公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会の最終報告書に対する会長声明

 


2016年12月15日、消費者庁に設置された公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会の最終報告書(以下「本報告書」という。)が公表された。本報告書は、同検討会の2016年3月の第1次報告書における見直しの方向性の下に、法律の専門家によるワーキンググループを設置し、公益通報者保護法の改正を含めた検討を経て、取りまとめられたものである。

本報告書は、①労働者に限定されていた通報者の範囲に退職者を含めることが適当とし、役員等を含める方向で検討すること、②労務提供先への通報者に関する情報の守秘義務の導入を前提に具体的要件や効果を更に検討すること、③行政機関への通報における真実相当性の要件を緩和する方向で検討すること、④行政機関以外の外部への通報の特定事由による保護要件を緩和する方向で検討すること、⑤不利益取扱いに対する行政措置について何らかの措置を設ける方向で検討すること、⑥通報と不利益扱いとの因果関係の立証責任につき緩和等を行う方向で検討すること、⑦通報内容を裏付ける資料の収集・持出行為について通報者を保護する方向で検討すること、などを提言した。

また、消費者庁がより司令塔的な機能を発揮していく必要があるとして、消費者庁に通報や通報対応に関する意見・苦情等を受け付けるための一元窓口を設け、これを調査した上、各行政機関に対し改善要請等を行うことが適当として、そのための法改正も含めて具体的な検討を行うべきとした。

本報告書の方向性自体は、当連合会が長年にわたって求めてきたところに沿うものである。

しかし、本報告書は、法改正への具体的提言が期待されていたにもかかわらず、法改正が必要とする論点についても、今後、更なる検討を求めるにとどまり、その体制や改正の時期のめどが示されていない。特に、通報者の範囲に役員や取引事業者を含めること、行政以外への外部への通報の保護要件の緩和、通報と不利益取扱いとの因果関係の立証責任の緩和や通報を裏付ける資料の収集・持出行為に対する免責など、早期の法改正が強く求められている論点について、通報者保護の「方向で検討」するにとどまっていることについては不十分というほかない。

公益通報者が安心して必要な通報を行える仕組みは、事業者にとっても社会にとっても有益かつ不可欠な制度である。しかし、公益通報者保護法は、施行から10年が経過した今も、その制度自体が広く知られておらず、制定当時から通報者保護の実効性確保が不十分であることが指摘されていたにもかかわらず改正は先送りされてきた。そのため、現在においても十分に活用されておらず、企業の不祥事の抑止や解決に十分な効果を発揮できていない。そこで、まず、本報告書における最終取りまとめの方向での改正を早急に実現するべく、改正の年限を明示し、必要とする検討作業を速やかに開始すべきである。

 

  2016年(平成28年)12月22日

日本弁護士連合会      

 会長 中本 和洋