、3の国の場合、 緊急事態が公式に宣言されたのか否かのみならず、規約が停止を許さない権利が実際には停止されなかったのか否か及び、 更には他の締約国にその停止及び停止の理由について通知したのか否かについても、不明であった。
3 委員会は、 第4条に基づきとられた措置が例外的でかつ一時的な性格のものであり、関係国民の生存が脅かされている限り維持しうるに過ぎないものであること、及び緊急事態時ではそれだけ一層人権、特に停止のできない人権の保護が重要となること、 と考える。 委員会はまた、 締約国が公の緊急事態時に他の締約国にそのとった停止の性質と程度及びその理由を通知し、更に、停止した各権利の性質と程度を関連文書を添えて示すことにより規約第40条の報告義務を履行すること、が同様に重要であると考える。
一般的意見6 (16) (6条・生命に関する権利) 1982.7.27採択
1 規約第6条で定められた生命に対する権利は、 すべての国家報告で取り扱われてきた。これは、 国民の生存を脅かす公の緊急事態時においてさえいかなる停止も認められない至高の(supreme) 権利である (第4条)。 しかし、 委員会は極めて頻繁に、 6条に関し供された情報が本権利の1、2の側面にのみ限定されたものであることに留意した。これは、 縮小解釈されるべきでない権利である。
2 委員会は、 戦争及びその他の大規模破壊行為が人類の苦しみであり続けており、毎年罪の無い数千人の人々の生命を奪い続けている、 と考える。国際連合憲章の下では、いかなる国家によるものであれ他の国家に対する武力による威嚇又は武力の行使は、固有の自衛権行使の場合を除く他、 既に禁止されている。委員会は、 国が恣意的な生命の喪失を引起こす、戦争、 集団殺害行為及びその他の大規模破壊行為を防止する至上の義務を負っている、と考える。 戦争、特に熱核戦争の危険を防止しそして国際の平和と安全を強化するためにとられるあらゆる努力は、生命に対する権利の擁護にとって最も重要な条件及び保障となるであろう。この点に関し、委員会は特に、 本条と第20条との関連性に留意するが、 後者は、 法律が戦争のためのいかなる宣伝をも禁止しなければならないこと(第1条) 又はそこで規定されたような暴力の煽動を禁止しなければならないこと、を定める (第2項)。
3 恣意的な生命の剥奪に対する保護は、 第6条第1項第3文により明示的に要求されているが、最重要事項である。 委員会は、 締約国が犯罪行為による生命剥奪の防止と処罰のためのみならず、自己自身の治安軍(security forces) による恣意的な殺害の防止のための措置をもとるべきである、と考える。 国家機関による生命剥奪は、 極めて重大な問題である。それゆえ、 法律は、人がその生命を国家機関により剥奪される状況を厳密に管理し、 限定しなければならない。
4 締約国はまた、 不幸にして極めてひんぱんに生起し、 極めてひんぱんに恣意的な生命の剥奪に至る、個人の失踪を防止するための具体的かつ実効的な措置をとるべきである。更に国は、生命に対する権利の侵害を伴いうる状況にある失踪者 (missing and disappeared persons) の事案を完全に調査する実効的な機関(facilities) や手続を設けるべきである。
5 更に委員会は、 生命に対する権利が余りにひんぱんに狭く解釈されてきたことに留意した。「生命に対する固有の権利」 の表現を限定的に理解することは、適切ではありえないし、本権利の保護にあたり、 国は、 積極的な措置をとることを要求される。 この関連で、委員会は、 締約国が、 特に栄養失調と伝染病を除去する措置をとるにあたり、幼児死亡率を減少させ、平均余命を引上げるための可能な、 あらゆる措置をとることが望ましい、 と考える。
6 第6条第2項ないし第6項からすると、 締約国は、 死刑を完全に廃止することを義務づけられているわけではないが、その行使を限定すること、特に、 「最も重大な犯罪」 以外の犯罪に関しては死刑を廃止すること、が義務づけられている。 従って締約国は、 このことに照らしてその刑法を検討することを考えるべきであるし、いずれにしても、死刑の適用を 「最も重大な犯罪」 に限定しなければならないのである。本条はまた、 廃止が望ましいことを強く示唆する (第2項及び第6項) 文言で一般的に[死刑] 廃止に言及する。 委員会は、 [死刑] 廃止のあらゆる措置が第40条の意味における生命に対する権利の享受についての進歩と考えられるべきであり、それについては是非委員会に報告されるべきである、と結論する。 委員会は、 多くの国が既に死刑を廃止しあるいはその適用を停止してしまっていることに留意する。それにもかかわらず、 国家報告は、死刑の廃止又はその適用の制限へ向けてもたらされた進歩が全く不十分であることを示している。
7 委員会は、 「最も重大な犯罪」 の表現は死刑が全く例外的な措置であることを意味するように厳格に解釈されなければならない、という意見である。第6条の明文規定からは、 死刑は、 犯罪が行われた時に効力を有しており、かつ、 規約に抵触しない法律により科することができるのみであることも明らかである。独立の裁判所による公正な審理を受ける権利、無罪の推定、 防御のための最小限の保障及び上級の裁判所による最審理を受ける権利を含め、規約で定められた手続上の保障は、 遵守されなければならない。これらの権利は更に、〔死〕 刑に対する特赦又は減刑を求める特別の権利にも適用される。
一般的意見7 (16) (7条・拷問、 品位を傷つける取扱い) 1982.7.27採択
1 締約国の報告を検討する際、 委員会の委員は、 拷問又は残虐な、 非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い若しくは刑罰を先ず第一に禁止する第七条に関する一層の情報をしばしば要求した。委員会は、第4条第1項に想定されている公の緊急事態においてさえ、 本規定が第4条第2項により効力を停止されないものであることを想起する。その目的は、個人の身体の完全性 (integrity) と尊厳を保護することにある。 委員会は、本条の実施のためにはそのような取扱い若しくは刑罰を禁止したり又はそれを犯罪としたりすることでは十分でないことに留意する。たいていの国は、拷問又はその類似の慣行の場合に適用される刑法規定を有する。それにもかかわらず、 その様な事件は発生するゆえ、 規約第2条と結合されて読まれる第7条により、国はなんらかの監視機関を通じて実効的な保護を確保しなければならないのである。虐待の苦情は、権限ある機関により効果的に調査されなければならない。 有罪と認定された人には責任が負わされなければならないし、申立てられた被害者自身、 補償を得る権利を含む、自由に利用できる実効的な救済措置を有さなければならない。監視を実効的にならしめうる措置のうちには、接触を断つ拘禁(detention incommunicado)を禁止し、 捜査を害することなく、 医者、 弁護士及び家族構成員のような者が被拘禁者に会う (access) ことを認める規定、 非拘禁者が公的に認められた場所で拘禁されること及びその氏名と拘禁場所が親戚のような関係者に利用可能な中央の登録簿に記載されることを要求する規定、第7条に反する拷問その他の取扱いを通じて得られた自白又はその他の証拠を裁判で非許容とする規定、そして、法執行職員がそのような取扱いを適用しないような訓練や教育の措置、が含められる。
2 本条の表現から明らかなように、 要求される保護の範囲は、 通常理解される拷問をはるかに超えるものである。種々の禁止された形態の取扱い又は刑罰の間にはっきりとした区別をする必要はないかもしれない。これらの区別は、具体的な取扱いの種類、 目的及び苛酷さに依存するのである。委員会の意見では、 禁止対象は、 教育的又は懲戒的措置として行き過ぎた処分を含む、体罰にも及ばなければならない。独居拘禁のような措置でさえ、 状況に応じては、特に、 人が接触を断たれた状況に置かれているときには、 本条に反する場合がありうる。更に、 本条は明らかに、逮捕又は収監された者のみでなく、 教育及び医療施設にいる生徒や患者をも保護する。最後に、 公的権限外で行動する人又は全く無権限で行動する人によってなされたときでさえ、そのような取扱いに対し法による保護を確保することも公的機関の義務である。その自由を奪われたすべての者に関しては、第7条に反する取扱いの禁止は、 人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われなければならないという規約第10条第1項の明確な要求によって補完される。
3 特に、 その禁止は、 当該個人の自由な同意を得ない医学的又は科学的実験に及ぶ (第7条第2文)。 委員会は、 締約国の報告が一般的にいってこの点に関する情報をほとんどあるいは全く提出してこなかったことに留意する。委員会は、少なくとも科学と医学が高度に発達した国においては、 そして、 その実験で影響を受ける場合には、その国境外の人々と地域に対してさえ、 本規定の遵守を確保するための必要物と手段に関しもっと多くの注意がむけられるべきである、と考える。その同意を与えることのできない人の場合には、 そのような実験に関し特段の保護が必要である。 * 一般的意見7は一般的意見20に言換えられた(1992年開催の第44条会期において採択)
一般的意見8 (16) (9条・身体の自由及び逮捕又は抑留の手続) 1982.7.27採択
1 身体の自由及び安全についての権利を扱う第9条は、 しばしば締約国の報告において多少狭く理解されたため、不完全な情報の提出にとどまった。委員会は、 第1項が、 刑事事件においてであれ、又はその他の場合、 例えば、 精神病、 放浪、 麻薬中毒、 教育目的、 出入国管理等においてであれ、あらゆる自由の剥奪に適用されるものであることを指摘する。確かに、 第9条のいくつかの規定 (第2項の一部及び第3項全体) は、 刑事上の罪が問われた者に適用されるに過ぎない。しかしその他の規定、特に第4項に定められた重要な保障たる、 抑留の合法性について裁判所により確認してもらう権利は逮捕又は抑留によりその自由を奪われたすべての者に適用される。更に、締約国は、 第2条第3項に基づき、 個人が規約の侵害によりその自由が奪われたと主張するその他の場合に実効的な救済措置が与えられることをも確保しなければならない。
2 第9条第3項は、 刑事事件において逮捕又は抑留された者が裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている他の官憲の面前に「速やかに」("promptly") 連れていかれなければならないことを要求する。たいていの締約国においては、 より厳密な期間が法律で定められているが、委員会の意見では2、3日 (a few days) を超えてはならない。 多数の国は、 この点に関する実際の実効につき不十分な情報を提出したにとどまる。
3 別の問題として、 訴訟係属中の全体の抑留期間の問題がある。 いくつかの国におけるある種の刑事事件において、この問題が委員会内部で多少関心を引き起こし、それらの国の実行が第3項の 「妥当な期間内に裁判を受け又は釈放される」権利と一致しているか否かの質問が委員によってなされた。 訴訟前の抑留については、例外でかつできる限り短期間であるべきである。委員会は、 現行の枠組及びそのような抑留の期間を縮小するためにとられた措置に関する情報を歓迎したい。
4 また、 いわゆる予防的拘禁 (preventive detention) が公共の安全を理由に行使される場合であっても、これら同一の規定により規制されなければならない。つまり、 それは、 恣意的であってはならず、かつ、 法律で定める理由及び手続 (第1項)、 利用可能な情報 (第2項)、 そして違反の場合の保障に基づかなければならない。そして、もしそのような場合に、 追加的に刑事上の罪も問われているならば、 第14条のみならず第9条第2項、第3項についても、 十分な保護が同じように与えられなければならない。
一般的意見9 (16) (10条・身体の自由及び逮捕又は抑留の手続) 1982.7.27採択
1 規約第10条第1項は、 自由を奪われたすべての者は、 人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる、 と定める。 しかし、 締約国の提出するすべての報告が本条項がどのように実施されているのかに関する情報を含んでいたとは決していえない。委員会は、締約国の報告がこの権利を保護する意図でとった法的措置に関する明白な情報を含むことが望ましいと考える。委員会はまた、 報告は第1項が要求する自由の奪われたすべての者の人道的取扱いと人間の尊厳性の尊重に関する、国内法の命令的な(mandatory) 実施を監視するために権限のある国家機関によってとられた具体的な措置を示すべきである、と考える。
2 委員会は、 本条第1項が一般的に自由の奪われた者に適用されるのに対し、第2項が有罪の判決を受けた者と区別される被告人 accusedpersons を扱い、 第3項が有罪の判決を受けた者のみを扱うことに、特に留意する。 この構成は、 報告において反映されていないことが極めてしばしばであって、被告人と有罪の判決を受けた者が主に報告で扱われてきたのである。第1項の表現、その文脈 特に、 自由のあらゆる剥奪をも扱う第9条第1項との近似性 (proximity) 及びその目的は、 この規定で表明された原則の幅広い適用を支持する。更に、委員会は、 本条が自由を奪われたすべての者の取扱いに関し第7条を補完するものであること、を想起する。
3 自由を奪われたすべての者の人道的取扱い及び尊厳性の尊重は、 物的資源に全面的に依存するはずのない普遍的な適用性のある基本的基準である。委員会は、他の側面からみれば抑留の形態及び条件が利用可能な資源により変わりうるということは認識しているが、その一方で、 それらは、 第2条第1項が要求するように、常に差別なしに適用されなければならないのである。
4 この原則を遵守する最終的な責任は、 人がその意に反して合法的に抑留されるあらゆる施設 監獄のみならず、例えば、 病院、 仮収容所 (detentioncamp) 又は少年院をも含む。 に関しては国に存する。
5 本条第2項(a)は、 被告人は、 例外的な事情がある場合を除く他有罪の判決を受けた者とは分離されるものとし、有罪の判決を受けていない者としての地位に相応する別個の取扱いを受ける、と定める。いくつかの報告は、 規約のこの直接の要求に適切な注意を払うことを怠り、 その結果、被告人の取扱いが有罪の判決を受けた者の取扱いとどのように異なっているのかに関する十分な情報を提出することができなかった。そのような情報は、これからの報告に含められるべきである。
6 本条第2項(b)はなかんずく、 少年の被告人が成人と分離されなければならないことを要請する。報告中の情報は、 多数の国がこのことは規約の無条件の要求であるという事実に十分注意を払っていないことを示している。委員会の意見では、規約条文から明らかなように、 締約国が第2項(b)の義務から逸脱 (deviation) することは、 いかなる考慮によっても正当化されえない。
7 多くの場合、 本条第3項に関して報告に盛られた情報は、 例えば、 教育、 職業訓練及び有益な作業により被拘禁者の矯正と社会復帰を促進する、立法的若しくは行政的措置又は実際にとられた措置のいずれについても具体的に言及していない。面会(visits) を認めること、 特に、 家族構成員に認めることは、 通常人道上の理由から要求される措置でもある。成人から分離されかつその年齢及び法的地位に相応ずる取扱いがなされなければならない、少年の犯罪者に関する情報についても若干の国の報告中に同様の欠缺がある。
8 委員会は更に、 第1項で定める人道的な取扱い及び人間の尊厳性の尊重に関する原則が本条第2項及び第3項に定める刑事裁判 (criminaljustice) の分野におけるより特定的かつ限定的な国家義務の基礎になっていること、に留意する。 有罪の判決を受けたものからの被告人の分離は、同時に第14条第2項で述べられた無罪の推定によっても保護されている有罪の判決を受けていない者としての地位を強調するために要請される。これらの規定の狙いは、言及されている集団 (groups) を保護することにあり、そこに含まれる要求は、 その観点から理解されるべきである。 従って、 例えば、少年の犯罪者の分離と取扱いは、その矯正と社会復帰を促進するような形でなされるべきである。 * 一般的意見9は一般的意見21に差換えられた (1992年開催の第44会期において採択)
一般的意見10 (19) (19条・表現の自由) 1983.7.29採択
1 第1項は、 「干渉されることなく意見を持つ権利」 の保護を要求する。 これは、規約がいかなる例外又は制限をも許さない権利である。 委員会は、第1項に関する締約国からの情報を歓迎したい。
2 第2項は、 表現の自由についての権利の保護を要求するが、 その権利は、 「国境とのかかわりなく」、かつ、 いかなる方法によるものであっても、つまり 「口頭、 手書き若しくは印刷、芸術の形態又は」 自ら選択する 「他の方法により」、 「あらゆる種類の情報及び考えを伝える」自由のみでなく、それを 「求め」 そして 「受ける」 自由が含まれる。 必ずしもすべての締約国が表現の自由のすべての側面に関する情報を提出してきたわけではない。例えば、現代のマスメディアの発展によって、 第3項で規定されていない形ですべての人の表現の自由についての権利に干渉するようなそれによる管理を阻止するために、効果的な措置をとることが必要であるということに、従来はほとんど注意が払われてこなかった。
3 締約国の多くの報告は、 表現の自由が憲法又は法律保障されていることを述べるにとどめている。しかし委員会は、 法律上及び実行上の表現の自由の正確な制度を知るためには、それに加え、表現の自由の範囲を明確化する規約、 又は、 一定の制限を定める規則及び事際上本権利の行使に影響を与えるその他の何らかの条件を定める規則のいずれかについての関連情報を必要とする。個人の権利の実際の範囲を決定するものは、表現の自由の原則とそのような制限との間の相互影響なのである。
4 第3項は、 表現の自由についての権利の行使が特別の義務及び責任を伴うことを明示的に強調する。そしてこの理由から、 本権利に対する一定の制限は、他の者の利益又は共同体の全体としての利益のいずれかに関わる場合に許される。しかし、 締約国が表現の自由の行使に対し一定の制限を課する場合、その制限は、権利それ自身を否定するような状況に陥らすことはできない。 第3項は、 条件を定めており、そして制限が課されうるのはこの条件に服する場合のみである。つまり、 制限は、「法律によって定められ」 なければならないし、 第3項(a)及び(b)で定める目的の一つのために課することができるのみであるし、そしてこの目的の一つのために当該締約国にとって「必要」 とされるものとして正当化されなければならない。
一般的意見11 (19) (20条・戦争宣伝、差別唱尊の禁止) 1983.7.29採択
1 締約国により提出された報告のすべてが、 規約第20条の実施に関する十分な情報を提供してきたわけではない。本条の性質を考えると、 締約国は、そこで言及された活動を禁止する必要な立法措置をとることを義務づけられる。しかし、 報告によれば、 いくつかの国においては、 そのような活動が法律により禁止されてもいないし、その禁止を狙いとした又はそれを禁止させる、適切な努力もなされていないのである。更に、 多くの報告は、 関連する国内法及び国内慣行に関する十分な情報の提出をしていなかった。
2 規約第20条は、 戦争のためのいかなる宣伝も、 そして、 差別、 敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪のいかなる唱道も、法律で禁止する、としている。委員会の意見では、ここで要求されている禁止は、19条の表現の自由の権利と完全に両立するのであり、表現の自由の権利の行使には特別の義務と責任を伴うのである。1項の禁止は、国際連合憲章に反する侵略行為又は平和の破壊の威嚇又はこれをもたらすあらゆる形態の宣伝に及ぶのに対し、2項は、差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪のあらゆる唱導にも向けられたものであるが、これらの宣伝又は唱導の目的が関係国にとって対内的なものであるか対外的なものであるかを問わない。20条1項の規定は、憲章に従って、固有の自衛権又は人民の自決及び独立の権利を唱導することを禁止するものではない。20条が十分実効性を有するようになるためには、そこで規定された宣伝及び唱導が公序に反することを明確にし、かつ、侵害の場合に適切な制裁を定める法律が存在しなくてはならない。したがって、委員会は、まだこれを行っていない締約国は、20条の義務を履行するために必要な措置を採るとともに、自らそのような宣伝又は唱導を行わないようにすべきであると考える。
一般的意見12(21)(人民の自決権) 1984年4月12日採択
1. 国際連合憲章の目的及び原則に従い、市民的及び政治的権利に関する国際規約1条は、すべての人民が自決の権利を有することを承認する。自決の権利は、その実現が個々の人権の実効的な保障及び遵守並びにその促進及び強化にとって不可欠の条件であるために、とりわけ重要である。諸国が両規約の実定法規中に自決の権利を規定し、この規定を1条として、両規約中の他のすべての権利とは別個に、かつ、それより前に置いたのは、このためである。
2. 1条は、その1項及び2項で述べられているように、すべての人民の不可譲の権利を樹立している。この権利に基づき、人民は、自由に「その政治的地位を決定し並びにその経済的、社会的及び文化的発展を自由に追求する」。本条は、すべての締約国に対しこれに対応する義務を課する。この権利及びその実施に関し対応する義務は、規約の他の規定及び国際法規範と関連している。
3. すべての締約国の報告義務には1条が含まれるが、本条の各項について詳細な説明を与えている報告は僅かである。委員会は、報告の多くが完全に1条を無視するか、これに関し不十分な情報しか与えていないか、又は、選挙法にしか言及していないことに留意する。委員会は、締約国の報告に本条の各項に関する情報が含められることが大変望ましいと考える。
4. 1条1項に関して、締約国は、実際にこの権利の行使を許す憲法上及び政治上の手続を記載すべきである。
5. 2項は、自決の権利の経済的内容のうち特定の側面、すなわち、人民が自己のために、自由に、「互恵の原則に基づき国際的経済協力から生ずる義務及び国際法上の義務に違反しない限り、天然の富及び資源を処分することができる。人民は、いかなる場合にも、その生存のための手段を奪われることはない」との権利を確認している。この権利には、すべての国及び国際社会にとって対応する義務が伴う。締約国は、本項の規定に反しその天然の富及び資源の自由な処分を妨げるすべての要因又は障害を示すとともに、これが規約の定めるその他の権利の享受にどの程度影響をあたえるかを示すべきである。
6. 3項は、委員会の意見では、締約国に対し、自国の人民に関してだけでなく、自決の権利を行使できず、又はこの権利行使の可能性を奪われてきた、すべての人民に対する関係で、明確な義務を課しているという点において、特に重要である。本項の一般的性格は、その起草の歴史から確認される。本項は、「この規約の締約国(非自治地域及び信託統地域の施政の責任を有する国を含む。)は、国際連合憲章の規定に従い、自決の権利が実現されることを促進し及び自決の権利を尊重する」と定める。この義務は、自決についての権利を有する人民が規約締約国に依存しているか否かにかかわりなく存在する。したがって、すべての規約締約国は、人民の自決権の実現及び尊重を促進する積極的な行動をとるべきである。そのような積極的な行動は、国際連合憲章及び国際法に基づく国家の義務と両立しなければならず、特に、締約国は、他国の国内事項に干渉して、自決権行使に悪影響を与えないようにしなければならない。報告は、これらの義務の履行及びそのために採られた措置に関する情報を含むべきである。
7. 規約1条に関連して委員会は、すべての人民の自決権に関する他の国際文書、特に、1970年10月24日に国連総会が採択した、国際連合憲章に従った国家間の友好関係及び協力についての国際法の原則に関する宣言(総会決議2625(XXV))に言及する。
8. 委員会は、人民の自決の権利の実現と尊重が国家間の友好関係及び協力の確立並びに国際平和及び国際理解の強化に貢献することは、歴史が証明していると考える。
一般的意見13(21)(民事及び刑事裁判における手続的保障) 1984年4月12日採択
1. 委員会は、規約14条が複雑な性格を有しており、この規定の相異なる側面につき明確な意見が必要とされることに留意する。これらのすべての規定は、適正な司法運営の確保を目的としており、このため、裁判所の前の平等及び法律で設置された、権限のある、独立の、かつ、公平な裁判所による公正な公開審理を受ける権利など、一連の個別的権利を定める。すべての報告が14条の各規定を実施するために特にとられた立法措置その他の措置の詳細を述べているわけではない。
2. 一般的に、締約国の報告は、14条が個人の刑事上の罪の決定のための手続のみならず、民事上の権利及び義務の争いについての決定のための手続にも適用されることを認めていない。これらの事項を扱う法律と実務は、国ごとに大きく異なる。この違いがあるため、「刑事上の罪」及び「民事上の権利及び義務の争い」の概念がそれぞれの法制度との関係でどのように解釈されているかについて、締約国がすべての関連情報を提出し、より詳細に説明することは、一層必要である。
3. 委員会は、今後の報告で、締約国が、裁判所への平等なアクセスを含む裁判所の前の平等、公正な公開審理、並びに司法部の権限、公平及び独立を法律により確立し、かつ、現実に保障することを確保するために採った措置に関しもっと詳細な情報を提出できれば有用と考える。特に、締約国は、裁判所の設置規定に関する憲法及び法律の条文を明記すべきであるとともに、裁判官の任命方法、任命資格、任期及びその昇任、転任及び職務の終了を規律する条件、並びに、行政部及び立法部からの司法部の現実の独立に特段の注意を払って、裁判所の独立、公平及び権限を確保すべきである。
4. 14条の規定は、普通裁判所と特別裁判所を問わず、本条の範囲内にあるすべての裁判所に適用される。委員会は、多数の国において、民間人を裁く軍事裁判所又は特別裁判所が存在することに留意する。これは、公正で、公平な、かつ、独立した司法運営に関して、重大な問題を提起する。極めて多くの場合、そのような裁判所を設置する理由は、通常の裁判の基準を満たさない例外的な手続の適用を可能にするためである。規約は、そのような種類の裁判所を禁じてはいないが、規約の規定する条件は、そのような裁判所による民間人の裁判が、ごく例外的なものであり、14条に規定するすべての保障を真に与えるところでなされるべきことを明確に示している。委員会は、民間人を裁く裁判所を司法制度の中に有するいくつかの締約国の報告において、この点に関する情報の重大な欠如があることに留意した。いくつかの国では、そのような軍事裁判所や特別裁判所において、人権の実効的保護にとって不可欠である、14条の要件に従った適正な司法運営が厳格に保障されていない。締約国は、4条の想定する公の緊急事態の状況で、14条で要求される通常の手続の停止を決定する場合には、当該停止が現実の事態が真に必要とする限度を越えないことを確保するとともに、14条1項のその他の条件を尊重すべきである。
5. 14条1項2文は、「すべての者は、公正な公開審理を受ける権利を有する」と定める。本条3項は、刑事上の罪の決定に関して「公正な審理」の要件について詳細に論じている。しかし、3項の要件は最低限の保障であり、これを遵守しても、必ずしも1項の要求する審理の公正さの確保に十分であるとは限らない。
6. 審理の公開は、個人、そして社会一般の利益の重要な擁護手段である。同時に、14条1項は、裁判所が同項で明示されている理由で公衆の全部又は一部を排除する権能を有することを確認する。そのような例外的な状況を別にすると、審理は、報道機関を含む公衆一般に公開されなければならず、たとえば、特定の種類の人にだけ公開されてはならないと委員会が考えていることに留意されるべきである。公衆が審理から排除される場合であっても、判決は、厳密に規定された一定の例外を別として、公開されなければならないことに留意されるべきである。
7. 委員会は、14条2項に関する情報がないことに留意してきたが、ある場合には、人権の保護にとって基本的な無罪の推定が極めて曖昧な文言で表現されている、ないし無罪の推定の実効性が無くなる条件が付されていると述べたことさえあった。無罪の推定によって、嫌疑の立証責任は検察官が負い、被告人は疑問のある場合には有利な判断を受ける。嫌疑が合理的疑問の余地なく立証されるまで、有罪を推定してはならない。さらに、無罪の推定は、この原則に従って取扱われる権利を含む。したがって、すべての公的機関は、裁判の結果を予断してはならない義務を負う。
8. 3項に定められた刑事手続における最少限度の保障のうち、最初のものは、すべての人がその理解する言語でその罪を告げられる権利に関する((a))。委員会は、締約国の報告がしばしばこの権利がどのように尊重され、確保されているのか説明していないことに留意する。14条3項(a)は、刑事上の罪に関するすべての事件に適用され、抑留されていない者も含む。委員会は、さらに、「速やかに」罪を告げられる権利により、権限を有する機関によって嫌疑をかけられたら、直ちに規定された方法で告知が与えられなければならないことに留意する。委員会の見解では、この権利は、捜査過程で裁判所又は公訴機関が犯罪の被疑者に対する手続上の措置をとることを決定するとき、または公式に被疑者として名指しするときに生じなければならない。3項(a)の明示の要求は、口頭又は書面で嫌疑を伝えれば満たされるが、そこでの情報が嫌疑の基礎とされる法律及び被疑事実の両者を示すことが条件である。
9. 3項(b)は、被告人が、防御の準備のために十分な時間及び便益を与えられ並びに自ら選任する弁護人と連絡できなければならないと定める。「十分な時間」がどの程度であるかは、それぞれの場合によるが、この便益には、弁護人を依頼し、連絡する機会をもつことのみならず、訴訟の準備に被告人が必要とする書類その他の証拠にアクセスすることも含まれなければならない。被告人が直接に防御することを欲しない場合又は自ら選任する人若しくは団体に依頼することを欲しない場合には、被告人は、弁護士を利用することができるべきである。さらに、本項は、弁護人に対し、交通の秘密を十分尊重するという条件で被告人と交通することを要求する。弁護士は、いかなる方面からも制限、影響、圧力又は不当な干渉を受けることなく、確立した専門的水準及び判断に従って、依頼者に助言し、依頼者を代理することができるべきである。
10. 3項(c)は、被告人が不当に遅延することなく裁判を受けると定める。この保障は、裁判の開始時だけに関するのではなく、裁判が終結し、判決が言渡される時にも関連する。すべての段階が、「不当に遅延することなく」行われなければならないのである。この権利に実効性を与えるためには、裁判が、1審及び上訴審とも、「不当に遅延することなく」進行することを確保するための手続が利用可能でなければならない。
11. すべての報告が3項(d)で定義された防御権のすべての側面を扱っていたわけではない。委員会は、罪の決定において被告人が出席する権利の保護、また被告人の直接に防御する権利若しくは自ら選任する弁護人により援助される権利を法制度でどのように確保しているのか、弁護人に対する十分な支払手段を有しないときにとられる対応措置について、いつも十分な情報を受領してきたわけではない。被告人又はその弁護士は、可能な防御をすべて果たすに当たって、十分にかつ恐怖を感じることなく行動する権利、及び、事件処理が不公平であると考えるときにはそれに異議を申立てる権利を有していなければならない。例外的に正当な理由に基づき欠席裁判が行われるとき、防御の諸権利の厳格な遵守が一層必要である。
12. 3項(e)は、被告人は、自己に不利な証人を尋問し又はこれに対し尋問させること並びに自己に不利な証人と同じ条件で自己のための証人の出席及びこれに対する尋問を求める権利を有すると定める。この規定は、証人の出席を強制し、かつ、いかなる証人に対しても尋問し又は反対尋問するという、検察官に与えられるのと同等の法的権能を被告人に保障することを目的としている。
13. 3項(f)は、被告人は、裁判所において使用される言語を理解すること又は話すことができない場合には、無料で通訳の援助を受ける権利を有すると定める。この権利は、裁判の結果とは無関係であり、自国民のみならず外国人にも適用される。この権利は、裁判所によって使用される言語を知らないことや理解するのに困難なことが防御権の大きな障害となり得る場合において基本的な重要性を有する。
14. 3項(g)は、自己に不利益な供述又は有罪の自白を強要されないと定める。この保障規定を考えるにあたっては、7条及び10条1項の規定に留意すべきである。自白又は自己に不利益な供述を強要するために、しばしばこれらの規定を侵害する方法が使用される。法律は、そのような方法又はその他の強制的手法によって得られた証拠は受容できないとしなければならない。
15. 14条1項及び第3項に基づく被告人・被疑者の権利を保障するために、裁判官は、公判のどの段階においても、この権利が侵害されたとのすべての申立てについて審理する権限を有するべきである。
16. 14条4項は、少年の場合には、手続は、その年齢及びその更生の促進が望ましいことを考慮したものとする、と定める。少年が刑事上の罪に問われうる最少年齢、少年と見なされる最高年齢、特別裁判所及び特別手続の存在、少年事件の手続を規律する法律及び少年のためのこれらの特別な配慮が「その更生の促進が望ましいこと」をどのように考慮しているのかなどの関連事項に関して十分な情報を提出する報告は、多くない。少年は、少なくとも、14条の下で成人に与えられていると同一の保障及び保護を享受すべきである。
17. 14条5項は、有罪の判決を受けたすべての者が法律に基づきその判決及び刑罰を上級の裁判所によって再審理される権利を有する、と定める。他の条約正文における「犯罪」(crime)の語(“infraction",“delito", “ prestuplenie")に特別の注意を払えば、この保障は最も重大な犯罪にだけ限定されるものではないことが示される。この関連で、上訴の手続、特に再審理裁判所へのアクセスとその権限、判決を不服として上訴するために満たすべき要件、再審理裁判所における手続が本条1項の公正な公開審理要件をどのように考慮しているのか、に関して十分な情報は提出されていない。
18. 14条6項は、そこで定める一定の誤判の場合に法律に基づく補償が与えられる、と規定する。多数の締約国の報告から、この権利はしばしば国内法では認められず、あるいは十分に保障されていないと思われる。締約国は、必要な場合には、規約の規定に合致させるためこの分野の国内法を補充すべきである。
19. 締約国の報告を審理するにあたって、14条7項の範囲に関してしばしば異なった見解が表明された。いくつかの締約国は、刑事事件の再審手続に関連して、留保する必要すら感じた。大部分の締約国は、例外状況で正当化される再審と、7項に含まれる一事不再理(nebis in idem)の原則によって禁止される再訴との間に明確な区別をしている、と委員会には思われる。一事不再理のこのような理解は、締約国に対し、14条7項に対する留保を再検討するよう促すものであろう。
一般的意見14(23)(生命に対する権利と核兵器) 1984年11月2日採択
1. 1982年7月27日の第 387回会期で採択された一般的見解6(16)において、規約人権委員会は、市民的及び政治的権利に関する国際規約6条1項に明記されている生命に対する権利は、公の緊急事態の際においても停止されることのない至高の権利であると述べた。1948年10月10日の国連総会で採択された世界人権宣言3条には、同じように生命に対する権利が規定されている。
2. 規約人権委員会はこの従前の一般的意見において、戦争を防止することは国家の至上の義務であるとも述べた。戦争及びその他の大規模破壊行為は、依然として人類の苦しみであり、毎年罪のない何千人もの人々の生命を奪っている。
3. 武力衝突の際に通常兵器により奪われる人命の犠牲に対する強い懸念を保持しつつ、委員会は、総会の毎会期において、すべての地域の国家代表が、恐ろしさを増す一方の大量破壊兵器の開発、拡散に対する関心の増大を表明してきたことに留意するが、これは人命を脅かすにとどまらず、武器のために使われなければ重要な経済的及び社会的目的、とりわけ開発途上国の利益のために使われ、すべての者の人権の享有を促進しかつ保障するために利用されていたであろう資源を浪費するものである。
4. 委員会は、この関心を共有するものである。核兵器の設計、実験、製造、保有及び配備が、生命に対する権利にとって、今日人類の直面する最大の脅威であることは明白である。この武器が、戦争の場合だけでなく人間や機械の過失や故障によってすら現実に用いられかねないという危険によって、この脅威の度合いは増している。
5. さらに、その存在自体と脅威の重大さにより、国家間に猜疑心と恐怖の雰囲気が醸成されるのであり、このこと自身が、国連憲章及び国際人権規約に基づく人権と基本的自由に対する普遍的な尊重と遵守の促進に対して敵対するものである。
6. 核兵器の製造、実験、保有、配備及び使用は禁止され、人道に対する罪として認識されるべきである。
7. したがって、委員会は、人類の利益のため、規約を締結していると否とを問わず、すべての国家に対し、一方的に、また合意により、世界からこの脅威を除去するための措置を直ちに講ずるよう要請する。
一般的意見15 (27) (規約上の外国人の地位) 1986.7.22採択 23
1 締約国から提出された報告はしばしば、 各締約国が規約上の権利を 「その領域内にあり、かつ、 その管轄の下にあるすべての個人」 に対し確保しなければならないことを考慮に入れていなかった。一般的に、規約で定められた権利は、 相互性とかかわりなく、 かつ、 その国籍又は無国籍にかかわりなてく、すべての人に適用される。
2 従って、 一般規則は、 規約の各々の権利が市民と外国人との間で差別されることなく保障されなければならない、ということである。 外国人は、規約第2条に定められている、 規約で保障される権利に関する無差別の一般的な要求から利益を受けるのである。この保障は、 外国人及び市民の両者に適用される。例外的に、 規約で認められた若干の権利が明示的に市民にのみ適用されうるにすぎない (第25条) し、 第13条は外国人にのみ適用されるにすぎない。しかしながら、 委員会の報告検討に関して得られた経験からすると、規約上外国人が享有すべきその他の権利に関し、 多くの国で外国人に否定し又は外国人を規約上必ずしも正当化されえない制限に服させている、ということが明らかとなる。
3 少数の憲法は、 市民と外国人の平等を定めている。 より最近採択されたいくつかの憲法は、すべての人に適用される基本権と市民にのみ認められる基本権とを慎重に区別し、そして、それぞれをを詳細に扱っている。 しかしながら、 多くの国では、 憲法は、規約関連の権利を認めるとき、 市民の表現でのみ起草されている。 法令及び判例法も外国人の権利を認めるのに重要な役割を演じうる。委員会の得た情報によれば、いくつかの国においては基本権が憲法又はその他の法令により外国人に保障されていないものの、規約の要求するように外国人にも及ぼされる事になろう、とされる。 しかしながら、若干の国は、 規約上の権利を外国人に関し差別なく実施することを明らかに怠ってきた。
4 委員会は、 締約国がその報告において国内法上かつ実際の実行上の両者につき外国人の地位に注意を払うべきものと考える。規約は、 その保障する権利に関しすべての保護を外国人に与えており、締約国は、その要求を法令及び実行において適切に遵守すべきである。 そうすれば、 外国人の地位はかなり改善されるであろうう。締約国は、 規約規定及び規約上の権利がその管轄の下にある外国人に知らされることを確保すべきである。
5 規約は、 締約国の領域に入り又はそこで居住する外国人の権利を認めていない。何人に自国への入国を認めるかを決定することは、 原則としてその国の問題である。しかしながら、一定の状況において外国人は、 入国又は居住に関連する場合においてさえ規約の保護を享受することができる。例えば、 無差別、 非人道的な取扱いの禁止又は家族生活の尊重の考慮が生起するときがそうである。
6 入国の同意は、 例えば、 移動、 居住及び雇用に関する条件を付して与えられる場合がある。国はまた、 通過中の外国人に対し一般的な条件を課すこともできる。しかし、 外国人は、ひとたび締約国の領域に入ることを認められると、 条約で定められた権利を享受することができるのである。
7 従って、 外国人は、 法律によって保護される、 生命に対する固有の権利を有し、恣意的にその生命を奪われえない。 外国人は、 拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い又は刑罰を受けるものではない。また、 外国人は、 奴隷の状態または隷属状態に置かれえない。 外国人は、身体の自由及び安全についての完全な権利を有する。外国人は、 合法的にその自由を奪われた場合には、 人道的にかつその身体の固有の尊厳を尊重して、取扱われる。外国人は、 契約上の義務不履行を理由として拘禁され得ない。 外国人は、移動の自由及び自由な居住選択についての権利を有する。 外国人は、 在留国から自由に離れることができる。外国人は、裁判所の前に平等であり、 そして刑事上の罪の決定又は民事上の権利及び義務の争いについての決定のため、法律で設置された、 権限のある、 独立の、かつ、 公平な裁判所による公平な公開審理を受ける権利を有する。外国人は、 遡及効を有する刑事法令に服するものではなく、 そして、 法律の前に人として認められる権利を有する。外国人は、その私生活、 家族、 住居若しくは通信に対して恣意的に又は不法に干渉されえない。外国人は、 思想、 良心及び宗教の自由について権利並びに意見をもち、表現する権利を有する。外国人は平和的な集会の権利及び結社の自由の利益を受ける。 外国人は、 婚姻をすることができる年齢で婚姻することができる。外国人の児童は、未成年者としての地位に必要とされる保護の措置についての権利を有する。外国人は、 第27条の意味での少数者を公正している場合には、 その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない。外国人は、法律による平等の保護を受ける権利を有する。 これらの権利の適用に際しては、外国人と市民の間に差別があってはならない。 これらの外国人の権利は、規約に基づき合法的に課しうる制限によってのみ限定されうるにすぎなない。
8 ひとたび外国人が合法的に領域内にいる場合には、 当該領域内における移動の自由及び当該領域を離れる権利は、第12条第3項に従い制限されうるのみである。この点における外国人と自国民間又は外国人間における取扱い上の差異は、同条同項に基づき正当化される必要がある。 そのような制限は、 なかんずく、規約が認める他の権利と調和されなければならないゆえ、締約国は、 外国人に規約を課し又は第三国に外国人を追放することにより、 外国人が自国へ戻ることを恣意的に阻止することはできない。(同条第4項)。
9 多数の報告は、 第13条に関する事項につき不十分な情報しか提出していない。同条は、 国内法上追放又はそれ以外の名称で呼ばれているかを問わず、外国人の義務的出国を対象とするすべての手続に適用される。そのような手続が逮捕を伴う場合は、 自由剥奪に関する規約上の保障規定 (第9条及び第10条)も適用することとができる。 もしその逮捕が犯罪人引渡しという特定の目的でなされる場合は、国内法及び国際法の他の規定が適用されうる。 通常は、追放される外国人は、 彼を引き受ける (take) ことに同意するいずれかの国に出国することを許されなければならない。第13条の特定の諸権利は、合法的に締約国の領域内にいる外国人を保護するにすぎない。このことは、 同条の保護の範囲を決定するに際しては、 入国及び在留条件に係わる国内法が考慮にいれられなければならないこと、並びに、違法な入国者及び法律又は許可の認める期間を越えて在留する外国人が、特に、 この規定によりカバーされないこと、 を意味する。 但し、 外国人の入国又は在留の合法性が争われるとき、本争点に関する決定でその者の追放に導く決定は、同条に従ってなされるべきである。国内法を誠実にかつその権限を行使して、 適用し、 解釈するのは、 締約国の権限のある機関である。但し、 法の前の平等(第26条) のような規約上の要求を遵守することがその際求められる。
10 第13条は、 追放手続のみを直接規律するにすぎず、 追放の実体的根拠を規律していない。しかし、 「法律に基づいて行われた決定によって」行われる追放のみを認めることにより、その目的が恣意的な追放を阻止することにあることは明らかである。 一方、 本条は、外国人それぞれに対しそれぞれの事案に関する決定を受ける権利を与える。それゆえ、集団的若しくは大量の追放を認める法律又は決定は、 本条を満足しないであろう。この理解は、 委員会の意見では、 追放に反対する理由を提示し及び権限のある機関又はその機関が指名する者によってその決定が審査されかつその機関又はそのものに対する代理人を出頭される権利、に関するその後に続く規定により確認される。外国人は、 本権利が彼の事案のあらゆる状況において実効的なものとなるように追放に対抗する救済手段を追行するための十分な便宜が与えられなければならない。追放に対する訴えの提起(appeal) 及び権限のある機関の審査を受ける権利に関わる本条の諸原則については、「国の安全のためのやむをえない理由」 がある場合にのみ例外が認められうるのである。本条の適用上相異なる種類の外国人の間で差別を行うことはできない。
一般的意見16 (32) (17条・私生活、 家族、 通信等の保護) 1988.3.23採択
1 第17条の規定は全ての人に対して各人のプライバシー、 家族、 住居及び通信に対し不法に又は恣意的な干渉から保護される権利を定めるものである。また、各人の名誉及び信用に対する不法な干渉に対して、 保護される権利を全ての人に与える規定である。本委員会の見解によると、 上記の干渉及び攻撃が国家権力によって為されるか、または自然人あるいは法人によって為されるかにかかわらず、この各人の権利は保護されることが認められるものである。本条項によって各締約国に課せられた義務は、 各締約国が上記の干渉及び攻撃を禁止する効果を与えるような立法的な及びその他の手段を採用することを要請するものであり、かつまた、各国が本権利を保護するために、 立法的及びその他の手段を採用することをも要求するものである。
2 この点に関して、 本規約に関する締約各国政府の報告書の中では、 立法機関、行政機関、 司法機関及び、 一般的に国家によって設立された適切な機関によって、本権利がどのような方法で保障されているかについての情報に対して充分な注意が払われていないという事を、本委員会は指摘したい。特に、 本規約第17条は不法な干渉及び恣意的な干渉の両方に対して、保護を与えているという事実に対して、 充分な注意が払われていない。 このことは、正確にいうと、この第17条の規定に述べられている権利を保護するためにその国の法律上に必要な条項が設けられねばならないことを意味するものである。現在のところ、各国の提出した報告書には、 そのような立法について何も書いていないか、又はその問題について不充分な情報を提供するにすぎない。
3 "不法に” (unlawful) という言葉の定義は、 法によって認められた場合を除いては、その干渉が発生してはならないという意味である。国家によって認められる本権利に対する干渉というものは、法に基づいてのみなし得るものであり、 その法はそれ自体、 この国際規約の規定、その目的及び目標に合致していなければならない。
4 "恣意的な干渉” (arbitrary interference) という語句も又第17条により保護される権利に関連するものである。本委員会の見解によると"恣意的干渉" という語句は、 法に規定された干渉をも含むものである。法によって規定された干渉であってさえも、 本規約の規定、 目的及び目標に合致しなければならないし、かつまた、どんな事があろうとも、 特定の状況の下で、 合理的な干渉でなければならないということを保障しようとして、 "恣意的" という概念を導入したものである。
5 "家族”(family) という語句に関しては、 第17条の目的にとって、 関係する各締約国内の社会通念として、 "家族" として含まれるすべての者を含むように、この語句は広く解釈されるべきであるということが、本規約の諸目標に合致する。 英語でいう "home” (住居又は家庭) という語句は、アラビヤ語で"manzel”語であり、 中国語で "zhuzhai”でありフランスで "domicile”、 ロシア語では "zhilishche”であるが、本規約第17条で使用されているように、人の住んでいる所又は各人の通常占有する所を示すと理解されるべきである。 これに関連して、本委員会は、各国に対して、 自国の社会において "家族”(family) 及び "住居又は家庭”(home) の持つ意味を報告書で指摘するように求めるものである。
6 締約各国が本委員会に対して提出する報告書には、 法によって、 本規約第17条に保障される権利を正当に干渉することが許容されている各国の法制度内に組み込まれた各種の権力機関及び各種の組織についての情報が書かれているべきであると本委員会は思考するものである。厳しい法の制約の下で、本規約第17条の権利に対する、 このような干渉を管理する権限のある各種権力機関に関する情報も、前記報告書にとって、 必要不可欠である。 かつまた、本規約第17条に規定する個人の権利の干渉に対して、どのような組織に対して、 どのような方法によって、 不服を申立てることができるかということを知るための情報もまた、各国の提出する前記の報告書にとって必要不可欠である。 締約各国は、 その各自の報告書の中で、 各国の現実の実務行為がどの程度法に従っているかということを明白にしなければならない。関係各国の報告書には、恣意的干渉及び不法な干渉に関して提出された不服申立に関する情報が含まれていなければならない。かつまた、 認定された干渉の数、 及びそのような場合に与えられる救済についても、報告書に書かれねばならない。
7 社会的に生きる全ての人にとって、 プライバシーの保護は必然的に相対的なものである。しかしながら、 権限のある公共機関は、 そのような情報を知っていることがその社会にとって、必要不可欠であると本規約の下で考えられる場合に限り、ある個人のプライベートな生活に関する情報を要求することができる。従って、 各国は自己の提出する報告書の中で、 個人のプライバシーの干渉を正当化する法律及び規則を指摘することを推奨するものである。
8 本規約に合致する干渉の場合であっても、 関連法規は、 そのような干渉が許される条件を正確に、細部に渡って明記しておかねばならない。 法によって定められた機関によってのみ、かつケース・バイ・ケースで、上述のような干渉を行うという決定が為されるべきである。本規約第17条に従えば、 通信が秘密でありかつ妨害されないということは法律上も事実上も、保障されるべきである。通信というものは、 途中で妨害されることなくして個人の住所に配送されるべきであり、かつまた、 開封されたり、 または、 その他の方法で読まれたりすることがあってはならない。電気的な方法によったり、またはその他の方法によって監視したり、 電話を妨害したり、電報その他の形式の通信を妨害したり、 会話を盗聴したり、 会話をテープレコーディングしたりすることは、禁止されねばならない。個人の住宅を捜索することは、 必要な証拠のための捜索に限定されるべきであり、かつ個人を困惑させる程度にまで捜索することは許されるべきではない。個人の身体捜索に関しては、捜索される個人の尊厳を尊重した方法で捜索が行われることが保障されるような効果的な手段がとられるものとする。国家公務員によって、身体捜索を受ける個人又は、 国家の要請によって医学検査を受ける個人は、同性によってのみ検査を受けるべきである。
9 締約各国は、 本規約第17条に反するような干渉を行わない義務を負い、 かつ自然人又は法人が、上述の干渉行為を為すことを禁止するような法制度を整える義務を負うものである。
10 コンピュータの上で、 データバンクとか、 その他の手段によって個人情報を収集し、保有することは、 公共機関によるものであれ、 指摘な個人又は団体によるものであれ、法によって規制されなければならない。個人のプライベートな生活に関する情報は、それを受領し、 処理し、 使用することについて、 法によって正当と認められない人々の手にその情報が届かないように保障するための有効な手段を各国はとらなければならない。かつまた、その情報は、 本規約に反する目的のために、 決して使用されないように保障するために、各国は有効な手段を取らなければならない。 各人の私的生活をもっとも効果的に保護するためには、各個人は、どんな個人データがデータファイルに保存されているか、 またどんな目的であるかということを理解できる形で確かめる権利を持たなければならない。各個人は、どのような公共機関、 私的個人又は団体が、 それらのデータファイルを管理したり、管理することができるのかということを確認することができるものとする。もしも、そのようなデータファイルの中に、 誤りのある個人データが含まれていたり、 データファイルが法の規定に反して集められていたり、処理されていた場合には、各個人は修正を求めたり、 削除を求める権利を持つものとする。
11 本規約第17条の規定は、 個人の名誉及び信用に対して、 保護を与えるものであるし、かつまた締約各国は、 その目的のために適切な立法を行う義務を負うものである。また、発生するどのような不法な攻撃に対しても、 何人も自分自身を守ることができるよう、また、 何人も、 発生したどのような不法な攻撃に対しても、効果的な救済措置を受けられるよう、効果的な規定が作られるべきである。 法によって、 個人の名誉及び信用がどの程度保護されているかということを各国は、自己の報告書の中で指摘しなければならない。かつまた、 各国の法体制の下で、この個人の名誉及び信用がどのように保護されているかということをも、 各国は自己の報告書の中で指摘すべきである。
一般的意見17 (35) (24条・子どもの権利) 1989.4.5採択
1 市民的及び政治的権利に関する国際規約第24条はすべての児童に対しいかなる差別もなしに、未成年者としての地位に必要とされる保護を家族、社会及び国から受ける権利を認める。従って、 この規定の実施には、 すべての者が規約の定める権利を享有することを確保するために国が第2条に基づきとることを要請されている措置に加え、児童を保護するための特別措置(special measures) の採用を必要とする。 締約国の提出する報告は、しばしばこの義務を過少評価しているように思われるし、 特別保護を受ける権利の享有に関し児童が与えられる方法につき十分な情報を提供していない。
2 このことに関連して、 委員会は、 第24条の定める権利は規約が児童に関し認める唯一の権利ではなく、児童は、 個人として、 規約で明定されるすべての市民的権利の利益を享受する、と指摘するものである。1の権利を定めるに当り、 いくつかの規約規定は、 成人以上の保護を未成年者に与えるためにとるべき措置を国に対し明示的に指示する。例えば、 生命に対する権利に関しては、死刑は、 18歳未満の者が行った犯罪については科することができない。同様に、 合法的に自由を奪われた場合に、 少年の被告人は、 成人と分離されるものとし、できる限り速やかに裁判に付される権利を有する。更に、 有罪の判決を受けた少年の犯罪者は、矯正及び社会復帰の促進を目的とする、 成人からの分離を含むかつ年齢及び法的地位に相応する、行刑の制度に服するものである。他の例として、 児童は、 規約の認める権利に対する制限 但し、かかる制限が正当なものであることを条件とする の可能性により保護される。例えば、刑事訴訟又は他の訴訟において公開で判決を言い渡される権利に関しては、未成年者の利益のために必要がある場合には例外が認められる。
3 しかしながら、 たいていの場合、 とるべき措置は、 規約で明定されておらず、その領域内にありかつその管轄の下にある児童の保護の必要性に照らして措置を決定するのは、各々の国である。委員会は、 この点に関し、 かかる措置が第一義的には児童が規約の定める他の権利を完全に享有することを狙いとしているものの、経済的、 社会的及び文化的なものでありうることに留意する。例えば、 幼児死亡率を低下させ、児童における栄養失調を根絶し、 そして、 児童が暴力行為や残虐で非人道的な取扱いを受けることを阻止し又は強制労働や売春手段により、麻薬の違法取引における児童の利用により若しくはその他の手段により搾取されることを阻止するために、あらゆる可能な経済的及び社会的措置がとられるべきである。文化的な分野では、児童の個性の発達を育成し、 そして、 規約で認められる権利、 なかんずく意見及び表現の自由に対する権利を児童に享有させることを可能とすることにつながる教育レベルを与えるために、あらゆる可能な措置がとられるべきである。更に、 委員会は、 その報告中に児童が武力衝突に直接参加しないことを確保するためにとった措置に関する情報を含める必要性のあることに締約国の注意を喚起したい。
4 特別な保護措置を受ける権利は、 未成年者としての地位によるものであるゆえ、すべての児童が有している。 それにもかかわらず、 規約は、成年となる年齢を示していない。これは、 関連する社会的及び文化的な条件に照らして各締約国により決定されるべきものである。この点に関し、 国は、その報告で児童が民事事項において成年となる年齢及び刑事責任を引受ける年齢を示すべきである。国はまた児童が法律上労働することのできる年齢及び労働法上成人として扱われる年齢を示すべきである。国は、更に、 児童が第10条第2項及び第3項の適用上成人とみなされる年齢を示すべきである。但し、 委員会は、 上記目的上、 年齢が不当に低く設定されるべきでないこと、そしていずれの場合においても、締約国が18歳未満の者が国内法上成年に達しているとしても、 かかる者に関する規約上の義務からまぬがれることはできないこと、に留意する。
5 規約は、 児童が人種、 皮膚の色、 性、 言葉、 宗教、 国民的若しくは社会的出身、財産又は出生等のいかなる理由による差別に対しても保護されることを要求する。この関連で、委員会は、 規約の定める権利享有における無差別 (non-discrimination) が、 児童の場合には、 第2条からも由来し、 そして、児童の法律の前の平等が第26条から由来する一方で、第24条に含まれる無差別条項が特に本条の規定で定める保護の措置に関連していることに留意する。締約国による報告は、保護の措置が相続を含むあらゆる分野におけるすべての差別を、なかんずく国民たる児童と外国人たる児童との間における又は嫡出子と非嫡出子との間における差別を除去するためにとられることをどのように法令と実行が確保しているのかを示すべきである。
6 児童に必要な保護を保障する責任は、 家庭、 社会及び国にある。 規約は、 かかる責任がどのように分配されるべきかを示していないが、児童の個性(personality) の調和的発展及び規約の認める権利の享有を促進する条件をつくるのは、第一次的に家族ーこれは、 関係締約国の社会においてそれを構成するすべての者を含むと広く解されるー、特に親の責任である。しかしながら、 父親及び母親が住居外で有給で雇用されることは、ごく普通のことであるゆえ、 締約国の報告は、 児童の保護を確保するに当たって家族に対する援助を行う責任を社会、社会施設(socialinstitutions) 及び国がどのように果たしているのかを示すべきである。更に、 親と家族がその義務を著しく果たさず、児童を虐待し又は、 放任する場合には、国は、 親権を制限するために干渉すべきであるし、 そして、 児童は必要な状況のときには、その家族から分離され(separated) ることができる。 離婚の場合には、 児童の至上の利益 (paramount interest) を考慮にいれて、 児童に必要な保護を与え、かつ、 可能な限り、両親との個人的な関係を保障する措置がとられるべきである。 委員会は、 締約国の報告が遺破棄された (abandoned)又はその家庭環境を奪われた児童につきその家庭環境を性格づける条件に最も類似する条件で当該児童を成長させる (develop) ことができるようにするためにとられた特別な保護措置に関する情報を含むことは有用であると考える。
7 第24条第2項に基づき、 すべての児童は、 出生の後直ちに登録され、 かつ氏名を有する権利を持つ。委員会の意見では、 この規定は、 特別な保護の措置を受ける権利に関する規定と密接に結びつけられているものとして解釈されるべきであり、そして、児童の法律上の人格 (legal personality) の承認を促進ることを狙いとしている。氏名を有する権利を定めることは、 非嫡出子の場合には特別な重要性をもつ。出生後児童を登録する義務の主要な目的は、児童の誘拐、 競売若しくは取引 (sale or traffic) 又は規約の定める権利の享有と両立しないその他の取扱い方の危険性を減ずることにある。締約国の報告は、その領域内で出生した児童が直ちに登録されることを確保する措置を詳細に示すべきである。
8 児童に与えられる保護の文脈において、 第24条第3項で定められたすべての児童の取得する権利に対しても、特別の注意が払われるべきである。この規定の目的は、 児童が無国籍のために社会及び国により相対的に低い保護しか与えられないことを防止することにあるが、国に対しその領域内で生れたすべての児童に国籍を与えることを必ずしも義務づけるものではない。しかしながら、国は、 国内的にかつ他国と協力して、 すべての児童が出生時に国籍をもつことを確保するためのあらゆる適切な措置をとることとを要請される。この関連で、国籍取得に関するいかなる差別も、 例えば、 嫡出子及び非嫡出子は両親が無国籍者の子との間において、あるいは、 片方又は双方の親の国籍上の地位に基づいては、国内法上許されるべきではない。児童が国籍を有することを確保するためにとられた措置は、 常に締約国の報告で言及されるべきである。
一般的意見18 (37) (26条・法律の前の平等) 1989.11.9採択 33
1 いかなる差別をもなく法の下に平等であり、 法による平等な保護をうける原則とともに、差別禁止の原則は、 人権の保護に関する基本的かつ一般的な原則の構成要素となるものである。かくして、市民的権利及び政治的権利に関する国際規約第2条第1項によって、締約各国は、 自国内にありかつその司法管轄の下に保障される人権を、 人種、 皮膚の色、性、言語、 宗教、 政治上若しくはその他の意見、 国籍上の若しくは社会的な出身、財産、 出生、 その他の地位による差別なしに、 尊重し、 かつ確保する義務を負うものである。 規約第26条は、 全ての人に対して法の下に平等である及び法に基づく平等な保護をすべての人に保障するばかりでなく、この規定は、 法の下におけるすべての差別を禁止し、かつ、 すべての人を人種、皮膚の色、 性、 言語、 宗教、 政治上若しくはその他の意見、 国籍上の若しくは社会的な出身、財産、 出生、 その他の地位による差別から平等かつ効果的に保護するものである。
2 もちろん、 差別禁止の原則というものは、 きわめて基本的なものであるため、規約第3条は、 規約に定められた権利を享受する上で男・女間の平等の権利を保障することを締約各国に義務づけている。しかしながら、規約第4条第1項においては締約各国は緊急の事態のある場合においては、ある種の義務に違反する措置を採ることができるが、 しかし同規定は、 その場合の緊急措置には、人種、皮膚の色、 性、 言語宗教、 または社会的出身のみによる差別があってはならないことを要求している。更にまた、 規約第20条第2項の定めるところによると、締約各国は、 国籍による、人種的な、 又は宗教上の差別を扇動するような憎悪の唱道を法律で禁止しなければならない義務がある。
3 基本的かつ一般的性格を有するため、 差別禁止の原則は、 法の下の平等の原則及び法による平等な保護の原則と同様に、しばしば、 人権の特定の諸分野に関連する諸規定において、言及されている。 規約第14条第1項にあっては、全ての人は裁判及び審判において、 平等でなければならず、 同条第3項にあっては、刑事上の罪の決定にあたり、全ての人は、 同条第3項(a)号より(g)号までに列挙された最低限度の保障を十分平等に受けることができることが規定されている。同様に、 規約第25条には、規約第2条に規定されているような差別を受けることなしに、全ての市民が平等に政治に参加することができることが規定されている。
4 締約各国こそが、 これらの関連した規定を充たす適切な処置を決定するものである。 しかしながら、 このような処置の性質及びこの処置が差別禁止の原則に合致しているか及び法の下の平等原則にも合致しているか、また、法による平等な保護の原則に合致しているかどうかを、 各国は本委員会に報告するべきである。
5 特定個人の平等権を保障するために、 本規約は、 明らかに締約国に諸処置をとることを、しばしば要求しているという事実について、 締約各国が注意することを本委員会は希望するものである。例えば、婚姻に関して、 婚姻期間中及び婚姻の解消にあたり、 配偶者の権利と責任が平等であることを保障するために、締約各国は適切な処置をとるべきであることを本規約第23条第4項は定めている。このような処置は、立法処置であったり、 行政処置であったり、 その他の処置である場合もあるのだが、本規約の定める平等な権利を各配偶者が保持することを確実に保障することは、各国の明確な義務である。児童に関しては、 本規約第24条は、 すべての児童が人種、皮膚の色、 性、 言語、 宗教、 国籍上の若しくは社会的出身、 財政、 出生等によって差別されることなく、家族、社会及び国家において未成年者としての地位により必要とされる保護措置を与えられる権利があると定めている。
6 本規約は"差別”という語を定義していないし、 かつまた、 なにが差別を構成するのかということも、本規約は示していないことを本委員会はとくに言及するものである。しかしながら、 "全ての形態の人種差別撤廃に関する国際条約”第1条によると、 "人種差別”という語は、人種、 皮膚の色、 血統、 又は国籍上若しくは社会的出身を理由として、区別し、排除し、 制限し、 及び特恵を与えるものであって、 政治的、 経済的、 社会的、 文化的、その他の全ての公的生活分野において、 人権及び基本的自由を対等の立場で認識し、享受し、行使することを阻止もしくは妨げる目的を有し、 又そのような効果を有するものを意味するものであると規定している。同じく、 "女性に対する全ての形態の差別を撤廃する国際条約”第1条では、"女性に対する差別”とは、 性差に基づく全ての差別、 排除、 制限であって、かつ、 結婚していると否とにかかわらず、 男女平等の基盤の上に、政治的、 経済的、社会的、 文化的、 市民的、 その他の分野において、 人権及び基本的自由を女性に認識し、享受し、 又は行使することを阻止しもしくは妨げる効果を有し、又その目的を有するものであると規定している。
7 これらの国際条約は、 特定の分野における差別の場合を取扱っているにすぎないのだが、本規約で使われている "差別”という語は人種、 皮膚の色、性、 言語、 宗教、政治上の意見若しくはその他の意見、 国籍上の若しくは社会的出身、 財産、 出生、その他の地位に基づく、 全ての意味での区別、排除、 制限、 特恵であって、 全ての人々が対等の立場で、全ての人権と自由とを認識し、 享受し、 行使することを阻止し又は妨げる目的を有し、又はそのような効果を有するものを意味すると理解すべきであると本委員会は確信するものである。
8 しかしながら、 対等の立場で人権と自由とを享受するということは、 全ての場合に、全く等しい処遇をするということを意味するものではない。この点に関して、 本規約の規定は明白である。例えば、 本規約第6条第5項では、 18歳以下の者に死刑判決を下すことを禁止している。又、 同項は、妊娠した女性に対して、 死刑を執行することを禁止するものである。同様に、 本規約第10条第3項にあっては、 未成年の犯罪者は成人と分離されることが求められている。更に、本規約第25条は一定の政治的権利を保障しているが、 市民権の有無を理由とする差別を認めている。
9 多くの締約各国の報告書は、 法による差別に対する保護に関連して、 立法処置、行政処置及び判決例に関する情報が記載されているが、 多くの場合、実際の差別を暴露するような情報は報告書には書かれていない。本規約第2条第1項、 第3条、 第26条に関する報告書の場合には、 各国は、 その報告書の中で、通常自国の憲法上の規定とか、個人の平等のための機会均等法とかを引用してあるものである。しかしながら、 そのような情報は、 勿論有益ではあるが、 実際の差別の諸問題が残存しているかどうかを、本委員会は知りたいと望むものである。そして、 その実際の差別というものが、公共機関によってか、 地域社会によってか、 それとも、 私的個人又は私的団体によって為されているのかということも、本委員会は知りたいと望むものである。このような実際の差別は排除し、 又は減少させるための法律上の禁止規定及び行政処置に関しても本委員会は情報を得たいと望むものである。
10 本規約で禁止している差別を発生させ、 又は永続させるような状況を排除しまたは減少させるために、平等の原則によって、 締約各国は、 しばしば積極的な行動をとらねばならないことがあるということを、本委員会は指摘したいと思う。例えば、 ある国で、 ある一部の人々が、 各自の人権を享受することを妨害され、又は阻止される一般的状況にある場合には、 その国は、 そのような状況を是正するために、特定の行動をとらねばならない。この特定の行動には、 特定の問題に関して、 他の人々に比べて、一部の人々に特恵的な取扱いを許容することが含まれうる。 しかし、 そのような国家活動が、実際の差別を是正するのに必要であるかぎりその国家活動は本規約に基づく合法的な処遇の差異である。
11 差別の理由として、 人種、 皮膚の色、 性、 言語、 宗教、 政治的意見及びその他の意見、国籍上若しくは社会的出身、 財産、 出生、その他の地位を、 本規約第2条第1項及び第26条は列挙している。多くの国の憲法及び法律にあっては、 本規約第2条第1項に定めるような差別を禁止している理由が全て列挙されているのではないことを本委員会は承知している。それ故にこのように差別の理由の一部が脱落していることの意味について、締約各国は本委員会に報告してもらいたい。
12 本規約第2条は、 差別に対して保護すべき権利の範囲を本規約に規定された権利に限定するものであるが、他方、 本規約第26条にはこのような制限は明記されていない。すなわち、 本規約第26条では、全ての人は、 法の下に平等であり、 かつ差別なくして法によって平等に保護されるということを規定しており、かつまた、列挙されたどのような理由による差別に対しても、 全ての人は平等かつ効果的な保護が法によって保障されるということをも、本規約第26条は規定するものである。本委員会の見解によると、 本規約第26条は、既に本規約第2条で規定されている保障を単に重複して保障するものではなく、この第26条はそれ自身、自律的な権利を規定するものである。 公共機関が統制しかつ保護しているいかなる分野においても、第26条は、 法律上においても、 事実上においても、差別することを禁止するものである。それ故に、 締約各国に課せられた立法上並びにその適用上の義務は本規約第26条と関係を有するものである。かくして、ある国によって立法が行われた場合には、 その立法はその内容において差別があってはならないという、本規約第26条の要請に合致しなければならない。他の言葉で表現すると、 本規約第26条に規定されている差別禁止の原則が適用されるのは、本規約上に定められた権利に限定されないということである。
13 最後に、 基準が合理的であり、 かつ客観的である場合であって、 かつまた、本規約の下での合法的な目的を達成するという目的で行われた場合には、処遇の差異は必ずしも全て "差別”を構成するわけではないというのが、 本委員会の意見である。
一般的意見19 (39) (23条・家族の保護) 1990.6.24採択 37
1 市民的及び政治的権利に関する国際規約第23条は, 家族が社会の自然かつ基礎的な単位であり, 社会及び国による保護を受ける権利を有することを認める。家族及びその構成員の保護は, 規約の他に規定によっても、 直接又は間接に、 保障されている。 例えば、 第17条は、家族に対する恣意的又は不法な干渉の禁止を確立している。更に、 規約第24条は、児童自身に関し又は家族の一員としての児童に関し、 その権利の保護を特に扱っている。その報告で、 締約国はしばしば、国及び社会が家族及びその構成員に対し保護を与える義務をどのようにして履行しているのかに関する十分な情報を与えていない。
2 委員会は、 家族の概念がいくつかの点で国により異なりうるし、 一国内の地域によってさえ異なりうること、それゆえ、 本概念に標準的な定義を与えることが不可能であること、に留意する。しかしながら、 委員会は、 人の集団 (a group of persons) が、 国の法令及び実効上家族とみなされる場合には,第23条の定める保護を与えられなければならない, と強調するものである。 よって, 締約国は, 家族の概念及び自己の社会で及び法制度でどのように解釈され又は定義されているかについて報告すべきである。「核」("nuclear") 家族とか 「拡張」 ("extnded") 家族のような多様な家族概念が国内にある場合には, このこととは, 各々に与えられる保護の程度に関する説明を付して示されるべきである。未婚の夫婦(unmarried couples) とその子又は片親とその子等の種々の家族携帯の存在に鑑みて, 締約国はまた、 かかる家族携帯及びその構成員が国内法及び国内実行により承認されかつ保護されているかどうかそしてどの範囲でそうであるかについても示すべきである。
3 規約第23条の定める保護を確保するに当たり、 締約国は、 立法措置、 行政そ知その他の措置をとることを要請される。締約国は、 かかる措置及び手段であって、国による効果的な実施を確保するものの性質に関する詳細な情報を提供すべきである。事実、 規約はまた社会による保護を受ける家族の権利も認めているゆえ、締約国の報告は、必要な保護が国及び他の社会施設 (social institutions) によりどのようにして家族に与えられているのか,国がそのような施設の活動に対する財政的支援その他の支援を与えているかどうか及びそれはどの程度のものか、そして、 かかる活動が規約と両立することをどのようにして確保しているのか、について示すべきである。
4 規約第23条第2項は、 婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利を再確認する。同条第3項は、 婚姻が両当事者の自由かつ完全な合意なしには成立しない、と定める。締約国の報告は、 血縁関係の程度又は意思無能力等の特別な要因に基づいた婚姻をする権利の行使に対する制限又は障害の存否を示すべきである。規約は、男子又は女子のいずれに関しても特定の婚姻適齢 (marrigable age) を確立していないが、その年齢は、 両当事者が法で規定された形式及び条件により各人の自由かつ完全な個人的同意(personal consent) を与えることを可能にするものであるべきである。 この関連で, 委員会は、 そのような法的規定が規約の保障する他の権利の完全な行使と両立するものでなければならないということに留意したい。よって、例えば、 思想、 良心及び宗教の自由についての権利は、 各国の法令が宗教婚と民事婚の両者の可能性を定めるべきこと、を含意する。 しかしながら、委員会の見解では、 国が宗教儀式に従って挙行される婚姻が民事法上でも遂行され、確認され又は登録されるよう要求することは、 規約と非両立ではない。国はまた、この主題に関する情報をその報告に含めるよう要請される。
5 家族を形成する権利は, 原則として、 子を産みかつ同居する可能性を含意する。締約国が、 家族計画政策を採用する場合、 その政策は規約規定と両立すべきであり、そして特に、差別的又は強制的であるべきでない。 同様に同居する可能性は, 国内レベルで、かつ、 場合によっては他国と協力して、 家族の一体性 (unity)又は再結合 (reunification) を、 特にその構成員が政治的、 経済的又は類似の理由で別居させられている (be separated)場合に,確保する適当な措置をとることを含意する。
6 規約第23条第4項は, 締約国が、 婚姻中及び婚姻の解消の際に、 婚姻に係る配偶者の権利及び責任の平等を確保するため、適当な措置をとる、と定めるる
7 婚姻に係る平等に関し、 委員会は特に、 性に基づくいかなる差別も婚姻を理由とさする国籍の取得又は喪失に関連して生起すべきでない、ということに留意したい。同様に、 各配偶者が自己の婚姻前の姓の使用を保持する権利又は平等の基礎において新しい姓の選択に参加する権利は、保障されるべきである。
8 婚姻中は、 配偶者は、 家族において平等の権利及び責任をもつべきである。この平等性は、 住居の選択、 世帯の運営 (running ofhousehold)、 子の教育及び資産の管理等, 両当事者の関係から生起するあらゆる問題に及ぶ。 かかる平等性は、 法的別居又は婚姻の解消に関する取決めに至るまで適用される。
9 従って、 別居若しくは離婚、 子の監護、 扶養若しくは離婚後扶養 (alimony), 訪問権 (visiting rights) 又は親権の喪失若しくは回復に関する事由及び手続に関わるいかなる差別的取扱いも禁止されなければならないし、その際、児童の至上の利益 (the paramount interest) が考慮に入れられなければならない。締約国は特に、 婚姻の解消時又は配偶者の別居時にあらゆる児童にとって必要な保護を定める規定に関する情報をその報告中に含めるべきである。
一般的意見20 (44) (7条・拷問、品位を傷つける取扱い) 1992.4.3採択
1 この一般的意見は、 一般的意見7 (16) にかわるもので, これを見直し, 更に発展させるものである。
2 市民的及び政治的権利に関する国際規約第7条の目的は、 個人の尊厳と、 身体的、精神的完全性 (integrity) の双方を保護することにある。 すべての人々に対し, 第7条で禁止されている行為につき、 その行為が公的権限に基づくか、公的権限を超えているか、 又は私的な資格で行動する人々によってなされたか否かを問わず、必要と認められる立法又は他の方法を通じて保護を与えることは、締約国の義務である。 第7条における禁止の内容は、 本規約第10条第1項の積極的要件によって補完される。即ち、 同条項は、 「自由を奪われたすべての者は、人道的に、 かつ人間の固有の尊厳を尊重して取り扱われる」と規定している。
3 第7条の正文はいかなる制限も認めていない。 委員会は、 本規約第4条に引用されている公の緊急事態の状況においてすら第7条の規定の停止は認められず、その規約の効力を持続することを再確認する。委員会は同様に、 上司又は公的権力からの命令に基づくことなどのいかなる理由についても、第7条違反を免れる正当化根拠,又は酌量すべき情状にならないと考える。
4 規約には第7条の諸概念の定義は含まれておらず, 委員会も同条で禁止されている行為のリストを作成し、同条定める異なる種類の処罰、 又は取扱いの間の厳密な区別を定立することはしていない。それらの区別は、適用される取扱いの性質・目的・程度に依存する。
5 第7条における禁止は身体的苦痛をもたらす行為だけでなく、 被害者に対し精神的苦痛をもたらす行為にも及ぶ。委員会の見解では、 更にその禁止は、体罰、 即ち犯罪に対する処罰としての、 又は教育的、懲戒的措置としてのいきすぎた処分を含む体罰にも及ぶ。 この点に関しては、 第7条は、特に、 教育、 医療施設における子供、 生徒、 患者を保護するものであることを強調することが相当である。
6 委員会は、 長期間の被拘禁者又は受刑者の独居拘禁も、 第7条によって禁止される行為にあたる場合があることを指摘する。委員会が一般的意見6(16) で述べた通り, 本規約第6条は廃止が望ましいと強く示唆する言葉で死刑廃止に言及している。更に、 最も重大な犯罪につき、 締約国によって死刑が適用されるときは、第6条に従って厳格に制限されるだけでなく、生じ得る身体的・精神的苦痛が最も少ない方法で執行されなければならない。
7 第7条は、 当該関係者の自由意思による同意のない医学的又は科学的実験を明示的に禁止している。委員会は、 締約国の定期報告書には、 一般的にこの点に関する情報が全くないことを指摘したい。この条項の遵守を確保する必要性と方法につき、もっと注意が向けられるべきである。委員会は又は、 このような実験に関し、 正当な同意を与えることができない人々につき、特にあらゆる形態の拘禁、又は受刑中の人々につき、 特別な保護が必要であると考える。このような人々は、 自らの健康に有害となり得るいかなる医学的又は科学的実験にも服すべきではない。
8 委員会は、 このような取扱い又は刑罰を禁止し、 あるいは、 これを犯罪とするだけでは、第7条の実施として充分ではないと指摘したい。 締約国は委員会に対し、その管轄下の領域における拷問又は残虐な非人道的な若しくは品位を傷つける取扱いに該当する行為を防止し、処罰するためにとった立法・行政・司法、及びそれ以外の措置を報告しなければならない。
9 委員会の見解によれば、 締結国は個人を、 犯罪人引渡、 追放、 又は送還によって、他国に対する帰還の際における拷問又は残虐な非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い、又は処罰の危険にさらしてはいけない。締約国は報告書において、 そのためにどんな措置がとられたかを示すべきである。
10 委員会に対しては,拷問禁止と第7条によって禁じられている取扱いに関する関連情報が大衆にまでいかに広く広報されているかにつき、報告がなされるべきである。 法の執行に当る職員、 医療機関職員、 警察官、 及びあらゆる形態の逮捕、 拘禁、刑に服する人々の拘禁、 又は取扱いに関わる人々は、 適切な指示と訓練を受けなければならない。締約国は委員会に対し、与えられた指示と訓練、 及び第7条の禁止がどのようにかかる人々が服すべき規則及び道徳基準の不可欠な要素を構成しているかにつき報告しなければならない。
11 第7条により禁じられた行為に対して、 いかなる人々も保障されるべき一般的な保護を与える措置を叙述することに加え、締約国は、 著しい弱者に対する特別な保護に関する措置につき、詳細な情報を提供すべきである。 拘禁中の人々の実効保護を保障するために、 被拘禁者が拘禁の場所として公的に認められた場所で拘禁されること、拘禁の責任者の名前だけではなく、拘禁される者の名前と場所が記録され、 親戚や友人を含む関係者に利用可能な登録簿に記載され、面会できる規定がつくられるべきである。 同様に、すべての尋問時間と場所は、 居合わせたすべての人々の名前と共に記録されるべきであり、この情報は、 司法的・行政的手続のために利用されるべきである。他との接触を絶つ拘禁を禁止する規定が置かれるべきである。この関係で締結国は、 いかなる拘禁場所にも、 拷問又は不当な取扱いのために使われるようないかなる装置もないことを確保しなければならない。被拘禁者の保護のために、医師、 弁護士、 及び操作の必要がある時は適当な監視の下に家族との速やか且つ定期的な面会を必要とする。
12 拷問又は他の禁じられた取扱いを通じて得られた供述書、 又は自白を司法手続において証拠能力があるとして使用することを法律により禁止しなければならないことは、第7条の下での違反行為を抑制するために重要である。
13 締結国は、 報告書の提出の際に、 拷問又は残虐な非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い、又は刑罰を処罰する刑法の規定につき、 公務員又は国のために行動する他の人々によるか、又は私人達によつて犯されたか否かを問わず、このような行為に適用される刑を具体的に報告しなければならない。第7条を犯す人々は、 禁止行為を助長するか、 命令するか、 容認するか、 実効するかを問わず、責任を負わねばならない。その結果、 その命令に服することを拒否した者は、 処罰又は他の不利益な取扱いに服することがあってはならない。
14 第7条は本規約第2条第3項と共に読まれるべきである。 報告書において締約国は、その法体系が第7条で禁じられたあらゆる行為を直ちにやめさせることならびに適正な補償につき、いかに効果的な保障をしているかを示すべきである。 第7条によって禁じられる虐待を告発する権利は、 国内法で認められなければならない。告発については、 効果的な救済がなされるように、 権限ある当局によって速やかにかつ公平に捜査されなければならない。締約国の報告書は、虐待の被害者が利用可能な救済方法、 告発後の手続、 告発数に関する統計、その処理結果につき具体的な情報を提供すべきである。
15 委員会は、 いくつかの締約国が拷問に関し恩赦を認めていることに注目してきた。一般的に、 恩赦は締約国がこのような行為を捜査すべきこと、その管轄下においてかかる行為が起こらないことを保障すべきこと、将来も発生しないことを確保すること、 等の義務に抵触するる締約国は、 個人から補償及び可能な限りの完全な原状回復を含む効果的な救済を受ける権利を奪ってはならない。
一般的意見21 (44) (10条・自由を奪われた者の取扱い) 1992.4.6採択
1 この一般意見は、 一般意見9 (16) にかかわるもので、 これを見直し、 更に発展させたものである。
2 第10条第1項は、 刑務所・病院、 特に精神病院・拘置施設・矯正施設、 又はそれ以外の場所で拘禁され、締約国の法律と権威の下で自由を剥奪されているいかなる者にも適用される。締約国はこの条文に規定された原理が、その管轄下にあり、 拘禁者が拘禁されているすべての施設で導守されるよう確保すべきである。
3 第10条第1項は、 締約国に対し、 自由を奪われているため、 特に弱い立場にある人々に対する積極的義務を課し、第7条に含まれる拷問又は残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱い、 若しくは刑罰の禁止規定の補完をなすものである。このように、 自由を奪われている人々は、 医学的・科学的実験を含む第7条に違反する取扱いに服さなくてよいだけでなく、自由の剥奪から生ずる以外の苦しみや圧迫にも服する必要はない。このような人々の尊厳に対する尊重は、自由な人の尊厳に対するのと同一条件下で保証されなければならない。 自由を剥奪された人々は、閉鎖された環境ゆえに避けえない条件は別として、本規約に規定するすべての権利を享有する。
4 自由を奪われたすべての人々を人道的に、 その尊厳に対する尊敬をもって扱うことは、基本的か普遍的かつ適用し得る原則である。 それ故、 この原則の適用は、少なくとも締約国で得られる物質的資源と関係しない。この原則は、 人種、 皮膚の色、 性、 言語、 宗教、 政治的意見、 その他の意見、 国民的若しくは社会的出身、財産、出生、 又は他の地位等のいかなる理由による差別もなしに適用されなければならない。
5 締約国はその報告書において、 国際連合の基準を拘禁者の取扱いに対しどの程度適用しているのかを示すよう求められている。即ち、 「被拘禁者取扱い最低規則(1957年)」、 「あらゆる形態の拘留又は拘禁の下にあるすべての者の保護のための諸原則 (被拘禁者保護原則1988年)」、 「法執行官のための行動綱領(1978年)」、 「拷問及びその他の残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い、 又は刑罰から被拘禁者及び被抑留者を保護することについての保険職員、特に医師の役割に関係のある医学倫理の原則(1982年)」 等である。
6 報告書は第10条第1項に規定された権利に関連する国の立法的、 行政的諸規定に関する詳細な情報を提供すべきであると考える。また、 報告書は、自由を奪われている人々の取扱いに関する規則の実行的適用を監督するため、権限ある当局によってとられてきた具体的な措置を具体的に明らかにすることが必要であると考える。締約国は、報告書に、 刑務所施設を監督する制度、 拷問及び残虐な、 非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いを防止する具体的な措置、及び公正な監督制度がどのように確保されているかに関する情報を含ませるべきである。
7 更に、 報告書は、 種々の適用条文が自由を奪われている人々に関する権限をもつ職員に対する指示と訓練の不可欠な部分を構成しているか否か、また、彼らが義務を遂行するに際し、 それらが厳格に順守されたか否かを示すべきであると考える。また、 被逮捕者又は被拘禁者が、 このような情報を入手しうるか否か、またこれらの規則の尊重を確保し、もしこれらの規則が無視されたら苦情を述べ、 違反したときは適正な補償を得るための実行的な法的手段を有しているか否かを示すことが相当である。
8 委員会は、 第10条第1項に規定される原則が、 第10条第2項及び第3項に規定される締約国の刑事裁判におけるより具体的な義務の根拠を構成するものと考える。
9 第10条第2項(a)は特別の場合を除いて、 有罪の確定判決を受けた者から被告人を分離することを規定している。このような分離は、 第14条第2項に規定されている通り、有罪とされるまでは無罪の推定を受ける権利を享有するこれらの人々の地位を強調するために必要とされる。締約国の報告書は、 被告人が有罪とされた者からどのように分離されているのか、被告人の取扱いと有罪とされた者との取扱いがどのように異なるのかを示すべきである。
10 受刑者に関する第10条第3項につき、 委員会は、 締約国の刑務所制度の機能につき詳細な情報を得たいと思う。刑務所制度は単に応報的なものであってなならない。それは、 基本的に、 受刑者の矯正と社会的更生を求めるものでなければならない。締約国は、 釈放後援助を与え、 その効果に関する情報を提供する制度があるか否かを明らかにするよう求められている。
11 多くの場合は、 締約国の提供する情報には、 受刑者の再教育を確保するための立法的、行政的規定、 又は実務的措置等が含まれていない。委員会は、 教育、 再教育、 職業指導、訓練、 及び刑務所の外部だけでなく、 内部における受刑者のための労働計画に関する具体的な情報を求めている。
12 第10条第3項に規定された原則が完全に尊重されているか否かを決定するために、委員会は、 更に、 拘禁中適用された具体的な措置に関する情報を求める。即ち、個々の受刑者達がどのように扱われているのか、 どのように分類されているのか、及び懲戒制度、 独居拘禁、 厳戒下における拘禁、 外部 (家族、弁護士、 社会的、医学的サービス、 非政府団体) との接触が確保される条件等である。
13 更に、 委員会は、 いくつかの国の報告書に、 少年被告人及び少年犯に対する取扱いに関して何ら情報が提供されていないことを指摘したい。第10条第2項(b)は、少年被告人は成人から分離されねばならないと規定している。報告書に書かれた情報は、 いくつかの締約国が、 これが規約の義務規定であることについて何等必要な注意を払っていないことを示している。また、本規約正文は少年に関する事件につき、 できる限り速やかに審理されねばならぬと規定している。報告書は、 締約国にとってとられた措置を具体的に示すべきである。 最後に、 第10条第3項では、 少年犯は成人から分離されねばならず、 拘禁の条件に関する限り、矯正又は更生を助長する目的をもって、 より短い労働時間、親戚との接触等のような、年齢と法的地位にふさわしい取扱いが許されるべきである。 第10条は、 少年の年齢の限界につき指示していない。これは、関係する社会的、 文化的及びその他の条件に照らして各締約国によって決定されるべき事柄であるが、委員会は、 第6条第5項は少なくとも刑事裁判に関しては、18歳未満のすべての人々が少年として扱われるべきであると示唆していると考える。締約国は少年として扱われる年齢の人々についての情報を提供すべきである。この点において、締約国は、 「北京原則」 として知られている 「少年司法運営のための国際連合標準最低規則 (1987年)」 を適用しているか否かを示すことが求められている。
一般的意見22 (48) (18条・思想・良心・宗教の自由) 1993.7.20採択
1 第18条第1項で定められた、 思想、 良心及び宗教の自由 (信念を有する自由を含む) についての権利は、 広大で深遠な権利である。 この権利は、単独で表現されると他の者と共同で表現されるとを問わず、あらゆる事柄についての思想、 個人的確信及び宗教又は信念への関与の自由を包含する。委員会は、思想の自由及び良心の自由が宗教及び信念の自由と同等に保護されるという事実に締約国の注意を喚起する。かかる自由の基本的性格は、 本規定が規約第4条第2項に定められる公の緊急事態(public emergency) の場合でさえ停止されないという事実にも反映されている。
2 第18条は、 有神論的、 非有神論的及び無神論的信念、 さらには宗教又は信念を告白しない権利をも保護している。 信念及び宗教という語は広く解釈されなければならない。第18条の適用は、伝統的な宗教又は伝統的な宗教のそれと類似する制度的に確立された性格又は慣行を有する宗教及び信念に限定されない。従って委員会は、 あらゆる理由に基づく宗教又は信念に対する差別の傾向を懸念している。あらゆる理由の中には、それらが新興宗教であるという事実又は支配的な宗教集団の側からの敵意の対象となりうる宗教的少数者であるという場合も含まれる。
3 第18条は、 思想、 良心、 宗教又は信念の自由を、 宗教又は信念を表明する自由とは区別している。 本条は、 思想及び良心の自由、 又は自己の選択による宗教又は信念を受け入れ又は有する自由に対していかなる制限も許容しない。かかる自由は、第19条第1項で定められる誰もが干渉されることなく意見を持つ権利と同様に、無条件で保護される。 第18条第2項及び第17条に従い、 いかなる者も自己の思想又はいかなる宗教もしくは信念を有しているかを明かにすることを強制されない。
4 宗教又は信念を表明する自由は 「単独で又は他の者と共同して及び公に又は私的に」行使することが できる。 礼拝、 儀式、 行事及び教導において宗教又は信念を表明する自由は、広範な行動を包含している。礼拝の概念は、 信念を直接的に表現する儀式的及び祭儀的行為ばかりでなく、かかる行為に必要な多様な行為まで包含され、 礼拝のための場所の建設、儀式的式文及び器具の使用、象徴の展示、 及び祭日及び安息日の遵守等も含まれる。 宗教又は信念の儀式及び行事には、祭儀的行為だけではなく、 食事に関する規制、特有の衣服又は頭部覆いの着用、人生のある段階における儀式への参加及びある集団によって習慣的に用いられる特殊な言語の使用も含む。さらに、 宗教及び信念の行事及び教導には、とりわけ宗教的指導者、 司祭及び教師を選ぶ自由、神学校又は宗教的な学校を設立する自由及び宗教的教本又は刊行物を作成及び配布する自由など、宗教集団の基本的事柄にかかわる活動に必要な行為が含まれる。
5 委員会は、 宗教又は信念を 「受け入れ又は有する」 自由は必然的に宗教又は信念を選択する自由を伴うと考える。かかる選択の自由には、 現在の宗教又は信念を保持する権利に加えて、現在の宗教又は信仰を別のものに転向する権利又は無神論的見解を受け入れる権利も含まれる。第18条第2項は宗教又は信念を受け入れ又は有する権利を侵害する強制を禁じている。かかる強制には、信者又は無信仰者にその宗教的信仰及び宗派にとどまること、自己の宗教又は信念を撤回すること又は改宗することを強要する暴力の行使又は刑事罰の使用もしくはそれによる脅迫が含まれる。教育又は医学的治療を受ける権利、雇用を得る権利又は第25条及び規約の他の規定で保障されている権利の行使を制限するなど、同様の意図又は効果を持つ政策又は慣行も同様に第18条第2項と矛盾する。非宗教的な性格のあらゆる信念を有する者にも同じ保護が与えられる。
6 委員会の見解では、 第18条第4項は、 公立学校における一般の宗教史及び倫理等の科目の指導は中立的かつ客観的な方法で行われるのであれば、これを認めている。父母及び法定保護者が第18条第4項に定められるとおり、 自己の信念に従って児童の宗教的及び道徳的教育を確保する自由は、第18条第1項に定められる宗教又は信念を教導する自由の保障に関連している。委員会は、特定の宗教又は信念の指導を含む公教育は、 父母及び保護者の意向と調和するかかる科目の無差別的免除又は代替科目のための措置が設けられない限り、第18条第4項と矛盾すると考える。
7 第20条に従い、 いかなる宗教又は信念の表明も、 戦争のための宣伝又は差別、敵意又は暴力の扇動 となる国民的、 人種的又は宗教的憎悪の唱道となってはならない。委員会がその一般的意見11(19) で述べているとおり、 締約国はかかる行為を禁じる法律を制定する義務を負う。
8 第18条第3項は、 法律で定める制限による場合であって、 公共の安全、 秩序、健康もしくは道徳又は他の者の基本的な権利及び自由を保護するために必要である場合に限って、宗教又は信念を表明する自由の制限を認めている。宗教又は信念を受け入れ又は有することを強制されることからの自由、ならびに父母及び保護者が宗教的及び道徳的教育を確保する自由は制限されない。制限を許容する条項の範囲を解釈するについては、締約国は、 第2条、 第3条及び第26条の、平等及びいかなる理由によっても差別されない権利などの規約によって保障されている権利を保護する必要性から考えを進めなければならない。課される制限は法律によって定められていなければならず、第18条において保障される権利を侵害する方法で適用されてはならない。委員会は、 第18条第3項は厳密に解釈されるべきであると考える:制約は、たとえそれが、国の安全等、 規約で保護されている他の権利の制限の根拠として認められるものであっても、本条項に定められていないものを根拠として認められてはならない。制限は規定された目的のためにのみ適用され、かかる制限の根拠となる特定の必要性事由に直接関連しまたこれと比例していなくてはならない。制約は差別的な目的で課されてはならず、また差別的な方法で適用されてはならない。委員会は、 道徳の概念が多くの社会的、 哲学的及び宗教的伝統に由来すると考える。従って、 道徳を保護するための宗教又は信念を表明する自由に対する制限は、単一の伝統のみに由来しない原則に基づかなければならない。被拘禁者など、 すでに特定の適法な拘束を受けている者は、 かかる拘束に特有の性格と両立する最大限の範囲において自己の宗教又は信念を表明する権利を継続して享有することができる。締約国の報告には、第18条第3項に基づく制限の全ての範囲及び効果について法律がどうなかっているか、また具体的な状況における制限の適用がどうなっているかの情報が含まれるべきである。
9 ある宗教が国教として認められているという事実、 公式に又は伝統的に確立されているという事実、又はその信者が人口の過半数を包含するという事実があるからと言って、第18条及び第27条を含む規約に基づくいかなる権利の享有も侵害してはならず、また他の宗教の信者又は無信仰者に対するいかなる差別も引起こしてはならない。特に、後者を差別する特定の措置、 たとえば国家公務員としての資格を支配的宗教の信者に制限し、経済的な特権をかかる信者に与え又は他の信仰における行為に特別な制限を課す措置などは、第26条に定める宗教又は信念に基づく差別の禁止及び平等の保護の保障と一致しない。規約第20条第2項が意図している措置は、第18条及び第27条で保障される権利を行使する宗教的少数者及びその他の宗教集団の権利の侵害に対し、または、 かかる集団に向けられる暴力行為又は迫害行為に対する、重要な保護措置を含むものである。委員会は、 すべての宗教又は信念による行為をその侵害から保護するため及びその信者達を差別から保護するために、当該締約国が採用した措置について、委員会に報告することが望ましいと考える。同様に、 第27条に基づく宗教的少数者の権利の尊重についての情報は、 締約国が思想、良心、 宗教及び信念の自由をどの程度実施しているかを委員会が評価するために必要である。当該締約国の報告の中には、その法律及び法解釈によって冒とく的なものとして処罰すべきとされる行為に関する情報も含めるべきである。
10 ある信念の体系が憲法、 制定法、 支配政党の公式声明等又は実際の慣行において公的なのイデオロギーとして取扱われている場合、その結果として第18条に基づく自由又は規約に基づいて認められるその他の権利のいかなる侵害も招来してはならず、また公的イデオロギーを受入れない者又はこれに反対する者に対するいかなる差別も引起こしてはならない。
11 多くの個人が兵役につくことを拒絶 (良心的兵役拒否) する権利を、 第18条に定める自由から派生するという根拠によって、主張してきた。かかる主張に対し、 より多くの締約国がその法律において、 兵役につくことを禁じている宗教又はその他の信念を真に有している市民を強制的な兵役義務から免除し、国に対する代替役務につくことを認めるようになっている。規約は良心的兵役拒否の権利に明示的には言及していないが、委員会は、 致命的な武力を使用する義務が良心の自由及び宗教又は信念を表明する権利と深刻に対立する限りにおいて、かかる権利が第18条の規定から派生しうると考える。かかる権利が法律又は慣例によって認められた場合、良心的兵役拒否者の間で特定の信念の性質に基づく区別を設けてはならず、 また良心的兵役拒否者が兵役につかなかったという理由で差別を受けてはならない。委員会は締約国に、第18条に定める権利に基づき兵役義務が免除されうる条件、及び国に対する代替役務の性質及び期間について報告することを求めている。
一般的意見23 (50) (27条・少数民族の権利) 1994.4.6採択
1 規約第27条は、 種族的、 宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する 者は、 その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない、と定めている。委員会は、 本条が少数民族に属する個人に与えられる権利であって、かかる個人が他の全ての個人と同様に、 すでに規約に基づき享有するその他のすべての権利とは区別され、またこれらに追加される権利を確立し、かつ認めるものであると考える。
2 選択議定書に基づき委員会に提出されたいくつかの通報では、 第27条に基づき保護される権利が規約第1条に宣言されている人民の自決の権利と混同されていた。さらに、規約第40条に基づき締約国により提出された報告では、 第27条により締約国に課されている義務が、規約上保障されている差別のない権利の享有を保障している第2条1項に基づく義務、及び第26条に基づく法の前の平等及び法律による平等の保護と混同されている場合があった。
3 1.規約は自決の権利と第27条で保護される権利とを区別している。 前者は人民に属する権利として表現されており、規約の中で分離して (第1部)取扱われている。 自決の権利は選択議定書に基づき審査されうる権利ではない。他方、 第27条は、 個人それ自体に与えられる権利に関係しており、他の個人に与えられる個人的な権利に関する条項同様、規約の第3部に含まれており、 選択議定書に基づき審査されうる。 *1
2.第27条に関連する権利の享受は、 締約国の主権及び領土保全を侵害するものではない。同時に、 本条によって保護される個人の権利のある側面(たとえばある特定の文化を享有すること) は、 領土及びその資源の使用に密接に関係する生活様式に存する場合がある。 *2 このことは特に少数民族を構成するその先住民の共同体に属する者に当てはまる。
4 規約はまた、 第27条に基づき保護される権利と第2条第1項及び第26条に基づく保障とを区別している。第2条第1項に基づく、 規約上の権利を差別なく享有する権利は、少数民族に属するか否かを問わず、締約国の領域内にあり又はその管轄の下にある全ての個人に適用される。 さらに第26条には、締約国によって与えられる権利及び課される義務について、法の前の平等、 法律による平等の保護及び無差別という明確な権利が定められている。締約国の領域内にあり又はその管轄の下にある個人に対し、 かかる個人が第27条に明記される少数民族に属するか否かにかかわらず、法律によって締約国が与えるすべての権利(規約により保護されている否かを問わず) の行使につき適用される。 *3 種族、 言語又は宗教を根拠に差別を行ってはいないと主張する締約国のいくつかは、そのことのみを根拠にして、自国に少数民族が存在しないという主張をしているが、誤りである。
5 1. 第27条で用いられている語句は、 保護されるべく意図された人々はある集団に属し、ある文化、 宗教は言語を共有する者であることを示している。かかる語句はまた、保護されるべく意図された個人が締約国の市民である必要がないことを示している。これに関しては、 第2条第1項により生ずる義務にも関連する。すなわち締約国は同条項に基づき、規約上保護される権利 (市民に適用されることが明示的に規定されている第25条に定める政治的権利等を除く) をその領域内にありかつその管轄の下にある全ての個人に対して確保することを要求されているからである。従って締約国は、第27条に基づく権利を享受する者をその市民に制限してはならない。
2. 第27条は、 締約国内に 「存在する」 少数民族に属する者に権利を付与している。同条の想定する性格及び範囲からすれば、 「存在する」という用語が内包する永続性の程度を画定することは適切ではない。これらの権利は単に、 かかる少数民族に属する個人が、 その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有する権利、自己の宗教を実践しかつ自己の言語を使用する権利を否定されるべきではないというものである。かかる個人は国民又は市民である必要がないばかりではなく、永住者である必要もない。従って、 締約国内においてかかる少数民族を構成する移住労働者又は短期滞在者であっても、かかる権利の行使を否定されない権利を有する。またその目的のためにも、 これらの個人は、締約国の管轄の下にある他の全ての個人と同様、 結社の自由、 集会の自由、 表現の自由などの一般的な権利を享有する。ある締約国内における種族的、宗教的又は言語的少数民族の存在は、 かかる締約国による判断によってではなく、客観的基準によって定められることが必要である。
3. 言語的少数民族に属する個人がその集団の中で、 私的に又は公の場で自己の言語を使用する権利は、規約上保護されている他の言語上の権利とは区別されている。特に、 かかる権利は第19条において保護される表現の自由に対する一般的な権利とは区別されるべきである。後者の権利は、 少数民族に属しているか否かにかかわらず、すべてのが有している。さらに、 第27条によって保護される権利は、 規約第14条第3項(f)が、 裁判所において使用される言語を理解すること又は話すことができない場合に被疑者・被告人に与えている通訳の援助を受ける特定の権利とは区別されるべきである。第14条第3項(f)は、それ以外の場合においては被疑者・被告人が裁判手続において自ら選択する言語を使用する権利を認めていない。*4
6 1. 第27条には否定表現が用いられているが、 同条項はそれにも拘らず 「権利」の存在を認め、 かかる権利が否定されないことを要求している。従って、 締約国はかかる権利の存在及び行使が否定され又は侵害されることのないよう保護されることを確保する義務を負う。このため、 締約国自身の行為(立法当局によると、 司法当局によると又は行政当局によるとを問わず) に対してだけではなく、 締約国内の他の者の行為に対しても、 積極的な保護措置が必要とされる。
2. 第27条によって保護される権利は個人の権利であるが、 かかる権利は少数民族の集団が自己の文化、言語又は宗教を維持する能力にも依存している。従って、 少数民族の同一性及びかかる少数民族の構成員が他の構成員とともに自己の文化及び言語を享有し発展させ、また自己の宗教を実践する権利を保護するための締約国による積極的措置もまた必要である。これに関し、かかる積極的措置は、 異なる少数民族間の取扱い及び少数民族に属している者と属していない者との間の取扱いの両方について、規約第2条第1項及び第26条の規定を尊重したものでなければならない。しかしながら、かかる措置は第27条により保障される権利の享有を妨げ又は侵害する状況を修正することを目的としている限り、合理的かつ正当な基準に基づくことを条件として、規約上、 正当と認められる区別を設け得る。
7 第27条において保護される文化的権利の行使に関して、 委員会は、 文化というものは様々な形、特に資源使用に結び付いた独特の生活様式といった形で、それ自身を表現すると考える。この権利には、 漁業又は狩猟などの伝統的な活動を行う権利及び法律によって保護された居留地で生活する権利も含まれる。*5かかる権利の享有は積極的な法的保護措置及び少数民族の集団に属する構成員が自己に影響を与える決定に実効的に参加することを確保する措置を必要とする。
8 委員会は規約第27条によって保護されるいかなる権利も、 規約の他の規定と矛盾する態様又は程度において、行使される場合には、 正当とはいえないと考える。
9 委員会は、 第27条に関連する権利は締約国に対し特定の義務を課すものであると結論する。かかる権利の保護は、 当該少数民族の文化的、 宗教的及び社会的独自性の存続及び持続的発展を確保する方向、すなわちこれにより社会構造全体を豊かにする方向に向けられている。従って、委員会は、 かかる権利がはそれ自体として保護されなければならず、 規約に基づきすべての人に付与される他の個人的権利と混同されるべきではないと考える。よって、締約国は、 かかる権利の行使が完全に保護されることを確保する義務を負い、そのために採用した措置をその報告書に記載するべきである。
*1 総会公式記録、 第39回会議補遺40 (A/39/40)、 附属文書VI、 一般的意見12 (21) (第1条)、 CCPR/C/21/Rev.1、 同上第45回会議補遺40 (A/45/40)、 第2巻、附属文書IX、 A項、 通報No.167/1984(Bernard Ominayak, Chief of the Lubicon Lake Band v. Canada)、 1990年3月26日採用の見解参照。
*2 同上第43回会議補遺40 (A/43/40)、 附属文書VII、 G項、 通報No.197/1985(Kitok v. Sweden)、 1988年7月27日採用の見解参照。
*3 同上第42回会議補遺40 (A/42/40)、 附属文書VIII、 D項、 通報No.182/1984(F.H. Zwaan-de Vries v. the Netherlands)、 1987年4月9日採用の見解、 同上C項、通報No.180/1984(L.G. Danning v. the Netherlands)、 1987年4月9日採用の見解参照。 *4 同上第45回会議補遺40 (A/45/40)、 第2巻、 附属文書X、 A項、 通報No.220/1987(T.K. v. France)、 1989年11月8日の決定、 同上B項、 通報No.222/1987(M.K. v. France)、 1989年11月8日の決定参照。 *5 (一部省略)、 通報No.167/1984(Bernard Ominayak, Chief of the Lubicon Lake Band v. Canada)、 1990年3月26日採用の見解及び通報No.197/1985(Kitok v. Sweden)、 1988年7月27日採用の見解参照。
一般的意見24 (52) 人権規約又はこれについての選択議定書の批准又は加入の際の留保に関する問題についての又は規約第41条に基づく宣言についての一般的意見1994.11.12採決
1 1994年11月1日現在で、 市民的及び政治的権利に関する国際規約の締約国127国の内の46ヶ国が、規約により課される義務の受諾に対する様々な度合の150の留保を行っている。かかる留保の一部は、規約上の特定の権利を供与し保障する義務を除外している。
また、 より一般的な表現により、国内の特定の法規定の至上性の継続を確保する趣旨で行われたものもある。さらには委員会の権限に対する留保を目的としたものもある。かかる留保の数、
その内容及び範囲は、 規約の実効的な実施を根底から揺るがしかねず、また締約国が果たすべき義務に対する尊重を軽んじる傾向を招じかねない。締約国が自国及び他の締約国が実際に受諾した義務を正確に知ることは重要なことである。また委員会は、
規約第40条又は選択議定書に基づきその責務を果たす上で、ある締約国が特定の義務に拘束されているか否か又はその程度はどうかを知らなければならない。そのためには、
一方的な声明が留保となるのか又は解釈的宣言となるのかについての決定並びにその許容性及び効力の判断が必要である。
2 かかる理由により、 委員会は生起する国際法及び人権政策上の問題を一般的意見において取上げることが有用であると考えた。本一般的意見は、 留保の実行に適用され、またかかる留保の許容性の審査及びその趣旨の解釈の際に指針となる、国際法の原理を明らかにする。
本意見はある締約国の留保に関する他の締約国の役割について論じている。本意見はさらに、留保に関する委員会そのものの役割についても論じている。
また、現在の締約国に留保の再検討を勧告し、 さらには、 特定の留保を付した批准又は加入を考慮している現在まだ締約国ではない国家に対して、法的及び人権政策上留意すべき事項について勧告するものである。
3 留保を、 締約国の、 ある規定の解釈の理解についての宣言又は政策の声明と区別することは必ずしも容易ではない。文書の形式よりはむしろ締約国の意図が考慮される。ある声明がその名称又は表題にかかわらず、ある条約の法的効果をその締約国への適用において排除し又は変更する意図を有している場合、かかる声明は留保を構成する。*2
これに対し、 いわゆる留保が単にある規定に対する締約国の理解を表し、かかる締約国への適用においてかかる規定を排除せず又は変更しない場合、かかる留保は実際には留保ではない。
4 留保が可能であることにより、 規約上の権利の全てを保障することは困難であると考える国家であっても、規約上の義務の大部分を受諾することが促進される。留保は、
締約国がその国内法における特定の要素を規約に掲げられている人間固有の諸権利に適合させるための有用な機能を果たしうる。しかしながら、この人権規範はすべての人が人間として有する本質的権利を法的に表現したものであるから、原則として締約国はすべての義務を受入れることが望ましい。
5 規約は留保を禁じてはおらず、 また許容される留保の種類についても規定していない。これは第1選択議定書についても同様である。 第2選択議定書は第2条第1項において「批准又は加入のときに行われる留保で、戦時中になされる軍事的性質の非常に重大な犯罪に対する訴追によって戦時に死刑を適用することを定めたものを除くほか、留保は、
この議定書に対しては許されない。」と定めている。 第2項及び第3項は、一定の手続上の義務について定めている。
6 留保を禁じる規定の不存在は、 あらゆる留保が認められることを意味するものではない。規約及び第1選択議定書に対する留保に関しては、国際法が適用される。
条約法に関するウィーン条約第19条(3)項に関連する指針が示されている。*2 同項は、 留保が条約によって禁止されていないか又は特定の許容される範疇に属する場合、締約国は条約の趣旨及び目的に矛盾しない限りにおいて留保を行うことができると規定している。他のいくつかの人権条約と異なり、規約はこの趣旨及び目的の基準にを条文中には取入れていないが、この基準は留保の解釈及び許容性に関して適用される。
7 非常に多くの市民的及び政治的権利を規定する法律文書においては、その多くの条項のそれぞれが、またさらにはかかる各条項の相互作用が、 規約の目的の達成を確保することになる。規約の趣旨及び目的は、
一定の市民的及び政治的権利を定め、これらを規約を批准する締約国に対し法的に拘束力のある義務の枠組の中に配置することによって、人権のための法的に拘束力のある基準を作成すること、そしてさらに受諾された義務の履行を監督する実効的な組織を設置することである。
8 絶対的規範に反する留保は規約の趣旨及び目的と両立しない。単に国家間で取交わされる義務を定める条約においては、当事者間の間で一般的国際法の規則の適用を留保することは認めているが、
締約国の管轄下にある個の利益のための人権条約においては認められない。従って、国際性習法を示している規約の規定は (かかる規定が絶対的規範の性格を有している場合にはなおさら)
留保の対象とはならない。 よって、 国は奴隷制を採用する権利、拷問にかける権利、人を残虐な、 非人道的なもしくは品位を傷つける取扱いもしくは刑罰にかける権利、人から恣意的にその生命を奪う権利、
人を恣意的に逮捕及び抑留する権利、思想、良心及び宗教の自由を否定する権利、 無実を証明しない限り有罪と推定する権利、妊娠中の女子又は児童の死刑を執行する権利、
国民的、 人種的又は宗教的憎悪の唱道を容認する権利、婚姻をすることができる年齢の者が婚姻をする権利を否定する権利又は少数民族が自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰し又は自己の言語を使用する権利を否定する権利を留保することはできない。また、第14条の特定の条項に対する留保は許容されることがあるが、
公正な裁判を受ける権利に対する一般的な留保は許容されない。
9 より総体的に規約に趣旨及び目的の基準を適用すると、委員会は、 たとえば、第1条に対する留保として、 人民が自己の政治的地位を決定し、 その経済的、
社会的及び文化的発展を追求する権利を否定することは、規約の趣旨及び目的と矛盾すると考える。同様に、 規約上の権利を尊重し確保する義務及びいかなる差別もなしにかかる権利を尊重し確保する義務
(第2条 (1) 項) に対する留保は許容されない。また、 締約国は規約において認められる権利を実効あるものにするために必要な国内レベルの措置
(第2条 (2) 項) を講じない権利を留保することはできない。
10 委員会はさらに、 どのような範疇の留保が 「趣旨及び目的」 の基準に反するか否かを検討した。特に、 規約の権利停止不能の条項に対する留保がその趣旨及び目的と両立するかどうかについては考察を必要とする。規約上の権利の重要性に序列は存在しないが、一定の権利の行使は公の緊急事態の場合でさえ停止されてはならない。このことは権利停止不能の権利が極めて重要であることを示している。
しかし実際には、規約第9条及び第27条のような極めて重要な権利の全てが権利停止不能とされているわけではない。ある権利が権利停止不能として定められている理由のひとつは、かかる停止が公の緊急事態に対する国家の正当な管理に無関係であること
(たとえば、 第11条に定められる契約義務不履行による拘禁の禁止) である。別の理由には、権利停止が実際に不可能であること (たとえば良心の自由など)
がある。 同時に、いくつかの規定はかかる規定なくしては法の支配というものが存在し得ないというまさにその理由により、権利停止不能となっている。緊急事態の際の国家の利益と個人の権利の衝突を調整する規定を定める第4条そのものに対する留保は、この範疇に含まれる。
また、 絶対的規範であるという理由によりいかなる場合にも留保されない権利停止不能のいくつかの権利(拷問及び恣意的に生命を奪うことの禁止など)
もまた同じ性格を有している。 *3 権利停止不能の規定に対する留保と規約の趣旨及び目的に反する留保との間に自動的な相互関係は存在しないが、国はかかる留保を正当化する重大な責任を負っている。
11 規約は特定の権利を規定だけではなく、 その支えとなる重要な保障措置から成り立っている。かかる保障措置は規約に定められる権利を確保するために必要な枠組を提供するのであり、従ってその趣旨及び目的にとって欠くことのできないものである。かかる保障は国内レベルで機能するものもあれば国際レベルで機能するものもある。よってかかる保障を排除することを意図した留保は許容されない。
従って国は、人権侵害に対する救済措置を講じない意図を示す、規約第2条第3項に対する留保を行うことは許されない。かかる保障措置は規約の構造の肝要な部分を構成し、
その実効性を支えるものである。規約はまたそこで掲げているその目標達成するために、委員会が監視的役割を果すことを想定している。権利の享有の確保のための規約の構造上の本質的要素を回避する留保もまた、
その趣旨及び目的と矛盾する。国は報告書を提出し、委員会による審査を受けることを拒否する権利を留保することはできない。規約に基づく委員会の役割は、
第40条に基づくと選択議定書に基づくとを問わず、必然的に規約の規定の解釈及び解釈論の発展を伴うものである。従って、 委員会が規約の規定の要件を解釈する権限を否認する留保もまた、この条約の趣旨及び目的に反している。
12 規約の意図は、 そこに含まれる権利が締約国の管轄下にある全ての人に確保されることである。このため、一定の付随的な要件が必要となる場合がある。
規約の要求を反映させるため、国内法を適切に改正する必要が生じうる。 また、 規約上の権利がその地域で実施されるようにするための国内的機構が必要となる。多くの場合、留保は、
締約国が特定の法律の変更を望まない傾向を示すものである。かかる傾向はときとして、 一般的な政策にまでなってしまう。 特に懸念されるのは、国内法に何らかの変更を要求する規約上のあらゆる権利を本質的に無効にする広範な留保が、なされることである。
これでは、 真の国際的な権利又は義務は受入れられたことにならない。また、 規約上の権利について国内の裁判所において訴訟を提起できることを保障する規定が存在せず、またさらには、
第1選択議定書に基づく個人の申立を委員会に提出することができない場合は、規約の保障措置についてのあらゆる本質的な要素は排除されることになる。
13 第1選択議定書の下で留保が許容され得るかどうか、 また許容される場合、かかる留保は規約又は第1選択議定書そのものの趣旨及び目的に反するかどうかという問題が生じる。第1選択議定書は、
それ自体が規約から独立した、 しかし規約と密接に結び付いた1つの国際条約であることは明らかである。その趣旨及び目的は、 規約上の権利のいずれかにつき締約国による侵害を受けた犠牲者であると主張する個人からの通報を受理し審査する委員会の権限を認めることである。締約国は規約に基づき個人の実体的権利を認めるのであって、
第1選択議定書によってではない。第1選択議定書の機能は、 かかる権利に関する主張が委員会において審理されることを認めることである。従って、
第1選択議定書の下で規約上の権利を尊重し確保する締約国の義務にについてなされた留保は、同じ権利について事前に規約に付されていない場合には、
締約国が実体的義務を遵守する責務には影響しない。選択議定書を媒体として規約に対し留保を付すことはできないが、 かかる留保が認められれば締約国のかかる義務の遵守が第1選択議定書に基づき委員会によって審査されないことを保障する機能を有することになる。第1選択議定書の趣旨及び目的は、
規約に基づき締約国に課される権利の保障が委員会において審査されることを認めることであるから、これを排除するための留保は、 規約の趣旨及び目的に反していないとしても、
第1選択議定書の趣旨及び目的に反する。実体的義務について第1選択議定書の段階で初めて付される留保は、 委員会が個々の事案における規約上の特定の条項に関する見解を表明することを、当該締約国が妨げようとする意図を反映しているものと考えられる。
14 委員会は、 第1選択議定書に基づく必要手続に関する留保は、 その趣旨及び目的と両立しないと考える。委員会は選択議定書に規定される委員会の手続及び手続規則を管理しなければならない。しかしいくつかの留保は、
委員会の権限を当該締約国について第1選択議定書が発効した後に発生する行為及び事由のみに制限する趣旨を有していた。委員会の見解では、 これは留保ではなく、
殆んどの場合は、 時間的理由により制約を受ける委員会の通常の権限に抵触しない声明である。同時に、 委員会は、 たとえ声明又は意見であっても、
第1選択議定書の発効日以前に発生した事由又は行為がかかる発効日以降も継続して犠牲者の権利に影響を及ぼしている場合には、これに対する権限を有する旨主張してきた。
また、 同一問題が他の同等の解決手続のもとで既に審理済の場合、その通報の審査を排除する旨、 第5条第2項にさらに実効的に受理不能の理由を付加する留保が行われている。最も基本的な義務が個人の人権についての独立した第三者の審査を確保することである限り、委員会は、
法的権利と対象事案が、 規約においても別の国際文書においても同一とみなされる場合、かかる留保は第1選択議定書の趣旨及び目的に反するものではないと考える。
15 第2選択議定書の主たる目的は、 死刑の執行を禁止し死刑を廃止することによって、規約に基づき受諾される生命の権利に関する実体的義務の範囲を拡張することである。*4
本議定書には留保に関する独自の規定があり、 いかなる留保が許されるかを定めている。第2条第1項は、 ただ1つの範疇に属する留保のみが許されると定めている。
すなわち、戦時中になされる軍事的性質の非常に重大な犯罪に対する訴追によって戦時に死刑を適用する権利の留保である。かかる留保を行う締約国には2つの手続上の義務が課せられる。
第2条第2項は、かかる締約国が批准又は加入のときに戦時中に適用できる国内立法の関連規定を国際連合事務総長に通報することを義務づけている。このことは明らかに、
明確性及び明白性を目的としており、 委員会の見解では、かかる情報が付随しない留保は法的効力を持たない。 第2条第3項は、 かかる留保を行う締約国が自国領域に適用できる戦争状態の開始又は終了について国際連合事務総長に通告することを要求している。委員会の見解では、
第2条第3項が規定する手続要件を満たさない限り、 いかなる締約国もその留保を援用すること (すなわち、 戦争の際の死刑執行を合法化すること)
を求めてはならない。
16 委員会は、 ある特定の留保が規約の趣旨及び目的と両立するか否かについての決定を下す法的権威をいずれの機関が有しているかを検討することは重要であると考える。一般的に国際条約については、
国際司法裁判所はジェノサイド条約に対する留保事件 (1951年) において次のように指摘している。 すなわち、 ある条約の趣旨及び目的と矛盾するという根拠により留保に異議を唱えた締約国は、その異議によって、
その締約国と留保を行う国家との間において、 その条約が効力を有しないとみなしうるということである。 1969年に採択された条約法に関するウィーン条約の第20条第4項には、
留保の受諾及び留保に対する異議についてのこの問題に最も関連する規定が含まれている。同条項は、 ある締約国が別の締約国によって行われた留保に異議を唱える可能性を定めている。第21条は、
ある締約国によって行われた留保に対する他の締約国による異議の法的効力を扱っている。本質的に、 留保はこれを行っている締約国とその他の締約国の間において、
留保された規定の効力を除外するものであり、これに対する異議は、 留保を行っている締約国と異議を唱えている締約国の間において、異議のない限度においてのみその留保は効力を有するという結果を導く。
17 上述のとおり、 留保の定義及び他の明確な規定がない場合の趣旨及び目的の基準の適用について規定しているのは、条約法に関するウィーン条約である。
しかし委員会は、 留保に関する締約国の異議の役割についての同条約の規定は、人権条約に付される留保の問題を取扱うには適当ではないと信じる。 かかる人権諸条約、特に規約は、
国家間相互ににおける義務の取交わしを網羅するものではない。 これらの条約は個人に対する権利の付与に関わるものである。国家間の相互関係の原理は、
第41条に基づく委員会の権限についての宣言に対する留保のような限られた状況を除けば、介在の余地がない。 留保に関するかかる伝統的な規則の運用が規約への適用に極めて適さないため、締約国は多くの場合留保に対する法的関心又はこれに異議を唱える必要性を抱かない。締約国による異議申立がないからといって、
ある留保が規約の趣旨及び目的と両立しているか否かのいずれかを示唆しているとはいえない。異議は、 時折、 一部の (全てではない) 締約国によって、
必ずしも明確ではない根拠によって唱えられる。異議が唱えられた場合、 かかる異議は法的結果を明示していないことが多く、 またときとして異議を唱えている締約国が、それにもかかわらず当該締約国間で規約が効力を有していないとは考えていないことさえある。つまり、
形式が極めて不明瞭であるため、 異議を唱えていない締約国がある特定の留保を受諾できると考えていると推測するのは安全ではないということである。委員会の見解では、
人権条約としての規約の特別な性格のために、 異議が当該締約国の間でいかなる効力を有するかは疑問のもたれるところである。しかし、 締約国によって唱えられる異議は規約の趣旨及び目的との両立性についての解釈において委員会に何らの指針を示すことがありえる。
18 ある特定の留保が規約の趣旨及び目的と両立するか否かの決定は、 必然的に委員会の責務となる。これは一部には、 先に示されているとおり、
人権条約に関しては締約国にとっては不適切な任務であるためであり、また一部には、 委員会がその機能を果たす上で避けることのできない責務であるからである。第40条に基づく締約国の義務の遵守の審査又は第1選択議定書に基づく通報の審査の責務の範囲を知るために、委員会は必然的に規約の趣旨及び目的並びに一般的国際法と一定の留保との両立性について考察しなければならない。人権条約の特殊な性格のために、
規約の趣旨及び目的と一定の留保との両立性は、法的原理に鑑み、 客観的に確定されなければならず、 委員会はとりわけかかる任務を果たすのに適した位置にある。通常、
留保が許容されない場合、 規約が留保を行っている締約国にとってまったく効力を有しないという結果を招くわけではない。むしろ、 規約は留保を行っている締約国に対し留保の効果なしに効力を有するという意味において、かかる留保は一般的に分離可能である。
19 留保は、 委員会、 留保を行っている締約国の管轄下にある者及び他の締約国が、人権保障の義務のいずれが受諾されいずれが受諾されないのかについてよくわかるように、明確かつ明白なものでなければならない。
従って留保は一般的なものであってはならず、規約の特定の規定を対象とし、 これについての適用の範囲を正確な文言で示していなければならない。締約国は、
予想される留保と規約の趣旨及び目的との両立性を考慮するとき、 依然として基本的な考慮の対象である規約の完全性に対して各留保が与える影響だけではなく、一連の留保が全体として与える影響をも考慮に入れるべきである。
締約国は、 事実上、限られた人権保障義務しか受諾せず、 規約それ自体を受入れたことにならないほど、多くの留保を付すべきではない。 国際人権基準の永続的な未達成を招くことのないように、留保は、
受諾された義務を国内法のより要求の少ない基準において現存する義務のみに組織的に制限するものであってはならない。あるいは、 解釈宣言又は留保は、国内法に存在する規定と等しいものであることを宣言することによって、又はこれらと等しい限りにおいて受諾することを宣言することによって、
規約上の義務の自律的意味を除外しようとするものであってはならない。締約国は、 留保又は解釈的宣言によって、 規約のある規定の意味が他のいずれかの国際条約機構の機関によって与えられるものと同じであると決定しようとしてはならない。
20 締約国は、 提案された各留保が規約の趣旨及び目的と両立することを確保するための手続を制定するべきである。留保を行う締約国は、 留保される規約上の義務と矛盾すると考えられた国内の制定法又は慣行を正確な文言で示すことが望ましい。また、
かかる制定法又は慣行を規約と両立させるために要する期間を説明し、 又はかかる制定法又は慣行を規約と両立させることができない理由を説明することが望ましい。締約国はまた、
委員会がその報告を検討する際に呈示する所見及び勧告を考慮に入れ、留保を継続する必要性を定期的に見直すことを確保するべきである。 留保は可能な限り早急に撤回されるべきである。委員会への報告には、
留保の見直し、 再検討又は撤回のために取られた措置についての情報を含めるべきである。
*1 1969年採択の条約法に関するウィーン条約2条1項 (d)。
*2 条約法に関するウィーン条約は1969年に採択され、 1980年、 すなわち規約の発効後に発効しているが、その条項は、 1951年のジェノサイド条約に対する留保事件において国際司法裁判所によってすでに確認されているとおり、この問題に関する一般的国際法を反映している。
*3 6条及び7条に対し留保が行われているが、 拷問及び恣意的に生命を奪うことに携わる権利を留保する文言によるものではない。
*4 この拡張された義務についての委員会の権限は5条において規定されている。5条は、 かかる権限の自動的な付与が批准又は加入の際に行われる別段の声明の手続によって留保される場合には、これに従う。
一般的意見25 (57) (25条・政治に参与する権利) 1996.7.12採択
1 規約第25条は、 すべての市民が政治に参与する権利、 投票し及び選挙される権利、及び公務に携わる権利を有することを承認し、 かかる権利を保障している。法又は政治体制の如何にかかわらず、規約は締約国に対して、 市民が保障された権利を享受する実効的な機会を持つことを確保するために必要な立法その他の措置を講じることを要求している。第25条は、 人民の同意に基づきかつ規約の趣旨に合致した民主的核心部分に位置いている。
2 第25条に基づく権利は、 人民の自決権と関係を有するが、 これらの権利そのものとは区別されている。第1条第1項に基づく権利により、 すべての人民は政治的地位を自由に決定する権利及び憲法又は政治体制を選択する権利を享受する権利を有する。第25条は、 政治過程に参与する個人の権利を規定している。 かかる権利は個人の権利として第一選択議定書に基づき申立の対象となる。
3 規約により承認されたその他の権利及び自由 (締約国の領域内にあり、 かつ、その管轄下にある全ての個人に保障されている。) と対照的に、 第25条は 「すべての市民」の権利を保障している。 締約国の報告には、 第25条により保障された権利に係る市民を定義する法律上の規定を概要が示されるべきである。これらの権利の享受に関し、 人種、 皮膚の色、 性、 言語、 宗教、 政治的意見その他の意見、国民的もしくは社会的出身、 財産、 出生又はその他の地位を理由として市民相互間で差別することは許されない。出生により市民権を取得するものと帰化により市民権を取得したものを区別することは、第25条と両立するか否か問題になり得る。 締約国の報告には、 永住者等のグループが地方選挙権を有し、又は特定の公務員の職務に付く権利を有していること等、 限定的な形でこれらの権利を享受しているかどうかが示されるべきである。
4 第25条により保障されている権利の行使に適用される条件は、 合理的かつ合理的な基準に基づくべきである。例えば、 成年の市民に等しく与えられるべき投票権の行使に比べて、 被選挙権を有するための又は特定の公務に就任するための年齢が高いことは合理的たり得る。市民によるこれらの権利の行使は、 法律に定められ、 かつ、 合理的な根拠を有する場合を除き、停止又は排斥されないものとする。 例えば、 精神的無能力が確定されている場合、それは選挙権を行使し、 又は公務に就任する権利を拒絶する根拠となりうる。
5 第25条 (a) 項で言及される政治は、 政治的権力の行使に関連する広範な概念である。この中には、 特に立法権、 執行権及び行政権の行使が含まれる。 また国際的、 国内的、地域的及び地方的レベルにおける行政及び政策の立案と実施の全てに関するものが対象になる。権限の配分及び各市民が第25条により保障されている政治に参加する権利の行使方法は憲法その他の法律により定めらるべきである。
6 市民が立法機関の議員として又は行政官に就任することにより権限を行使する場合、市民は政治に直接参加する。 かかる直接参加する権利は第25条(b) 項により支持されている。また市民は、 憲法を選択し、 改正し、 又は政治問題を決定する場合、 (b) 項に従い行われる直接投票またはその他の選挙手続を通じて、政治に直接参加する。 市民は、 地方の問題又は特定の地域社会の問題に関する決定権限を有する議会ならびに市民を代表して政府と交渉するために設立された機関に参与することにより、直接参加することができる。 市民の直接参加の方法が定められている場合、 参加に関して市民相互間で第25条に定める理由に基づいて差別してはならず、また不合理な制限を課してはならない。 7 自由に選挙された代表者を通じて市民が政治に参加する場合、 これらの代表者が実際に政治的権利を行使し、その行使に関し選挙手続を通じて責任を負うものであることが、 第25条で黙示的に示されてる。また代表者が憲法上の規定に従い割当てられた権限のみを行使することも黙示的に示されている。自由に選挙された代表者を通じて参加することは、 投票手続を通じて行われるものであり、かかる投票手続は (b) 項に従い法律により定められなければならない。
8 また市民は、 代表者との公開討論及び意見交換、 あるいは自らを組織する能力を通じて影響力を行使することにより政治に参加する。かかる参加は表現、 集会及び結社の自由を確保することにより支持される。
9 第25条 (b) 項では、 投票者又は選挙における立候補者として政治に参加する市民の権利を取扱うための具体的な規定を定めている。代表者に付与された立法権又は行政権の行使に関する責任を確保するために、 (b) 項に従った真正な定期的選挙は不可欠である。 かかる選挙は定期的に行われるものとし、不当に長い期間を置いてはならず、 また政府の権威が選挙人の意志の自由な表明に基礎づけられていることが確保される期間内に行われなければならない。 (b) 項に定める権利及び義務は法律により保障されるべきである。
10 選挙及び直接投票において投票する権利は、 法律により定められなければならず、投票権の最低年齢の規定等、 合理的な制限にのみ服する。 身体障害を理由として投票権を制限し、又は識字能力、 教育もしくは財産を要件として課すことは合理的でない。 政党の党員であることは投票の資格条件にとすべきでなく、また不適格の理由とされるべきでもない。
11 締約国は、 投票権を有するすべての人がこの権利を行使することができるように実効的な措置を講じなければならない。選挙人の登録が必要な場合は、 登録を促進し、 これを妨げてはならない。 選挙人名簿への登録に居住要件が適用される場合、当該要件は合理的なものでなければならず、 住居を有しない者から投票権を排除するような方法で制限を課してはならない。選挙人名簿への登載登録又は投票に対する恣意的干渉ならびに投票人に対する脅迫又は強要は刑罰法規により禁止されるべきであり、かかる法律は厳格に執行されるべきである。 選挙人に対する啓蒙活動及び選挙人登録の呼びかけは、情報を与えられた共同体による第25条の権利の実効的行使を確保するために必要である。
12 表現、 集会及び結社の自由は投票権の実効的な行使のために不可欠な条件であり、完全に保障されなければならない。 投票権を有する者がその権利を実効的に行使することを妨げることになる識字能力の欠如、言語上の障壁、 貧困、 移動の自由に対する障害等、 特定の障害を克服するために、積極的な措置が講じられるべきである。 投票に関する情報及び資料は少数者の言語によっても提供されるべきである。識学能力を欠く投票者がその選択の基礎となる十分な情報を得ることができるように、写真及び記号等の特別な方法を採用すべきである。 締約国はその報告書の中に、本項に指摘された障害の対処方法を記載すべきである。
13 締約国の報告には、 投票権を規定する規則及び当該報告の対象期間における当該規則の適用状況を記載すべきである。また、 締約国の報告には、 市民が投票権の行使を妨げられる要因及びかかる要因を克服するために採用した積極的措置を記載すべきである。
14 締約国の報告においては、 市民から投票権を剥奪する法律上の規定はが記載され、説明されるべきである。 かかる剥奪の根拠は合理的かつ客観的なものでなければならない。犯罪に対する有罪判決が、 投票権の停止の根拠となっている場合、 当該停止期間は犯罪及び量刑に比例していなければならない。自由を剥奪されている者であっても、 有罪判決を受けていない場合、 投票権の行使を剥奪されてはならない。
15 選挙による公職に立候補する権利及び機会の実効的な実施のためには、 投票権を有する者に対し立候補者の選択の自由を確保することが必要である。年齢等、 立候補する権利の制限は客観的な基準に基づいて正当化されるものでなければならない。本来立候補する資格を有する者は、 教育、 居住関係又は門地等の不合理又は差別的な要件により、又は政治的所属を理由として排斥されてはならない。 立候補したことを理由とするいかなる差別も不利益もあってはならない。締約国は、 選挙による公職から特定のグループ又はある範疇の人々を除外する法律上の規定があれば、これにつき記載し説明すべきである。 かかる除外理由は、 合理的かつ客観的なものでなければならない。
16 選挙の、 指名日、 手数料又は供託金に関する条件は合理的なものでなければならず、差別的であってはならない。 選挙による公職と特定の地位の在職 (例えば司法職、上級軍事職、 公務員) を兼任すべきでない合理的理由がある場合、 利害の抵触を回避する措置は、 (b) 項で保障される権利を不当に制限するものであってはならない。 選挙による公職に就任している者を解任するための事由は、法律により定められるものでなければならず、 その法律は合理的かつ客観的な基準に基づき、かつ適正な手続を定めるものでなければならない。
17 立候補する者の権利は、 立候補者に対し政党の党員であること又は特定の政党の党員であることを要求することにより、不合理に制限されてはならない。 立候補者が指名のために一定数以上の支持者を有することを要件とされる場合、かかる要件は合理的なものでなければならず、 立候補の障害として機能してはならない。規約第5条第1項の適用を妨げることなく、 政治的意見は、 立候補の権利を剥奪する事由として利用されてはならない。
18 締約国の報告には、 選挙による公職に就任する条件を定めた法律上の規定、及び特定の職務に適用される制限と資格を記載すべきである。 また報告には、 指名条件 (例えば、 年齢制限及びその他の資格又は制約) を記載すべきである。 締約国の報告には、公職に有る者 (警察職又は軍事職を含む) が特定の公職に選挙されることを除外する制約があるかどうかを記述すべきである。選挙されて公職に就任している者の解任のための法的根拠及び手続も記載されるべきである。
19 (b) 項に従い、 投票権の実効的な行使を保障する法律の範囲内において、 選挙は定期的に、公正かつ自由に行われなければならない。 投票する権利を有する者は選挙の立候補者に自由に投票し、また直接投票又は国民投票に付された提案に対し、 自由に賛成又は反対し、 又、自由に政府を支持し又はこれに反対することができなければならず、 選挙人の意思の自由な表明を歪曲し、又は抑制するあらゆる種類の不当な影響又は強制を受けることがあってはならない。投票者はあらゆる種類の暴力、 暴力による脅迫、 強制、 誘惑又は不正工作による干渉を受けることなく、独自の意見を形成することができなければならない。 選挙運動の費用に関する合理的な制限は、立候補者又は政党の不相当な支出により投票者の自由な選択が損なわれないようにし、民主的手続が歪められないようにするために必要な場合には、 正当化され得る。真正な選挙の結果は、 尊重され、 実行されなければならない。
20 選挙手続を監視し、 選挙が公正、 平等に、 かつ規約に適合する法律に基づいて行われることを確保するために、独立した選挙管理委員会が設置されるべきである。 締約国は選挙における投票 (不在者投票制度が存在する場合の不在者投票を含む) の秘密を確保するための措置を講じるべきである。 このことは、 投票者はどのような投票をしようとしているか又は投票結果を開示させるあらゆる形態の強制又は強要、及び投票手続に対する不法又は恣意的な干渉に対し保護を受けるべきことを意味する。これらの権利を放棄することは規約第25条に適合しない。 投票箱の安全は保障されなければならず、また立候補者又はその代理人の立ち会いのもとで、 開票がなされるべきである。選挙人が投票及び開票の安全を信頼できるように、 投票及び開票に対する独立した審査がなされるべきであり、かつ司法審査又はこれと同等の手続が利用可能とされるべきである。 身体障害者、視覚障害者又は識字能力のない者に対する援助は独立したものであるべきである。選挙人はかかる保障について十分に知らされるべきである。
21 規約は特定の選挙制度を課すものではないが、 締約国で運営されている各制度は、第25条により保証されている権利に適合するものでなければならず、 また選挙人の意思の自由な表明を保障し、これを実効性あるものにしなければならない。 1人1票の原則が適用されなければならず、また各締約国の選挙制度の範囲内において1人の選挙人の投票は他の1人の投票と同等であるべきである。選挙区の設定及び投票の配分方法は投票者の分布状況を歪曲し、 又は特定のグループを差別するものであってはならず、また代表者を自由に選択する市民の権利を不合理に排除し又は制限するものであってはならない。
22 締約国の報告には、 真正かつ自由な定期的選挙を保障するために採用した措置、及び選挙人の意思の自由な表明を保障し、 実効あらしめるための選挙制度の内容を記載すべきである。また報告には、 選挙制度について記載し、 その社会における異なる政治的見解が選挙された組織においてどのように代表されているかの説明がなされるべきである。さらに報告には、 投票権が全ての市民により実際に自由に行使されることを保障する法律及び手続を記載し、また投票手続の秘密、 安全性及び有効性が法律によりどのように保障されているかを記載すべきである。また当該報告が対象とする期間におけるこれらの保障の実際の実施状況を説明すべきである
23 (c) 項は市民が一般的な平等条件の下で公職に就く権利と機会とを規定するものである。一般的な平等条件により公職に就くことを確保するために、 選任、 昇進、 停職及び解雇の基準と手続は、客観的かつ合理的なものでなければならない。 すべての市民に対し公務に携わる機会均等を確保するため、適当とみなされる場合には、 積極的な差別解消の措置をとることができる。 機会均等及び一般的な実力主義に基づく公務への就任、ならびに身分の保障により公職に在る者は政治的な干渉又は圧力から自由であることが確保される。第25条 (c) 項に基づく権利の行使にあたって、 第2条第1項に規定されるいかなる理由によっても差別されないことを確保することは、特に重要である。
24 締約国の報告には、 公務に就くための条件、 適用される制約、 及び選任・昇進・停職・解雇又は解任の手続、ならびにこれらの手続に適用される司法その他の審査機構についての記載がなされるべきである。また報告には、 機会均等の要求がどのように達成されているか、 積極的差別解消廃措置が導入されているか、導入されている場合にはその程度が示されるべきである。
25 第25条により保護されている権利の完全な享受を確保するためには、 市民、立候補者及び選挙された代表者との間の公的及び政治的問題に関する情報及び考えの自由な伝達が不可欠である。これは公的問題について検閲も制約もなく論評でき、 世論を伝達できる自由な報道を意味する。これはまた、 個人として又は政党その他の団体を通じて政治的活動に従事する自由、政治について討論する自由、 平和的示威行動及び集会を行うこと、 批判し反対すること、政治的文書を出版すること、 選挙活動をすること及び政治的考えを宣伝することなどを含む、規約第19条、 第21条及び第22条に保障されている権利を完全に享受し、 尊重することを要求する。
26 政治的及び公的事柄に関する団体及び結社を組織し参加する権利を含む結社の自由に関する権利は、第25条により保障される権利に不可欠なものとして随伴するものである。 政党及び党員であることは、政治と選挙手続において重要な役割を果たす。 国は、 政党がその内部運営において、市民が第25条に基づく権利を行使できる同条の適用可能な規定を尊重することを確保すべきである。
27 規約第5条第1項の規定に鑑み、 第25条により認められ保護されている権利は、現在の規約が定める範囲を超えて、 規約により保障されている権利及び自由を破壊し又は制限する行動をとる権利を意味し、又はかかる行動を有効とするものと解釈されてはならない。