静岡大学法科大学院を紹介します

1 静岡県とは

静岡県と言えば、すぐに富士山、みかん、お茶などのイメージが浮かびます(これらは静岡県弁護士会のゆるキャラにもなっているほどです。)。いろんな物産があり、1つに絞りきれないためか、今のところ、みかん県、お茶県への改名の予定はありません。

 

そうした物産だけでなく、静岡県には静岡市と浜松市の2つの政令指定都市があり、メーカーが多く、ものづくり産業が発達しているため、そこに働く外国人の方が多くいたり、企業が海外進出していたりします。東西に長く、沼津・伊豆、静岡、浜松と大きく3つの地域に分かれ、住民の意識にも違いがあります。また、平均的な県としても知られ、新商品のテスト販売地となることがあります。


2 静岡大学法科大学院

静岡大学法科大学院

静岡大学法科大学院

静岡大学法科大学院は、静岡県弁護士会のみならず、静岡県議会・静岡市議会を含む県内65自治体議会、商工会議所等各会15団体の設立推進決議や、10万人近い県民署名が提出されるなど地域の大きな期待を受けて設置されました。

 

このような地域の期待に応えるべく、静岡大学法科大学院は、「地域と共に歩みながら、地域市民や企業に貢献できる法曹実務家の育成」を理念として掲げて教育を行っています。

3 教員のサポート

講義風景

講義風景

(1)徹底した少人数教育

 

本法科大学院は少人数教育を行っています。現在1学年の学生人数は10名ほどです(定員は1学年20名)。人数が少ないことによるデメリットもありますが、人数が少ないからこそ、教授陣としても生徒の個々の能力を把握することが容易となる等、少人数教育の強みを本法科大学院は発揮しています。

 

学生は教員と共に学習計画を立て、年に6回前後の個別面談が実施されています。

 

徹底した個別指導により、自らの弱点を確認し、克服することができます。このように教員と深く連携して勉学を続けていけば、実力も培われてきます。

 

(2)合格者から学び、学年の枠を超えて合格を目指す

 

院生談話室

院生談話室

本法科大学院では、司法修習に行く前の司法試験合格者とゼミを組んで合格者の視点から答案の改善点等を指摘してもらう機会があります。そして、そのようなゼミに参加した者が翌年の司法試験に合格し、合格後にまた後輩の学生のためにゼミをする、という伝統が根付いています。

 

学生の多くは、同学年あるいは学年を跨いでゼミを組んで勉強しています。学年の枠を超えて横だけではなく縦のつながりを作ることで、少人数のデメリット(情報量が少ない等)は相当程度解消されています。また、学生主催のゼミにロースクール教員が参加し、議論を通じての指導をすることもあります。教員が自主ゼミに参加してくれるということで、学生は、自らの答案の問題点等について教員から直接指導を受けることができますし、教員から的確な助言を受けることもできます。


4 設備・カリキュラム

院生自習室

院生自習室

(1)学習環境の整った法科大学院棟

 

法科大学院棟には自習室が設置され、1人1台ずつ机が割り当てられます。この自習室では無線LANによるネットワーク接続が自由にでき、個人の自習机にいながら文献調査をすることができます。また、同じ建物の中に図書室やゼミに利用できる談話室があり、勉強に集中できる環境が整備されています。

 

(2)中国法関係の科目の充実

 

カリキュラムをみると、中国法務事情、中国民法、中国企業取引法という科目が配置され、中国出身の教員が担当しています。中国関連の法律を扱う講義が3科目もあるのは全国的にも珍しいことです。静岡県内においては、県内企業の中国への進出がめざましく中国との取引が盛んになっており、中国法の知識を有する法曹が求められています。そのため、本法科大学院で中国法を学んだ者は、今後、県内の企業法務の需要に応えることができる人材となりうると思います。

 

(3)修了後も手厚いサポート

 

本法科大学院では、科目等履修生の制度があり、法科大学院修了生は、基礎法学・隣接科目及び展開・先端科目について科目等履修生として受講することができます。この科目等履修生の制度は、法曹となった後でも利用でき、前記の中国法関係の科目等を、静岡県内の多くの弁護士が科目等履修生として受講しています(平成24年度は8名の弁護士が中国法関係の科目を受講しました。)。

 

また、修了生は、「法務研修生」に登録することで法科大学院棟を引き続き利用でき、自習室で勉強することができます。毎日学校に通って自習室を使うことにより、自然と勉強する習慣が身に付きます。修了後も法科大学院棟で勉強を続けて司法試験に合格した修了生が本法科大学院にはたくさんいます。


5 実務家との協力体制

静岡県弁護士会及びその所属会員は、本法科大学院に対して、さまざまな支援を行っています。

 

実務家と研究者の共同講義

実務家と研究者の共同講義

(1)弁護士チューター制度

 

一部の授業では、専任教員とともに弁護士チューターが授業に参加して、実務的な助言をしたり、質問に答えたり、レポートの添削を行ったりしています。また、論文の書き方が分からないという学生の声に応えるべく、弁護士による「論文の書き方講座」も実施されています。

 

(2)論文作成会

 

静岡県弁護士会などに所属する有志の弁護士により「岳法会(がくほうかい)」が組織されています。岳法会により、毎年10月から3月にかけて10回程度、司法試験に向けた実践的な論文作成会が開催されています。これは、問題作成、解説講義、採点まで、「岳法会」から依頼を受けた担当弁護士が行います。担当弁護士は、司法試験に合格したばかりの若手が中心であり、司法試験を意識した論文作成会となっています。この論文作成会での成績が、司法試験の成績と比例する傾向にありますので、多くの学生が岳法会を受験勉強のペースメーカーとして利用しています。

 

(3)実務を体験するエクスターンシップ

 

本法科大学院には静岡で現在活躍している弁護士のもとで研修を行うエクスターンシップがあります。エクスターンシップを履修することで、弁護士の日常の仕事を垣間見ることができます。実務の世界を体験することで、法曹として働くという決意がより高まり、勉強の励みとなります。また、法科大学院在学中から、静岡で活躍する弁護士とのつながりを作ることは、将来静岡で弁護士として働く際に非常に有益なものとなります。

 

(4)弁護士リレー講義

 

本法科大学院には、静岡で活躍中の弁護士が自らの職務経験を題材とした「弁護士実践入門」というリレー形式の講義が1年次にあります。1年次から弁護士の実務を知ることにより、目指すべき弁護士像を具体的に考えていくことができます。

 

(5)全国に先駆けて里親制度の開始

 

本法科大学院生(「里子」)1人1人に、静岡県弁護士会の経験豊富な弁護士(「里親」)が担当者となり、弁護士と学生の個々の交流を深める里親制度が平成25年度から始まることになっています。里親制度によって、弁護士の存在をより身近に感じることで、法曹を目指す気持ちが強くなり、勉学へのモチベーションを高めることが期待されます。また、静岡県弁護士会の若手弁護士は里親補助弁護士として里親制度に関わり、里子である学生は、司法試験に向けての学習等を里親補助弁護士に気軽に相談することもできます。このような学生1人1人に担当弁護士がついて懇親を深めていく取り組みは、全国的にも初めての取り組みです。


6 無料法律相談会の開催

法廷教室

法廷教室

前記の本法科大学院の理念を体現するものとして、「無料法律相談会」があります。

 

「無料法律相談会」は、学生が実務家教員(弁護士)と共に法律相談の場に同席し、相談内容について実務家教員と共に相談者に質問し、実務家教員の指導のもと、紛争解決のあり方を実際に体験しながら学んでいきます。

 

この法律相談会は、公益財団法人静岡県労働者福祉基金協会ライフサポートセンターしずおか事業部と静岡大学法科大学院の共催の形で年4回行われています。県内の司法過疎地(県東部及び西部の司法過疎地)でも開催されることから、地元の自治体から好評を得ています。平成24年度に県東部・伊豆地域の松崎町において1泊2日で行われた法律相談会では、その翌日に、弁護士や教員も交えて事案検討会を行いました。また、法律相談だけでなく、懇親会において実務家教員等と懇親を深め、有意義な時間を過ごすことができます。

 

7 手厚い奨学金制度

本法科大学院の奨学金制度は、入学料・授業料免除の制度(新入生2名の入学金免除、各学年2名(計6名)の授業料免除)だけでなく、静岡大学法科大学院支援協会や静岡リーガルサポートセンター株式会社等による独自の奨学金があり、多くの学生が奨学金制度を利用しています。

 

また、「宗静奨学金」という法科大学院修了生を対象とした奨学金があることも特徴です。司法試験は、法科大学院修了後にありますので、本奨学金によって、修了後も金銭的な不安なく受験勉強に集中できる環境づくりをサポートします。

 

8 最後に

以上のように、静岡大学法科大学院は、教員とのつながり、学生のつながり、弁護士会とのつながりにおいて、どの法科大学院よりも密接な関係を築いているものと自負しております。そのつながりがあるからこそ、本法科大学院は、着実に司法試験合格者数を伸ばしているのです。

 

そして、司法試験合格後においては、司法試験合格者19名(平成20年度~平成23年度の合格者の合計)の内、実に11名が静岡県弁護士会に登録しています。その他の者も2名が法テラスにおいて司法過疎地のリーガルサービスに貢献し、また2名が地方自治体に就職するなど、地元、地域に根ざした活躍をしています。

 

執筆者 伊代田 雄大(静岡県弁護士会)

北上 紘生(静岡県弁護士会)

監修 法科大学院センター幹事 内山 宙(静岡県弁護士会)