どうして市民が参加するの?
どうして、市民が刑事裁判に参加するのですか?
裁判員制度は、市民が刑事裁判に参加して、裁判官と一緒に、有罪・無罪を判断し、有罪の場合は言い渡す刑罰を決める制度です。 本当に犯罪を行った人に対して適正な刑罰を科すことは、私たち市民が安全に暮らすために必要なことです。しかし、誤って無実の市民に刑罰を科してしまったら、その市民の自由や権利は不当に奪われてしまい、その打撃は本人のみならずその家族にまでも及びます。ですから、人に刑罰を科す前に、本当にその人が犯罪を行ったことに間違いないのか、慎重に判断する仕組みが必要です。


市民が刑事裁判に参加する制度は、市民の自由や権利が不当に奪われることを防止するために、重要な役割を果たします。さまざまな経験や知識を持った市民が、その常識に照らして「疑問の余地はない」と確信してはじめて、有罪とする。そのような仕組みが、市民のかけがえのない自由や権利を守るのです。


市民の司法参加は、国民主権を実質化し、司法の国民的基盤を確立するためにも必要不可欠な制度です。市民の・市民による・市民のための裁判が実現することによって、司法に対する理解が深まり、信頼が高まることが期待されます。
市民の経験や知識が、刑事裁判の質を高めます
刑事裁判では、法廷に提出された証拠に基づいて、どのような事実があったのかを判断します。同じ証拠であっても、それをどのように評価するか、人によって異なることは稀ではありません。例えば、ある証人の証言について、ある人は「信用できる」と思ったとしても、ほかの人は、その経験や知識に照らして「信用できない」と判断することがあります。


また、ある人が「不合理な弁解」と受け取った被告人の言葉が、ほかの人の経験や知識に照らすことによって、十分に納得できる説明であると判明することもあり得ます。刑事裁判の有罪判決は人の自由や権利を奪うものですから、証拠の評価は慎重に行わなければなりません。さまざまな生活上の経験や知識を持った市民が刑事裁判に参加することによって、証拠を多角的に評価することが可能となり、刑事裁判の質が向上することが期待されます。
みなさんの常識が、市民の自由や権利を守ります
刑事裁判では、「無罪の推定 」が重要な原則とされています。「無罪の推定」とは、犯罪を行ったと疑われて捜査や、刑事裁判を受ける人について、刑事裁判で有罪が確定するまでは「罪を犯していない人」として扱わなければならないとする原則です。


そして、刑事裁判では、被告人が犯罪を行ったことにつき、検察官が「合理的な疑問を残さない程度の証明」をしない限り、有罪とすることができません。無罪が推定される被告人は、自らの無実を証明することを要求されないのです。


疑いを向けられた人が自らの無実を証明することは、非常に困難です。刑事裁判では、検察や警察がその組織と捜索・差押え・取調べなど強制力を用いて証拠を集めることができるのに対して、疑いを向けられた被告人は有利な証拠を集めるための組織も強制力も有していないという、大きな力の差があります。にもかかわらず、被告人が自らの無実を証明できないからといって、有罪としてしまったら、多くの無実の市民が有罪とされてしまうおそれがあります。


そして、無実の市民に対する有罪判決は、市民の自由や権利を不当に奪い、その人生を狂わせ、家族にまで大きな打撃を与えるという深刻な害悪をもたらします。こうした悲劇を防止するために、被告人は無罪と推定され、検察官が「合理的な疑問を残さない証明」をしない限り、有罪とすることはできないものとされているのです。


「合理的な疑問」とは、みなさんの常識に基づく疑問です。法廷で証拠を見聞きして、みなさんの常識に照らし、少しでも疑問が残るときは、有罪とすることはできません。人に刑罰を科す前に、市民が常識に照らして疑問の余地がないかどうか確認する。そのような仕組みが、無実の市民が罰せられるという悲劇を防止するのです。
関連リンク
冤罪(誤判)防止コム「死刑再審4事件弁護人アピール」
 
 あなたの常識が必要とされています
わたしたち市民の自由や権利にかかわるものだからこそ、刑事裁判には市民の常識が必要です。市民が刑事裁判に参加する制度は、世界80以上の国や地域で導入され、定着しています。G8(主要8カ国首脳会議)参加国では、アメリカ・イギリス・カナダ・ロシアが陪審制度、イタリア・ドイツ・フランスが参審制度と呼ばれる市民参加制度を採用しています。
関連リンク
世界各国の市民参加制度
 
一口解説
Q&A
無罪の推定
 
刑事裁判で有罪が確定するまでは「罪を犯していない人」として扱わなければならないとする原則です。

この原則は、日本国憲法31条で保障されているほか、「世界人権宣言」第11条1項、「市民的及び政治的権利に関する国際規約(国際人権B規約)」第14条2項に定められており、刑事裁判の大原則として、国際的に承認されています。
合理的な疑問を残さない程度の証明
 
刑事裁判で、被告人を有罪にするためには、常識に照らして疑問の余地はないと確信できる程度の証明(合理的な疑問の余地を残さない程度の証明)がなされなければなりません。

アメリカやイギリスの刑事裁判でも、被告人を有罪とするためには、合理的な疑問を残さない程度の証明(proof beyond a reasonable doubt)が必要とされています。他の国の刑事裁判でも、同様に、非常に高度な証明が要求されています。